データから分かる人材育成の課題とは?【階層別の解決策あり】

3.【階層別】育成課題の具体的な解決策

人材育成の課題は大きく4つに集約されますが、階層ごとに見ていくと、それぞれが異なる課題を抱えていることが分かりました。

厚生労働省の人材育成の現状と課題 第3のデータより、新人~若手層、中堅・リーダー層、そして管理職と階層別に課題をまとめると下記のようになります。

  • 【新卒~若手層の課題】  育成時間の確保とモチベーション維持
  • 【中堅・リーダー層の課題】育成時間の確保と管理職の育成能力不足
  • 【管理職層の課題】    育成能力やリーダーシップ不足

解決策を押さえておかないと、人材育成がスムーズに行かない恐れがあります。
次項より、階層ごとに詳しく解説していきますので必ず確認しておきましょう。

3-1. 新卒~若手層の育成課題

厚労省が公開している「人材育成の現状と課題 第3」によると、新卒~若手層が抱える育成課題は主に次の3つでした。

  • 業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
  • 育成者の育成能力や指導意識の不足
  • 人材育成が計画的・体系的に行われていない

この3つの課題を解決するには、

新人研修・OJTの内容を強化する
若手社員をメンターに抜擢する
加点方式で評価する

3通りの解決策があります。

それぞれの解決策について詳しく解説していきますね。

3-1-1. 解決策新人研修・OJTの内容を強化する

1つ目の解決策は、「新人研修・OJTの内容を強化する」ことです。

新人や若手社員が「社会人としての基礎力や初歩的な業務部分」でつまずいている場合は、新人研修の見直しが急務です。

新人研修の中で「分かりにくい部分」がないか、抜けや漏れがないかを確認しましょう。
育成者は多忙であることが多いため、基礎的な部分を一から十まで現場で指導することはできません。

新人から中堅層の育成は、

  • 研修で基礎的な知識や技術を学ぶ
  • OJTで実務を遂行する過程で習得する

    ことが理想的です。

    OJTとは「On-the-Job Training」の略称で、実際に業務をさせながら育成する方法です。
    業務を遂行しながら指導するため、OJTとして教える側の体制を整えていく必要があります。

    OJTがスムーズに行えるように、

    • 通常業務の見直し
    • OJT担当者の人材育成スキル向上

    を同時に行うとより高い効果が期待できるでしょう。

    3-1-2. 解決策若手社員をメンターに抜擢する

    2つ目の解決策は、「若手社員をメンターに抜擢する」ことです。

    メンターとは、新人社員に対して11でさまざまな支援を行う部署外の先輩を指します。

    「仕事が向いていない気がする」
    「この仕事にやりがいを感じない」

    などの悩みを新人が持った場合、上司や同部署の先輩に相談しにくいものですが、メンターを置くことで若手社員はメンタル面での不安を軽減することができるでしょう。

    この時に新人のメンターとして若手層の人材を抜擢することで、新人・メンターの若手ともに次のような効果が期待できます。

    【新人(メンティ)】

    • メンター(先輩)に業務以外の不安点などを気軽に相談できる
    • 悩みや不安をひとりで抱え込みすぎない
    • 将来のビジョンが描きやすい
    • モチベーション維持に役立つ

    【若手層(メンター)】

    • メンターに抜擢されたことが名誉・実績になる
    • メンティに「頼られる」ことで、自身の存在を「役に立つ」と認めることができる
    • メンティの悩みを自分事のようにとらえることで、育成スキルがつく
    • コミュニケーション能力の向上

    メンター制度については、「メンター制度とは?メリットデメリットと事例から学ぶ失敗しない方法 」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

    3-1-3. 解決策加点方式で評価する

    解決策の3つ目は「加点方式で評価する」ことです。

    加点方式とは、その名の通り、プラスの言動について加点していく評価方法です。
    仮に失敗をしたとしても失敗を挽回できたり、過程に問題がなかったりした場合はプラスの評価をつけます。

    これにより、

    「失敗しても取り戻せばいい!」
    「確実にできることだけでなく、新しいことにチャレンジしよう!」

    という何事にも前向きにとらえる姿勢が養われます。

    多くの組織が導入している減点評価は、基本的に加点されることがありません。
    減点評価とは、目標完璧に達成できる状態を100点満点として設定し、ミスをするたびに減点していく評価方法ですから、

    「確実にできることだけに取り組もう」
    「絶対に失敗しないようにしよう」

    と失敗を極端に恐れる人材を生み出しがちです。

    「チャレンジ精神旺盛な人材」や「新しい業務に積極的に取り組める人材」を育成したいなら、加点方式での評価をおすすめします。

    3-2.【中堅・リーダー層の課題】育成時間の確保と管理職の育成能力不足

    厚労省が公開している「人材育成の現状と課題 第3」によると、中堅・リーダー層が抱える育成課題は次の3つでした。

    • 業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
    • 育成者の育成能力や指導意識の不足
    • 人材育成が計画的・体系的に行われていない

    中堅・リーダー層は、業務の重責度が増すだけでなく、自身が育成する側・育成する側の両方にあたるため、キャパオーバーになりやすいのが大きな問題です。

    この3つの課題を解決するには、

    社内・社外研修を有効的に使う
    新人の指導は若手社員に任せる
    キャリアアップに人材配置を行う

    3つの解決策があります。

    それぞれの解決策について詳しく解説していきますね。

    3-2-1. 解決策社内・社外研修を有効的に使う

    1つ目の解決策は、「社内・社外研修を有効的に使う」ことです。

    社内外における集合研修は、新人や管理職がメインに設定されがちですが、中堅・リーダー層の社員にも有益です。

    例えば、新人の育成能力やリーダーシップ向上を目的とした研修では、

    • 新人育成のケーススタディ
    • 新人のタイプ別の指導方法
    • 新人の人材育成計画書の作成法

    などを学ぶことで、実際の指導を円滑に進められる効果が期待できます。

    特に新人の人材育成計画書の作成方法については、計画書の出来が育成を左右すると言っても過言ではありません。

    しっかり練られた計画書があれば育成ターゲットとの目標共有がしやすく、ざっくりとした指示でも、相手は指示の真意をくみ取って業務にあたることができるでしょう。

    反対に計画書が新人全員に当てはまるような大枠のものだったり、曖昧な書き方だったりすると、現場でいちいち細かく指示を出す必要が生じます。

    社内外の研修などで人材育成に役立つスキルや知識を身に付けておくと、将来非常に役立ちます。

    3-2-2. 解決策新人の指導は若手社員に任せる

    2つ目の解決策は、「新人の指導は若手社員に任せる」ことです。

    ただし「新人の指導を若手社員に丸投げする」ということではないので注意してください。

    これは最終的な育成や要となる指導は自身で行い、それ以外の部分を若手社員に指導させるということです。実行には、よく練られた人材育成計画書が必要になります。

    良い人材育成計画書には、5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・どうして・どのように)が必ず含まれているもの。ですから、上司以外の社員でも人材育成計画書を見るだけで、「部下に指導すべきこと」が分かり、実践できるのです。

    中堅・リーダー層の社員は自身のスキルアップと通常業務に加えて、新人育成にあたるため、「いくら時間があっても足りない」状態に陥りがちです。
    「自分以外でも指導可能なところ」はどんどん若手社員に任せましょう。

    これにより、タイムロスなく人材育成を進めることができるのです。

    3-2-3. 解決策キャリアアップに人材配置を行う

    3つ目の解決策は、「キャリアアップに人材配置を行う」ことです。

    中堅・リーダー層を育成するメンバー陣に余裕や適正がない場合は、働く環境を変えるのも1つの手段です。

    さまざまな現場や職種を経験することで、多面的なビジネススキルを身に付けることができます。

    近年、導入が増えている「キャリアパス」という人材育成制度もこれに該当します。
    キャリアパス制度とは、企業内での昇進や異動などのキャリアップの基準や条件を明確にし、「どのような経験やスキルがあれば、昇進または異動のチャンスがあるのか」を提示したものです。

    将来の目標へのステップが可視化できるため、キャリアアップを希望する社員にとってはモチベーションの維持がしやすくなります。
    さらに企業にとっては、優秀な人材の流出防止にもなります。

    もちろん、人材配置は育成ターゲットの希望が第一優先です。
    くれぐれも育成者の勝手な思い込みで育成ターゲットのキャリアルートを確定することは控えましょう。

    希望していない人材配置は育成ターゲットにとって大きなマイナスになる可能性がありますので、注意してください。

    3-3.【管理職層の課題】育成能力やリーダーシップ不足

    厚労省が公開している「人材育成の現状と課題 第3」によると、管理職層が抱える育成上の課題は、

    • 管理職としての能力や資質
    • 部下の育成・指導力
    • リーダーシップ
    • 実行・推進力

    など、いずれも管理職としての必須スキルや資質の不足でした。

    高い能力・資質を持つ人材がいる一方で、管理職にふさわしくない人材も少なくないようで、「管理職の質の担保の難しさ」が浮き彫りになった形です。

    この問題を解決するには、

    マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供する
    人材育成の環境を整備する

    を推進していく必要があります。

    次項でそれぞれ詳しく解説していきますね。

    3-3-1. 解決策マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供する

    1つ目の解決策は、「マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供する」ことです。

    管理職によって人材育成スキルに差が出るのは、各々の実体験をベースに自由な指導を行っているからです。

    育成手法が統一されていないため、それぞれが考えるベストな属人的な方法で指導にあたることになります。実体験に基づいて成果主義ベースで指導する部長がいたり、プロセス重視で評価する部長がいたりしては、育成ターゲット間で不満が生まれる恐れもあります。

    このような問題を解決するためには、マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供し、管理職に「組織で統一された人材育成スキル」を教え込む必要があります。

    育成手法を統一させ、育成レベルの底上げをしなければ、いつまでたっても良い人材は育てられません。

    また、管理職には組織をマネジメントするための知識も必要です。
    コンプライアンスやメンタルヘルスなどの基礎知識を学ぶことで、育成ターゲットの問題を自分事にとらえることができます。

    3-3-2. 解決策人材育成の環境を整備する

    2つ目の解決策は、「人材育成の環境を整備する」ことです。

    管理職層はとにかく多忙という人が多いもの。
    管理職層の業務量と責任は新人や中堅層の比ではありません。

    人材育成がうまく進んでいない組織にいたっては、管理職層の負担は増大する一方でしょう。

    この問題を解決するには、企業側の理解とアクションが必要です。

    • 管理職の業務量
    • マネジメントしている組織の規模

    この2つを確認した上で、部下の育成に取り組める環境を整えましょう。

    【人材育成に取り組める環境作りの例】

    • 管理職が抱える業務負担の軽減
    • 組織運営を円滑に進めるためマネジメント研修やガイドラインの設定
    • 人材育成のキャリアマップや具体的な指導例をフォーマット化

    本質的な課題と向き合える

    メールマガジン登録

    気づきを得られる、試してみたくなる、動きたくなる。 組織改革や人材育成に関するヒントが詰まった、管理職や人事のための無料メールマガジンです。