客観的人事評価が可能なコンピテンシー評価のメリット・導入までの流れ

4.コンピテンシー評価の導入方法〜実在型モデルを例に〜

コンピテンシー評価の導入には、いくつかのステップを踏むことになります。また、コンピテンシー評価のモデルには「実在型モデル」「理想型モデル」「ハイブリッド型モデル」の3種類が存在します。

実在型モデル

実際に自社で働いている高い業績や成果を上げている人物をモデルにして設計する

 

理想型モデル

企業が求める人物像に基づいて評価モデルを設計する

 

ハイブリッド型モデル

実在型モデルと理想型モデルの長所を融合したモデル

 

こちらでは、一番採用されているという「実在型モデル」を例に導入の手順をご紹介します。

4-1. 優秀な人材へのヒアリング

自社の社員の中から高い業績や成果を上げている人材を選び出し、その人の日々の行動や他の人にはない能力をヒアリングします。複数の候補者からヒアリングを行うことで、共通する行動特性や発揮している能力のより正確な分析が可能となります。

優秀な人材を選定するにあたっては、各事業部の管理職に情報提供を依頼し、候補となる対象者の同僚や部下などにもヒアリングを行った上で総合的に評価が高い人材を選ぶようにします。

ヒアリングをする際には、以下のような視点を交えて行ってみましょう。

意思決定の背景を解明する

質問例:「◯◯を決定したとき、なぜそのように考えたのですか?」

 

モチベーションの源を探る

質問例:「成功させたいという気持ちがそこまで強い理由を聞かせてください」

 

成功の方程式を導き出す

質問例:「成果を出したときの行動を選択した際に、他に検討した行動はありましたか?」

 

これらの質問を投げかけることで、その人材の考え方や行動にどういった傾向があるのかを把握しやすくなります。それにより、他の人にはない優秀な人材の「一度決めたことは途中で投げ出さず、何度でも繰り返して行う」「どんな状況、問題でも時機を逸することなく意思決定している」などの行動特性を導き出すことができます。

4-2. 具体的な人物像のモデル化

優秀な人材からのヒアリングを行った際の共通項目を元に、自社のニーズに即した具体的な人物像をモデル化していきます。

なお、コンピテンシー評価のモデルには、先にも書いたとおり「実在型モデル」と「理想型モデル」、その二つを融合した「ハイブリッド型モデル」の3種類が存在します。

4-2-1.【実在型モデル】実際に自社で働いている優秀な人材に基づいて設計

実在型モデルは、実際に自社で働いている高い業績や成果を上げている人物をモデルにして設計するものです。コンピテンシー評価を組織に導入する場合、この実在型モデルを採用することが多いと言われています。

実在型モデルでは、組織に存在する人物をモデルにして設計するので、「理想型モデル」と比べて現実に即したモデルを設計することが可能になります。

ただ、注意しなければならないのは「高い業績を上げている人の行動特性をどこまで正確に把握できるか」という点です。高い業績を上げている人の行動特性が他の社員にとって再現が難しい場合には、評価モデルを再検討する必要があります。

4-2-2.【理想型モデル】企業が求める人物像に基づいて設計

理想型モデルでは、企業側が求める人物像に基づいて評価モデルを設計します。自社に希望する優秀な人材が見つからなかった場合に活用するモデルであり、企業の意向を反映することができます。

評価項目は、理想とするモデルを想定した上で細かく設定していきます。経営理念や事業内容に沿った理想的な期待行動を考えるため、モデルの構築が比較的簡単です。

注意しなければならない点は、理想を追求するあまり現実とかけ離れた評価モデルや項目を設定してしまうということです。いかに自社の状況にあった達成可能なモデルを設計できるかがポイントとなります。

4-2-3.【ハイブリッド型モデル】実在型と理想型の融合

ハイブリッド型モデルは、実在型モデルと理想型モデルの長所を融合したモデルのことです。設計方法としては、実在型モデルでコンピテンシーを一度設計して、それにプラスアルファとして企業の理想像(理想型モデル)を足します。

2つのモデルの良い点は取り入れ、足りない部分は補完する形で活用するため、もっともすぐれたモデルケースと言われています。

4-3. 評価項目を大きく分類してみる

コンピテンシー評価を導入する際に重要になるのが評価項目の設定です。一般的にコンピテンシー評価項目には、

・企業全体に共通する共通項目

・営業やクリエイティブ職などの職種

・管理職などの職位

に合わせたものがあります。評価項目は、企業としてのミッションや経営方針、その時々の目標などによって分類する必要があります。株式会社あしたのチーム「コンピテンシーマスター評価項目一覧」によると、評価項目は以下のように大分類できます。

①自己成熟性

②変化行動・意思決定

③顧客・営業活動

④組織・チームワーク

⑤業務遂行

⑥戦略・思考

⑦情報

⑧リーダー

以上のような共通項目、職種、職位などで大分類した項目を基に、実際にコンピテンシー評価で使う細かい評価項目を設定していきます。

(出典:https://www.ashita-team.com/jinji-cloud/compi/compi-list/

4-4. コンピテンシー評価の具体的な項目を設定する

大分類を元にさらに細かく評価項目を設定していきます。

4-4-1. 全社共通項目

まずは全社に共通する項目例です。冷静さや率直性、ストレス耐性、ビジネスマナーなど「自己成熟性」を図る指標となります。

冷静さ

感情に動かされることなく、落ち着いて物事に動じない

誠実さ

仕事や他人に対して、まじめで真心がこもっている

几帳面さ

物事をすみずみまで気をつけ、きちんとしている

慎重さ

メリット・デメリットを考え、注意深く行動する

ストレス耐性

落ち込むことがあっても素早く立ち直る

徹底性

一度決めたことは、途中で投げ出さず、何度でも繰り返して行う

率直性

自分自身や自分の考えを包み隠さず表明する

自己理解

自己を正確に認識し、対処する

思いやり

相手の立場や気持ちを理解し対処する

ビジネスマナー

一流のビジネスマンとして恥ずかしくない立ち居振る舞いをしている

(出典:https://www.ashita-team.com/jinji-cloud/compi/compi-list/)

次に、こちらも全社に共通する項目例ですが、自立志向や自己革新、チャレンジ性など「変化行動・意思決定」を図る指標になります。

行動志向

ためになることであれば体を動かすことをいとわない

自立志向

自らの立てた規範や意義・目的に従って行動する

リスクテイク

失敗の可能性があっても、思切って可能性のあることに冒険を試みる

柔軟思考

状況の変化に応じて、臨機応変に対処している

素直さ

相手の意見や指摘をまずは受け入れる

自己革新(啓発)

自己の足りない部分や知識・技能を、自ら積極的に取り入れている

チャレンジ性

斬新なテーマや、高い目標に果敢に取り組んでいる

反転志向

意図的に逆の行動をとり、真意や効果を引き出している

タイムリーな決断

どんな状況、問題でも時機を逸することなく意思決定している

目標達成への執着

最後の1分、1秒まで目標達成をあきらめずに、打てる手はすべて打つ

(出典:https://www.ashita-team.com/jinji-cloud/compi/compi-list/)

4-4-2. 職種による項目

次に、職種による項目として、顧客・営業活動に関する指標の例をご紹介します。

親密性/ユーモア

心からの感じの良さ/その場をなごますユーモアがある

第一印象度

最初に会って1分以内の、他人に対して好印象を与える本人の言動

プレゼンテーション力

伝えようとしている内容を、的確かつ説得力をもって表現している

傾聴力

相手の立場に立って話を聴く

条件交渉力

組織を代表して社外の人と接し、協力・理解を取りつける

新規開拓力

新しい顧客を増やす力

顧客維持力

現在の顧客との緊密さを維持できる力

顧客拡大力

現在の顧客に、新商品やサービスを新たに提案し、顧客の売上・利益を拡充できる力

人物評価

相手の能力・強み弱みを正確に把握し、対応する

人脈

当社の取引に革新を起しそうな人達と懇意である

(出典:https://www.ashita-team.com/jinji-cloud/compi/compi-list/)

4-4-3. 職位による項目

こちらでは職位による項目として役職(リーダー)に関する指標例をご紹介します。

理念・方針の共有

経営理念・方針、新しいやり方をわかりやすく部下・後輩に理解させ、実行させる

経営への参画

部下・後輩を上手に計画・企画立案や改善活動に参加させる

部下・後輩の指導/育成

育成 部下・後輩に気づきを与え、仕事を通じて計画的に部下の人間性を高め、成長させる

権限の委譲

やる気と意欲のある部下・後輩に、思い切って仕事を任せ、伸び伸びと仕事をさせる

部下・後輩への配慮

部下・後輩への気配り、心配り

コミュニケーションの充実

ひとり一人の部下・後輩とより良い信頼関係を築き、効果的に仕事に活用する

指揮・命令・徹底

目標や新しいやり方、規則やルールを部下・後輩に徹底して守らせる

経営幹部との関係

い意味での緊張感を保ち、適切な報告・連絡・相談をする

部下・後輩に対する公平さ

部下・後輩を分けへだてなく扱う

採用と抜擢

「素材」を見出し、場を与える

目標の管理および評価

具体的な目標を設定し、定期的に途中面談し、結果を評価する

部下・後輩との対立

部下・後輩に嫌われることを恐れず、言うべきこと厳しいことを堂々と言う

システム管理力

既存の管理システムを利用し、経営の実効性を上げている

業務管理力

業務効率アップのために、仕事の流れや分担をしっかりとチェックする

後継者の育成

自分の腹心(分身)決め、計画的に特別教育している

(出典:https://www.ashita-team.com/jinji-cloud/compi/compi-list/)

以上、評価項目の例を見てきましたが、かなり具体的であることがご理解いただけたかと思います。評価項目を検討する際には、こちらを参考しつつ、自社の経営方針や目標などに添いながら設定するようにしてください。

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