
3.クレドが浸透した事例「タイレノール事件」
クレドの存在が広く知れ渡ったきっかけは、1982年の9月30日に起きた「タイレノール事件」だといわれています。
3-1.毒物混入事件が発生
解熱鎮痛薬タイレノールにシアン化合物が違法に混入される事件が起きました。ジョンソン・エンド・ジョンソンはこの事件に対し、マスコミを使った積極的な情報の開示や、異物の混入を防ぐ新しいパッケージを開発するなど、迅速に対応。事件の約2ヶ月後には、事件前の売上の80%まで回復しました。
タイレノール事件の詳細はこちら
http://tylenol.jp/story02.html
3-2.クレドに基づいた迅速な対応
毒物混入事件においてジョンソン・エンド・ジョンソンは、クレドである「我が信条」の「第一の責任」に基づいた意思決定を下しました。
緊急時の迅速な対応の裏には、「消費者に対する責任」を重視した結果、全社員の意識の共有ができ、問題へとスムーズに対処できたことがあげられます。1986年には2度目のタイレノール事件が発生しましたが、この時も新たな毒物混入対策を取り、的確に対処しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドについてはこちら
https://www.jnj.co.jp/about-jnj/our-credo
4.クレドの導入企業例5社とその内容
実際にクレドを導入し、社員に共有している企業を6社紹介します。
- ザ・リッツ・カールトン
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
- 楽天株式会社
- BASE株式会社
- グリー株式会社
- 小田急電鉄株式会社
4-1.ザ・リッツ・カールトン
世界的にホテル事業を展開している、ザ・リッツ・カールトンホテル カンパニー L.L.C(ザ・リッツ・カールトン)では、企業理念「ゴールドスタンダード」においてクレドを定めています。
質の高いサービスの提供には、クレドによる社員の意識の向上が欠かせないからです。このクレドはクレドカードにまとめられており、「サービスの3ステップ」や「従業員への約束」などとともに記載されています。
ザ・リッツ・カールトンの社員はクレドカードを常備し、必要な時に読むことで、自身の行動が企業の理念と乖離していないかを常に振り返れるようになっています。
ザ・リッツ・カールトンのクレドの詳細はこちら
https://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards
4-2.ジョンソン・エンド・ジョンソン
3章でご紹介したジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドについて、詳しく解説します。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは「我が信条」としてまとめられており、これはA4サイズの用紙1枚に収まる内容です。
クレドには顧客だけではなく、社員や地域社会、株主からなる4つのステークホルダー(利害関係者)への責任について具体的に記載しています。クレドができてから60年以上が経過しましたが、現在でも社員一同の行動指針として機能し続けています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドの詳細はこちら
https://www.jnj.co.jp/about-jnj/our-credo
4-3.楽天株式会社
インターネット通販業界の大手、楽天株式会社のクレドは、「成功のコンセプト」という5つで構成されています。
社内へのクレドの浸透により、企業理念への共感を高める狙いがあります。楽天市場のクレドは、「常に改善、常に前進」「顧客満足の最大化」など具体性が高いものとなっており、社員は常にスピード感を持ち、自主的な行動を意識できるようになります。
楽天株式会社のクレドの詳細はこちら
https://corp.rakuten.co.jp/about/philosophy/principle/#success
4-4.BASE株式会社
誰でも簡単にEコマースを開設できるBASEの行動指針にも行動指針が存在します。「Payment to the People, Power to the People.」というミッションがあり、体現するための行動指針が3つ存在します。従業員は日常的にこれらを意識して行動・意思決定しています。
同社は、会社に行動指針が文化として根付くようにコミュニケーションの形を考え抜いた結果、Uniposというサービスを2年以上前から取り入れています。この取り組みを開始してから行動指針が社内で日常的に飛び交うようになり、浸透したと言います。
行動指針を体現したと感じた時にUnipos上で感謝・賞賛のメッセージと共にハッシュタグ化して投稿しています。また、行動指針タグごとの賞をつくり四半期ごとにMVPを選び表彰しています。これらの取り組みを行うことで「どのような行動が行動指針を体現しているのか」を全従業員が考えるきっかけになり、行動に移しやすくなります。
弊社らしい使い方としては、行動指針をハッシュタグ化して投稿につけていることでしょうか。「Be Hopeful」「Move Fast」「Speak Openly」という3つの指針に加えて、「Stay Geek」というハッシュタグもよく使われています。どれもBASEの理念を表した言葉で、Uniposを入れてから日常的に飛び交うようになり、かなり浸透したと思います。
また、四半期ごとにMVPを選んで表彰しているのですが、それをUniposのタグごとの「行動指針賞」に切り替えることにしました。ハッシュタグつきの投稿を集計することで、BASEの行動指針にもっとも沿った社員が誰なのかわかるようにしています。
グリー株式会社のクレドの詳細はこちら
4–5.グリー株式会社
ソーシャルゲーム業界で長い歴史を持つグリー株式会社。企業のMission(存在意義)として、「インターネットを通じて、世界をより良くする。」があり、その実現のために、「ロジカル × クリエイティブ × スピード。」「現状に甘んじない。さらに高い目標をめざす。」など5つのValue(行動規範)を設けています。
グリー株式会社のクレドカードにはMissionとValueに加え、Vision(目指す姿)の3つの項目が記載されています。
グリー株式会社のクレドの詳細はこちら
https://corp.gree.net/jp/ja/corporate/mission/
4-6.小田急電鉄株式会社
「ロマンスカー」で知られる小田急電鉄株式会社には、「ロマンスカークレド」があります。箱根と都心をつなぎ、60年以上に渡って親しまれて来たロマンスカーですが、時代の流れとともに乗客数が減少。
顧客の多様なニーズに対応することが急務でしたが、社内ではサービスに対する社員間の意識の違いがありました。
そこで、ロマンスカークレドの策定プロジェクトが発足。運転士や車掌などロマンスカーの乗員を中心にチームが組まれ、他の企業のクレドやサービスの研究、グループ内の関係社員へのインタビュー調査を行いました。
完成したクレドはカードにして全乗務員に配り、行動指針や大切にしたい想いを浸透させています。
小田急電鉄株式会社のクレドの詳細はこちら
https://www.odakyu.jp/recruit/shinsotsu/expert_railroad/feature/feature03.html
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