多様性を活かしD&I推進の鍵となる「心理的安全性」とは

3.ダイバーシティを活かす鍵は「心理的安全性」

ダイバーシティ、つまり多様性を最大限活かすためには、「心理的安全性」の存在が欠かせません。心理的安全性が担保されていなければ、それは多様性を受け入れたというポーズに過ぎず、ダイバーシティ&インクルージョンを実現しているとは到底言えないのです。

D&Iにとって必要不可欠であり、非常に重要な鍵となる心理的安全性についても理解しておきましょう。

心理的安全性とは

「心理的安全性」とは、組織において、そこで働く人たちが心的ストレスを抱えず業務に従事できる状態を表す言葉です。具体的には、立場や役職などにかかわらず自由に発言や発信することが当たり前の状態であり、相談や報告、情報の伝達や共有、指摘や提案といった、あらゆる言動に不安や恐怖を感じることのない状態が、心理的安全性が担保(確保)されている状態となります。

もう少し踏み込んだ言い方をすれば、自らの意見や提案などを積極的に発信したとしても、組織やチームの信頼関係が崩れることはないと、その“組織やチームにいる人全員が共通認識として持っている”状態となるでしょう。心理的安全性が高い、あるいは低いという表現で程度が表されることもあります。

心理的安全性が注目されたきっかけは、Google社が行った「プロジェクト・アリストテレス」です。効果的に成果を上げられる組織やチームの条件とは何かを探るこのプロジェクトを実施した結果、心理的安全性が重要な役割を担っていることがわかりました。

つまり、心理的安全性の高い組織は、低い組織と比較して生産性を向上させることができる可能性が高いと結論づけたわけです。

このプロジェクトにより、生産性の高い組織の条件や特徴は他にも複数導き出されていますが、心理的安全性が重要である点は間違いなく、Googleの発表後、世界中の企業がこの考え方を重視した組織改革へと乗り出しています。

参考:「効果的なチームとは何か」を知る |Google

D&Iに心理的安全性の確保が欠かせない理由

次に、ダイバーシティ&インクルージョンと心理的安全性の関係性を考えてみましょう。

ダイバーシティ&インクルージョンは確かに聞こえもよく、時代の移り変わりに対応できる組織を目指すためには取り入れるべき必須の考え方となります。

しかし、企業や組織がまず取りかかるべきは、何よりも心理的安全性の確保です。

女性や外国人、障害者などの雇用は非常に重要ですが、その前に心理的安全性が高められていなければ意味がありません。心理的安全性はD&Iの土台となるべきものと表現しても過言ではないのです。

もし、心理的安全性が担保されていない状態で多様性を取り入れた場合、どうなるでしょうか。

心理的安全性が低い組織は、従業員が自由に発言することができず、自分の意見や提案を明確に主張することができません。女性や外国人、障害者などを雇用したとしても自由な発言や発信が制限されていれば、多様な意見を組織として受け入れることにはつながらず、イノベーションを生むこともないでしょう。

組織の中でマイノリティに属すると考えられる人たちはさらに萎縮をし、自分の価値観を見出せず、能力を発揮することもできないまま、ただその組織内にとどまっているだけとなってしまいます。そのままでは、組織やチーム内に偏見や差別などが生じないとも限りません。

心理的安全性が担保されており、恥や不安、恐怖を感じることなく自分の意見を発信することができる環境が整っているのであれば、属性や特徴が多数派であろうと少数派であろうと、積極的に発言・発信するはずです。

それが活発な議論や革新的な創造性を生み出し、企業として新たな価値観や商品を世に出すことにもつながります。多様性を受け入れることのメリットを最大限活かすためには、まずは組織内でしっかりと確保し続けることが重要です。

新たにどのようなメンバーが入ってきたとしても、すべてのメンバーが心理的に安全であると感じる環境を整え、維持することができれば、多様性の受容が大きな意味を持ち、企業や組織へと多大なメリットをもたらすことになるでしょう。

D&I推進と心理的安全性が組織に与える影響

心理的安全性を確保した上でダイバーシティ&インクルージョンを推進することができれば、その企業や組織にもたらされるメリットは非常に大きなものとなります。

イノベーションの創出へとつながるだけではなく、働く人たちの満足度がアップし、離職率の低下にもつながるでしょう。多様性を認め、誰もが能力を発揮し貢献できる組織であれば、優秀な人材の確保も容易になるはずです。

従業員の成長に加え外部からの優秀な人材の確保にも成功することで、企業はさらに成長し繁栄していきます。こうした流れは、企業価値の向上にも直結するのです。

前述のように、心理的安全性の確保は生産性を高めることも知られているので、業務が効率化され、最小限のリソースでさらに大きな成果を生み出すことも可能となるでしょう。

その他にも、ビジョンや目標をメンバー全員で共有できたり、トラブルが起きた際の対応も素早くなったり、そもそもトラブルの発生を未然に防ぎやすくなったりするといったメリットもあります。

心理的安全性が確保されている上で多様な価値観を受け入れていけば、立場や役職等に関係なく率直な意見や提案をアウトプットできるわけですから、これらの効果が得られるのは当然のことでしょう。

効果的な心理的安全性の高め方とは?徹底解説いたします。

4.心理的安全性の高め方

多様性を活かすための重要な鍵となる心理的安全性は、どのような方法で高めることができるのでしょうか。組織がまず取り組むべき主要な心理的安全性の高め方を紹介します。

リーダーの自己受容と表現をためらわない

心理的安全性を確保するには、他者の欠点などを嘲笑したり否定したりしないことが重要です。そのためには、まずは組織やチームのリーダー自身が、自分の欠点や弱点と向き合い、それらを受け入れることが求められます。

自らに欠点や弱点がないと思っているのであれば、それは大きな勘違いです。欠点がない人など存在しません。リーダーがまずは自分自身と向き合い、ありのままの自分を受け入れることで、メンバーの欠点や弱点などにも寛容になることができます。

また、そうした欠点や弱点を部下など他のメンバーに表現することをためらわないことも重要です。誰しも自分の欠点をさらけ出すことには抵抗を感じるものですが、リーダーが率先して自分のウイークポイントを表現することで、他のメンバーとの心理的な壁を取り払うことができるでしょう。

重要なことは、自分にないものを誰かに補ってもらうという感覚や姿勢です。リーダーも完璧ではないため、リーダーに欠けている点は他のメンバーに補ってもらうことで、組織やチームは一段と強くなるという考え方を基礎に置く必要があるでしょう。

そのために多様性を受け入れると捉えれば、ダイバーシティ&インクルージョンと心理的安全性が切っても切り離せない関係であることがわかるのではないでしょうか。

情報や認識の積極的な共有を行う

誰がどのような情報を持ち、どのような認識でいるのか、これらの共有を積極的に行うことで、徐々に心理的安全性の高い状態へと持っていくことができます。

心理的安全性の低い組織では、しばしばメンバー同士が疑心暗鬼になってしまいます。情報や認識の共有が希薄であれば、チーム全員が同じ方向を向いて仕事を進めることすらできません。意思疎通も図れずバラバラの状態では生産性を高めることなどできず、企業としても成長することはできないのです。

誰が何を考えているのかを常に共有することで、腹を割って話す環境や文化を作り出すことができるでしょう。

定期的な会議の開催はもちろん、雑談の場を設けたり、メールやチャットなどでの報告がしやすい環境を整えたりなどを心がける必要があります。リーダーは特に待ちの姿勢ではなく、何か情報や意見、提案はないかをメンバーに積極的に問いかけなければいけません。もしそれらの発信があればポジティブな反応をし、メンバー内でいち早く共有する意識と行動を徹底することも求められます。

自分の意見にも耳を傾けてくれているとメンバーや従業員が感じることができれば、メンバー間での情報や認識の共有もしやすくなるでしょう。徐々に不安や恐怖といった感情が取り除かれていくことで、心理的安全性の確保へとつながっていくのです。

すべての人が意見を言える環境を設ける

会議の開催や設置は、組織やチームであれば当然しているはずです。重要なポイントは、そうした会議において発言の機会を平等に与えることです。会議を開いてもリーダーだけが話して終わりでは、心理的安全性は高まりません。会議などでは多数派も少数派も分け隔てなく全員が意見や提案ができる環境こそが、心理的安全性の確保の土台となります。

その他、1on1ミーティングなども行い、誰がどのような考えを持っているのかをリーダーが把握し、それを必要に応じて共有したり、あるいは解決・解消に向けた取り組みを積極的に行ったりすることも心理的安全性を高めるための重要な取り組みとなります。

発言はポジティブ・根拠・提案を心がける

組織やチーム内で何かを発言するときには、可能な限りポジティブな表現を意識するよう心がけましょう。そのような文化を、リーダーが率先して作り上げることが重要です。

例えば、メンバーの反応が遅かった場合に、「レスポンスが遅い」とだけ表現するよりも、「忙しかったのか」や「あまり深く考え過ぎなくてもいいよ」などと言葉を添えるだけでも、相手の受け取り方は変わってきます。心理的な不安や恐怖が和らいでいくことは間違いないでしょう。

また、相手の意見や発言を否定する際には、必ず根拠を添えることも重要です。理由もなく否定されていては、何も発言したくなくなってしまうでしょう。なぜダメなのか、どこに問題があるのかなどの根拠を指摘することで、誰しもが納得感を得られる実のあるミーティングとなるはずです。

さらに、もし誰かの意見や提案を否定するのであれば、それに代わる提案を明示することも求められます。代案もなく否定してしまう環境では、心理的安全性は高められません。新たな提案が生まれれば、やはり活発な議論のきっかけとなり、さらなるイノベーションが生まれる可能性が高まるでしょう。

こうしたことが当たり前に行われる組織やチームとなれば、たとえマイノリティの立場であっても自尊心や自立心が育まれ、自分の頭で考える能力も養われるため、自然と心理的安全性は高まっていきます。

社内の貢献を見える化し、良い行動を称賛する

心理的安全性は、他者を認め、他者に認められていると感じるメンバーが増えれば増えるほど高まっていきます。

そのため心理的安全性の向上には、良い行動を称賛し合う文化の形成が重要です。

「貢献の見える化」や「称賛文化の形成」には、Uniposなどのツールを活用するのもおすすめです。

Uniposは、貢献したメンバーに対しメッセージと共にインセンティブを送り合うことができ、自然とメンバー同士が他者の貢献に対して感謝し賞賛する文化を作り出すことができます。働くことに対する意欲も湧き、創造性や生産性の向上にもつながると同時に、他者に興味を持つことの重要性にも気づくことができるでしょう。これはつまり、多様性を認めることへと直結します。

社内の貢献を見える化し、良い行動を称賛し合う文化をつくることが、心理的安全性を高めてダイバーシティ&インクルージョンを推進する第一歩となるでしょう。

心理的安全性なしに多様性の受容は実現し得ない

ダイバーシティ&インクルージョン推進に取り組んでいる企業は、社会的な貢献度や注目度も高くなるでしょう。

しかし、多様性を活かすためにまず整えなければならないのは「心理的安全性」です。心理的安全性はダイバーシティ&インクルージョン推進の土台といっても過言ではありません。

多種多様な人たちが単に集まるだけの組織になってしまわないためにも、本当の意味で多様性が活かせる組織を作り上げていくことが求められているのです。

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