社内制度, 働き方, 人材育成/制度, 人材定着・離職 2020.05.29 (最終更新日 2022.02.16) テレワークを迅速に導入するための7ステップ 5. ステップ3:企業内の現状を把握する テレワークの導入前に、自社の現状把握を行いましょう。テレワークに対応可能な人材の確認と合わせ、社内の制度や規則がテレワークにも対応できるかを調べます。 多くの企業では、テレワークの実施に伴う社内のルールは明文化されていないはずです。そのため、現状の制度を変えるべき部分がどれだけあるかを把握する必要があります。 テレワークの実施に伴う、見直しが必要となるの制度や仕組みは以下の通りです。 労働時間の管理制度 人事評価制度 セキュリティに関するルール 労働組合の考え方 テレワークの実施中における、社員の労働時間をどのように考えるかは重要です。また、人事評価制度を運営している場合、人柄重視から成果重視の視点への変更が必要です。 これらについては、7章にて詳しく説明します。 6. ステップ4:導入へ向けた計画の立案 テレワークの導入へ向けての具体的な企画の立案に進みます。テレワークの推進においては、経営層からのトップダウン式で進めるのがよいでしょう。 テレワークの導入は、企業の設立からの歴史を通しても、大きな出来事です。企業としての考え方や社内の働き方を大幅に変える必要性に迫られるのですから、それらを理解している経営層からのトップダウン式のマネジメントが効果的なのです。 経営層の導入意図を理解した管理職が働きかけ、一般の社員層にまで浸透させていきます。 この一連の流れをスムーズにするには、社内でプロジェクトチームを結成するのが理想的です。 チームの内訳として、以下の役職や職種の社員を選定しましょう。テレワークの導入に関係のある、なるべく多くの部門から人材を集めて組織しましょう。 経営企画部門 人事部門、総務部門 情報システム部門、情報セキュリティ部門 導入対象の各部門の代表者 プロジェクトチーム内で入念に準備を進めてからでなければ、社員数の多い企業では混乱を招きかねません。 プロジェクトチームでは、テレワーク導入へ向けた社内ルールの作成に取り掛かります。5章にて説明した、各種社内制度やセキュリティに関する、テレワーク対応のルール作りが急務です。 根本的な社内コミュニケーション不足の問題は、〇〇にあり?!組織の生産性を下げる要因を除く方法とは 7. ステップ5:環境や設備を整える 実際の導入へ向けて、環境や設備を整えていきます。社内のプロジェクトチームを中心に、以下の6つの内容を決めていきましょう。 情報セキュリティ対策を万全にする 導入へ向けたルールの設定 人事評価制度の整備 勤怠管理の設定 テレワーク用の設備を整える コミュニケーションの方法を決める 7−1. 情報セキュリティ対策を万全にする テレワークを行う際には、持ち出し可能なノートパソコンなどを用いて行われることが多くなっています。 社内だけで業務が完結する場合とは異なり、パソコン内のデータや重要な書類が社外に持ち出されるリスクが伴うのです。 特に、ノートパソコンを利用する場合は、スパイウェアに感染したり、端末そのものを紛失するリスクがあることを理解しておきましょう。 特にセキュリティ面では、しっかりと整備されている社内とは異なり、個人の通信環境は脆弱な場合が多くあります。情報の漏洩などにつながらないよう、十分に注意して運用しなければならないのです。 そのため、情報漏洩を防ぐためには、「ルール」「人」「技術」の3つの要素のバランスが取れていることが大切です。 情報セキュリティにおける「ルール」とは 情報セキュリティの扱いについては、社員個人の判断では限界があります。そのため、社内で明文化されたルールを制定し、社員に厳守してもらうのです。社内での勤務とは異なる情報の取り扱いにおいて、しっかりとルールを守ることが、リスクの低減につながります。 情報セキュリティにおける「人」とは いかに適切なルールが定められていても、人である社員が厳守しなければ効果は発揮されません。定めたルールの徹底には、社員への教育や自己啓発の実施が重要といえます。ルールを守る意味を理解することで、フィッシング詐欺などの人為的なトラブルに巻き込まれるリスクを下げられるのです。 情報セキュリティにおける「技術」とは 「ルール」と「人」でカバーできない部分は、「技術」で補完します。情報セキュリティ面の脅威において、「認証」「検知」「制御」「防御」の実施により、システムが自動で適切な対策を行います。 7−2. 導入へ向けたルールの設定 テレワーク導入へ向けた、新たな社内ルールの設定を行います。テレワークを導入した後も、労働基準法等の労働関係法令を守る必要があるからです。 従来の就業規則の変更が必要であれば、対応しましょう。主に、始業と終業、給与、手当などのルールの見直しのほか、テレワークに対応した新たなルールづくりも視野に入ります。 テレワーク時のルールは就業規則本体に規定する方法と、個別に「テレワーク勤務規程」として定める場合があります。 テレワークに関連するルールを変更した場合は、上記のどちらの方法にも関係なく、所定の手続きを行って所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。 7−3. 人事評価制度の整備 テレワークの導入は、働き方だけでなく社員の評価方法をも一変させます。一人離れて作業するテレワークの場合、従来のように上司や同僚による働きぶりの評価ができなくなるからです。 そのため、テレワークを行う社員の人事評価における基準は、「仕事に対する向き合い方や勤務態度」から、「業務における成果」を重視したものにしたほうが、適切な評価が行えるようになります。 また、数値化できる営業職などと比べ、業務の成果を数値化しにくい研究職やクリエイティブ職の場合、同じ条件下での評価が難しいという側面があります。 そのため、評価者である上司と部下との間で評価方法に対し、十分な話し合いを持つことが重要です。ただでさえ仕事中の姿が見えにくいテレワークなので、利用することが評価の面で不利にならないよう、注意しなければなりません。 7−4. 勤怠管理の設定 テレワークを実施する場合、オフィスで勤務するのと同様に勤怠管理を行います。始業時と終業時のタイミングを確認するためにも欠かせません。 テレワーク中の勤怠管理については、メールや電話、勤怠管理システムを用いて行う場合が多いようです。 メールによる報告 多くの企業で導入されており、始業時と終業時の2回に分けて行います。作業日報として1日の報告をメールすれば、進捗状況を部署内のメンバーで共有できます。 電話による報告 始業時と終業時に電話で報告します。上司や勤怠管理者と話す機会があり、体調や不便な点がないかなど、適度なコミュニケーションが取れます。電話とは別に、勤務時間を把握するための記録を取る必要があります。 勤怠管理システムへの打刻 勤怠を管理できるツールです。始業と終業の時刻を打刻するだけで自動的に記録できるため、利便性が高いといえます。部署ごとの社員の勤怠を一括管理できる点がメリットです。 また、テレワーク中に席を立ったり業務を中断したりする際のルールも決めておきましょう。育児や介護と平行して業務にあたっているスタッフへの配慮が必要です。労働時間の管理の面で、しっかりとルール化しておきましょう。 7−5. テレワーク用の設備を整える テレワークを行う際の設備を整えることが重要です。ICT環境を十分に整備しておかないと、セキュリティ面の不安やスムーズに業務を進められないなどのトラブルに直結します。 テレワークにおけるICT環境の構築には、以下の4つのパターンがあります。 リモートデスクトップ方式 オフィス内で業務に使っていたパソコンのデスクトップ環境を、別のパソコンやタブレット端末を使って遠隔操作する方式です。 遠隔操作によりオフィスのパソコンを動かすため、自宅からの情報流出などのトラブルが起こりにくいメリットがあります。導入には特別な設備やコストは不要ですが、常にパソコンの電源をつけておくので、光熱費がかかります。 仮想デスクトップ方式 オフィス内のサーバが提供する仮想デスクトップに対し、自宅にあるパソコンから遠隔でログインする方式です。サーバに直接アクセスして利用でき、作業時のデータはサーバに保存されます。利用するにはオフィス内にサーバなどの設備を整える必要があります。 クラウド型アプリ方式 インターネット上からクラウド型のアプリを使い、場所や端末を選ばずに利用できる方式です。社員からはオフィス内のサーバにはアクセスできません。クラウド上で作業したデータをダウンロードすることが可能です。 導入には特別なシステムは必要なく、インターネット環境さえあればライセンス認証だけで利用できます。 会社のPCを持ち帰る方式 オフィスで利用しているパコソンを自宅に持ち帰り、作業を行う方式です。遠隔操作ができる環境を整えなくても、すぐに業務を継続できます。 ただし、情報漏洩のリスクがつきまとうため、セキュリティ面に注力しなければなりません。セキュリティソフトのインストールや、私的な利用への制限など、スパイウェア対策を講じる必要があります。 また、コワーキングスペースやカフェで作業するために、自宅からパソコンを持ち出すケースがありますが、紛失や他人に画面内の情報を覗かれるなどのリスクがあります 小規模な企業がテレワークを実施する際にもっとも利用される方式ですが、セキュリティ面においては一番注意すべきといえます。 参考:情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書 テレワークの実施には、業務の中心となるパソコンとインターネットの設定だけでなく、利用する社員の危機管理力も問われるのです。 7−6. コミュニケーションの方法を決める テレワークは自宅にて個別で行うため、部署内でのコミュニケーションを従来通りに行うのがポイントです。 顔を合わせて直接相談できる環境にないため、いつも以上に密な連絡を心がける必要があります。特に、文章だけでは言葉の意図まで伝わりにくい場合が多いため、不要な人間関係のトラブルを避けるためにも、対面と同等かそれ以上に丁寧なコミュニケーションを行いましょう。 社員同士の連絡には、チャットなどのコミュニケーションツールを用いるのが効果的です。また、文章だけて伝わりにくい場合は電話やビデオ通話を駆使するとよいでしょう。 会議を行う場合はWEBカメラを用いて、お互いの表情や反応がわかるようにすることで、意思の疎通がスムーズになります。 8. ステップ6:社員への説明会の実施 テレワーク導入の準備が整ったら、実施する社員や部署のメンバーに対して説明会を行いましょう。テレワーク成功の要である情報セキュリティ面に関しては、社員全員に高いレベルで理解してもらう必要があります。 テレワークの説明会では、以下のポイントを押さえながら説明するのが効果的です。 テレワーク導入の目的をしっかりと伝える 関連する社員に対し、テレワークを導入するにいたった経緯と必要性をわかりやすく説明します。対象の社員だけでなく、上司や同僚にも同様の説明を行いましょう。 そうすることで、テレワーク勤務者へのサポート体制の充実が期待できます。 テレワーク実施中の各種制度・仕組みについて理解してもらう テレワーク実施中はオフィスでの勤務とは多くの部分が異なります。業務の進め方は同じでも、勤怠管理の仕組みや周囲とのコミュニケーションの取り方についての勝手が異なるからです。 上司の許可を伴う申請などの仕組みについても、部署内の全社員で共有しておきましょう。 テレワークに必要な端末の操作方法を説明する テレワークを行う際は、パソコンによる遠隔操作など、これまでに経験したことのない試みが多くあります。そのため、テレワークに必要な端末の操作方法を詳しく説明しましょう。テレワーク当日よりも、事前に触れる機会を設けることで、スムーズな実施につながります。 参考:情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書 また、説明会の実施と合わせて、情報セキュリティに関する同意書へのサインを求めるなどの施策も必要です。 情報セキュリティ面で違反が起き、トラブルが発生した場合に備えて、罰則規定を儲けるのもよいでしょう。 社員の一人ひとりが情報セキュリティへ厳守の意識を持つことで、トラブルを未然に防ぎ、企業の信頼を守ることにつながるのです。 9. ステップ7:テレワークの実施とフィードバック 各種ルールの設定と社員への説明を済ませたら、いよいよテレワークの実施です。まずは試験的に導入し、評価すべき点や課題点を明確にしておきましょう。 パソコンの遠隔操作や通常とは異なる労働環境など、社員ははじめての経験でとまどうことが多いかもしれません。 テレワークの実施においては、きちんと効果を検証し、フィードバックを行うことが大切です。 9−1. 実施後にフィードバックを行い改善をめざす テレワークの内容を改善するためには、実施後のフィードバックが重要な意味を持ちます。テレワークを導入するにいたった経緯を踏まえながら、得られた効果と明らかになった課題点を分析するのです。 テレワークの最適な形は企業ごとに異なるため、「量的評価」と「質的評価」の2つを用いて評価を行います。 量的評価の例 項目 観点 顧客対応 顧客対応回数・時間、顧客訪問回数・時間新規契約獲得数、顧客維持件数 情報処理力 伝票等の処理件数、企画書・報告書の作成件数・時間プログラムの作成件数・時間、データ処理数・処理時間問いあわせの処理数・処理時間 長時間労働 所定外労働時間数(減少) オフィスコスト オフィス面積、オフィス賃貸料、オフィス付随費用紙の消費量(削減量)、電気代、コピー費用、オフィス改修コスト 移動コスト 移動時間、移動交通費(通勤、出張等) ICT コスト PC、タブレット等情報機器コスト、ネットワークコスト、クラウド等各種サービス費、ICT 保守・運用コスト 人材確保・育成コスト 新規採用の応募者数・質、離職者数 参考:情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書図表 6-1 量的評価(例) 質的評価の例 項目 観点 業務改革 知識・情報の共有、無駄な仕事の削減、ワークフロー パフォーマンス 業務評価、顧客満足度の向上 コミュニケーション 上司・同僚・部下とのコミュニケーションや会議の質 ワークの質 仕事のやりやすさ、モチベーション、会社に対するロイヤリティ、自律性 生活の質 家庭生活(育児・介護等)、個人生活(自己啓発等)、 社会生活(地域活動等)、健康の維持(睡眠時間等) 全体評価 総合的な満足度、会社に対する満足度、仕事に対する満足度、ワーク・ライフ・バランスの実現 参考:情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書図表 6-2 質的評価(例) テレワークの導入に際し、適切な評価とフィードバックを行うことで、適切な運用が可能になります。より多くの社員に対象を広められるよう、しっかりと分析を行いましょう。 9−2. アンケートでテレワークの実情を把握する テレワークの試験導入にあたって、参加した社員へのアンケートを実施します。アンケートによって本人しか知り得ない、テレワーク中の実情の把握に努めましょう。不満点や改善点だけでなく、効果的だった部分の情報もすくい上げることが大切です。 アンケートとヒアリングの併用で、より詳細な情報の入手が可能になります。インタビューなどで得られた内容は、テレワーク推進のプロジェクトチーム内で協議し、改善していきましょう。 10. まとめ 働き方改革の推進や時代を取り巻く変化など、社会的にテレワーク導入の流れが加速しています。 企業にとっては交通費の負担減や社員の離職率低下、社員にとっては通勤時間の削減やプライベートの充実など、テレワークの実施は双方に多くのメリットが存在します。 導入に際しては、ご紹介した以下の7つのステップを踏んでいきましょう。 ステップ1:導入の目的を明確にする ステップ2:テレワークの対象範囲を決める ステップ3:企業内の現状を把握する ステップ4:導入へ向けた計画の立案 ステップ5:環境や設備を整える ステップ6:社員への説明会の実施 ステップ7:テレワークの実施とフィードバック パソコンによる遠隔操作や情報セキュリティの徹底など、企業規模によっては導入に向けての負担が大きいかもしれません。 しかし、徹底した安全性の確保ができて、はじめてテレワークを実現できるといっても過言ではないのです。 テレワークの導入にあたっては制度を利用する社員だけでなく、その周囲の社員にも理解を深めてもらいながら、実施をめざしていきましょう。 1 2 組織に関する悩みを解消しませんか?改善するためのヒントや実践方法をご紹介! テスト