メンター制度とは?メリットデメリットと事例から学ぶ失敗しない方法

3. エルダー/チューター/ブラザーシスター制度との違い

 

ここで、メンター制度と似ている制度について、整理しておきましょう。メンター制度と混同されやすい制度として「エルダー制度」「チューター制度」「ブラザーシスター制度」があります。

以下は、それぞれの制度の概要をまとめたものです。

エルダー制度
エルダーとは「年上の人・年長者」という意味で、企業でのエルダー制度は新入社員に対するOJT制度を指す。比較的経歴の浅い先輩社員が、新入社員と21組となって仕事をする体制に対して使われることが多い。

チューター制度
チューターとは「個人指導教官」という意味で、チューター制度とは大学の個別指導制度のこと。学生1人〜数人単位に1人の指導教官(チューター)がつき指導を行う。企業では新入社員に教育係がつく制度を指して使われることが多い。

ブラザーシスター制度
ブラザーシスターとは「兄弟・姉妹」という意味で、新入社員と年齢の近い若手先輩社員が担当としてつき、会社に慣れるまでのサポートをする制度のこと。新卒採用の社員が対象になることが多い。

注意点として、それぞれの制度に全国共通の決められた定義があるわけではないので、制度の呼称や運用方法は、企業によってさまざまです。

例えば、本記事で解説しているメンター制度と同じ実態でも「エルダー制度」の名称で運用している企業もあります。

その前提の上でですが、一般的にいわれる違いを下表にまとめました。参考までにご覧ください。

メンター制度以外は対象が新入社員のみですが、メンター制度は若手社員などに対象を広げて運用している企業もあります。

また「実務上は関係のない斜め上の先輩」がメンター役を担いますので、「他部署」の先輩社員が担当することも特徴です。

加えて、他の制度が「早く業務に慣れること」に重きを置いているのに対し、メンター制度では業務とは直接的には関係のない、精神的な側面でのサポートにも注力します。

4. 企業がメンター制度を導入する2つの目的

さて、本章では「そもそも何のためにメンター制度を導入するのか」について触れたいと思います。企業がメンター制度を導入する目的は、どこにあるのでしょうか。

大きく捉えると、次の2つが挙げられます。

新入社員のスムーズな育成
ソフト面が原因の離職防止

それぞれ詳しく解説します。

4-1. 新入社員のスムーズな育成

第一の目的は「新入社員のスムーズな育成」です。たとえるなら、メンター制度は新入社員を育てる上での「潤滑油」です。

上司は、新入社員を業務を通して育成します。ですが、上司1人でフォローできる範囲には限界があることを、実感している方も多いのではないでしょうか。

新入社員がチームに入っても最初は業務上の指導で手一杯。次に挙げるような「会社生活や精神面のサポート」には手が回らないのが、正直なところかと思います。

  • 新入社員が職場で良い人間関係を築くためのサポート
  • 新入社員が抱えている悩みや不安へのきめ細やかな対処
  • 暗黙の了解とされている社内ルールなど今後うまくやっていくための知恵の共有

そんなとき、メンターの先輩社員がいれば、これらをすべてフォローアップすることができます。先輩社員が新入社員の面倒を見てくれることで、上司は業務上の教育に専念することが可能です。

入社したばかりの時期、新入社員は毎日が緊張と不安の連続です。メンター制度があれば、新入社員のストレスを和らげることができ、結果としてスムーズな成長へとつながっていきます

4-2. ソフト面が原因の離職防止

メンター制度を導入するもうひとつの目的は「ソフト面が原因の離職防止」です。

あなたの会社では、どんな理由で離職する社員が多いでしょうか。表向きには「夢を追いかけたい」「キャリアアップのために」「家業を継ぐので」などの理由を述べる社員が多いでしょう。

しかし「転職理由と退職理由の本音」は以下の通りだったという、興味深い調査結果があります。

1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%) 

出典:転職理由と退職理由の本音ランキングBest10

注目すべき点は、1位〜3位の理由が「仕事の仕方」「環境」「人間関係」という、いわば組織のソフト面であることです。この3つだけで離職理由の半数(50%)を占めます。

組織のソフト面のケアは、メンター制度が最も得意とするところです。

  • その会社独自の仕事のやり方
  • 上司・経営者とのコミュニケーションの取り方
  • 職場環境への不満のヒアリング
  • 人間関係を構築するためのサポート

これらをメンターがフォローすることで、新入社員の離職率を大幅に下げることが期待できるのです。

5. メンター制度が企業にもたらす5つのメリット

実際にメンター制度を導入したら何が得られるのでしょうか。

「メンター制度による具体的な成果」を確認したい方のために、本章では「メンター制度が企業にもたらす5つのメリット」を解説します。

5-1. 新入社員が戦力になるスピードがアップ

1つめのメリットは「新入社員が戦力になるスピードがアップする」ことです。

今までに、あなたの会社で迎え入れた新入社員のことを思い出してみてください。すぐに職場に慣れて即戦力となった人もいれば、慣れるまで何ヶ月も要した人もいるでしょう。

「新しく入社した社員が、早く職場に慣れて戦力になってくれるかどうか」は、企業にとって重要な問題です。メンター制度を使えば、このスピードを意図的に速められます。

というのも、「職場に早く慣れるために必要な、業務以外のこと」を、メンター制度を通じて効率的に学ぶことができるからです。

それは例えば、以下のようなものです。

  • その会社での効率的な仕事の進め方を学ぶ
  • チームのメンバーと仲良くなる
  • 上司との適切なコミュニケーションの取り方がわかる

今までは、新入社員が空気を読みながら時間をかけて学んだ事柄も、メンターの先輩社員がフォローすれば素早くマスターできます。

5-2. 組織のヨコのつながりが強化される

2つめのメリットとして、「組織のヨコのつながりが強化される」ことが挙げられます。

「メンターは直属の上司ではなく斜め上の先輩」という原則があることをお伝えしました。これはつまり、部署・チームを超えた【メンターメンティ関係】が、組織の中に多数生まれるということです。

 

仕事上では絡むことのない社員同士がメンター制度を通じて関係を深めていくので、組織のヨコのつながりが強化されていきます。

今までは対立していた部署間であっても、
「メンティの後輩がいるから、助けたい」
「お世話になったメンターの先輩がいるから、恩返ししたい」
と、組織全体のチームワークが良くなっていきます。

メンター制度は新入社員のフォローのみならず、「組織全体の強化」にも効用があるのです。

5-3. 企業文化や風土が伝承できる

3つめのメリットとして、「企業文化や風土が伝承できる」ことも見逃せません。メンター制度は「明文化されていない、その組織特有の空気感」を伝えるのに適しています。

  • DNAとして新入社員に受け継ぎたい価値観
  • 仕事への取り組み姿勢
  • その会社の人間としてどうあるべきか

など、メンター制度を通じて「その会社特有のらしさを新入社員に伝えることができます。これらは、上司から伝えるよりも、新入社員に立場の近い先輩から伝えた方が、スムーズに浸透しやすい事柄です。

5-4. メンター自身の成長につながる

4つめのメリットは、少々意外かもしれませんが、「メンター自身の成長につながる」ことです。

メンター役を担う先輩社員は、後輩社員であるメンティに「教える・サポートする」立場になります。

人には「誰かに教えることで、教えた自分の方が急速に成長する」という一面があることを、経験則的に感じている方も多いでしょう。

業務上は部下を持っていない若手社員でも、新入社員のメンター役を引き受けることで「教える」立場を経験することができます。

成長してほしい若手にあえてメンター役を依頼することで、メンター自身の成長を促すこともできるのです。

5-5. 厚生労働省から助成金がおりる

最後に、5つめのメリットとして「厚生労働省から助成金がおりる」ことをご紹介しておきましょう。メンター制度は、厚生労働省でも推奨している制度です。

新たにメンター制度を導入することで最大72万円の助成金を受給できる可能性があります。対象となる助成金の名称は「人材確保等支援助成金」です。

詳しくは「『メンター制度の助成金』最大72万円を確実に受給する方法と注意点 」の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

6. メンター制度が抱える2つのデメリット

一方、メンター制度にはデメリットもあります。メンター制度の導入前にデメリットを理解できていないと、トラブルの原因となりますのでご注意ください。

本章では、メンター制度が抱えるデメリットを2つ、解説します。

6-1. メンターの負担が増える

1つめのデメリットは「メンターの負担が増える」ことです。この負担には「時間的な負担」「心理的な負担」の両方が含まれます。

先輩社員側の視点から見れば、メンター役を依頼されることは「通常の業務に加えて、メンティ(新入社員)の面倒を見なければならない」状況となります。

メンタリング(面談)の時間確保はもちろんのこと、それ以外でも、メンティから相談を受ければ対応しなければなりません。

「メンター役としての仕事に時間を取られて、通常業務が終わらずに残業」は、実際の運用上よく見かけるパターンです。

さらに心理的な負担も見逃せません。メンター制度は「メンターとメンティの11の人間関係」を土台とする制度です。

このような人間関係を築くのが得意な人もいれば、不得意な人もいます。不得意な人がメンター役を指名されれば、メンター側が大きなストレスを抱える場合もあります。

6-2. メンターの選び方が難しい

2つめのデメリットは「メンターの選び方が難しい」ことです。メンターを選ぶときには、メンティ(新入社員)と相性が良いメンター(先輩社員)を選ばなければなりません。

メンターとメンティのバックグラウンド、年齢、性格などの諸条件を考慮して組み合わせを決める必要があります。

さらに、メンターを引き受ける社員の時期的なタイミング(業務量や心理的な状況)も見極める必要があります。一人にメンター役が集中するのも避けなければなりません。

人間関係をベースにした制度なので一筋縄ではいかない局面も多く、難しさを感じることは多いかもしれません。

この問題をクリアするためには、メンター制度を導入する際に、メンター選定のルールを定めて運用することが重要になります。その方法は、後ほど「8. メンター制度の導入ステップ」の章でご紹介します。

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