メンター制度とは?メリットデメリットと事例から学ぶ失敗しない方法

7. メンター制度の導入で大きな効果が期待できる企業とは?

メンター制度のメリット・デメリットを見比べながら、
「うちの会社では、メリットとデメリット、どちらが大きいのかな?」
と迷っている方もいらっしゃるでしょう。

本章では「メンター制度の導入で大きな効果が期待できる企業」について、触れておきます。結論からお伝えすると、以下の2パターンの企業には、メンター制度の導入がおすすめです。

人間関係の問題で離職率が高い
業務だけでは伝えきれない社内風土がある

7-1. 人間関係の問題で離職率が高い

まず、メンター制度の導入で目に見える成果が得やすいのは、「人間関係の問題で離職率が高い」企業です。メンター制度の導入により、離職率が大幅に下がる可能性があります。

特に、次のような状況ではダイレクトな効果を実感しやすいでしょう。

  • 性格的にクセのある管理職がいて、新入社員とぶつかりやすい
  • 厳しくあたる古参社員に、新入社員が負けてしまう
  • 社員同士の仲が良すぎて、新入社員が入りにくい雰囲気がある

もちろん、本来は問題のある管理職や古参社員側の態度を改善すべき状況です。しかし、改善を促してもなかなか変わらないのが現実……というケースもあるのではないでしょうか。

そんなときでも、新入社員のそばに寄り添い理解してくれる先輩社員(メンター)がたった一人いるだけで、離職率は大きく変わるものです。

7-2. 業務だけでは伝えきれない社内風土がある

2つめは「業務だけでは伝えきれない社内風土、DNA、価値観などがある」企業です。例えば、採用人数を増やした後に、次のような課題に直面したことはありませんか。

  • 新しい社員が増えて「うちの会社らしさ」がなくなってしまった
  • 取引先から「最近なんだか雰囲気が変わりましたね」と言われた

新しい人材が会社に入ることで、組織の雰囲気が変わること自体はよくあります。好転的な反応であれば、歓迎すべきことです。

しかし一方で、その会社らしさとして継承すべき価値観や、ビジネス上の強みとしてきた良い雰囲気が失われるのは、避けなければなりません。

「業務だけでは伝え切れない、会社にとって大切なことを伝承したい」というシーンで、メンター制度は打開策となるでしょう。

8. メンター制度を導入している企業の事例

メンター制度は、実際にどのように運用されているのでしょうか。ここで「メンター制度を導入している企業の事例」を2社、ご紹介します。

各企業がどんな狙いで、どんなメンター制度を展開しているのか、参考にしてみてください。

8-1. 株式会社メルカリ

出典:メルカリ

最初にご紹介するのは株式会社メルカリです。メルカリは急成長に伴い積極的な採用活動を行っていますが、特に海外メンバーの入社が多いのが特徴的です。

そんな状況に対応するため、メルカリにはオンボーディング(人材定着プロセス)の部門があり、数々のユニークな施策を行っています。そのひとつがメンター制度です。

メルカリに新たに入社するメンバーは「Merookie(メルーキー)」と呼ばれ、Merookieにはメンターがつきます。新卒メンバーが入社する月には「メンター研修」が実施され、メンターとMerookieがペアでワークショップを行います。

以下は、メルカン(メルカリメンバーによるブログ)からの引用です。

研修のメインコンテンツは、メンターとMerookieがペアで行うワークショップ。自己紹介から始まり、人生で一番感謝していること、自分がどのような人生を歩んできたかの共有、そして、なぜメルカリに入社したか・どういった挑戦をしたいかなど、仕事に対する価値観を話しました。 

後半は、先輩外国籍メンバーによるパネルディスカッションを実施。日本で働く上で直面した課題や、困ったときにメンターや同僚にどのようにサポートをしてもらうと良いかなど、Merookiesとメンターそれぞれに対し実体験に基づくアドバイスを行いました。
出典:メルカン

ワークショップを利用して「価値観ベース」の対話を増やす仕掛けや、ディスカッション形式で実体験に基づくアドバイスを促していることがうかがえます。

軸足は「メンターとメンティによる自主的な対話」に置きつつ、それが促進される仕組みを設計している点が秀逸です。

この他に、メルカリのメンター制度で特徴的なのは「メンターランチ制度」です。メンターランチ制度とは、メンターが、Merookieやメンターの所属チームはもちろん、他にも関わりのあるチームとのランチを設定するというものです。

ちなみにこのランチ代はすべて会社負担。毎回メンターランチを楽しみにしているMerookieが多いそうです。

メンターランチ制度に近い制度を実施していても、ランチ代の負担まで行っている企業は少ないのではないでしょうか。ここにも、メルカリの「人材定着」に対する本気度が見受けられます。

8-2. キリン株式会社

出典:キリン

次にキリン株式会社の事例をご紹介します。キリンでは、新入社員の定着ではなく、女性社員の離職防止とキャリア支援を目的にメンター制度を導入しているのが特徴です。

2006年より発足した社内組織「キリンウィメンズネットワーク」が、女性の活躍とネットワークづくりを積極的に支援する活動を開始。その中で重要な役割を担っているのがメンター制度です。

女性総合職の継続就業と女性経営職のキャリア支援を目的に、役員とのメンタリングを経験した女性経営職が次のメンターになっていく「メンタリング・チェイン」の仕組みを展開しています。

狙いは、キャリアビジョンが描けない理由として挙げられるロールモデルの不在や、周囲に相談できる人の不足への対応です。メンタリングによって新たな気付きや心的サポートを受けるだけではなく、具体的に継続就業や管理職意向の向上へ結びついています。

例えば、女性リーダー数の推移は、以下の通り伸長しています。

参考:女性の活躍推進|多様性の尊重|CSV活動|キリン

キリンのメンター制度のユニークな点は、「メンタリングを経験した女性が、また次の人のメンターになっていく」というチェーン式の仕組みです。

「同じ経験をしたからこそわかる女性ならではの悩み」を、自分がメンターに支援してもらったようにまた後輩を支援していく。そのサイクルが、組織全体に好影響を与えています。

参考:キリンメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル

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9. メンター制度の導入ステップ

「メンター制度を導入したい」と考えている方のために、本章では「メンター制度の導入ステップ」をご紹介します。

以下が基本の5ステップです。

順に詳しく解説します。

9-1. ステップメンター制度の対象者を決める 

ステップ「メンター制度の対象者を決める」ことです。

メンター制度の対象者は、一般的には「これから入ってくる新入社員」ですが、「すでに入社している若手社員」まで範囲を広げ、メンター制度導入前の入社組までサポートすることもできます。

制度導入の目的に照らし合わせて、最適な対象者を検討してください。同時に「いつまでメンター制度でサポートするか」の期限も、明確に定めておきましょう。

メンター制度におけるメンターとメンティの関係性は、永久に継続させるものではありません。明確な期限がないとメンターの負担が大きくなりますので、期限はあらかじめ設定するようにします。

一般的には1年〜3年以内を期限とするケースが多く見られます。さらに短く「試用期間の3ヶ月が終わるまで」といった運用をしている企業もあります。

9-2. ステップメンタリングの頻度や内容を決める

ステップ「メンタリングの頻度や内容を決める」ことです。

「メンター制度の対象者に対して、メンターが何をするか」を決めます。

メンタリング(面談)はどれくらいの頻度で何回行うのか、そのタイミングはいつにするのか、またすべてのメンティに共通にして必ず教える内容を明確にします。

面談によるメンタリング以外にメンターが行うべき支援があれば、それもルール決めしておきましょう。例えば、メルカリの「メンターランチ制度」やサイバーエージェントの「不定期飲み会」がそれにあたります。

ここで重要なのは、メンター個人の力量だけに支援の質が左右されないよう、具体的な仕組みを制度の運用に組み込んでおくことです。

9-3. ステップメンターの選定と変更のプロセスを決める

ステップ「メンターの選定と変更のプロセスを決める」ことです。

メンターの選定は誰がいつまでにどんな基準で行うのか、また途中でメンターを変更する場合には、どんな手順を踏めば良いのかを明確にします。

新入社員をメンティ対象者とする場合は、メンターの選定を入社準備のプロセスに組み込んでおくと良いでしょう。

もうひとつ、盲点となりやすいのが「メンター変更」についてのルール決めです。メンターとメンティの関係性がうまくいかない場合、どのようなプロセスを踏めば変更できるのか、あらかじめ決めておきましょう。

9-4. ステップメンター用マニュアルを作成し研修を実施する

ステップ「メンター用マニュアルを作成し研修を実施する」ことです。

初めてメンター制度を導入する企業では、まず「メンターとは何なのか?」「メンターの心得」といったメンターに関する基本知識の研修が必要です。

その上で、自社のメンター制度のマニュアルに基づき「メンター制度」自体の解浸透を図る必要があります。

社内マニュアルを作成する上では、メンターに関する書籍や資料を参考にすることをおすすめします。詳しくは、この後ご紹介する「8. メンター制度の参考書籍・資料」をご覧ください。

9-5. ステップメンター活動実績の評価方法を決める

ステップ「メンター活動実績の評価方法を決める」ことです。メンター制度がうまく機能しているのかどうか、評価する仕組みをあらかじめ設計しておきます。

具体的には、新入社員の離職率を計測したり、メンター・メンティへのアンケート調査で満足度を測ったりといった方法があります。

評価の結果、問題点が見つかれば改善し、自社に適したメンター制度へと練り上げていきましょう。

10. メンター制度がうまくいかない4つのケースと解決策

導入後、メンター制度がうまくいかない原因には、どのようなケースが考えられるのでしょうか。また、どう解決したら良いのでしょうか。

本章では「メンター制度がうまくいかない4つのケースと解決策」をご紹介します。

10-1. 新入社員とメンターの相性が悪い

最も多くみられるのが「新入社員とメンターの相性が悪い」ケースです。

メンター制度のデメリットの章でもお話しましたが、メンター制度は「メンターの選び方が難しい」という問題を抱えています。メンターとメンティの相性を見極めて、適切なマッチングを行うよう努めなければなりません。

しかしながら、社員数の少ない中小企業では、そもそもメンターのなり手の人数が限られています。マッチングの精度を高めることが難しいケースもあるでしょう。

現実的な対策としては、以下の2つを意識してください。

メンターとメンティの相性にかかわらずメンター制度の効用が得られるように、メンターマニュアルの精度を高める
相性が悪かった場合のメンター変更プロセスと、メンター・メンティ双方へのフォロー方法を決めておく

メンターもメンティも人間ですから、メンター制度を運営する以上「相性問題」をゼロにすることは難しいのが現実です。「もし相性が悪かった場合には、どうリカバリーするか?」という発想で対策しておくことが必要です。

10-2. メンターが上司に近い

2つめのケースは「メンターが上司に近い」場合です。

本記事の前半で「メンターは利害関係のない斜めの関係」から選出するという原則をお伝えしました。

しかし、メンティから見て斜めの関係であっても、「自分の上司とメンターの距離が近い」「上司とメンターの仲が良い」というケースの場合、メンティはメンターに心を開きにくいものです。

「メンターに相談したことが、上司に筒抜けになっているのでは?」と不安になってしまうからです。

注意点として、このような関係性のメンター選出がNGというわけではありません。「将来の幹部候補の養成」「若手社員のスキルアップ」など、目的次第では意図的にこのようなメンター選出を行うこともあります。

しかし、特別な意図がなく、新入社員の定着を図るためのメンター制度であれば「メンティよりも数年程度の先輩社員」が好ましいでしょう。

10-3. メンターと上司が対立している

2つめのケースとは逆ですが、「メンターと上司が対立している」場合にも、メンター制度がスムーズに機能しにくくなります。

というのは、メンティが自分の上司とメンターの間で板挟みになるリスクがあるのです。「上司とメンターの言っていることが違う」となれば、無用に新入社員を混乱させてしまいます。

まして、新入社員が派閥争いに巻き込まれるようなことがあっては、メンター制度の意味がまったくありません。

メンターは、メンティの上司に協力的で、一緒にメンティを育てていく意識を持てる人を選びましょう。

10-4. メンターが1人に集中する

最後に「メンターが1人に集中する」というケースをご紹介します。

メンター役を担う社員のメンタースキルは、社内マニュアルや研修の工夫で向上させることができます。しかし、人それぞれの個性として「メンターが向いている人」「向いていない人」が存在するのは事実です。

例えば、以下の人はメンター向きの性格です。

  • 兄貴分・姉御肌で面倒見が良い
  • 人と1対1の関係性を築くのが得意
  • コミュニケーション能力が高く他の部署への顔が広い
  • 悩み相談を受けるのが苦にならない

メンター適性のある人にメンターを依頼しようとすると、どうしても特定の人へ集中してしまう傾向があります。また、メンティの上司となる人から「ぜひ、●●さんにメンターをお願いしたい」とリクエストが集中するケースも見られます。

しかし、前述の通り、メンター役には時間的・心理的な負担があるため、負荷が大きくなりすぎないよう配慮しなければなりません。

さらに、メンター制度には「メンター自身の成長につながる」側面があることに着目すれば、できるだけ幅広い社員に経験させたいところです。

対策として、次のようなルールを決めて、メンター役を分散させながら運用しましょう。

<メンターの集中を避けるルール例>

  • すべての社員が入社後3年以内に1回以上メンターを引き受ける
  • 1度メンターになったら次回まで1年以上の期間を空ける

11. メンター制度の参考書籍・資料

最後に、より良いメンター制度の導入のために役立つ書籍および資料を2つ、ご紹介します。

『メンタリング入門』
『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』

11-1. 『メンタリング入門』


出典:Amazon

まずご紹介したいのが渡辺 三枝子・平田 史昭著『メンタリング入門』です。

「メンターとは何なのか」「企業がメンター制度を導入する上で何に気をつければ良いのか」など、メンターに関する濃密なエッセンスが詰まった名著です。

文章は平易で読みやすく、初めてメンター役を引き受ける社員がメンターについて勉強する本としても適しています。

「メンターになるメリット」「よいメンターになるには」という章があり、メンターとして何をすべきなのかヒントを与えてくれる本です。

11-2. 『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』


出典:厚生労働省

次に、厚生労働省のホームページで閲覧できる『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』も参考になります。

「女性社員の活躍を推進するための」メンター制度、という枕詞が付いているのですが、メンター制度の解説は、男性・女性関係なく読める内容になっています。

例えば、メンター制度の導入について書かれた章の目次を引用すると、以下の通りです。


出典:メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル

メンター制度の設計前に一読することで、より深い理解が得られます。

12. まとめ

メンター制度とは、先輩社員が後輩社員と1対1のペアになって、会社生活を送る上でのさまざまな支援を行う企業の仕組みです。

直属の上司部下の関係では補い切れない、「先輩後輩の関係性」を利用した社員へのサポートを制度として意図的に行うのがメンター制度の特徴です。

その導入目的は、新入社員のスムーズな育成ソフト面が原因の離職防止 が挙げられます。

メリット・デメリットは以下の通りです。

人間関係の問題で離職率が高い企業や、業務だけでは伝えきれない社内風土がある企業は、メンター制度の導入で大きな効果が期待できるでしょう。

メンター制度の導入は以下の5ステップで行います。

メンター制度がうまく行かないケースとして、以下の4つが挙げられます。事前に対策をしておきましょう。

 

メンター制度について、より深く学びたい方には『メンタリング入門』『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』がおすすめです。

メンター制度は人材の定着はもちろんのこと、メンター自身の成長を促したり横のつながりを強化したりと、組織に対して非常に広範囲で好影響を与える制度です。

制度の設計や運用の手間はかかりますが、多くの企業にとって価値のある制度といえます。ぜひ導入を検討してみてください。 

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