3Kから「奇跡の職場」への大変革! 世界が注目する新幹線清掃チームをつくりあげた組織マネジメントとは

 

・2021年2月18日開催

・タイトル:「ハーバードも絶賛!奇跡の新幹線清掃チームをつくった経営者が語る 一流の現場力を育むマネジメントとは」

・登壇:合同会社おもてなし創造カンパニー代表 矢部輝夫氏、Fringe81株式会社 執行役員 兼 Uniposカンパニー社長 斉藤知明

今後のウェビナー情報はこちらよりご確認いただけます

https://unipos.peatix.com/view

新幹線の清掃業務を専門とするTESSEIは、かつて多くの課題を抱えていました。従業員の定着率が低く、事故やクレームも多発しており、いわゆる「3K」と呼ばれるような職場だったといいます。

そんなTESSEIを究極の「おもてなし集団」へと変革した人物が矢部輝夫氏です。その取り組みは世界でも注目を集め、ハーバード大学やスタンフォード大学の講義でも取り上げられています。

コロナ禍をはじめとする急激な変化を受けて疲弊する企業にとって、TESSEIの組織マネジメントは大きなヒントになるでしょう。

今回、2月18日にUniposウェビナー「ハーバードも絶賛!奇跡の新幹線清掃チームをつくった経営者が語る 一流の現場力を育むマネジメントとは」を開催。元TESSEI専務取締役で合同会社おもてなし創造カンパニー代表の矢部輝夫氏をお招きし、個人と組織の力を最大限引き出すマネジメントについてご講演いただきました。

グループ会社の“お荷物”から“奇跡の職場”へ

TESSEIはJR東日本グループの新幹線清掃会社です。従業員はパート社員を含め901名、平均年齢は50歳となっています。

実はTESSEIは2005年以前まで「JR東日本ももて余し気味の評判の悪い会社だった」と矢部氏は振り返ります。

従業員のモチベーションは低く、定着率も上がらず、クレームが多発する、そんな組織だったそうです。

しかし、2005年に矢部氏がTESSEIに入社してから、組織は大きく変わりました。従業員は生き生きと働くようになり、定着率も上昇、顧客からの評価も高まり、収益にも好影響が現れました。現在、たった7分間で新幹線の清掃を完了するTESSEIの清掃技術は「7 minute miracle」と呼ばれ、世界から注目を集めています。

なぜTESSEIは生まれ変われたのでしょうか。

キーワードとなるのが「おもてなし経営」です。

ここでいう「おもてなし」とは、スタッフをおもてなしすること。すなわち、従業員が仕事に誇りを持ち、やりがいを感じ、喜びを得られるような職場をつくることに矢部氏は尽力したのです。

とはいえ、それは決して簡単なことではありませんでした。

なぜなら、顕在化している問題の奥には、その問題を生むに至ったさらに多くの課題が蓄積されていたからです。そこで矢部氏はまず、問題の本質を解き明かすことにしたといいます。

「見えている多くの問題には必ず核となる問題があり、そこから派生しています。問題が発生した理由や背景を把握し、“問題のモグラたたき”から脱却して根本から解決すべきだと考えました」(矢部氏)

矢部氏によると、TESSEIが抱えていた核となる問題は大きく2つ。まず、会社やリーダーがスタッフのがんばりに対して無関心だったことから、スタッフの間に無力感が蔓延してしまい、「与えられた仕事だけを淡々とこなす」状態になっていたこと。

そして、世間での清掃業務のイメージがいわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」であり、スタッフが自分の仕事に対して自信を持てなくなっていたことです。

この2つこそが、TESSEIに生じる様々な問題を生み出している核だと判断した矢部氏は、あらゆる手段を用いて解決に臨みました。

「まず、仕事の再定義をおこないました。我々は単なる“清掃のおばさん、おじさんの会社”ではなく、“新幹線清掃を提供するサービス業”と定義したのです。そして、サービス業なのだから、CS(お客さま満足度)を求めていくべきだとスタッフに伝えました」(矢部氏)

もちろん、TESSEIではこれまでもスタッフにCSの向上を求めてきました。しかし、うまくいかなかったのです。それは、「EC(従業員満足度)を忘れていたからだ」と矢部氏は考えました。

「従業員満足度を高めるには給料を上げることも大事です。実際に給料も上げましたが、ただそれだけでは限界があります。給料だけでなく、スタッフが仕事の意義を見出して、誇りと生きがいを持って働けることが従業員満足度を高めるために重要だと考えました」(矢部氏)

そこで矢部氏は、仕事の再定義に続いて、商品の再定義もおこないました。すなわち、TESSEIの商品とは単なる清掃ではなく、「お客さまに思い出を提供すること」だと示したのです。

こうした矢部氏の取り組みが、スタッフの認識を変化させていきました。

象徴的だったのはスタッフの言葉です。

「私たちの職場は新幹線という“劇場”です」

あるとき、そんな言葉がスタッフから自然と出てきたといいます。

劇場という言葉には、「新幹線はお客さまと自分たちがシーンを共有するステージである」という思いが込められています。

この言葉を聞いたとき、矢部氏は「スタッフ自身が仕事を再定義できた」と確信したそうです。

ミドルクラスマネージャーを徹底的に“鏡育”

根本的な組織課題を解消した矢部氏は、次に組織づくりに着手しました。矢部氏は、組織を動かすエンジンとなるのはトップとスタッフをつなぐミドルクラスのマネージャーであると考え、ふさわしい人材の発掘と育成をおこなっていきました。

ミドルクラスマネージャーを育てる上で、矢部氏が意識していたのは教育ならぬ“鏡育”だといいます。

鏡育とは、「スタッフは自分自身の鏡である」という考え方です。

「たとえば、“部下が言うことを聞いてくれないので、矢部さんから叱ってください”と言ってくるマネージャーがいました。そのマネージャーに私は、“あなたの姿や考え、働き方をスタッフは見ている。あなたの姿がスタッフという鏡に映っている”のだと伝えました」(矢部氏)

部下が熱意を持って仕事をしていないのであれば、それはマネージャーに熱意が足りないからであり、部下が言行不一致なのであれば、それはマネージャーが言行不一致の姿を見せてしまっているからなのです。

すなわち、鏡育とは「セルフマネジメント教育」ともいえます。

「自分自身もマネジメントできない人間が、他人をマネジメントできるわけはありません」(矢部氏)

また、矢部氏はTESSEIの組織文化についても改革を進めていきました。

「たとえばスタッフが100人いて、そのうち1人がミスをしたとします。それですべての成果が0になると思いがちですが、それは残りのちゃんとやっている99人のことを忘れてしまっているのです」(矢部氏)

そこで矢部氏は「エンジェル・リポート」という施策に取り組みました。1チームにつき1名を「エンジェル・リポーター」に任命し、社内やチームで見聞きした「いいこと」だけをまとめて報告させたのです。「いいこと」には基準を設けず、エンジェル・リポーターの判断に任せました。そして、リポートされた人と、よくほめていた人には褒賞と表彰をおこないました。

この施策により、社内には「スタッフ同士が認め合う」カルチャーが根付いていったといいます。誰かが見てくれているという思いはスタッフの安心感や信頼感を高め、TESSEIが飛躍する強力な推進力となりました。

“奇跡”と称されるまでになったTESSEIの「7 minute miracle」ブランドは、こうしてできあがっていったのです。

スタッフが主体性を持てばトップが替わっても問題ない

矢部氏の講演を受けて、斉藤は「鏡育」というキーワードに着目。「現場やミドルクラスマネージャーだけでなく、もっと上の層にとっても、矢部さんが“鏡”になったのでは」と分析しました。

その上で、「とはいえ、組織の中には、いかんともしがたい人もいたのでは。どのように対処をしたのか」と質問。

この問いに矢部氏は「一番変わらなかったのは、本社の部長や課長だった」と苦笑しつつ、「いきなり全員のモチベーションを上げるのは無理。100人いたら、まずはその中の5人でいい。その人たちに自分の思いを伝えて、どんどん進めていった」と当時を振り返りました。

一方で、ミドルクラスマネージャーについてはしっかりとバックアップをおこなったとのこと。「人間は組織で動くもの。リーダーやまわりが動いていくと、それまで反対していた人もいつのまにかついてくるようになる」と考えを述べました。

また、「矢部さんがいなくなったらTESSEIは大変なんじゃないか」と言われることに対しては、「ミドルクラスマネージャーが主体となり組織が動く仕組みを作ったのだから問題ない」と見解を示し、「社長が替わったからどうこうではなく、その変化の中で自分たちは何をするのかという主体性をスタッフが持つことが大事」だと語りました。

さらに、TESSEIの改革がイノベーションだと呼ばれることについては、「イノベーションというと技術革新のイメージだが、技術革新はそう簡単に起きるものではない。今あるものを、新しい視点で変えていくこともイノベーションの1つであり、それを実現したのがTESSEI」だと述べました。

この点について斉藤も同意を示し、「技術はまねできても現場力はまねできるものではない。カルチャーはコピペできない。それがTESSEIの強み」と称賛しました。

* * *

問題だらけだった組織を改革し、世界から注目される「おもてなし集団」へと育て上げた矢部氏。その背景には、仕事の再定義やミドルクラスマネージャーの“鏡育”、そして認め合う文化の醸成といった様々な取り組みがありました。

組織マネジメントに行き詰まっている企業にとって、TESSEIの“奇跡”は多くの学びをもたらしてくれることでしょう。

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挑戦する組織をつくるための「Uniposウェビナー」とは

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働く仲間同士、異なる部門同士、企業と個人が相互理解を深めたら、組織はもっと強くなる。「あなたの組織を一歩前へ進めるUniposウェビナー」は、変化に対応できる強くしなやかな組織をつくるためのウェビナー。コロナ危機をきっかけに2020年5月開始し、毎回数百名の方にご参加いただいています。

組織課題解決やSDGsのプロ、識者、実践者を毎回ゲストにお呼びし、予測不可能な時代を生き抜く組織のあり方を共に考え、実践のヒントをお伝えします。みなさまお誘い合わせの上、お気軽にご参加下さいませ。

▼過去ウェビナー参加者様の実際の声

「経営陣や上層部に対してのアプローチに悩みを持っておりましたが、今回の講演で素敵なヒントをいただくことができました。どうもありがとうございました。​」

「今まで何度か同テーマのセミナーに参加しましたが、​一番腑に落ちる内容が多いセミナーでした。 ​又、参加させて頂きたく思います。」​

「いまプロジェクトを担当していますので本当に助かりました。」​

「いくつものヒントをいただけて、同じように悩んでいる方が大勢いることもわかりました。今は、さぁどこから手をつけようか、と前向きに考えています。」​

「目から鱗で感動しました。」

<今回の登壇者プロフィール>

合同会社おもてなし創造カンパニー代表 矢部輝夫氏

1966年、日本国有鉄道入社を皮切りに、40年間鉄道人として勤務。その間、安全の専門家として様々な業績をあげた。2005年、鉄道を退職後、新幹線の清掃業務を専門とするTESSEIに入社。従業員の定着率も低く、事故やクレームも多かった新幹線の清掃会社をおもてなし集団へと変革。2015年、「おもてなし創造カンパニー」を設立し代表となり、現在に至る。その取組みはハーバード大学、スタンフォード大学で講義されるなど国内外から注目されている。

著書に『奇跡の職場 新幹線清掃チームの働く誇り』、『まんがハーバードが絶賛した新幹線清掃チームのやる気革命』がある。

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