コロナ禍を経て組織マネジメントはどうあるべきか ワーク・ライフ・バランスの第一人者、佐々木常夫氏が語る

・2021年2月10日開催

・タイトル:「組織と個を強くする働き方改革 共創力を高める組織マネジメント」

・登壇:株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表 佐々木常夫 氏、Fringe81株式会社 執行役員 兼 Uniposカンパニー社長 斉藤知明

今後のウェビナー情報はこちらよりご確認いただけます

https://unipos.peatix.com/view

コロナ禍の影響もあり、働き方はめまぐるしく変化しています。テレワークが普及し、ジョブ型雇用が着目され、管理職の役割は変わりつつあります。コロナ禍を経て、組織と個人の関係性はあらためて見直され、再構築される時が訪れています。

今回、2月10日にUniposウェビナー「組織と個を強くする働き方改革 共創力を高める組織マネジメント」を開催。東レ取締役や東レ経営研究所社長、内閣府の男女共同参画会議議員を歴任した佐々木常夫氏をお招きし、働き方改革の本質を紐解くとともに共創を生み出すための組織マネジメントについてご講演いただきました。

ワーク・ライフ・バランスを実践するための「10ヶ条」

佐々木常夫 氏は現代における「ワーク・ライフ・バランス」のシンボル的存在とも評される人物です。1969年に東レに入社し、主に繊維事業で辣腕を振るいました。

    2001年には取締役 経営企画室長、2003年には東レ経営研究所 社長に就任し、東レ3代の社長を支えた佐々木氏。現在はその独自の経営観を生かし、マネージメント・リサーチ社の代表としてご活躍です。

佐々木氏は持病を持つご家族を支えながら、常に仕事にも全力で向き合ってきました。会社では約3年おきに異動を繰り返し、子会社の再建や海外事業の拡大を任されるなど多忙を極めていましたが、そんな中でもご家族に献身的に寄り添い続けました。

仕事と家庭を両立させるポイントとして、佐々木氏が守り続けている「10ヶ条」は次の通りです。

1.計画主義と重点主義
仕事の計画策定と重要度を評価する。
すぐに走り出してはいけない。

2.効率主義
最短コースを選ぶこと。

3.フォローアップの徹底
自らの業務遂行の冷静な評価を行い、次のレベルアップにつなげる。

4.結果主義
仕事はそのプロセスでの努力も理解するが、その結果で評価される。

5.シンプル主義
事務処理、管理、制度、資料、会話はシンプルを以って秀とす。

6.整理整頓主義
仕事の迅速性につながる。

7.常に上位者の視点
自分より上の立場での発想は仕事の幅と内容を高度化する。

8.自己主張の明確化
しかし他人の意見を良く聴くこと。

9.自己研鑽
向上心は仕事を面白くする。

10.自己中心主義
自分を大切にするということは人を大切にするということ。

また、佐々木氏が強調するのは、タイムマネジメントの重要性です。

「タイムマネジメントとは時間の管理ではなく仕事の管理であり、“もっとも大事なことは何か”を正しくつかむことです。たとえば、私は全体会議はなるべくしないようにしていました。そのかわり、テーマに沿った5分程度の少人数会議を頻繁におこなっていました」(佐々木氏)

タイムマネジメントの極意として、佐々木氏は3つの仕事術を挙げます。

まず、「計画先行・戦略的仕事術」です。最初に全体構想を描き、品質基準を決め、デッドラインを決めて追い込むこと。これが“戦略的計画立案”であり、この点をしっかりとおこなうことで、仕事量は半減するといいます。

次に「時間節約・効率的仕事術」です。仕事は発生したその場で片付けることを意識すべきであり、長時間労働はプロ意識の欠如だと佐々木氏は言い切ります。また、イノベーションは重要ではありますが、時間を節約し、効率的に仕事を進めるには「プアなイノベーションよりも優れたイミテーション」が望ましいと述べています。

最後に「時間増大・広角的仕事術」です。先述したように、佐々木氏は会議を最小限に抑え、代わりに(必要な)ミーティングを頻繁におこなうこと、そして隙間時間を活用することの大切さを説きます。

こうしたタイムマネジメントのメソッドに従って仕事の進め方や管理の仕方を改善すれば、時間効率は今よりももっとよくなり、佐々木氏のようにワーク・ライフ・バランスの実現に近づけることでしょう。

コロナ禍による影響と変化にどう対応すべきか

一方で、2020年から2021年にかけて、多くの人の働き方に影響を与える出来事が起きました。

言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症の拡大です。コロナ禍は働き方に大きな影響を与えました。

たとえばテレワークが一般に普及し、それに伴って住居を都市から郊外や地方へ移す人も多くなりました。

社会問題も多数発生しています。失業者が増加し、格差が拡大。転職の一時的減少も見られると佐々木氏は言います。

注目したいのは、コロナ禍以前から進みつつあったジョブ型雇用への移行です。

ジョブ型雇用とは「仕事」に対して人を割り当てる雇用形態で、新卒で一括採用してから人に仕事を割り当てていく従来の日本的なメンバーシップ型雇用と対局にある仕組みです。

近年、多くの企業がジョブ型雇用への転換を試みており、コロナ以降もこの流れは続いていくとみられています。

ただし、ジョブ型雇用を成功させるのはそう簡単ではないと佐々木氏は指摘します。

「ジョブ型雇用の条件として、膨大な“ジョブ”の内容を言語化する必要があります。また、成果の正当な評価と報酬への反映ができるのかという点も課題です」(佐々木氏)

人材マネジメントは「評価」だけでなく、「採用」や「育成」、「配置」などの要素からなっています。ジョブ型雇用を導入するのであれば、「評価」だけでなくその他の要素もあわせて整備し直す必要があり、一筋縄ではいきません。

だからこそ、日本はまず「日本型とジョブ型のハイブリッド型」を目指すべきだと佐々木氏は提言します。

普及しつつあるテレワークについても、佐々木氏は「プラス面だけではない」と指摘します。たとえば、通勤時間の削減や無駄な会議の現象、育児介護や家族関係への好影響などがテレワークのプラス面だとしたら、会社にいるからこそできるコミュニケーションが失われたり、家族関係がむしろストレスになったり、ワークスペースが確保できず生産性を落としてしまったりといったマイナス面も無視できないのです。

「今は“勢い”でテレワークをやっている状況なのです」(佐々木氏)

管理職の役割も変わりつつあります。これまでの管理職は、ともすれば「伝達するだけ、承認するだけ」になりがちでした。たとえば部下に資料を作らせ、チェックして上司に報告する仕事や、取引先の相手に会って挨拶するだけの仕事などがそれにあたります。

しかし、テレワークが普及し、デジタル化が進み、働き方が変わるコロナ禍以降の世界では、そのような従来型の管理職は不要になっていきます。

では、これからの管理職には何が求められるのか。佐々木氏は中間管理職ならぬ「中間経営職」という言葉で表現します。

「これから必要なのは、自分と人を活かすマネジメントができるリーダーです」(佐々木氏)


“自分と人を活かす”とは、まず自分の考えを確立させて主体性を持つこと。そして、メンバーの強みを引き出し、多くを語るのではなく多くを聴くことのできるマネジメントです。

コロナ禍という未曾有の出来事により、働き方の変化は大きく進みました。私たちは今こそ、ワーク・ライフ・バランスを実践してきた佐々木氏のメソッドを取り入れて、アフターコロナの世界に向かわなければならないのです。

「働き方とは生き方」――佐々木氏が語る人生の本質

ウェビナー後半では、佐々木氏と斉藤によるディスカッションがおこなわれました。

斉藤はまず、東レ時代の佐々木氏がどのようにマネジメントをおこなっていったのかを具体的に質問。

これに対して佐々木氏は、「着任するとまず、(前段で紹介した)10ヶ条を周囲に発信し、毎日のように実践した」と説明。「よい習慣は才能を超えるもの。部下にも習慣づけるようにしていた」と当時を振り返りました。

佐々木氏はこれら10ヶ条を課長になった38歳時に作成し、以降28年間、東レ経営研究所 社長を退任するまで毎日発信していたそうです。なお、この10ヶ条を修正したことは一度もないとのこと。使い続けるうちに社内でも有名になり、「気づけば次の課長が10ヶ条を知っていたこともあった」のだとか。時代を超えて受け継がれる10ヶ条は、それだけ普遍的な内容として完成されていたといえます。

この答えに斉藤は「なかなか徹底できるものではない」と絶賛しました。

続いて斉藤は「会議を減らした」という点に着目。「会議を減らしたとはいえ、経営視点をメンバーに持ってもらうためには情報は必要。会議のかわりに情報伝達はどう工夫したのか」について質問。

この問いに佐々木氏は、「やめたのは報告するだけのような会議。デジタル社会では伝えることは会議でなくてもできる」と答え、「議論を深めることで仕事の本質を向上させる会議を残した」と明確な基準を示しました。

これに斉藤も同意を示し、「会議も手段の1つ。伝達すべき情報のうち90%はテキストで十分だが、10%はニュアンスも含め直接伝えた方がいいなら、その10%分だけ会議を開くという切り分け方があってもいい」と自らの考えを語りました。

ディスカッションの最後に佐々木氏は「働き方とは生き方でもある。人生をどう生きるのかは、どう働くのかということでもある」と持論を示し、「だからこそ、自らのあるべき姿はきちんと持っておかないといけない」と述べて締めくくりました。


* * *

ワーク・ライフ・バランスの第一人者として、多忙な仕事と家庭を両立してきた佐々木氏。それができたのは、佐々木氏が28年間一度も曲げなかった珠玉の「10ヶ条」があったからこそでした。

コロナ禍をはじめとする大きな変革が訪れ、将来が見えないVUCAの現代にあっても、佐々木氏の10ヶ条は普遍的な考え方として、私たちに働き方と生き方のヒントを与えてくれています。

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心理的安全性を高め、挑戦する組織をつくるための「Uniposウェビナー」とは
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働く仲間同士、異なる部門同士、企業と個人が相互理解を深めたら、組織はもっと強くなる。「あなたの組織を一歩前へ進めるUniposウェビナー」は、変化に対応できる強くしなやかな組織をつくるためのウェビナー。コロナ危機をきっかけに2020年5月開始し、毎回数百名の方にご参加いただいています。

組織課題解決やSDGsのプロ、識者、実践者を毎回ゲストにお呼びし、予測不可能な時代を生き抜く組織のあり方を共に考え、実践のヒントをお伝えします。みなさまお誘い合わせの上、お気軽にご参加下さいませ。

▼過去ウェビナー参加者様の実際の声
「経営陣や上層部に対してのアプローチに悩みを持っておりましたが、今回の講演で素敵なヒントをいただくことができました。どうもありがとうございました。​」
「今まで何度か同テーマのセミナーに参加しましたが、​一番腑に落ちる内容が多いセミナーでした。 ​又、参加させて頂きたく思います。」​
「いまプロジェクトを担当していますので本当に助かりました。」​
「いくつものヒントをいただけて、同じように悩んでいる方が大勢いることもわかりました。今は、さぁどこから手をつけようか、と前向きに考えています。」​
「目から鱗で感動しました。」

<今回の登壇者プロフィール>
株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表 佐々木常夫 氏
秋田市生まれ 1969年東京大学経済学部卒業後、東レ株式会社に入社
自閉症の長男を含む3人の子どもの世話と肝臓病とうつ病に罹り入退院を繰り返す妻の世話に忙殺される中でも仕事への情熱を捨てず、事業改革に全力で取り組む 東レ3代の社長に仕えた経験から独特の経営観を持つ 2011年ビジネス書最優秀著者賞を受賞「ワーク・ライフ・バランス」のシンボル的存在と言われている
マネジメントで心がけていることは「信頼関係構築と成長実感」。