
4.組織マネジメントを行うための必要スキル
前章では組織マネジメントを行うことでどういった成果に繋がるかをご紹介しました。しかし、どんな人でも組織マネジメントをうまく活用し、実践できるわけではありません。
自社にとって最適な組織マネジメントを思考し、数多くある手法の中からより良いものを選択するためには、経営陣や管理職が必要な能力を身に付けている必要があります。
では具体的に、どんな能力を身に付ければ良いのでしょうか。ピーター・ドラッカーが説いた8つの習慣と5つの能力をご紹介しましょう。
4-1.8つの習慣
ドラッカーは、下記の8つを習慣とすべきだと説いています。
(1)なされるべきことを考える (2)組織のことを考える (3)アクションプランをつくる (4)意思決定を行う (5)コミュニケーションを行う (6)機会に焦点を合わせる (7)会議の生産性をあげる (8)「私は」でなく「われわれは」を考える 引用:P F ドラッカー『ドラッカー名著集1 経営者の条件』ダイヤモンド社,2006年 |
ドラッカー自身が出会ったさまざまな経営者のほとんどは、実は「いわゆるリーダータイプではなかった」といいます。
性格、仕事に対する姿勢、価値観、強み・弱みなどは千差万別でしたが、彼らが成果をあげたのは、この8つのことを習慣化させていたからだというのです。
私たちが組織マネジメントに取り組む上で、どのような態度で臨むべきなのか、ひとつの答えといえるでしょう。
4-2.5つの能力
さらに、成果をあげるためには、次の5つの能力が条件であるとドラッカーは述べています。
(1)何に自分の時間がとられているかを知ることである。残されたわずかな時間を体系的に管理することである。 (2)外の世界に対する貢献に焦点を合わせることである。仕事ではなく成果に精力を向けることである。「期待されている成果は何か」からスタートすることである。 (3)強みを基盤にすることである。自らの強み、上司、同僚、部下の強みの上に築くことである。それぞれの状況下における強みを中心に据えなければならない。弱みを基盤にしてはならない。すなわちできないことからスタートしてはならない。 (4)優れた仕事が際立った成果をあげる領域に力を集中することである。優先順位を決めそれを守るよう自らを強制することである。最初に行うべきことを行うことである。二番手に回したことはまったく行ってはならない。さもなければ何事もなすことはできない。 (5)成果をあげるよう意思決定を行うことである。決定とは、つまるところ手順の問題である。そして、成果をあげる決定は、合意ではなく異なる見解に基づいて行わなければならない。もちろん数多くの決定を手早く行うことは間違いである。必要なものは、ごくわずかの基本的な意思決定である。あれこれの戦術ではなく一つの正しい戦略である。 引用:P F ドラッカー『ドラッカー名著集1 経営者の条件』ダイヤモンド社,2006年 |
これらの能力は、持って生まれた才能ではありません。誰もが習得可能なものです。普通の人であれば、いかなる分野でも実践的な能力は身に付けられるとドラッカーはいいます。
組織マネジメントで成果をあげる第一歩として、さっそく今日から取り組んでみてはいかがでしょうか。
5.組織マネジメントで使われる手法リスト
組織マネジメントは、ある1つの手法を指した言葉ではありません。実際には、複数の手法を組み合わせながら実践していくものです。
そこでこの章では「組織マネジメントでよく使われる手法」をリスト化しました。組織マネジメントの手法選びのヒントとしてください。
手法 |
目的 |
①フィードバック分析 |
自らの強みを分析 |
②コア・コンピタンス |
自社の強みを分析 |
③SWOT分析/クロスSWOT分析 |
自社の強みと弱みを分析 |
④バリューチェーン分析 |
事業の流れから強みと弱みを分析 |
⑤PDCAサイクル |
継続的な業務改善 |
⑥PPM分析 |
複数の事業の位置づけを分析 |
⑦アドバンテージ・マトリクス |
事業ごとの特性を分析 |
⑧3C分析 |
市場・顧客、自社、競合のマーケティング分析 |
⑨5Fモデル |
競争環境の分析 |
⑩VRIO |
経営資源の競争力を分析 |
⑪TOC |
ボトルネックを探す |
⑫バランストスコアカード |
戦略を組織に浸透させる |
なお、これらは数多ある組織マネジメント手法の、ごく一部です。失敗しないためにも、実際に実践する前に押さえておきたい注意点を先に確認しましょう。
6.取り入れる前に押さえておきたい注意点
ここまでお読みいただいた方は、組織マネジメントの奥深さと、その無限の可能性にお気付きのことと思います。「組織マネジメントの視点を持って、今すぐに企業変革に取り組みたい」という方もいるでしょう。
本章では組織マネジメントを取り入れる前に押さえておきたい注意点を2つ、お伝えします。
6-1.目的を利益の追求としない
「企業は何のためにあるのか?」という問いは、今までに多くのビジネスパーソンが繰り返してきた哲学的な疑問です。ドラッカーは「顧客の創造である」と定義しています。顧客満足を通じて社会貢献した結果、企業は存続し得るのです。
もちろん、企業が利益をあげることは大切なことです。しかし、それ自体を組織マネジメントの目的としてしまうと、不正が起きるリスクや顧客ニーズに対応できずに淘汰される可能性が高まってしまいます。
「社会に貢献するためにはどうすれば良いか?」という大局的な視点を持って何をなすべきか考えていくのが組織マネジメントの本質です。
6-2.「人材」のマネジメントの優先順位を上げる
組織マネジメントを行う対象である経営資源は、7つあることをご紹介しました。近年、その中でも注目されているのが「人材(staff)」のマネジメントです。
ドラッカーは「仕事が生産的に行われても、人が生き生きと働けなければ失敗である」と述べています。「人材」は最大の経営資源であるともいえるのです。
現代では、少子高齢化社会による労働人口の減少やライフスタイルの多様化によって、優秀な人材を確保することが難しくなっています。
実際に、人材のマネジメントを通じて、組織変革を試みる企業が増えました。例えば、ヤフーは「組織開発」によって人材育成を行っている企業として有名です。
組織開発は目に見えにくい「人間的側面」から組織を良くするプロセスです。組織マネジメントのひとつの手法といえるでしょう。
詳しくは『組織開発とは?正しく理解して現場で実践するための定義・目的・手法』も合わせてご覧ください。
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7.組織マネジメントの理解が深まる名著3選
最後に、「組織マネジメントついての学びを深めたい」という方におすすめの名著を3冊、ご紹介しましょう。
7-1.『マネジメント』ピーター・F・ドラッカー
『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』 ピーター・F・ドラッカー
組織マネジメントについて、本質的な概念を知るための一冊として最適なのがピーター・F・ドラッカーの『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』です。
前述の通り、組織マネジメントの手法は多数ありますが、ドラッカーが説いているのは小手先の手法に左右されない、大局的な視点です。
「ハウツー本」というよりも、「組織マネジメントを行う上での哲学そのもの」を学ぶことができる名著として、多くの経営者に愛読されています。
過去に一度読んだことがある方も、マネジメントする立場になったタイミングで再読すると、新たな発見があることでしょう。
7-2.『ビジョナリー・カンパニー』ジム・コリンズ
『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』 ジム・コリンズ
組織マネジメントに取り組むときに熟慮が必要なのは、「何を変えて、何を変えないべきか」という選択です。それを考える上で大いに参考になるのが、ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』です。
この一冊の中には、業界トップを何十年も維持する超優良企業18社の創業からの歴史が詰まっています。つまり、成功企業がどんな組織マネジメントを行っていたのか、その事例が示されているのです。
具体的には、次の18社の事例を読むことができます。
3M、アメリカン・エキスプレス、ボーイング、シティコープ、フォード、GE、HP、IBM、J&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、マリオット、メルク、モトローラ、ノードストーム、P&G、フィリップ・モリス、ソニー、ウォルマート、ウォルト・ディズニー |
この本を手もとに置きながら自社の組織マネジメントを考えることで、思考がより具体的・実践的になるはずです。
7-3.『ティール組織』フレデリック・ラルー
『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』 フレデリック・ラルー
「最新の組織マネジメントについて学びたい」というときにおすすめなのがフレデリック・ラルーの『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』です。
日本では2018年に出版され新世代の組織論として話題となり、『ビジネス書大賞2019経営者賞』を受賞しました。
ティール組織とは「進化型の組織」を指す言葉。その特徴は「管理しない」ことにあります。
上下関係も売上目標も予算もない、従来のアプローチとはまったく異なるやり方で圧倒的な成果をあげる組織が、世界中で出現しています。それらの組織で行われている組織マネジメントの手法が、この本で明らかにされています。
ティール組織は「次の組織モデルはこれだ」と、世界中で注目されている組織論です。これから組織マネジメントに取り組む人にとっては必読の一書といえるでしょう。
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8.まとめ
組織マネジメントとは、組織を効率的に動かし成果を最大化するためのマネジメント手法のことです。具体的には、7つの資源(7S)のマネジメントを指します。
目的は競争に負けずに長きにわたって生き残る強い組織を作ることであり、下記の成果が期待できます。
1.目標の達成に向けて戦力集中できる
2.市況の変化や未経験のリスクに素早く対応できる
3.マネジャー(管理職)業務の効率化できる
その手法は数多くありますが、適切な組織マネジメントを行うためには、経営陣や管理職が必要なスキルを兼ね備えていることが不可欠です。ドラッカーはそのスキルを「8つの習慣」「5つの能力」といった形で説いています。
組織マネジメントを取り入れる際には、目的を利益の追求しないこと、人材マネジメントの優先順位を上げることに留意してください。
より学びを深めるためには、下記の3冊を読むことをおすすめします。
1.『マネジメント』ピーター・F・ドラッカー
2.『ビジョナリー・カンパニー』ジム・コリンズ
3.『ティール組織』フレデリック・ラルー
ぜひ、あなたの所属する企業でも組織マネジメントを取り入れて、より良い組織への変革の一助としてください。社会に貢献し、従業員がイキイキと働ける組織ならば、リスクや変化にさらされたとしても、揺るがぬ強さで生き残っていけることでしょう。
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