
3.レジリエンスを高める方法
レジリエンスの高い人材になりたい、あるいはそうした人材を育成したいという方に向けて、具体的な方法についてご紹介します。
レジリエンスを高める上でおさえておくべきポイント
レジリエンスを高めるためのポイントについて、個人と組織に分けて見ていきましょう。
個人でのポイント
個人でのポイントは、先述の「レジリエンスが高い人の特徴」が参考になります。主に以下の3つが挙げられるでしょう。
・自己効力感や自尊心を高める
・感情のコントロールを意識する
・ネガティブな思考の癖を辞める
自己効力感や自尊心を高める
日本人は世界的にも自己効力感や自尊心が低いと言われています。意識をしていないとついつい「自分はダメだ」「自分には能力がない」と考えてしまう人も多いのではないでしょうか。
自己効力感や自尊心を高めるためには、自分自身の成功体験が欠かせません。失敗を恐れず挑戦を続けることで成功体験が少しずつ蓄積されていくと、自然と自己効力感や自尊心は高まっていくでしょう。
感情のコントロールを意識する
感情のコントロールができているか、ネガティブな思考ばかりしていないか、自分を見つめ直すことも大切です。これらは、考え方が癖づいてしまっていることが多いため、自分でネガティブな捉え方をしているなと自覚できた場合は、意識的に矯正していきましょう。
組織でのポイント
組織でのポイントは、個人とはまた違った側面で考えることができます。主に以下の3つが挙げられるでしょう。
・心理的安全性を高める
・シナリオプランニングを実施する
・独自のブランド力を築く
心理的安全性を高める
心理的安全性とは、組織の中で一人ひとりが不安を感じることなく、発言したり行動したりできるような状態のことを指します。
自分がきちんと組織に受け入れられている感覚は、メンバーの積極性や主体性を促し、組織としてのアウトプット向上につながります。また、失敗しても許容される雰囲気が浸透することで、新しいことや変化に対しての柔軟性が育まれます。
シナリオプランニングを実施する
シナリオプランニングは経営戦略として用いられることもありますが、長期視点で将来的に起こり得る出来事を複数想定し、それぞれの対応方法を考えるものです。
シナリオプランニングを行うことで、不確実な将来に対して、不必要に恐れを抱くことなく柔軟に対応する力を養うことができます。
独自のブランド力を築く
企業を取り巻く経営環境や顧客のニーズは日々変化していきます。こうした変化に応じて、商品やサービスを少しずつ変化させていくこともありますが、一方でちょっとした変化にも動じないロングセラー商品やサービスというものがあるのも事実です。
変化を柔軟に受け入れる姿勢を持ちながらも、確固とした独自のブランド力を築いてくことも大切なのです。
レジリエンスを築く10の方法
レジリエンスは、その人が生まれながらにして持つ特性のように思えるかもしれません。しかし、実際は後天的に身につけることができます。
アメリカ心理学会(American Psychological Association:APA)は、「レジリエンスを築く10の方法」を提唱しており、レジリエンス向上に資する具体的手法として参考になります。
1.親戚や友人らと良好な関係を維持する
2.危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする。
3.変えられない状況を受容する
4.現実的な目標を立て、それに向かって進む
5.不利な状況であっても、決断し行動する
6.損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す
7.自信を深める
8.長期的な視点を保ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する
9.希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する
10.心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う
これらの10の方法には、既にできていると感じられるものもあれば、全くできていないと感じられるものや、苦手意識があるものもあるでしょう。
全てを一度に実行するのは難しくても、できそうなものから少しずつ行動に移していくことで、徐々にレジリエンスを向上することができるはずです。
参考:「Building your resilience」
(https://www.apa.org/topics/resilience)
「レジリエンスとは? 心が折れやすい人の特徴、レジリエンス向上の重要性、組織
のレジリエンスを高める方法について」
(https://www.kaonavi.jp/dictionary/resilience/#i-33)
レジリエンス向上のための研修・セミナー
レジリエンスをテーマにした研修やセミナーが各地で開催されています。自己啓発として、社員の教育として、研修やセミナーに興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
SMBCコンサルティング
SMBCコンサルティングが行なっているレジリエンス研修では、「逆境に対応できるレジリエンスを鍛え、人材力を強化する」をテーマに、レジリエンスの概念をABC理論を中心とした論理情動行動療法などに触れながら解説していきます。
料金は、定額制と一般料金の2つのパターンから選ぶことができます。人数によって価格の差がありますが、定額制であれば30,800円〜、一般料金であれば約30,000円×人数が目安となります。
Schoo for Business
「Schoo」は、インターネット上で大人の学びを支援する動画配信サービスです。その中でも2,000社以上の企業に導入されている法人向けのプランとして「Schoo for Business」があります。
Schoo for Businesが行なっているレジリエンス研修は、メンタルヘルスやマインドフルネスを通じてレジリエンスを高める方法を学ぶ「レジリエンス強化研修パッケージ」と、基本的な概念を押さえながら「なりたい自分」になるためのセルフマネジメントの手法について学ぶ「レジリエンス基礎研修パッケージ」の2種類があり、目的に応じて選ぶことができます。
料金は、月額1,500円/IDで受け放題。通常の研修・セミナーよりも格安で導入できるほか、デモアカウントでお試しもできるので安心です。
詳細はこちら:https://schoo.jp/biz/theme/resilience/
HRpro
日本最大級の人事ポータルサイト「HR Pro」は、無料のレジリエンスセミナーを開講しています。テーマは「レジリエンスを高め、ストレスに負けないタフな自分をつくる」。
セミナー当日は、日常的なストレッサーにうまく対処し適応できる力「エゴ・レジリエンス」の実証的研究とその社会的な周知や啓発を図る活動を続けている小野寺 敦子氏が研修の一部を担当します。
セミナーは無料ですが、応募者多数を見込んでいるため抽選での受付になる点に注意しましょう。
詳細はこちら:https://www.hrpro.co.jp/seminar_detail.php?ccd=00406&pcd=104
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4.ストレングス、リカバリー、レジリエンスと似た意味を持つ言葉について解説
レジリエンスへの理解をさらに深めるため、似た意味を持つ「ストレングス」「リカバリー」について、違いを整理しておきましょう。
ストレングス
ストレングスを直訳すると「強み」や「力」になりますが、レジリエンスのようなストレスを跳ね返す力ではなく、その人が元来持っている性格や能力における「強み」を指します。
日常生活を送る上で何かしらの課題や問題に遭遇した時に、自身のストレングスを生かした対処方法を探ることができれば、課題解決への道のりがグッと近づきます。
リカバリー
リカバリーとは、「回復力」と訳され、自分が求める生き方を主体的に追求しようとする考え方のことです。
レジリエンスとの大きな違いは、レジリエンスが過去から現在の変化への適応を示す一方、リカバリーは過去の状態に戻すことを言う点にあります。
例えば、大きなストレスなどを受けて精神的な問題を抱えてしまった際に、ケア療法やメンタルトレーニングなどを通じて元の状態に戻していくことなどを指します。リカバリーを実現するためには、レジリエンスやストレングスが必要になるということを押さえておきましょう。
5.レジリエンスを学ぶ上でのおススメ書籍紹介
レジリエンスについてより詳しい内容が知りたいという方向けに、お薦めの書籍を紹介します。どれも勉強になる1冊ですので、興味があればぜひご参考ください。
世界のエリートがIQ・学歴よりも重視 「レジリエンス」の鍛え方(実業之日本社出版、久世浩司著)
本書では、レジリエンスの考え方について詳しく解説し、レジリエンスを身につけるための7つの技術を紹介しています。実践的な内容が盛り込まれているため、レジリエンスを鍛えるための具体的な方法を知ることができます。
マンガでやさしくわかるレジリエンス(日本能率協会マネジメントセンター出版、久世浩司・松尾陽子・朝戸ころも著)
本書では、特にビジネスパーソンをターゲットとして、レジリエンスを鍛えるために必要なことをマンガと解説を通して詳しく説明しています。
タイトルの通り、マンガでやさしくわかりやすく解説しているため、レジリエンスの入門書として活用できます。
詳細はこちら:https://www.amazon.co.jp/dp/B017R70C88/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
どんなことからも立ち直れる人 逆境を跳ね返す力「レジリエンス」の獲得法(PHP研究所出版、加藤諦三著)
本書は、テレフォン人生相談でお馴染みの加藤先生の著作であり、レジリエンスの実例を取り上げながら、生きづらさを感じている全ての人が「自ら幸せを得る力」を取り戻すためのヒントを紹介しています。
6.まとめ
今回はレジリエンスをテーマに、基本的な概念の整理をしながら、向上させるための方法や効果について解説してきました。これまでの内容のポイントをまとめると以下の通りです。
・レジリエンスとは、「回復力」「復元力」「弾力性」のことを指し、変化に対する適応力
や、ストレスに対する打たれ強さのことを言う
・レジリエンスの高い人は、ポジティブ思考や自責思考、精神的安定感を備えている
・レジリエンスを向上させることで、個人にとってはどんな環境下でも自身の能力を最大限
に発揮できるようになる、組織にとっては社員のアウトプット向上を促し、企業の持続的
発展に寄与できることがメリットである
いかがでしたか?レジリエンスの重要性について理解を深めることができたでしょうか。レジリエンスは”VUCAの時代”と呼ばれる現代に欠かせない力であることがお分かりいただけたかと思います。
既にご紹介したように、昨今レジリエンスへの注目度が高まる中で、研修やセミナー、書籍なども多く登場しています。本記事を通じてレジリエンスについて興味を持っていただけた方は、ぜひさらに学びを深めてみてくださいね。