
4 社員が退職を考える8つの理由
社員が退職したいと思うのには、いくつかの共通した理由があります。
エンジャパン株式会社が2018年に行ったアンケート結果によると、退職を考えたきっかけの上位は以下のグラフのようになりました。
参考:8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査。転職理由は「給与」「やりがいのなさ」「企業の将来性」。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表―
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/13174.html
以下、1位から順番に解説します。
4−1 1.給与面など待遇の問題
生活するうえで欠かせないのが毎月の給与です。内閣府が2019年に行った「国民生活に関する世論調査」によると、働く目的について、「お金を得るために働く」との回答が最多の56.4%でした。
参考:内閣府世論調査・国民生活に関する世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-life/2-3.html
半数以上の人が給与など待遇面を重視していることがわかります。つまり、労働の対価としての給与に
納得がいかなければ、退職を考えるきっかけになるということです。自分の実力に見合った給与や待遇を受けられる企業で働きたいと考えるようになります。
4−2 2.仕事にやりがいを感じない
長く働いていると仕事がルーティン化し、新しい刺激を感じにくくなります。そのため、次第に仕事に対するやりがいを感じなくなる社員もいます。また、当初想い描いていた仕事内容とは違うと感じている社員もいるでしょう。
仕事のやりがいを求め、キャリアアップやスキルアップのために、転職を考えるのです。
4−3 3.企業に将来性を感じない
企業の将来性に魅力を感じなくなることも、退職を考える理由につながります。
「企業の理念に共感できなくなった」
「会社が将来的に業界内で生き残れるか不安」
上記のような思いが強くなると、ビジョンを明確にしている企業や、事業に将来性のある企業のほうが、魅力的に思えるようになってしまうのです。
4−4 4.人間関係の悪化
同じ部署の上司や同僚とは、週のほとんどの時間で顔を合わせなくてはなりません。そのため、人間関係が良好でなければ、日々の業務が苦痛に感じてしまうでしょう。同じプロジェクトに入っていたり、会議などで顔を合わせたりする機会が多いほど、人間関係の悪さが影響を及ぼします。
よりよい人間関係を築けそうな企業への転職を意識してしまうのです。
4−5 5.残業など拘束時間が長い
残業や休日出勤が多いなど、ワークライフバランスが整っていなければ、退職したいと考える大きなきっかけになります。仕事で成果を出していても、プライベートな時間がしっかりと持てないと、次第に体力や気力がなくなり、やる気も消失してしまうでしょう。
また、給与などの待遇面が整っていても激務の場合は、環境を変えるための転職を考えてしまうケースが多くあります。
4−6 6.評価制度への不満
同僚たちよりも仕事で結果を出していると考えていても、適切な評価を受けられていないと感じる場合は、退職を考えるきっかけになります。成果を出しても周囲と同等の評価しか受けられない場合、理不尽さを感じるからです。実力では勝っているのに、年齢が上というだけで昇進する社員を見たときなども、同様の感情を抱かれるでしょう。
きちんとした評価制度が整っていない企業の場合、優秀な社員を離職させてしまう可能性があります。
4−7 7.これ以上成長できそうにない
企業で働き続けるうえで、将来的なキャリアプランが明確にできない場合も、退職を意識する原因になります。終身雇用の代わりに成果主義の制度を導入する企業が増えたことで、定年まで一つの企業で働き続けるという価値観はなくなりつつあります。転職を視野に入れたキャリアプランを持っている社員も多くいるのです。
4−8 8.社風が合わない
長く働いていくうえで、社風に納得感を持てるかどうかは非常に重要です。将来的にキャリアを築いていきたいと思っていても、経営層や上司の考え方に不満があれば、より自分らしく働ける環境をめざそうとする社員も多くいるでしょう。
また、同僚たちとの関係性も含め、企業風土が肌に合わないと感じている社員も同様に、社風とのミスマッチを感じています。
5 退職者を減らすためにできること
社員が退職する際の兆候や、辞めさせないための対処法についてご紹介しましたが、退職を未然に防ごうとしても手遅れな場合も多くあります。すでに退職の意思を固めてしまっていたり、他社での転職活動が順調に進んでいる場合は、考えを改めてもらうことが非常に難しいのです。
そのため、退職者を減らすためにできることを普段の業務から意識し、取り入れておくのが望ましいといえます。
5−1 入社時のミスマッチを減らす
新入社員を新たに雇う段階で、すぐに退職されないための対策を講じておくのは非常に効果的です。入社時のミスマッチを生まないようにすることで、新入社員が感じるギャップを最小限に止められます。
面接の受け答えだけでは企業と社員間のミスマッチが発生しやすいため、働き始めてからデメリットになり得る部分を説明するなど、入社前と実際に働き始めてからのイメージに乖離が起きないように工夫するのがよいでしょう。
また、オンボーディングを行うなど、新入社員がいち早く企業風土に馴染めるよう、関係者たちでしっかりとサポートするのも非常に効果的です。
5−2 評価制度の見直し
「仕事での成果が正しく評価されていない」と社員が感じている場合は、社内の評価制度を見直す必要があります。成果をあげている社員が適正な評価を受け、昇給や昇進の対象となるように、評価制度を組み直す必要があるでしょう。
MBO(目標管理制度)を評価に組み込むなど、社員が適正に評価され、成長を続けられるような企業風土を作り上げるのが大切です。
5−3 待遇面の改善をめざす
給与面や残業の多さ、休日出勤などがネックになっている場合は、待遇面の改善によって社員の退職を思い留ませられる場合があります。普段から社員への定期的なヒアリングを行い、不満や不安に感じていることがないかを把握しておきましょう。労働環境の改善により、社員が働きやすい環境を作ることが重要です。
5−4 クレドカードの配布
企業の行動指針であるクレドを浸透させることも、社員の離職率を下げるのに効果的です。日々の仕事に使命感を持ち、同僚たちと気持ちよく働ける企業風土づくりをめざすのです。そうすることで、自然と社員のモチベーションが高くなり、退職するのではなく改善したりチャレンジしたりしたいと思えるようになるでしょう。
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6 まとめ
社員が退職を考える際には、待遇面への不満ややりがいを感じなくなったなどの理由があることがわかりました。社員の一人ひとりに対し、企業や仕事についてどのように考えているかを把握するのは非常に難しいのが現実です。
何人もの退職者を出しても、原因がわからなくては対処のしようがありません。そのため、退職しようとする社員の兆候を見逃さないようにすることが大事です。
以下の10の兆候を見落とさないようにしましょう。
1.あまり元気がなくなった
2.周囲へ漏らす不満が多くなる
3.会議などでの発言が減る
4.あまり残業をしなくなる
5.身だしなみが整っている
6.スーツで出勤するようになる
7.遅刻や早退の回数が増える
8.体調不良や有給休暇の日数が増える
9.少し元気になったように見える
10.机の上や書類の整理をはじめる
合わせて、社員の退職を未然に防ぐための、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
・しっかりと話を聞く
・社員に合わせた解決策を一緒に考える
・日頃から社員のモチベーションを把握しておく
普段から社員と綿密なコミュニケーションをとり、業務の改善をめざせる組織の運営が大切です。