
4.離職率ランキング
ここから、離職率に関するさまざまなランキングをご紹介します。
なお、一般的には「離職率が低い=良いこと」と捉えられますが、なかには離職したくてもできないブラック企業なども存在すると想定されます。また、調査年の社会情勢などによっても結果は変化するため、離職率が低いからといって必ずしも良い会社・業界・職種であるとは限らない点は理解しておきましょう。
離職率が高い会社・低い会社
離職率が高い会社と低い会社、それぞれのランキングは以下のとおりです。
<離職率が高い会社>
(1)KADOKAWA
(2)アイフリークモバイル
(3)スシローグローバルHD
参考:「1位は0.7年」平均勤続年数ワースト300社ランキング2020 平均年収も全体的に低い傾向
<離職率が低い会社>
(1)島津製作所
(2)三井不動産
(3)栗田工業
(4)三菱地所
※いずれも定着率100%、ランキングは定着人数順
参考:「新卒社員が辞めない会社」ランキングTOP300 | 就職・転職
離職率が高い業界・低い業界
厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」内で報告された業界別の離職率から、離職率の高い業界・低い業界のランキングは以下のとおりです。
<離職率が高い業界>
(1)宿泊業・飲食サービス業
(2)サービス業(他に分類されないもの)
(3)生活関連サービス業・娯楽業
<離職率が低い業界>
(1)鉱業・採石業・砂利採取業
(2)金融業・保険業
(3)複合サービス事業
ただし、離職率が低い業界の第1位「鉱業・採石業・砂利採取業」については、前年との差が大きいため、離職率の低い業界とは言い切れない側面があります。
離職率が高い職種・低い職種
離職率が高い職種と低い職種、それぞれのランキングは以下のとおりです。
<離職率が高い職種>
(1)営業職(営業、MR、人材コーディネーター)
(2)技術系(IT、Web、ゲーム、通信)
(3)企画職(経営企画、広報、人事、事務)
<離職率が低い職種>
(1)技術系(医薬、科学、素材、食品)
(2)専門職系(コンサルタント、金融・不動産)
(3)専門サービス系(医療、福祉、教育、ブライダル)
参考:2019年「企業の人材不足」実態調査 9割の企業が人材不足を実感
5.離職率が高い企業、低い企業の特徴
離職率が高い企業と低い企業には、どのような特徴があるのでしょうか。以下では、それぞれの特徴について解説します。
離職率が高い企業の特徴
離職率が高い企業の特徴として、以下の3点をご紹介します。
教育・フォロー体制が整っていない
特に新入社員や若手社員にとって、サポートしてもらえる環境が整っていないことは大きなストレスにつながります。
例えば、人手不足などを理由に研修や指導を十分に行えていないと、不慣れな環境のなかで自信をなくしてしまい、その会社での自分のキャリア形成にも不安が生じてしまいいます。また、教育・フォロー体制が不十分ななかで本人は問題なく業務をこなせていたとしても、周囲がサポートをしない環境自体に疑問を感じる可能性もあります。
その結果、離職率が高くなってしまうでしょう。
労働環境が悪い
労働環境の悪さは、精神的にも肉体的にもダメージを与えます。サービス残業が横行していたり、休日出勤が常態化していたりすると、離職につながってしまいます。
また、例えば子育てや介護のために休みをとりたいのに、自分のタイミングでは休暇をとりにくい雰囲気になっているケースもあります。その場合、仕事を続けたくても辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまうでしょう。
評価制度が正しく機能していない
評価制度がうまく機能しておらず、頑張っても評価されない場合や、上司の感情に左右される評価の場合、社員のモチベーションは下がってしまいます。評価制度は給与などにも影響を与えるため、「それならば正しく評価してくれる会社に転職しよう」と社員は離職を考えるようになるでしょう。客観的で公平な評価制度は、離職率を下げるうえで欠かせません。
離職率が低い企業の特徴
離職率が低い企業の特徴として、以下の3点をご紹介します。
コミュニケーションが十分になされている
コミュニケーションに積極的な風土のある企業では、コミュニケーション不足によるストレスや人間関係の悪化のリスクが少なく、働きやすさやチームワークの良さが目立ちます。
いつでもコミュニケーションがとれる環境なら質問や相談もしやすいため、特に新卒や若手社員は不安なく働くことができるでしょう。そうした環境が、離職率を低くしています。
参考:8,900人が回答!「職場でのコミュニケーション」調査 ー『エン転職』ユーザーアンケートー
社員のエンゲージメントが高い
エンゲージメントとは、簡単に言えば企業への貢献意欲です。エンゲージメントの高い状態は、社員が「この会社で働きたい」と感じ、自分が会社に貢献できる喜びを感じられる状態を指します。
離職率が低い企業では、社員は企業のビジョンや経営方針を十分に理解し、共感しています。その結果、多くの社員のエンゲージメントは高い状態が維持されており、組織全体が活気あふれる状態です。
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6.離職率改善に向けてまず取り組むべきこと
離職率改善に向けて、まず最初に取り組むべきことは次の3つです。
・社内コミュニケーションの活性化
・人事評価制度の見直し
・労働環境の改善
それぞれについて、以下で詳しく確認していきましょう。
社内コミュニケーションの活性化
1つ目の対策は、社内コミュニケーションを活性化させることです。
上司と部下などの特定の人間関係内でのみコミュニケーションを増やすのではなく、普段は関わりが少ない他部署の社員なども含めた積極的な交流を目指しましょう。
例えば、社内SNSの活用などは、テレワークを導入している企業でも社員同士のコミュニケーションのきっかけが生まれるためおすすめです。
風通しの良い職場になれば、社員の悩みや不満を拾い上げやすくなるとともに、社員はいつでも相談できる安心感が得られるでしょう。
人事評価制度の見直し
2つ目の対策は、人事評価制度の見直しです。
何が評価基準となっているのかが明確で、かつ社員が納得いく内容となっていないと、単に評価結果に不満を抱くだけでなく、給与などの待遇に納得感を得られないことにもつながります。
人事評価制度には、何より客観的な視点を取り入れることが大切です。そのためには、新たに人事評価システムを導入したり、同僚や部下など複数の評価者を置く360度評価を導入したりする方法もよいでしょう。
労働環境の改善
3つ目の対策は、労働環境の改善です。
育児や介護と両立しながら働き続ける労働者はこれからも増えていくでしょう。
多様な働き方が認められない限り、離職せざるを得なくなる人は後をたちません。
長時間労働や残業を抑制するための仕組みづくり、短時間勤務やテレワークの導入、さまざまな休暇制度の充実など労働環境を改善することで、多様な人材の定着が促されます。
また、社員の心身の健康確保にもつながるため、組織全体のモチベーション向上にも効果的です。
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7.まとめ
今回は、離職率の定義や代表的な離職理由、離職率が高い企業と低い企業の特徴、離職率の改善に向けて取り組むべきことなどを解説しました。
あらためて、記事の内容を振り返ってみましょう。
・離職率とは「常用労働者数に対する離職者の割合」のこと
・令和2年1年間の常用労働者の平均離職率は14.2%
・753現象とは、就職して3年以内に中卒者の約7割、高卒者の約5割、大卒者の約3割が離職してしまう問題のこと
・離職率が高い企業の特徴は、次の3つ
・教育・フォロー体制が整っていない
・労働環境が悪い
・評価制度が正しく機能していない
・離職率が低い企業の特徴は、次の2つ
・コミュニケーションが十分になされている
・社員のエンゲージメントが高い
・離職率改善に向けて取り組むべきことは、次の3つ
・社内コミュニケーションの活性化
・人事評価制度の見直し
・労働環境の改善
本記事を参考に優秀な人材の定着を図り、企業としての成長を目指しましょう。