ワークライフバランスとは?企業をあげて取り組むための方法と導入事例3選

5 ワークライフバランスを推進するメリット(社員側)

続いて、ワークライフバランスの推進による、社員側のメリットを紹介します。

社員が安心して長く働ける環境づくりは、企業にとっても非常に大切な課題です。

1.モチベーションを高く保てる

2.メリハリをつけて仕事ができる

3.子育てや介護に注力できる

 

5−1 1.モチベーションを高く保てる

 ワークライフバランスの推進により、働きやすい環境が整えられている企業では、社員はモチベーションを高く保てる傾向にあります。

内閣府の調べによると、既婚や独身、男女を問わず、ライフワークバランスが図られていると考える人のほうが、仕事に対する意欲が高い傾向にあることがわかります。

「あなたは、今の仕事に目的意識を持って積極的に取り組んでいますか」への回答として、そう思う、ややそう思うを合計した割合は、「男性:既婚就業」と「男性:独身就業」、「女性:既婚就業」が約60%、「女性:独身就業」が約50%となっています。

仕事とプライベートの両立が可能な働き方ができる環境のほうが、多くの社員にとってモチベーションを高く保てる環境にあるようです。

 

参考:内閣府・両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書

http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/syosika/houkoku/pdf/work-honbun.pdf

5−2 2.メリハリをつけて仕事ができる

 ワークライフバランスが推進されていると、社員が仕事とプライベートを両立しやすく、働きやすい環境の実現が可能です。長時間労働の削減によってメリハリをつけて仕事ができるため、作業効率を高められます。これにより、生産性を高めることができるのです。

多様な働き方を選べるようになることで、仕事へ向けた自主的な取り組みが必要になってきます。労働時間が短くなった分、時間配分を考えながら責任感を持って仕事と向き合えるようになるでしょう。

また、プライベートでは自主的な勉強やセミナーへの参加、ボランティア活動などに従事する時間を増やすことができます。新たな知識や人脈を仕事にも活用できるでしょう。

5−3 3.育児や介護に注力できる

 働き方の多様性が生まれることで福利厚生制度の幅が広がり、女性社員の場合は育休の取得がしやすくなります。勤務時間の短縮や自宅での作業など、柔軟な働き方の実施により、育児と仕事の両立が図れます。結果として出産後も離職することなく、長く勤め続けられるようになります。

男女関係なく、家族の介護などが必要になった際にも、リモートを導入することで対応しやすくなるでしょう。ワークライフバランスの推進は、少子高齢化問題の解決にも大きな役割を持っています。

 

6 ワークライフバランスの導入へ向けた取り組み方

ワークライフバランスの推進は、企業と社員の双方にメリットをもたらします。自社でワークライフバランスの推進を行う場合、以下の取り組みが効果的です。

1.長時間労働の見直し

・勤務時間の短縮

・各種業務の効率化

 

2.多様な働き方の導入

・リモートワークの実施

・フレックスタイム制の導入

 

3.福利厚生の整備

・育児休暇・介護休暇の取得推進

・教育の機会を設ける

 

6−1 1.長時間労働の見直し

 長時間労働は社員にとってモチベーションを下げる大きな原因になります。疲労が溜まると作業効率が落ちてしまい、生産性の低下にもつながります。仕事に対するネガティブな感情が強くなると、社員の離職率を高める可能性があります。

長時間労働の見直しを図るには、社員の仕事量を見極めながら業務効率化を進めていく必要があります。

 

6−1−1 勤務時間の短縮

 長時間労働の抑制には、社員一人ひとりの勤務時間を短縮させるのが効果的です。長時間労働が発生する原因を分析し、是正する必要があります。

まずは、業務内容を見直し、適切な配分がされているかを確認しましょう。能力のある社員に対して業務量が集中しているというケースがあります。社員同士の業務量を均等にし、定時までに処理できる業務内容を設定することが重要です。

長時間労働が当たり前にならないように、企業を挙げて残業を減らす方針を打ち出しましょう。管理職から率先して長時間労働をしない取り組みを実施し、部下に浸透させていくのが効果的です。

他にも、以下の施策が有効です。

・ノー残業デーの制定

・残業前の申請を義務付ける

・早朝勤務の推奨

・会議の時間の短縮

・有給休暇の取得の症例

また、「短時間正社員」という勤務形態の導入も検討してみましょう。短時間正社員とは労働時間を短縮しながらも、正社員としての評価と待遇を受けられる働き方です。育児や介護と仕事の両立をめざす社員にとって、一つの選択肢になります。 

6−1−2 各種業務の効率化

 長時間労働の原因となる各種業務の無駄を省きましょう。業務内容の見直しを行い、無駄と考えられる作業は簡略化するか、廃止するなどして効率化を進めます。普段当たり前にこなしている業務が、今の社内で本当に必要なものかどうか、客観的に見極める必要があるでしょう。

社員が日常的に行うワークフローなどは、社内ポータルサイト内に組み込むことで、フローに携わる社員の作業時間短縮が可能です。業務に関わる各種マニュアルも一箇所に格納することで、作業の一元化を図れます。

業務のマニュアル化を進めることで、特定の社員しか対応できない分野を減らせ、作業の分担化を可能にします。

また、社内ポータルサイト内でプロジェクトの進行管理を行えば、進捗状況を客観的に把握しやすくなり、長時間労働が発生しないかを事前に注視することができます。

6−2 2.多様な働き方の導入

 ワークライフバランスの推進により、働き方に多様性を持たせることで、多くの社員が自由度の高い柔軟な勤務形態を実現できます。女性社員が出産や育児のタイミングで多様な働き方を選択できることは、休暇明けから継続して仕事を続けられる要因になります。

性別に関係なく、家族の介護が必要になった際にも、周囲の目を気にせず休暇を取得できる企業風土を作り上げることが重要です。

 

多様な働き方の導入における具体例

ワークライフバランスの導入によって、社員の多様な働き方を実現している企業として、サイボウズ株式会社の事例を紹介します。同社では、「100人いたら100通りの働き方」があると考え、社員が望む働き方の実現に取り組みました。

働き方の変革のために、「制度」「ツール」「風土」の3つの要件を整えています。

制度やツールを活用するのは社員やチーム次第であり、それを認める企業風土が整っていることが、多様な働き方の実現に不可欠であるとの考えからです。

【制度】

・育児・介護休暇制度

・ウルトラワーク(在宅勤務制度)

・育自分休暇制度

・副(複)業許可

・子連れ出勤制度

 など

 

【ツール】

・情報共有クラウド

・セキュリティ

・リアルオフィス/バーチャルオフィス

 など

 

【風土】

・「公明正大」

・「自立と議論」

・「ルールより目的」

 

 サイボウズ株式会社では、ワークライフバランスに配慮した制度の導入やコミュニケーションを活性化させる施策を導入し、離職率を2005年の28%から2018年の5%程度にまで、大幅に減少させています。

 

参考:サイボウズ株式会社・ワークスタイル

https://cybozu.co.jp/company/work-style/

  

経験やスキルを身につけた社員を離職させることなく、長期間にわたって勤務を続けてもらうのは、企業にとっても大きなメリットがあります。社員の帰属意識の向上にもつながるでしょう。

6−2−1 リモートワークの実施

 社員が職場以外の場所で働ける仕組みを、「リモートワーク」といいます。自宅やコワーキングスペースなどでパソコンを使って仕事ができるなど、自由度の高い働き方が可能です。出勤する必要がないため毎日の通勤時間を削減でき、仕事に集中することができます。

育児や介護をしながら働く社員にとって、在宅勤務できるリモートワークには大きなメリットがあるのです。

勤務場所や時間に囚われずに働けるリモートワークですが、他の社員との意思の疎通が難しくなる側面があります。同じオフィス内でなら口頭でやりとりできる内容も、電話やチャットなどを使用しなければなりません。お互いの意図がきちんと伝わっているかの確認が必要です。

また、社外での作業にあたってセキュリティなど情報面の管理は必須です。事前にしっかりと打ち合わせをして、遠隔で働きながらもスムーズなやりとりができるようにしておきましょう。

 

6−2−2 フレックスタイム制の導入

 自由度の高い働き方の実践として、「フレックスタイム制」の導入があります。フレックスタイム制とは、社員が一定期間内における始業と就業の時刻、労働時間をあらかじめ決めておくことで、フレキシブルな働き方を実現できる制度です。

コアタイムという必ず勤務する時間帯を挟み、フレキシブルタイムという、いつ出退勤してもよい時間帯を設けることで、子供を保育園に送ってからや、早朝の通勤ラッシュを避けて出勤したり、習い事などのために早めに退勤したりすることが可能になります。

繁忙期には多めに働き、落ち着いた時期は早めに退社するなど、社員自ら柔軟性のある働き方を決めることができるのです。

フレックスタイム制の導入においては、社員同士の総労働時間が変わらないため、評価する際に影響が少ない点がメリットです。

注意点としては、社員同士が同じ時間帯に顔を合わせる機会が減るため、コミュニケーション不全に陥らないようにする必要があります。

6−3 3.福利厚生の整備

 社員にとって働きやすい環境を整えるのも、ワークライフバランス推進の一環です。社員が状況に合わせて取得できる休暇制度、育児休暇や介護休暇などの整備を行いましょう。社員の自己成長を促すための教育の機会を多く設けることも大切です。

この時に重要なのは、福利厚生を整えただけで終わらせないこと。社員が周囲の目を気にせずに、各種休暇を取得できるような企業風土を整えることが大事です。制度と運用の仕組みをセットで考えることが、福利厚生をうまく活用してもらうためには欠かせません。

6−3−1 育児休暇・介護休暇の取得推進

 女性が出産後に同じ職場で継続して働き続ける割合は増加傾向にありますが、女性の第一子出産後の離職率は高いのが現状です。

内閣府による2010年から2014年のデータによると、第1子出産前後に女性が就業続ける割合は53.1%ですが、離職率は46.9%と半数近くなっています。

 

参考:内閣府・「共同参画」20195月号

http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/201905/201905_02.html

 

また、正社員の継続就業率は上昇傾向にありますが、パートなどの非正規として働く場合は継続雇用が難しいという側面があるようです。

企業としては、育児休暇や介護休暇の取得の推進により、女性社員が継続して長く働き続けられる環境の整備が課題であるといえます。非正規雇用の社員に対しても制度を適用できるよう、社内制度を整えるのも大切です。

男性社員の場合は、より育児休暇が取得しにくい現状にあります。制度が整備されていなかったり、評価への影響や周囲からの視線を気にしたりして、取得できないケースが多くあるようです。

6−3−2 教育の機会を設ける

 IT化やグローバル化の進展により、時代の変化に柔軟に対応できる人材の活躍が求められています。企業としては、社員に対して教育の機会を与え、スキルアップへ向けて積極的にチャレンジできる企業風土を整えましょう。社員の成長を促すことで、自主的な判断力を養い、定着率を高めるのにつながります。

厚生労働省では、企業が社員に対して職業訓練の実施や自発的な職業能力開発の支援を行った場合、「キャリア形成促進助成金」という制度を活用できるようにしています。キャリア形成促進助成金は、各種訓練にかかる経費や、訓練中に発生する賃金などを助成する制度です。社員の教育を積極的に行いたい場合は、ぜひご活用ください。

 

参考:厚生労働省:人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

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7 国内の導入企業の事例3

最後に、ワークライフバランスを推進している3社の導入事例を紹介します。

導入すべき内容や整えるべき制度などは企業規模によって異なりますが、社員の働きやすさを考えたものとして、非常に参考になるでしょう。

 

7−1 伊藤忠商事株式会社:朝型勤務の実現

 大手総合商社である伊藤忠商事株式会社では、他社に先駆けて働き方改革を実施しています。その一環として、2013年から「朝型勤務」を導入。20時以降の勤務を原則禁止し、22時から5時までの深夜勤務を禁止するなど、夜間の残業を無くしたうえで、5時から8時までの早朝勤務に深夜勤務と同様の割増賃金を支給するなど、社員に対して朝型の勤務を推奨しています。

また、8時より前に出勤している社員には軽食を支給するなど、健康管理の視点も取り込んでいます。社員が育児や介護に直面したとき、継続して働き続けられるように、育児休暇など各種制度の充実を図っています。社員だけでなくその上司も巻き込んだ育児休暇取得促進キャンペーンを実施し、2015年から3年間で168人の男性社員が育児休暇を取得しています。

2016年からは妊娠や育児、介護などにより、勤務時間に制約のある社員や通勤が困難な社員に対して在宅勤務制度を適用しています。

伊藤忠商事株式会社では、社員が働きがいを持って長く勤め続けられる環境の整備が進んでいるのです。

 

参考:伊藤忠商事株式株式会社・社員が活躍できる環境づくり

https://www.itochu.co.jp/ja/csr/employee/working_environment/index.html

7−2 株式会社ジェイティービー:従来の働き方を見直す

大手旅行会社である株式会社ジェイティービーでは、長時間労働になりがちなサービス業のために、組織を挙げてワークライフバランスの実現に取り組みました。

以前は時間外労働が当たり前という風潮があり、社員が個人的な行動で改善できるものではありませんでした。そこで、外部コンサルタントに協力を依頼し、「働き方の見直しプロジェクト」を実施したのです。マネジメント層から意識改革が必要と考え、各店舗の代表者会議でワークライフバランスの重要性を説きました。

長時間労働が問題になっていたチームを分析し、「コミュニケーション不足」や「整理整頓不足」という課題が判明しました。また、ワークライフバランス改善の取り組みを表彰したり、社内報に掲載したりするなど、社員に伝達することで浸透を図りました。

結果として多くのチームで残業時間が削減でき、チーム力の強化による生産性の向上が見られたそうです。

 

参考:株式会社ジェイティービー・JTBグループのダイバーシティ推進

https://www.jtbcorp.jp/jp/company/about_jtb/diversity/

  

7−3 株式会社ライフィ:出勤時間を選べるように

東京都が認定する「ライフ・ワーク・バランス認定企業」として、平成30年度の認定企業11社の中から大賞に選ばれた、株式会社ライフィ。ライフ・ワーク・バランス認定企業とは、生活と仕事の調和を実現するための取り組みを行う中小企業を対象にしたものです。

株式会社ライフィでは、2014年に起きた社員の体調不良による入院をきっかけに、「社員を大切にできる会社を目指そう」とライフワークバランスの推進を決意。2015年から導入した週に1回のノー残業デーを発展させ、すべての社員が毎日1時間早く退社できる「短縮労働時間制度」を導入しました。

また、出勤時間を830分から10時まで30分刻みで選択できる、「選べる出勤時間制度」も導入し、育児や介護、遠距離から通勤してくる社員への配慮を実施。勤務時間に柔軟性を持たせることで、働きやすい環境を整備しました。結果として、社員の毎月の平均労働時間が約20時間減少したそうです。

2017年には社長の呼びかけにより、「ライフ・ワーク・バランスプロジェクト」が発足。メンバーに選ばれた社員に対しては、通常の仕事量を配慮してプロジェクトに注力できるようにしました。有給休暇の取得率向上や、「気づきBOX」を設置して社員の意見を会議にかけて解決。さまざまな取り組みが功を奏し、2016年と2017年の離職者0を達成しました。

 

参考:株式会社ライフィ・ライフィが「2018年度 東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」 大賞に選出されましたhttps://lify.co.jp/2018%e6%9d%b1%e4%ba%ac%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%95%e3%83%af%e3%83%bc%e3%82%af%e3%83%90%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%b9/

 

企業規模に関係なく、ワークライフバランス実現のための自発的な取り組みは、自社で推進する際の貴重な判断材料になるでしょう。

 

8 まとめ

ワークライフバランスとは、「生活と仕事の調和」という意味で、社員が仕事と育児や介護、プライベートを両立し、調和を実現することでした。

「家庭との両立をめざしたい」「プライベートな時間を学習など自己成長に使いたい」といった、さまざまな考え方に適応できる、多様性のある働き方の実現が求められています。

ワークライフバランスの推進が求められる背景としては、少子高齢化問題がありました。

労働力人口の減少によって、女性や高齢者が不自由なく働ける環境づくりが急務となっているのです。

 

しかし、多くの企業ではまだまだ実現できていない実情があります。

企業としては、ワークライフバランスの推進によって、以下の4つのメリットを享受できます。

1.人材の確保がしやすくなる

2.離職者を減らせる

3.生産性の向上をめざせる

4.取り組みを外部にPRできる

ワークライフバランスの推進には、長時間労働の削減や労働環境の見直しなど、導入のためのコストがかかります。しかし、社員にとって居心地がよく、長く働きたいと思えるような環境づくりは、企業の今後の存続にとっても非常に重要だといえるでしょう。

 

一度に全社に導入するというのは現実的ではないため、導入企業例を参考にしながら、部署やチーム単位で実践していくのが効果的です。

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