
施策から見る、組織風土改革に成功した5社

組織の風土や文化を変えることは、多くの企業にとって大きな課題となっています。社員のモチベーションを高め、より良い職場環境を作りたいと考えている経営者や管理職の方も多いでしょう。しかし、実際に組織風土を変えていくのは簡単なことではありません。どのように取り組めば良いのか、具体的な方法が分からずに悩んでいる方も少なくないです。
そこで、この記事では、取り組みから学べる具体的な方法やポイントをお伝えします。
これらの成功事例を参考にすることで、効果的な組織風土改革を実践するヒントが得られるでしょう。
MVV浸透による組織風土改革
組織風土改革に成功した企業の事例は、多くの経営者にとって貴重な学びとなります。
MVVが浸透した組織とは、従業員一人ひとりが会社のミッション・ビジョン・バリューを理解し、それを日々の業務の指針として行動する状態です。全員が共通の目標に向かい、力を合わせて進む姿が、同じ羅針盤を持つ船とも例えられます。
MVVが浸透するメリットは多くあり、まずは自律的な組織文化が育まれ、イノベーションが促進されます。また、強固な組織文化が構築され、エンゲージメントが向上し、優秀な人材の採用や育成も効率化されます。結果として、企業のブランド価値も向上します。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社
スターバックス コーヒー ジャパンは、MVVを浸透させることで、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、独自の組織風土を築き上げてきました。
ミッション(使命)として「人々の心を豊かで活力あるものにするために―ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから。」を掲げ、ビジョン(理念)として「最高のコーヒーを通じて、人と人とのつながりを創出する」ことを目指しています。さらに、バリュー(行動指針)として、パートナー、コーヒー、お客様を中心とした日々の行動や、互いに認め合う文化の創造、勇気ある行動と新しい方法の追求、誠実な対応と心の通った瞬間の大切さ、そして全力を尽くし結果に責任を持つことを重視しています。
スターバックスがMVVを浸透させた方法
まず、新人向けに実施される80時間にも及ぶ研修では、コーヒーの知識や接客スキルだけでなく、MVVについても深く学ぶ機会が設けられています。さらに、従業員が常に携帯する「グリーンエプロンカード」に行動指針を明記することで、日々の業務の中でMVVを意識できるよう工夫されています。そして、人事評価の際にも、従業員の行動がMVVに沿っているかを評価項目に組み込むことで、MVVに基づいた行動を促進しています。
このような取り組みの結果、スターバックスは従業員のエンゲージメント向上、顧客満足度の向上、ブランドイメージの向上など、多くの成果を上げています。MVVを浸透させることは、企業の成長に欠かせない要素と言えるでしょう。 さらに、4ヶ月に1回、アルバイトを含む全スタッフの人事考課を行い、個人の目標とMVVを紐付けることで、MVVの実践を促進しています。このようなMVVの浸透を前提に、スタッフに大きな裁量権を与えることで、自主性と責任感を育んでいます。 このようなMVVに根ざした研修・評価・目標設定により、スターバックスは強固な組織風土を築き上げ、従業員の高いモチベーションと顧客満足度を実現しています。自社のMVVをどのように策定し、浸透させていくか、スターバックスの事例を参考に検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社リクルート
困難を乗り越え、MVVを浸透させたリクルート
1988年の「リクルート事件」は、リクルートにとって大きな転換点となりました。企業としてのあり方を根本から見直し、その過程で誕生したのが、現在の企業活動の根幹を成す「経営理念」です。 リクルートの経営理念は、「ビジョン」「ミッション」「バリューズ」の3つで構成されており、組織風土改革の代表的な事例として多くの企業から注目されています。
ビジョン(目指す世界観): Follow Your Heart
ミッション(果たす役割): まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。
バリューズ(大切にする価値観): 新しい価値の創造、個の尊重、社会への貢献
リクルートのMVV浸透:社員の「Will」を尊重し、個の力を開花させる
リクルートのMVV浸透は、社員一人ひとりの「Will(やりたいこと)」を尊重し、個の力を最大限に引き出すことに成功した好例と言えるでしょう。
「人は、内なる情熱が解放された時に最も大きな力を発揮する」という考えのもと、「個の尊重」を柱としたMVVを構築。社員が自らの情熱に従い、最大限の力を発揮できる環境作りを目指しました。
そのために、リクルートは以下のような取り組みを実施しました。
経営陣自らが率先してMVVを体現
経営陣が率先してMVVに基づいた行動を示すことで、社員への浸透を促進しました。単なるスローガンではなく、日々の行動や意思決定の指針としてMVVを根付かせる努力を継続しています。
「Will」「Can」「Must」の明確化と自律的なキャリア形成支援
社員一人ひとりの「Will」「Can」「Must」を明確化し、自身のキャリアプランを主体的に考えられるよう、様々な制度や研修プログラムを用意しています。
社員一人ひとりに寄り添う、きめ細やかなサポート体制
社員が安心して能力を発揮できるよう、メンター制度やキャリアカウンセリングなど、多岐にわたるサポート体制を整えています。 このような取り組みによって、リクルートはMVVを社員一人ひとりの行動に浸透させ、イノベーティブな企業文化と持続的な成長を実現しています。社員のエンゲージメントを高め、企業理念に基づいた行動を促進することで、組織全体の成長に繋げています。
リクルートのMVV浸透への取り組みは、他の企業にとっても、組織風土改革を成功させるための貴重な学びを与えてくれるでしょう。
株式会社 Merone
Meroneは、働きたくても働けないママさんを支援するオンラインスクールを運営する企業です。社内の平均年齢23.6歳という若い組織でありながら、3年連続で売上成長率270%を達成する急成長を遂げています。この成功の背景のひとつには、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透と効果的なパフォーマンス・マネジメントの導入があります。
①高頻度1on1ミーティング
週1回15分、上司と部下が業務の進捗や課題、キャリアプランなどを共有。
定期的な人事評価: 3ヶ月に1回、目標達成度だけでなく、行動プロセスや成長を評価。
②マネジメントスタイル
従来の指示命令型ではなく、社員の強みを引き出すサーバント型リーダーシップを浸透。
③評価制度
成果だけでなく、プロセスや行動特性、成長意欲を評価対象に。
④人材育成制度の強化
社員一人ひとりのキャリアプランに合わせた研修やスキルアップ機会を提供。
これらの取り組みによって、社員のエンゲージメントとパフォーマンスが向上し、若手中心の組織でありながらも高い定着率と生産性を実現しています。
Meroneの事例は、MVVを単なる理念としてではなく、具体的な施策と結びつけることで、若手中心の急成長企業においても効果的に組織変革を実現できることを示しています。頻繁な1on1ミーティングと定期的な評価制度を通じて、MVVを日常的に意識し実践する文化を醸成し、結果として組織全体の成果創出につなげています。
理念・メッセージ浸透による改革事例

オリンパス株式会社
オリンパスは、「Our Purpose 私たちの存在意義」と「Our Core Values 私たちのコアバリュー」という2つの経営理念を掲げ、組織全体での浸透を図ることで大きな変革を実現しました。この取り組みにより、組織文化が変化し、社員のエンゲージメントが向上するなど、多くのメリットが生まれています。
多角的な取り組みで「Our Purpose」「Our Core Values」を浸透
オリンパスは、トップダウンとボトムアップの両面から理念浸透を図る戦略を取りました。経営トップからのメッセージ発信だけでなく、社員一人ひとりが
経営理念について考え、議論するワークショップなどを実施することで、主体的な理解を促進したのです。
さらに、行動評価指標に「Our Core Values」を反映させ、評価やフィードバックを通じて、理念に基づいた行動を評価。イントラネットや社内報を活用し、理念に関連する活動や社員の取り組み事例を共有することで、日々の業務の中で自然と意識できる環境を構築しました。
また、新入社員研修から階層別研修まで、「Our Purpose」「Our Core Values」を学習コンテンツに組み込み、継続的な意識づけを実施。社員一人ひとりが、オリンパスの一員としての自覚と責任を持ちながら成長できるよう、人材育成プログラムにも理念を組み込んでいます。
理念浸透がもたらした変化
これらの多角的な取り組みの結果、社員一人ひとりの意識が変化し、組織全体にも大きな変化が生まれました。社員のエンゲージメントが向上し、自分の仕事が「Our Purpose」の実現に繋がっているという実感を持つ社員が増加。共通の価値観のもと、部門を超えた連携が強化され、より良い製品・サービスの提供が可能になりました。
また、社員一人ひとりが顧客視点を持つようになり、顧客満足度の向上にも繋がっています。オリンパスの事例では、トップダウンとボトムアップの両面から、社員一人ひとりが理念を理解し、共感し、行動に移せるような仕組みを作ることで理念浸透や企業の成長につながっています。 オリンパスの取り組みを参考に、自社の理念浸透に向けた取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
キリンビール株式会社
キリンビールは、理念・ブランドメッセージの浸透を軸とした組織風土改革によって、業績低迷から復活を遂げた企業として注目されています。かつてのビール市場の王者から一転、苦い経験をバネに、社員一人ひとりの意識改革、そして組織全体の変革を実現しました。
「お客様のことを一番に考える」という原点回帰
2001年、キリンビールはビール類市場のトップシェアから転落するという、大きな転換点を迎えます。この危機をきっかけに、「新キリン宣言」を発表し、「お客様本位」「品質本位」を掲げた組織風土改革に着手しました。しかし、改革は思うように進まず、社員の意識は依然として旧態依然としたままでした。
そこで、2015年に就任した布施孝之社長は、社員の意識改革を鍵と捉えた、「お客様のことを一番に考える組織風土」への変革を行います。
トップダウンとボトムアップの融合による意識改革
布施社長は、トップダウンとボトムアップの両面から理念浸透を図る戦略を取りました。
トップダウン: 布施社長自らが全国40ヶ所以上を訪問し、延べ900人以上の社員と対話する「対話集会」を実施。「お客様のことを一番に考える」というメッセージを繰り返し発信し続けました。
ボトムアップ: 若手社員を中心とした「布施塾」を開講。他業種の経営者を招いた講演などを通して、社員一人ひとりが「自分たちの組織はどうあるべきか」を主体的に考える機会を創出しました。
現場からの意見発信: 社員が自由に意見やアイデアを発信できる場を設け、ボトムアップで組織改革を進めるための取り組みを行いました。
理念浸透がもたらした組織の変革
これらの取り組みによって、社員一人ひとりの意識は徐々に変化し、組織全体に以下の変化が見られるようになりました。
顧客志向の向上: 「お客様のために」という意識が根付き、顧客視点に立った商品開発やマーケティング活動が活性化しました。
自律的な行動促進: 社員一人ひとりが当事者意識を持ち、自ら考え、行動する風土が醸成されました。
部門間連携の強化: 共通の目標に向かって一体感が生まれ、部門を超えた連携が強化されました。
業績回復を牽引した組織力
理念・ブランドメッセージの浸透による組織風土改革は、目に見える成果に繋がりました。社員が一丸となってブランドを育てていく風土が醸成され、2019年にはフラッグシップブランド「一番搾り」の売り上げが過去10年で最高を記録。その後の業績も好調に推移しています。
キリンビールの事例は、理念・ブランドメッセージの浸透が企業の成長に大きく貢献することを証明しています。
組織風土変革の成功事例から学ぶ4つのポイント

段でご紹介した事例は、実際に組織文化の変革を成し遂げた企業の取り組みから導き出された、貴重な教訓です。
ポイントを押さえることで、組織風土改革の成功確率は大きく高まります。ただし、各企業の状況に応じて柔軟に対応することも忘れてはいけません。自社の特性を十分に理解した上で、参考にしながら、独自の改革プランを策定していくことが望ましいでしょう。
企業成長の土台としての組織風土変革で進行
組織風土を変革するには、まず既存の「当たり前」を見つめ直すことから始めましょう。長年培われてきた慣習や価値観は、組織の根幹を成し受け継がれるべきものもあれば成長のための変革の障壁になりかねないものもあります。
カルチャーを企業にとって望ましいものへ変えていく「カルチャー変革」。それは、企業の中長期的な方針を実現するために、「当たり前とされている行動/判断基準」を望ましい形に変え、当たり前の基準を刷新していくことです。 しかし、カルチャーは目に見えないものであり、「当たり前とされている」だけに、変えることは容易ではありません。
組織風土変革を成功させるためには、以下のステップが重要です。
1.現状分析: 組織の「当たり前」を客観的に分析し、現状を把握する
2.課題の明確化: 変革すべき「当たり前」を特定し、目指すべき姿を明確する
3.意識改革: 社員一人ひとりが「当たり前」を見直し、新しい価値観を共有する
全てのプロセスにおいて、社員全員の参加が不可欠です。トップダウンだけでなく、現場の声に耳を傾け、多様な視点を取り入れることで、より実効性の高い変革が可能になります。
変革の土台は、小さな成功体験の積み重ねから
変革の土台作りには時間がかかるため、焦らず着実に進めることが大切です。小さな成功体験を積み重ね、変化に対する前向きな姿勢を醸成していきましょう。社内コミュニケーションを活性化させ、新しいアイデアや提案を歓迎する雰囲気づくりも効果的です。 組織風土の変革は容易ではありませんが、適切なアプローチと継続的な取り組みにより、必ず成果を上げることができます。
変化を恐れず、新しい価値観を創出する
組織風土や文化を変えるには、新しい価値観を受け入れる姿勢が不可欠です。成功している企業は、変化を恐れず、常に挑戦し続けています。一方、多くの組織が心理的安全性のある職場を目指しながらも、成果が出ないことや雰囲気が醸成されないことに悩んでいます。
この状況を打破するには、経営トップの意識改革が不可欠です。経営トップと現場の認識のギャップを埋めるには、双方向のコミュニケーションが重要です。経営トップは現場の言葉の背景や意図に興味を持ち、自ら変化を起こす姿勢が求められます。同時に、現場の従業員も自身の態度を見直す必要があります。「経営者はわかっていない」という思い込みが、実際のコミュニケーションに影響を与えている可能性があります。 相手に求める対応を自らが先に実践することで、組織全体の雰囲気を変えるきっかけとなります。
従業員のエンゲージメントを高める
従業員のエンゲージメントを高めることは、組織風土や文化を変える上で非常に重要です。エンゲージメントの高い従業員は、会社の目標や価値観に共感し、自発的に業務に取り組む傾向があります。これにより、生産性の向上や革新的なアイデアの創出につながり、組織全体の成長を促進します。
エンゲージメントを高めるためには、まず従業員の声に耳を傾けることが大切です。定期的なアンケートや1on1ミーティングを通じて、彼らの意見や懸念事項を把握し、それに基づいて改善策を講じることで、従業員は自分たちの意見が尊重されていると感じるでしょう。また、社内外の研修プログラムや、チャレンジングな業務への挑戦機会を設けることで、従業員の成長意欲を刺激し、会社への貢献意識を高めることができます。
さらに、透明性の高いコミュニケーションを心がけることも重要です。会社の方針や決定事項を明確に説明し、従業員が自分の役割や貢献度を理解できるようにすることで、帰属意識が高まります。
理念・MVVが浸透する仕組みを作る
理念やMVVを組織に浸透させるには、単に掲げるだけでは不十分です。従業員一人ひとりが理解し、日々の業務に反映させることが重要です。そのためには、継続的な取り組みと仕組み作りが欠かせません。まず、理念やMVVを分かりやすく説明し、具体的な行動指針に落とし込むことが重要です。社内報や定期的なミーティングで繰り返し伝えることで、従業員の理解を深められます。さらに、理念に基づいた行動を評価・表彰する制度を導入するのも効果的です。例えば、「MVV実践賞」を設け、理念に沿った行動を取った従業員を表彰することで、全社的な意識向上が図れます。また、研修などでワークショップを実施し、グループで理念を深く考える機会を提供するのも良い方法です。 日々の業務の中でも、理念やMVVを意識づける工夫が大切です。例えば、朝礼で理念の一部を唱和したり、社内のコミュニケーションツールで定期的にMVVに関連するメッセージを発信したりすることで、常に意識する環境を作ることができます。
従業員の自発的な行動を促進するピアボーナス
より詳細な組織風土改革の具体的な施策の一つとして、従業員の自発的な行動の促進にもっとも有効な「ピアボーナス」の活用が挙げられます。Unipos のピアボーナスは、従業員同士で感謝の気持ちを込めて少額のボーナスを送り合う仕組みです。オープンなタイムラインのため、社内の隠れた貢献や挑戦が可視化され、組織全体のモチベーション向上やエンゲージメント向上に繋がります。
組織風土の変革は、企業の成長を促進するだけでなく、社員一人ひとりの働きがいにも繋がります。ぜひ、この機会に組織の「当たり前」を見直し、より良い未来を創造しましょう。
組織風土/文化改革の失敗パターン

組織風土や文化を変えようとする際、多くの企業が陥りがちな失敗パターンがあります。これらを理解し、回避することで、より効果的な改革を実現できる可能性が高まります。
短期的な視点での取り組み
短期的な視点での取り組みは、従業員の行動や意識を一時的に変えることはできても、根本的な価値観や文化の変革には至りません。組織風土の改革には、継続的で一貫性のある取り組みが不可欠です。
また、短期的な成果にこだわりすぎると、従業員の疲弊や不信感を招く恐れもあります。頻繁な方針変更や性急な改革は、かえって組織の安定性を損なう可能性があります。成功する組織風土改革には、長期的なビジョンと粘り強い実行力が求められます。短期的な成果と長期的な目標のバランスを取りながら、段階的に変革を進めていくことが重要です。従業員の理解と協力を得ながら、着実に組織文化を育んでいく姿勢が、真の変革につながります。
MVVの押し付け
組織風土や文化を変える際に陥りがちな失敗の一つが、MVVの押し付けです。経営陣が熱意を持って策定したMVVであっても、一方的に従業員に押し付けるだけでは、真の組織変革には至りません。
むしろ、押し付けによって従業員の反発を招き、逆効果になることも少なくありません。例えば、現場の実情を考慮せずに理想論だけを掲げたMVVを強制すると、従業員は「現実離れしている」と感じ、やる気を失ってしまう可能性があります。
また、MVVの内容が抽象的すぎたり、日々の業務との関連性が見えにくかったりすると、従業員は「自分には関係ない」と捉えてしまいがちです。これでは、組織全体でMVVを共有し、一丸となって目指すべき方向性を見出すことは難しくなります。
MVVを効果的に浸透させるには、従業員との対話を重視し、彼らの意見や考えを取り入れながら、共に作り上げていく姿勢が大切です。具体的には、ワークショップやグループディスカッションを通じて、MVVの意味や重要性について話し合う機会を設けることが有効です。
トップのコミットメント不足
組織風土や文化の変革において、トップのコミットメント不足は深刻な問題です。
多くの場合、トップが変革の必要性を認識しながらも、日々の業務に追われて十分な時間や労力を割けないことがあります。また、変革の重要性を理解していても、具体的な行動に移せないケースも見受けられます。
トップのコミットメント不足は、従業員のモチベーション低下や変革への抵抗を引き起こす可能性があります。「上層部が本気でないのに、なぜ私たちが変わらなければならないのか」という不満が生まれ、組織全体の変革の機運が失われてしまいます。
この問題を解決するには、まずトップ自身が変革の重要性を再認識し、自らの言動を通じて組織に変革のメッセージを発信し続けることが大切です。定期的な全体会議やメールマガジンなどを通じて、変革の進捗状況や成果を共有し、従業員の理解と協力を求めることも効果的でしょう。
組織風土と文化を変える、おすすめの施策

組織風土や文化を変えるには、さまざまな施策を組み合わせて取り組むことが大切です。ここでは、効果的な施策をいくつかご紹介します。
マネジメント研修の実施
マネジメント研修は、組織風土を変える上で非常に効果的な施策の一つです。適切に設計された研修プログラムは、リーダーシップスキルの向上だけでなく、組織全体の価値観や行動規範の変革にも大きな影響を与えます。
例えば、心理的安全性を重視した研修を実施することで、オープンなコミュニケーションや建設的なフィードバックの文化を醸成できます。また、多様性と包括性に焦点を当てた研修は、より公平で創造的な職場環境の構築に役立ちます。
重要なのは、研修内容を実際の業務に結びつけることです。ケーススタディやロールプレイングを通じて、学んだスキルを実践的に適用する機会を設けましょう。さらに、研修後のフォローアップセッションを設けることで、学びの定着と継続的な改善を促進できます。
マネジメント研修は一回限りのイベントではなく、継続的なプロセスとして捉えることが大切です。定期的な研修と、日々の業務における実践を組み合わせることで、組織全体に新しい風土が根付いていきます。
組織学習の促進
組織学習を促進することは、組織風土や文化を変える上で非常に効果的な方法です。理念浸透ワークショップはその一例で、従業員が会社の価値観や目標を深く理解し、日々の業務に反映させることができます。
このようなワークショップでは、グループディスカッションやロールプレイングを通じて、会社の理念や価値観を自分事として捉える機会を提供します。参加者は互いの意見を共有し、理念を実践するための具体的な行動について話し合います。
また、定期的な学習会や勉強会の開催も有効です。これらの機会を通じて、従業員は新しい知識やスキルを習得するだけでなく、部門を越えたコミュニケーションを図ることができます。こうした横のつながりは、組織全体の風通しを良くし、新しいアイデアや改善策が生まれやすい環境を作り出します。
エンゲージメント向上ツールの導入(カルチャー変革サービスの導入)
エンゲージメント向上ツールの導入は、組織風土や文化を変える効果的な方法の一つです。これらのツールは、従業員の声を聞き、フィードバックを収集し、組織全体のコミュニケーションを促進します。また、社内SNSやチャットツールの活用により、部門を超えた交流や情報共有が活性化します。これにより、縦割り組織の壁を取り払い、オープンな組織文化を醸成できます。組織風土改革を成功させるには、社員一人ひとりの意識改革と行動変容が不可欠です。しかし、従来型の研修や施策だけでは、表面的な変化に留まり、真のエンゲージメント向上に繋げることが難しいケースも少なくありません。
そこで注目されているのが、 ツールを活用した、カルチャー変革サービスです。例えば、ピアボーナスや称賛のメッセージを送り合うことができるUnipos(ユニポス)のようなサービスは、従業員同士が日々の業務の中で自然と感謝や称賛を伝え合うことを促進し、組織全体のコミュニケーション活性化やエンゲージメント向上に貢献します。従業員同士のコミュニケーションを可視化することで、組織内の良好な関係性を築き、心理的安全性を高める効果も期待できます。
ルチャー変革支援サービスを導入することで、組織風土改革をより効果的かつスムーズに進めることが可能になります。
組織風土改革フレームワークの導入
近年、多くの企業が組織風土改革に取り組んでいますが、その成功には明確なフレームワークと戦略的なアプローチが不可欠です。ここでは、組織風土改革に効果的なフレームワークをご紹介します。
組織全体を俯瞰する「マッキンゼーの7S」
マッキンゼーが提唱する「7S」は、組織を以下の7つの要素に分解し、相互の関係性を分析することで、組織全体のバランスを捉え、効果的な改善策を見つけ出すフレームワークです。
ハードのS(変更しやすい要素)
戦略(Strategy): どのような目標を、どのような方法で達成するかという、組織全体の方針や計画。
組織構造(Structure): 部署の役割分担や指揮命令系統など、組織の骨組み。
システム(System): 業務プロセスや情報共有システムなど、組織活動を支える仕組み。
ソフトのS(変更に時間と労力を要する要素)
価値観(Shared Value): 組織メンバーが共通して持つ価値観や行動規範。
スキル(Skill): 組織メンバーが持つ知識や能力。
人材(Staff): 組織を構成する人材の能力や意識、モチベーション。
スタイル(Style): 組織特有の意思決定やコミュニケーションのスタイル。
組織風土改革では、目に見える「ハードのS」だけでなく、組織文化や人の意識といった「ソフトのS」にも目を向け、両者を統合的に変革していくことが重要です。
Uniposのカルチャー変革メソッド:人的資本経営と推奨行動のフレームワーク
Uniposは、独自のメソッドを通じて、企業のカルチャー変革支援しています。その中核にあるのが、「人的資本経営フレームワーク」と「推奨行動フレームワーク」です。
1. 人的資本経営フレームワーク
約5,000例のリサーチに基づき開発されたこのフレームワークは、企業の経営戦略と人事戦略を連動させ、人材への投資効果を最大化します。

2.推奨行動フレームワーク
抽象的な理念や方針を、具体的な行動レベルに落とし込むことで、従業員の行動変容を促進します。
Uniposはこれらのフレームワークを活用し、企業のビジョンを具体的な行動に落とし込み、組織文化の変革を支援しています。

まとめ
ここまで見てきたように、リクルートやキリンビールなど、多くの企業がMVV浸透による組織風土改革に挑戦し、成果を上げています。
重要なのは、組織風土改革が単なる表面的な変化ではなく、組織の文化そのものを変革していくプロセスであるという点です。そのためには、経営陣が改革への強いコミットメントを示し、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、理念やMVVを組織全体に浸透させていく必要があります。
まず現状を分析し、組織風土に関する課題を明確化することが重要であり、その上で、目指すべき組織像を共有し、従業員の意識改革を促進していきます。
この過程において、Uniposのピアボーナスのような施策は、従業員の自発的な行動を促し、組織全体のモチベーションやエンゲージメント向上に大きく貢献します。
組織風土改革は、一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、企業が持続的な成長と競争力維持を図るためには、避けては通れない重要な取り組みと言えるでしょう。
本稿で紹介した企業の事例を参考に、自社の組織風土改革にぜひ取り組んでみてください。
また、改革するべき課題を知りたい方向けに、Uniposでは組織診断ツールをご用意しております。
