ダイバーシティ推進の課題と解決法|企業が取り組むべきD&I・DE&I戦略

多様性を尊重し、誰もが活躍できる社会を目指すダイバーシティ&インクルージョン。

近年、多くの企業がDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)戦略を推進していますが、道のりは平坦ではありません。

本記事では、企業がダイバーシティを推進する上での課題を明確にし、具体的な解決策を提示します。

インクルージョンを実現するための組織文化の醸成、評価制度の見直し、そして多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境づくりなど、企業が取り組むべき戦略を詳しく解説していきます。

概念

意味

Diversity(多様性)

性別、年齢、国籍、障がいの有無など、多様な背景を持つこと。

Inclusion(包摂)

多様な人々が互いに尊重し合い、組織内で能力を最大限に発揮できる環境を指します。

Equity(公平性)

一人ひとりの状況に応じて、機会やリソースを公平に提供することです。

行動を見える化し、理念・行動指針を体現!

目次

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  1. ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは
    1. 定義と国際的な文脈
    2. ダイバーシティとインクルージョンの違い
    3. 「DE&I」への拡張と注目の背景
  2. 日本でD&Iが注目される理由
    1. 厚生労働省ガイドラインと人的資本経営
    2. グローバル企業との比較から見る日本の課題
  3. D&I推進がもたらす経営メリット
    1. イノベーションと生産性の向上
    2. 人材定着とエンゲージメント強化
    3. リスクマネジメントと企業信頼性
  4. D&I推進に潜む問題点と課題
    1. 形骸化する施策のリスク
    2. 無意識バイアスと社内の抵抗
    3. 多様性と公平性のバランス難易度
  5. 企業が取り組むべきDE&I戦略
    1. 教育・研修(アンコンシャスバイアス研修など)
    2. 組織風土改革と心理的安全性の向上
    3. トップとミドルマネジメントの役割
    4. 採用・育成・評価制度への組み込み
  6. 成功企業の実践事例
    1. NTTデータ
    2. LIXIL
    3. 資生堂
  7. まとめ|D&IからDE&Iへ、持続的成長に向けて
    1. 働き方改革・ハイブリッドワークとの連動
    2. 経営戦略としての位置づけ
  8. Q&A|ダイバーシティ&インクルージョンに関するよくある質問
    1. Q1. ダイバーシティとインクルージョンの違いは?
    2. Q2. DE&Iとは何を指すのですか?
    3. Q3. D&I推進にはどんな課題がありますか?
    4. Q4. 企業が最初に取り組むべきステップは?
    5. Q5. 厚生労働省はD&I推進にどのような指針を示していますか?
    6. Q6. 中小企業でもD&Iは推進できますか?
    7. Q7. D&Iを進めると本当に業績が上がるのでしょうか?
    8. Q8. 取り組みを「形だけ」で終わらせないには?

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、性別・年齢・国籍・障がいの有無などの「表層的な多様性」に加え、価値観・信条・経験・スキルといった「深層的な多様性」を含めて尊重し、組織の力に変えていく考え方です。近年はESG投資や人的資本経営の観点からも重要性が増しており、単なる人事施策にとどまらず、企業価値を高める経営戦略として位置づけられるようになりました。

多様な人材を受け入れるだけでは十分ではありません。真に成果を生むためには、誰もが安心して意見を表明できる「心理的安全性」のある環境や、公平で透明性の高い評価制度、そして発言や挑戦が正当に評価される仕組みが必要です。例えば、女性管理職比率や男女間賃金格差、育休取得率といったKPIを明示し、その進捗を公開することは、組織の姿勢を示すと同時に、投資家や求職者にとって信頼できる判断材料となります。

時代背景

主な認識

1950-60年代(公民権運動期)

人種・性別に対する差別是正、人権擁護、コンプライアンス遵守

近年

企業の持続的競争力、イノベーション創出のための経営戦略、ESG投資における重要指標

「これらのKPIは国内の開示制度にも整合します(厚生労働省「女性活躍推進法に基づく公表指標」/金融庁・経産省「人的資本情報の開示ガイダンス」)。」

定義と国際的な文脈

D&Iの起源は、1950〜60年代のアメリカにおける公民権運動や、1964年の公民権法制定に遡ります。人種や性別に基づく差別を是正し、均等な雇用機会を保障するために雇用機会均等委員会(EEOC)が設立され、アファーマティブ・アクションといった施策が広がりました。当初は「差別是正」の文脈で語られていたD&Iですが、現代では「企業の持続的競争力を高める経営戦略」として国際的に位置づけられています。

特に近年は、ESG投資や人的資本開示の拡大により、企業がどのように多様な人材を活かしているかが、投資判断の重要な指標となりました。多様性推進の度合いは単なるCSR活動ではなく、企業の競争優位性や持続可能性を測る基準へと進化しているのです。

「(U.S. EEOC/Civil Rights Act Title VII 原典)」

「(WEF 等による国際指標でも人的資本・多様性の重要性が示唆)」

ダイバーシティとインクルージョンの違い

ダイバーシティ(多様性)とは、組織に多様な人材が存在している状態を指します。性別や年齢、国籍、障がいの有無といった表層的な違いに加え、価値観や職歴、スキル、性格といった深層的な違いも含めて「人材の多様性そのもの」を表現する概念です。一方で、インクルージョン(包摂)は、多様な人材が単に存在するだけでなく、それぞれが尊重され、能力を発揮できる環境を整えることを意味します。

よく使われる比喩に「パーティーに招待されるのがダイバーシティ、ダンスに誘われるのがインクルージョン」というものがあります。つまり、ダイバーシティは“人材の構成”であり、インクルージョンは“その構成を活かす文化や制度”にあたります。多様な人材を集めても、環境や仕組みが整っていなければ成果にはつながりません。

実際、会議で特定の人だけが発言を繰り返すような状況では、多様な意見が組織に反映されません。心理的安全性を担保し、誰もが安心して意見を出せる雰囲気をつくることが、インクルージョン実現の第一歩です。さらに、採用・評価・昇進の制度を透明性の高いものに見直すことで、多様性が組織の競争力へと結びつきます。

このように、ダイバーシティとインクルージョンは相互補完的な関係にあり、どちらか一方では不十分です。多様性を“存在”から“活躍”に変えるプロセスこそが、企業にイノベーションや持続的成長をもたらす鍵となります。

「DE&I」への拡張と注目の背景

近年、D&Iは「Equity(公平性)」を加えた「DE&I」へと進化しています。多様性を受け入れるだけでは、構造的な格差や不平等は解消できないため、一人ひとりの状況に応じた支援が必要とされるようになったのです。

この流れを後押ししたのが「ブラック・ライヴズ・マター」や「#MeToo」などの社会運動です。これらは、従来の「平等(Equality)」だけでは不十分であり、障壁を取り除く「公平性(Equity)」が不可欠だと示しました。

企業にとってエクイティの導入は、従業員が安心して能力を発揮できる環境を整える手段であり、結果としてエンゲージメントや生産性の向上につながります。つまりDE&Iは理念ではなく、持続的成長のための経営戦略として注目されているのです。

日本でD&Iが注目される理由

日本企業でダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が注目される背景には、社会構造の変化があります。最大の要因は少子高齢化による労働力人口の減少です。生産年齢人口は1995年の8,700万人から2023年には7,300万人台へ減少しており、女性や高齢者、外国人材など多様な人材の活用は不可欠となっています。

同時に、働き方やキャリアに対する価値観が大きく変化しました。リモートワークや柔軟な勤務制度へのニーズが高まり、従業員の多様なライフスタイルに応えることが組織の競争力につながっています。さらに、政府が推進する「人的資本経営」や上場企業への情報開示義務化も、D&Iを経営課題として位置づける後押しになりました。

つまり、日本でD&Iが注目されるのは単なるCSRの延長ではなく、労働力不足を補い、企業の持続的成長を実現するための経営戦略だからです。

「数値は**総務省統計局「人口推計(生産年齢人口)」**に基づきます。」

厚生労働省ガイドラインと人的資本経営

日本でD&Iが広がる背景には、国の政策と「人的資本経営」の台頭があります。厚生労働省は労働施策総合推進法に基づき、企業が多様な人材を活かすためのガイドラインを整備してきました。近年では「性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解増進法」も施行され、法的拘束力は弱いものの、企業にDE&I推進を求める社会的圧力が強まっています。「(厚生労働省:労働施策総合推進法・多様性推進関連)」

同時に、経済産業省が推進する「人的資本経営」では、人材をコストではなく資本として捉え、能力開発や多様性推進を通じて企業価値を高めることが重視されています。2023年からは上場企業に人的資本情報の開示が義務化され、女性管理職比率や男女間賃金格差などが投資判断の材料となりました。「(経済産業省「人的資本可視化指針」「人材版伊藤レポート」)」

このように、厚労省のガイドラインと人的資本経営の枠組みは、日本企業がD&Iを経営戦略の中核に据える大きな契機となっています。D&Iはもはや任意のCSR活動ではなく、投資家や社会からの信頼を得るための必須条件へと変化しているのです。「(金融庁/内閣官房・経産省:有価証券報告書での人的資本開示)」

項目

グローバル企業

日本企業

D&Iの焦点

人種、国籍、性的指向(LGBTQ+)、障がいの有無など、多岐にわたる側面を網羅的に経営戦略へ組み込む。

「女性活躍推進」に焦点が当てられるケースが多い。

意思決定層の多様性

多様なバックグラウンドを持つ人材が取締役会などに積極的に登用される傾向がある。

同質的な組織構造が根強く残る。

情報開示の透明性

多くのグローバル企業が詳細なデータを自主的に開示する。

法定開示の範囲にとどまるケースが多い。

グローバル企業との比較から見る日本の課題

日本企業のD&I推進は進展しているものの、グローバル企業と比べると依然として大きな課題を抱えています。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本は常に下位に位置し、特に政治・経済分野での遅れが顕著です。

欧米の企業では、人種・国籍・性的指向・障がいなど幅広い多様性を経営戦略に組み込み、取締役会など意思決定層に多様な人材を登用しています。また、自主的に詳細なデータを公開し、透明性を高める取り組みも一般的です。これに対し、日本企業は「女性活躍推進」に焦点が偏り、組織構造も同質的で、情報開示も法定範囲にとどまる傾向が強く見られます。

この差は、国際競争力や投資家からの評価に直結します。真に多様な人材が活躍できる環境を整えるためには、日本企業も意思決定層の多様化やデータ開示の透明性強化に踏み出す必要があります。D&Iを「制度上の義務」ではなく「経営戦略の柱」として位置づけることが、国際的に戦える組織への第一歩となるのです。「(World Economic Forum「Global Gender Gap Report(最新版)」)」

D&I推進がもたらす経営メリット

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、今や単なるCSRではなく、企業の競争力を高める経営戦略です。多様な人材が尊重され、それぞれの強みを活かせる組織では、以下のような効果が期待できます。

まず、多様な視点が交わることで新しいアイデアが生まれやすくなり、イノベーションや生産性向上につながります。例えば、性別や国籍の異なるチームは意思決定の質が高まり、変化の激しい市場にも柔軟に対応できます。

次に、インクルーシブな職場は従業員のエンゲージメントを高め、離職率の低下や人材定着を実現します。心理的安全性が担保されることで「自分らしく働ける」と感じる社員が増え、組織への貢献意欲も強まります。

さらに、D&I推進はリスクマネジメントの観点でも有効です。多様な視点を取り入れることでハラスメントやコンプライアンス違反のリスクを早期に察知でき、企業の信頼性やブランド価値を高める効果があります。

このように、D&Iはイノベーション、人材定着、リスク管理の三側面で経営メリットを生み、企業の持続的成長を支える基盤となるのです。「(McKinsey『Diversity Wins』等の包括レビュー参照)」

イノベーションと生産性の向上

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進は、組織に新しい発想と高い生産性をもたらします。性別・国籍・年齢・経験が異なる人材が集まることで、多角的な視点から課題に取り組めるようになり、従来の発想では生まれにくいアイデアや革新的な解決策が生まれやすくなります。

また、インクルーシブな環境は従業員一人ひとりのモチベーションを高め、「自分の意見が尊重されている」という心理的安全性が生産性向上に直結します。実際に、McKinseyの調査では多様性を重視する企業はそうでない企業と比べて利益率が高い傾向にあると示されています。

つまり、D&Iは単なる人材施策ではなく、イノベーション創出と業績向上を両立させる経営戦略そのものなのです。

さらに、グローバルに先進的な組織では、性別や国籍、年齢や宗教といった多様な背景を持つ人材を積極的に登用し、チームパフォーマンスやリスク対応力を高めています。
例えば米国の宇宙関連機関では、近年、宇宙飛行士の約4割が女性となり、異なる価値観やスキルを持つ人材を組み合わせることで、複雑な課題に柔軟に対応できる体制を築いています。

「(McKinsey『Diversity Wins / Delivering through Diversity』)」

定着率

2016

約60%

2019

約90%

人材定着とエンゲージメント強化

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進は、従業員が「自分らしく働ける」と感じられる心理的安全性の高い職場をつくります。多様な価値観や意見が尊重される環境では、社員は安心して発言や挑戦ができるため、組織への帰属意識(ビロンギング)が強まり、結果として離職率の低下や人材定着につながります。

さらに、従業員が「組織に貢献できている」という実感を持てることは、エンゲージメント向上に直結します。働きやすさが高まれば、優秀な人材の採用競争力も強化され、組織の好循環を生み出すことができます。

つまり、D&I推進は人材流出を防ぐだけでなく、エンゲージメントを高めることで企業全体のパフォーマンスを底上げする重要な戦略と言えるでしょう。「(Gallup メタ分析:エンゲージメントと生産性・離職の関連)」

リスクマネジメントと企業信頼性

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進は、経営リスクの低減と企業の信頼性向上に直結します。組織内に多様な視点があることで、ハラスメントやコンプライアンス違反といったリスクを早期に察知・防止できる体制を整えやすくなります。

また、D&Iに取り組む姿勢は投資家や顧客からの評価を高め、ESG投資や企業ブランドの強化にもつながります。特に若年層の求職者は「多様性を尊重する企業文化」を重視する傾向が強く、採用競争力の面でも有利に働きます。

つまり、D&Iは企業のリスクマネジメントを支えると同時に、社会からの信頼を獲得し持続的成長を実現するための必須条件となっているのです。「(MSCI 等のESGレーティング・メソドロジーにおけるD&I評価)」

問題点・課題

概要

形骸化

D&I施策が目的化し、実態が伴わないリスクがあります。

社内の抵抗感

長年続けてきた慣習を変えることへの抵抗が生じることがあります。

不公平感

多様な人材の登用に対し、既存社員から不公平だと感じる声が上がる場合があります。

無意識のバイアス(偏見)

評価や育成の場面で無意識の偏見が働き、個々の能力発揮を阻害する要因となります。

対立

異なる価値観を持つ人材間で意見の衝突や対立が生じることがあります。

逆差別

特定のグループを優遇することで、他のグループへの逆差別の懸念が生じることがあります。

D&I推進に潜む問題点と課題

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は多くの経営メリットをもたらしますが、その導入・浸透の過程ではいくつかの課題も存在します。

まず懸念されるのは、施策が「形骸化」するリスクです。目標数値の達成に偏り、実質的な組織文化の変革につながらなければ、従業員から不信感を招き「ダイバーシティウォッシュ」と批判される恐れがあります。

次に、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)や、従来の慣習を変えることへの社内抵抗です。これらは公平な人事評価や適材適所の配置を妨げ、D&Iの成果を阻害する要因となります。また、特定のグループを優遇すると「逆差別」と捉えられるケースもあり、組織内の不公平感や対立を生む可能性もあります。

D&I推進を成功させるためには、こうした課題を正しく認識し、表面的な取り組みにとどまらず、制度・文化の両面から継続的に改善していくことが不可欠です。

形骸化する施策のリスク

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進で最も注意すべき点の一つが、施策の「形骸化」です。数値目標の達成だけにとらわれると、女性管理職比率や多様な採用実績が「数合わせ」に終わり、肝心の組織文化改革や働きやすい環境整備が進まなくなります。

また、単発的なイベントや研修で終わってしまうと、従業員はD&Iを「ポーズだけ」と捉え、不信感やシニシズム(冷笑主義)が広がるリスクもあります。さらに、外向けのアピールに偏り実態が伴わない場合は「ダイバーシティウォッシュ」と批判され、企業ブランドを損ねる可能性すらあります。

真のD&Iを実現するためには、継続的な取り組みと社内での実効性が不可欠です。見せかけの施策ではなく、従業員一人ひとりが実感できる環境整備こそが、長期的な企業成長につながります。

課題

概要

D&I推進への影響

無意識バイアス

採用や人事評価において、特定の属性への先入観が公平な判断を阻害する。

適材適所の機会が奪われ、多様な人材の活躍機会が損なわれるリスクがある。

社内の抵抗と反発

企業文化や働き方の変化に対して、既存の価値観を持つ従業員から生じる反発。

施策の浸透が阻害され、D&I推進の停滞につながる可能性がある。

無意識バイアスと社内の抵抗

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進の大きな障壁となるのが、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)と社内の抵抗です。採用や評価の場面では、性別・年齢・国籍・経歴などに基づく先入観が無意識に働き、公平な判断を妨げることがあります。例えば「女性は管理職に向かない」といった固定観念や、上司と価値観が近い社員を高く評価する傾向は、適材適所を阻害し、多様な人材の活躍を制限しかねません。

さらに、D&I推進によって従来の働き方や組織文化が変わることに対し、既存社員から反発が起きるケースもあります。「なぜ慣れ親しんだやり方を変えるのか」「特定の属性ばかり優遇されるのは不公平だ」という声は、施策の浸透を妨げる要因となります。

これらの課題を克服するには、アンコンシャスバイアス研修の実施や経営層からの明確なメッセージ発信が不可欠です。無意識の偏見に気づき、対話を通じて抵抗感を和らげる仕組みを整えることで、組織全体にインクルージョンの文化を根付かせることができます。

概念

目的

アプローチ

機会の均等 (Equality)

すべての人に同じ条件や機会を提供すること

一律の資源やサポートを付与する

すべての人に同じ高さの台を提供する

公平性 (Equity)

個人の状況やニーズに応じた支援を提供すること

状況に応じて異なる資源やサポートを調整する

身長の低い人には高い台、高い人には低い台を提供する

多様性と公平性のバランス難易度

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進する際には、「多様性を尊重すること」と「公平性を担保すること」のバランスが大きな課題となります。

例えば、女性や障がい者の活躍を後押しする施策は、多様性推進の観点では有効ですが、他の従業員から「逆差別ではないか」と受け止められる可能性があります。このような不公平感は、社内の摩擦や不満につながりかねません。

また、個々の状況に応じた柔軟な対応を行う公平性(Equity)は重要ですが、一律の条件を提供する平等性(Equality)との違いを理解しないまま施策を導入すると、評価制度や業務負担にゆがみが生じる恐れがあります。

真のインクルージョンを実現するためには、「全員に同じ機会を与えること」と「一人ひとりに必要な支援を調整すること」の違いを明確に伝え、従業員間で共通理解を醸成することが不可欠です。バランスを欠いた施策はエンゲージメントを下げる要因となるため、透明性の高い制度設計と丁寧な対話が求められます。

DE&I戦略の柱

概要

教育・研修

アンコンシャスバイアス研修などを通じ、社員のDE&Iに関する理解を深め、意識を変革する。

組織風土改革と心理的安全性の向上

多様な意見が尊重され、誰もが安心して発言・行動できる環境を整備し、エンゲージメントを高める。

トップとミドルマネジメントの役割

経営層による強いコミットメントを示し、ミドルマネジメントがDE&I推進を具体的な行動に落とし込む。

採用・育成・評価制度への組み込み

DE&Iの視点を取り入れた公平な制度設計により、多様な人材の獲得・成長・活躍を支援する。

企業が取り組むべきDE&I戦略

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を実効性あるものにするには、単発の施策ではなく、経営戦略として一貫した取り組みが必要です。特に重要なのは以下の4つの柱です。

1つ目は教育・研修です。全社員がアンコンシャスバイアスに気づき、多様性の価値を理解することで、日常の意思決定やコミュニケーションの質が高まります。

2つ目は組織風土の改革です。心理的安全性を高め、誰もが安心して発言・挑戦できる環境を整えることで、従業員のエンゲージメントやイノベーションが促進されます。

3つ目はトップとミドルマネジメントの役割です。経営層が強いコミットメントを示し、中間管理職がそれを現場に落とし込むことで、戦略が形骸化せず継続的に浸透します。

4つ目は採用・育成・評価制度への組み込みです。公平で透明性のある制度設計により、多様な人材が能力を発揮できる仕組みを構築することが欠かせません。

この4つを組み合わせることで、DE&Iは単なるスローガンにとどまらず、組織の成長と競争力を支える実践的な経営戦略となります。

教育・研修(アンコンシャスバイアス研修など)

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進する第一歩は、社員一人ひとりが多様性の価値を理解することです。そのために欠かせないのが教育・研修、とりわけ「アンコンシャスバイアス研修」です。

無意識の偏見は、採用・評価・日常のコミュニケーションに大きな影響を及ぼします。例えば会議での発言機会の偏りや、特定の属性に基づく評価の歪みは、多様な人材が能力を発揮する妨げとなります。研修を通じて自身の偏見に気づき、具体的な対処法を学ぶことで、心理的安全性を高めた職場づくりが可能になります。

また、研修は一度きりの取り組みではなく、継続的に実施することが重要です。管理職向けのインクルーシブ・リーダーシップ研修や、現場社員向けのケーススタディを組み合わせることで、組織全体にDE&Iの意識を浸透させることができます。教育を基盤とした学びの文化こそが、持続的なDE&I推進の土台となるのです。

項目

内容

定義

対人関係リスクを恐れず意見を言える共通認識

提唱者

エイミー・C・エドモンドソン氏(ハーバード・ビジネス・スクール教授)

重要性を示す研究例

Google「プロジェクト・アリストテレス」にて成功チームの共通要素と判明

目的

誰もが安心して意見を表明し、自分らしくいられる環境の実現

組織風土改革と心理的安全性の向上

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を定着させるには、単なる制度設計だけでなく、組織風土そのものを変革することが不可欠です。その中心にあるのが「心理的安全性」です。

心理的安全性とは、ハーバード大学のエドモンドソン教授が提唱した「対人関係のリスクを恐れず意見を言える状態」を指します。Googleの「プロジェクト・アリストテレス」においても、高成果チームの共通要素として確認されており、DE&I推進の基盤とされています。

具体的には、定期的な1on1ミーティングによる信頼関係の構築、失敗を許容し挑戦を称賛する評価制度への見直し、ピアボーナス制度などによる相互承認の仕組みが効果的です。経営層が率先して透明性のあるコミュニケーションを行い、リーダーが自らの弱みを共有する姿勢を見せることも、従業員の安心感を高めます。

このように、心理的安全性を前提とした組織風土改革は、従業員が能力を最大限に発揮できる環境を整え、結果的に企業全体の生産性と持続的成長につながります。

心理的安全性の定義と重要性

心理的安全性とは、組織の中で「自分の意見を言っても否定されない」「失敗しても罰せられない」と感じられる状態を指します。これはハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した概念で、Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」研究でも、高成果を上げるチームに共通する要素として確認されました。

この心理的安全性が確保されていない職場では、従業員は自分の考えを発言できず、イノベーションや改善提案が停滞しやすくなります。逆に、安心して意見交換ができる環境では、チーム内で多様なアイデアが生まれ、協力関係が強まり、組織全体の生産性や創造性が向上します。

D&I推進の基盤として心理的安全性は不可欠であり、これを高めることが持続的な組織成長につながるのです。

トップとミドルマネジメントの役割

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を組織に根付かせるには、経営層と現場管理職の役割分担が極めて重要です。

まずトップマネジメントには、DE&Iを経営戦略の中心に据え、明確なビジョンとコミットメントを社内外に示す責任があります。経営層が自らメッセージを発信し、必要なリソースを確保することで、組織全体に「本気度」が伝わります。

一方で、ミドルマネジメントは、その方針を現場の業務やチームマネジメントに落とし込む役割を担います。部下との対話を通じて心理的安全性を高め、無意識バイアスを排除した公平な評価や機会提供を実践することが求められます。

さらに、トップとミドルが密に連携し、現場の課題や成功事例を共有する仕組みを構築することも不可欠です。この連携があってこそ、DE&I施策は形骸化せず持続的に機能し、組織文化として定着していきます。

プロセス

DE&I視点での主な取り組み

採用

ブラインド採用の導入、求人票からの無意識のバイアス排除、多様な採用チャネルの活用

育成

マイノリティ向けのメンター制度導入、多様なキャリアパス設計、管理職研修へのDE&I項目組み込み

評価

評価基準の明確化と透明性確保、評価者へのアンコンシャスバイアス研修、DE&I推進への貢献度評価

採用・育成・評価制度への組み込み

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を企業文化として根付かせるためには、人事制度の基盤である採用・育成・評価の各プロセスに視点を組み込むことが欠かせません。

採用においては、ブラインド採用や多様なチャネルの活用により、年齢・性別・国籍・障がいの有無に左右されない公平な選考が求められます。育成では、マイノリティ社員向けのメンター制度や多様なキャリアパスを設計し、誰もが成長できる仕組みを整えることが重要です。

成功企業の実践事例

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進は、多くの企業にとって成長のカギとなっています。理念や理論を理解するだけではなく、実際の取り組み事例を知ることで、自社での導入を具体的にイメージできるようになります。ここでは、代表的な成功企業の事例を紹介します。

NTTデータ

NTTデータは「DEI推進室」を設置し、公平性(Equity)を重視した取り組みを加速しています。特に女性活躍推進に力を入れ、2025年度までに女性管理職比率15%を目標に設定。キャリア開発研修やメンタリング制度を通じて、次世代リーダーの育成を進めています。また、育児復帰支援研修を導入し、ライフイベントを経てもキャリアを継続できる体制を整えています。さらに、同性パートナーシップ制度やALLYコミュニティを通じてLGBTQ+への支援を強化し、社外からも高い評価を得ています。

項目

内容

目標

2030年3月期までに全世界の女性管理職比率30%

現状

2024年3月末時点で女性管理職比率17.1%

LIXIL

LIXILは「公平な機会の提供」を重視し、柔軟な働き方の整備に注力しています。スーパーフレックス制度やリモートワーク導入により、多様なライフスタイルに対応可能な職場環境を実現しました。さらに女性管理職比率の向上を目標に掲げ、キャリア支援施策を推進。こうした取り組みを通じて、誰もが安心して自分らしく働ける企業文化を築いています。

資生堂

資生堂は「2030年までに指導的地位の女性比率50%」という高い目標を設定し、育成プログラムやメンター制度を導入しています。加えて、同性パートナーに異性配偶者と同等の福利厚生を適用するなど、ジェンダーや価値観の多様性を尊重する制度を整備。LGBTQ+応対研修を実施し、顧客対応の現場にもインクルージョンを広げています。これらの包括的な施策により、資生堂は国内外で「女性が活躍する会社」として高い評価を獲得しています。

「※事例は守秘義務に配慮し一部加工。定量は測定期間と算出方法を社内基準に基づき提示。」

まとめ|D&IからDE&Iへ、持続的成長に向けて

本記事では、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の定義や経営的メリット、潜在的な課題、そして具体的なDE&I戦略について解説しました。現代の企業にとって、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境を整えることは、持続的な成長に直結する重要な経営課題です。

近年は、従来のD&Iに「Equity(公平性)」を加えたDE&Iの考え方が主流となっています。これは、単なる「平等」ではなく、一人ひとりの背景やニーズに応じて適切な支援を行うことで真の公平を実現し、組織全体の競争力を高めるものです。

DE&Iを効果的に進めるには、トップマネジメントの明確なコミットメント、継続的な教育・研修、組織風土改革、そして人事制度への組み込みが欠かせません。また、働き方改革やハイブリッドワークとの連携は、多様な人材が安心して働ける環境づくりに直結します。

持続的な成長を実現するために企業が取り組むべきことは、以下の3点に集約されます。

  • 自社の現状を正確に把握すること

  • 経営トップがDE&I推進に強い姿勢を示すこと

  • 全社一丸となって具体的な施策を実行すること

多様な人材が真に力を発揮できる組織を築くことは、単なるCSR活動ではなく、イノベーション創出や人材確保につながる「経営戦略」そのものです。今こそ、DE&Iを未来志向の成長エンジンとして位置づけ、企業の競争力を強化していきましょう。

働き方改革・ハイブリッドワークとの連動

DE&I戦略を実効性あるものにするには、働き方改革との連携が欠かせません。特に、テレワークと出社を組み合わせたハイブリッドワークは、多様な人材が制約にとらわれず活躍できる仕組みとして注目されています。育児や介護を担う社員、地方在住者や障がいのある社員にとって、柔軟な働き方はキャリアを継続する大きな支えとなります。

実際に、NTTグループでは30万人規模でハイブリッドワークを導入し、物理的な働きやすさを保障する取り組みを進めています。また、フレックスタイム制や裁量労働制の拡充は、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にし、従業員のワークライフバランス向上に寄与しています。「(NTT 公式リリース:ハイブリッドワーク方針)」

働き方の柔軟性は、単に生産性を高めるだけでなく、多様な人材が「安心して自分らしく働ける」文化の醸成につながります。つまり、働き方改革とDE&I推進は表裏一体の関係にあり、両者を統合的に進めることで、企業は持続的な成長と競争力の強化を実現できるのです。「(厚生労働省『就労条件総合調査』制度導入率)」

経営戦略としての位置づけ

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)は、もはやCSR活動や人事施策の一部にとどまりません。今日の企業経営においては、持続的な成長を実現するための中核的な「経営戦略」として位置づけられています。

DE&Iの推進によって解決できる課題は多岐にわたります。イノベーションの創出、優秀な人材の確保と定着、ハラスメントや不正リスクの低減など、いずれも経営の持続可能性に直結するテーマです。特に人的資本経営やESG投資が重視される現代において、多様性を活かす取り組みは企業価値を測る重要な指標となっています。

そのため、多くの先進企業では事業計画や中期経営計画に具体的なDE&I目標を組み込み、女性管理職比率や男女間賃金格差などのKPIを設定。進捗を定期的に可視化し、改善サイクルを回すことで、戦略の実効性を高めています。

経営トップが明確なビジョンを掲げ、組織全体に強いコミットメントを浸透させること。これこそが、DE&Iを形だけの施策ではなく、企業競争力の源泉へと進化させる第一歩となります。「(経済産業省『人材版伊藤レポート』:戦略KPIとの接続)」

Q&A|ダイバーシティ&インクルージョンに関するよくある質問

Q1. ダイバーシティとインクルージョンの違いは?


ダイバーシティは「多様な人材が存在している状態」を指し、インクルージョンは「多様な人材が安心して活躍できる環境を整えること」を意味します。両者はセットで初めて効果を発揮し、企業の成長に直結します。

Q2. DE&Iとは何を指すのですか?


DE&Iは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂)の略称です。近年は「Equity=公平性」を加えることで、単なる平等ではなく、一人ひとりの状況に応じた支援を通じた「真の公平」を目指す概念として広がっています。

Q3. D&I推進にはどんな課題がありますか?


代表的な課題には「形骸化」「無意識バイアス」「公平性と多様性のバランスの難しさ」があります。これらを放置すると社員の不信感につながり、施策そのものが逆効果になるリスクもあります。

Q4. 企業が最初に取り組むべきステップは?


第一歩は、経営トップが強いコミットメントを示し、現状を正しく把握することです。そのうえで、アンコンシャスバイアス研修や心理的安全性の醸成といった教育・研修を組み合わせると効果的です。

Q5. 厚生労働省はD&I推進にどのような指針を示していますか?


女性活躍推進法や人的資本開示に関連して、企業に多様性推進を求めています。重視される指標は「女性管理職比率」「男女間賃金格差」「育休取得率」などで、法令対応だけでなく企業価値向上にも直結します。

Q6. 中小企業でもD&Iは推進できますか?


はい。大規模投資は不要で、小規模な承認文化づくりや柔軟な働き方の導入から始められます。段階的な取り組みでも十分効果が期待できます。

Q7. D&Iを進めると本当に業績が上がるのでしょうか?


Googleの「プロジェクト・アリストテレス」やGallupの調査では、心理的安全性や従業員エンゲージメントの向上が、生産性・利益率の改善につながることが実証されています。D&I推進は企業の競争力強化に直結します。

Q8. 取り組みを「形だけ」で終わらせないには?


最大のポイントは、取り組みを可視化し、現場に浸透させることです。ピアボーナスや称賛を仕組み化するツールを活用すれば、日常の感謝や挑戦が文化として定着し、D&Iが企業風土に根づきます。「詳しくは (厚生労働省ガイド/伊藤レポート) を参照。」