
目標設定シートは、従業員のエンゲージメントとモチベーションを高めるための重要なツールです。しかし、その書き方や運用法に迷う方もいるのではないでしょうか。この記事では、目標設定シートの具体的な記入例とともに、効果的な目標の立て方を解説します。 目標設定は、個人の成長を促し、組織全体のモチベーション向上にもつながるもの。ぜひ、この記事を参考に、エンゲージメントの高い組織づくりを実現してください。具体的な設定方法から、日々の目標管理に役立つ情報まで、幅広くご紹介します。
なぜ社員のやる気が続かない?目標設定が“逆効果”になる3つの落とし穴

社員の成長と組織全体のパフォーマンス向上を目指し、多くの企業が目標設定を導入しています。しかし、その運用方法によっては、期待に反して社員のモチベーションを低下させる「逆効果」を生むことがあります。
目標が単なる「ノルマ管理」の手段となったり、「評価のための儀式」として形骸化したりすると、社員は目標達成への当事者意識を失いかねません。これは、自分で設定した目標ではない「押し付けられた目標」と感じることで、内発的な動機付けが損なわれるためです。結果として、組織のエンゲージメントが低下し、生産性を阻害する危険性があります。
本章では、こうした目標設定が失敗に終わる具体的な「3つの落とし穴」に焦点を当て、その原因と影響を詳しく解説します。ここでは、「社員の内発的動機を消す“やらされ目標”」、「日々の行動が宙づりになる“曖昧な目標”」、そして「挑戦しづらい職場を生む“失敗を恐れる文化”」を掘り下げていきます。
“やらされ目標”が社員の内発的動機を消す理由
社員のやる気を削ぐ大きな要因の一つに、「やらされ目標」の存在が挙げられます。これは、目標が上層部から一方的に与えられ、社員自身がその設定に一切関与できない場合に、この傾向は顕著に現れます。心理学の「自己決定理論」では、人は「自分で決めたい」という根源的な自律性の欲求を持っているとされます。企業がトップダウン方式で目標を課した場合、この自律性が阻害され、社員は目標達成への主体性を失ってしまう可能性があります。
また、報酬や評価といった外発的動機付けが過度に強調されると、かえって仕事そのものへの興味や探求心といった内発的動機が低下する「アンダーマイニング効果」が生じる場合があります。例えば、過度なインセンティブや厳しいノルマが設定されると、社員の意識は「より質の高い成果を出すこと」から「単に目標をクリアする義務を果たすこと」へとすり替わりかねません。その結果、「納期までに終わらせればよい」「ノルマさえ達成すればよい」といった意識が先行し、創造性やプラスアルファの工夫が生まれにくい状況に陥るリスクがあるでしょう。
目標が曖昧だと、日々の行動が宙づりになる
「売上を最大化する」「顧客満足度を向上させる」といった具体性に欠ける目標は、多くの企業で課題となっています。事業目標は、企業の成長を促すために具体的な数値や行動として設定されるべきです。曖昧な目標では、成果を測ることが困難なのが実情です。例えば、「売上拡大」や「〇〇の推進」といった漠然とした目標では、社員は日々の業務において、何を優先し、どのような行動を取るべきか判断に迷います。結果として、具体的な行動指針を見失い、「宙づり」の状態に陥ってしまうのです。
曖昧な目標が引き起こす主な問題点
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自身の努力が正当に評価されるかという不安が生じる
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貢献感を抱きにくくなる
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目標達成への主体性が持てなくなる
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指示待ちになる
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とりあえず目の前の作業をこなすだけの形骸化した業務に陥る
行動の基準が不明確なため、このような状態になりがちです。目標設定の質を高めるには、曖昧な表現を避け、「具体的な行動」と「目指す状態(基準)」を明確にすることが不可欠です。
「失敗したくない」が先に立つ職場は挑戦しづらい
社員が自ら設定した目標に前向きに取り組むためには、失敗を恐れずに挑戦できる職場環境、すなわち「心理的安全性」が不可欠です。しかし、減点評価が中心の文化や、過度な叱責が常態化している職場では、社員は失敗を強く恐れるようになります。このような環境では、以下のような心理的な負担が常に付きまとうため、結果として挑戦意欲が削がれてしまいます。
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無知だと思われる不安
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無能だと思われる不安
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邪魔をしていると思われる不安
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怠けていると思われる不安
心理的安全性が低いと、社員は「失敗するくらいなら何もしない方がまし」と考えがちです。これにより、新しいアイデアを提案したり、現状改善のためのリスクを取る行動を避けたりする傾向が強まります。本来、目標設定は個人の成長や組織の発展を促すものですが、失敗を恐れるあまり、達成が容易な「無難な目標」ばかりが設定される悪循環に陥る可能性があります。これは、社員のモチベーション低下を招き、結果的に組織全体の生産性が上がらず、企業の成長を阻害する大きな要因となり得ます。
目標設定が変わると、組織が変わる。3つの具体的な変化

「やらされ目標」や「曖昧な目標」が引き起こす課題は、社員のモチベーション低下や組織の停滞を招きかねません。しかし、目標設定を単なるノルマ管理のツールとしてではなく、組織全体の成長を導く「羅針盤」として捉え直すことで、企業は大きく変化できます。明確な目標設定は、社員一人ひとりの主体性を引き出し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。これは、バリューの浸透と連動し、強い組織を実現する上で不可欠な要素です。
具体的には、目標設定が変わることで、以下の3つの変化が期待できます。
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社員の行動が明確になり、日々の業務に目的意識が生まれる
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チーム内のコミュニケーションが活性化し、目標達成に向けた一体感が醸成される
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個人の努力が公正に評価に反映されることで、社員は納得感を持ち、組織への信頼を深める
本章では、これらの具体的な変化について詳しく解説していきます。
目標の“プロセス”が明示されると、社員の行動が変わる
結果目標であるKGI(Key Goal Indicator)のみを設定した場合、社員は日々の業務において「具体的に何をすべきか」が不明瞭になりがちです。この課題を解消するには、最終目標であるKGIに加え、そこに至るまでの「プロセス」を測定するKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をセットで設定することが不可欠です。KPIはKGI達成に向けた「過程」を可視化する指標であり、社員が「何をすれば目標に貢献できるのか」を明確に意識する手助けとなります。例えば、ECサイトのKGIが「年間売上1億円」であれば、これを実現するためのKPIとして「月間サイト訪問者数500万人」や「原価率20%」といった具体的な指標を設定することで、自身の行動が結果にどのように繋がるか、その因果関係を理解しやすくなるでしょう。
このプロセスが明確になることで、社員は日々の業務において、主体的な行動や工夫を引き出す原動力を得られ、納得感を持って業務に取り組めるようになります。さらに、プロセス指標の進捗が可視化されるため、上司との1対1での面談(1on1)などでの振り返りも具体的になります。目標達成が思わしくない場合でも、どのプロセスに課題があるかを客観的に特定しやすくなり、具体的な改善策を迅速に講じることが可能です。このように、結果目標だけでなくプロセス指標を重視した目標設定は、社員一人ひとりの行動変容を促し、組織全体の持続的な成長に貢献するでしょう。
認識のズレをなくす「共通言語」としての目標
企業内で目標を設定する際、上司と部下、あるいは部署間で「期待値のズレ」が生じがちです。例えば、上司が部門全体の戦略的な成果を期待している一方で、部下が日々の目先の業務完遂をゴールと認識しているような場合がこれにあたります。このような認識の乖離は、不満や不信感を生み、業務の非効率化や人間関係の悪化を招く原因となることがあります。
この期待値のズレを埋め、円滑な業務遂行を可能にするのが、明確に言語化・数値化された目標です。目標が共通言語として機能することで、「何を」「どこまで」「なぜ」やるのかという行動の基準が共有されます。これにより、曖昧な表現を避け、具体的な行動と目指す状態(基準)が明確になります。背景や全体とのつながりが明らかになるため、社員は納得感を持って日々の業務における判断基準を明確にし、自律的に行動しやすくなるでしょう。
また、上司側にとっても、共通の目標を基点にすることで、フィードバックや1on1での対話が、より具体的で建設的なものになります。これにより、手戻りや無駄なコミュニケーションコストが削減され、チーム全体の生産性向上にも貢献します。
努力が“評価に反映される実感”が信頼を生む
社員が日々の業務でどれだけ努力を重ねても、それが正当に評価されない、あるいは評価基準が曖昧な状況は、不信感やモチベーション低下の大きな原因となります。具体的には、以下の点が挙げられます。
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目に見える成果を出した社員が適切に評価されないことで、努力が報われないと感じ、やる気を失う可能性があること。
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評価基準が明確でなく、不透明になっていることで、人事評価制度への不満に直結すること。
こうした課題を解決し、社員の信頼を得るためには、適切に設定された目標が「共通のものさし」として機能することが不可欠です。目標が明確であれば、評価は上司の主観や印象に左右されにくくなり、客観的かつ公平なものとなります。さらに、目標達成に向けたプロセスや日々の努力が、きちんと評価に結びついていると社員自身が「実感」できることが、会社や上司への信頼を醸成する上で極めて重要です。この評価への納得感から生まれた信頼関係こそが、社員が安心して新しい挑戦に踏み出せる、心理的安全性の高い組織文化の土台となるでしょう。
社員のやる気を引き出す、目標設定のフレーム活用術

目標設定が単なる形式に終わり、社員のやる気を引き出せない状況にある企業は少なくありません。従業員のモチベーションとエンゲージメントを真に高め、組織を成長させるには、効果が実証されたフレームワークの活用が不可欠です。これらのフレームワークは単なる「型」ではなく、社員一人ひとりが納得感を持って目標と向き合い、主体的な行動を促すための「思考の補助線」として機能します。
個人の目標を組織全体のビジョンと連動させることで、社員は自身の業務が会社にどう貢献しているかを実感しやすくなるでしょう。本章では、まず企業のビジョンを個人目標に落とし込む具体的な方法を解説します。さらに、SMARTの法則をはじめ、MBO(目標管理制度)やOKR(目標と主要な結果)といった主要な目標設定・管理フレームワークの実践的な活用術を掘り下げていきます。
「会社のビジョン」を“自分ゴト化”する目標設定の書き方
会社のビジョンと個人の業務が乖離すると、社員は「やらされ感」を抱き、モチベーション低下につながります。自身の仕事が会社の目標達成にどう貢献するかを理解し「自分ゴト化」することは、組織の一体感と行動力を高める上で不可欠です。これを実現するには、経営層が定めるビジョンや中期経営計画を、部署、チーム、そして個人の具体的な行動目標へと段階的にブレイクダウンする思考プロセスが有効です。
例えばメルカリでは、チーム・個人目標とビジョンを連携させ、社員の納得感を醸成しています。目標設定シートには、社員自身がビジョンとの繋がりを言語化し、自身の仕事の意味を深く理解する機会となるよう、以下の項目を設けることが考えられます。
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部署目標との関連性
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会社への貢献
これにより、社員は納得感を持って主体的に目標に取り組めるでしょう。
SMARTをただの枠組みで終わらせない、行動変化を生む活用術
目標設定の強力なフレームワークとして知られるSMARTの法則は、Specific(具体性)、Measurable(計量性)、Achievable(達成可能性)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)の5つの要素で構成されています。これを単なるチェックリストとしてではなく、社員の行動変容を促す「対話のツール」として活用することが重要です。特にRelevant(関連性)においては、単に会社の目標と紐づけるだけでなく、個人のキャリアビジョンや成長実感と結びつけることで、目標が「自分ゴト化」し、内発的な動機付けを促します。
また、Measurable(計量性)では、最終的な成果目標(KGI)だけでなく、日々の具体的な行動を測る行動指標(KPI)も設定することが推奨されます。例えば、「売上目標」だけでなく、「日々の架電数」や「週次の提案数」といったKPIを設定することで、自身の行動が明確になり、進捗を実感しやすくなります。目標は設定するだけで完結するものではありません。Time-bound(期限)を活かし、1on1などの場で定期的に進捗を振り返り、状況に応じて柔軟に目標を修正する「アジャイルな運用」が不可欠です。中間レビューを通じて、モチベーションの維持と適切な軌道修正を行うことが重要です。
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項目 |
MBO(目標管理制度) |
OKR(目標と主要な結果) |
|---|---|---|
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主な目的 |
個人の目標達成度評価、人材育成、企業ビジョン浸透 |
チーム連携の促進、高難度目標への挑戦、革新的な成果創出 |
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特徴 |
個人の責任を明確化、評価制度との連携 |
挑戦的な目標設定、進捗の透明化、達成度より成長を重視 |
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適した組織 |
安定志向の組織、評価の公平性を重視する組織 |
変化の激しい環境、高い目標に挑む変革志向の組織 |
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導入例 |
SCSK株式会社(マネジメント、3軸での評価) |
Google、花王(社員の「やりたいこと」を引き出す) |
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テンプレート名 |
主な目的・特徴 |
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MBOシート |
評価と目標の連携 |
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マンダラチャート |
思考の整理と目標の具体化 |
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WOOPシート |
目標達成の障害と対策の明確化、実行可能性を高める習慣化フレーム |
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スキルマトリクス |
個人のスキル可視化と育成 |
MBOとOKR、どちらが自社の“現場力”に合っているか?
目標設定の代表的なフレームワークであるMBO(目標管理制度)とOKR(目標と主要な結果)は、それぞれ異なる特性を持っています。
MBOは、個人の目標達成度を評価し、人材育成や企業ビジョンの浸透を目的とします。例えばSCSK株式会社では、マネジメントを主目的としてMBOを導入し、行動、貢献度、専門性の3軸で評価しています。個人の責任を明確にし、評価制度と連携させたい安定志向の組織に適しています。
一方、OKRはチーム連携を促進し、高難度の目標へ挑戦することで、革新的な成果を生み出すフレームワークです。Googleが2000年代初期に導入したことで知られ、花王では、従来のKPI設定から社員の「やりたいこと」を引き出す目的でOKRを全面採用しました。変化の激しい環境で、高い目標に挑む変革志向の組織に適しています。
以下に、MBOとOKRの主な特徴と適した組織をまとめます。
MBOとOKRの主な特徴と適した組織
自社が伸ばしたい「現場力」、例えば「個人の自律性」「チームの連携力」「挑戦する風土」「評価の公平性」といった要素に応じて、最適な選択は異なります。
また、どちらか一方を選ぶだけでなく、MBOの評価制度にOKRの挑戦的な目標設定を取り入れるなど、両者の長所を活かしたハイブリッドな運用も検討できます。実際に大日本印刷では、個人MBOにOKRの要素を組み込んだDVOを導入し、マネジメントと人材育成に活用しています。自社の特性をしっかりと見極め、最適なフレームワークを選択し、あるいは組み合わせて活用することが重要です。
シーン別に選べる!目標設定シートのテンプレート4選

目標設定シートは、組織の目的や現状に応じて最適なものを選ぶことが重要です。自社の文化や求める成果に合ったテンプレートを活用することで、より効果的な目標管理を実現できます。
本章では、多くの企業で活用されている「MBOシート」、「マンダラチャート」、「WOOPシート」、「スキルマトリクス」の4種類をご紹介します。
各目標設定シートの主な目的と特徴は以下の通りです。
これら4つのテンプレートは、それぞれ異なる目的と特徴を持つため、貴社に最適なものを見つけるために、上記の比較表をご活用ください。
MBOシート|評価制度と一体化した“信頼の型”
MBO(目標管理制度)は、個人の目標を組織全体の目標と連動させ、その達成度を人事評価や報酬の根拠とする仕組みです。MBOシートは、この制度を円滑に運用するための中心的なツールとなります。目標設定から評価までのプロセスを可視化することで、評価に対する社員の納得感を高め、組織と個人の間に強い信頼関係を築く「信頼の型」としての役割を担います。
MBOシートには、一般的に目標、達成基準、ウェイト、期間といった目標に関する基本情報に加え、自己評価、上司評価、上司からのフィードバックといった評価に関する項目が含まれます。これらの項目を通じて、目標の進捗状況や成果が客観的に記録され、評価の公平性が担保される仕組みです。
MBOシートを効果的に活用するためには、目標設定の段階で上司と部下が十分に「対話」し、目標に対する認識の「合意形成」を行うことが不可欠です。これにより、「やらされ目標」となることを防ぎ、社員の主体性を引き出します。また、期中における「進捗の更新」や「定期的な面談(1on1)」を通じて、目標達成に向けた状況を共有し、必要なフィードバックを適時に行うことも、形骸化を防ぐ上で重要です。
マンダラチャート|思考を整え、目標を言語化するツール
マンダラチャートは、思考を構造化し、目標を具体化する9マス(3x3)のフレームワークです。中央に最終目標を置き、周囲8マスに達成に必要な要素を書き出すことで、思考を多角的に整理できます。メジャーリーガーの大谷翔平選手が高校時代に活用していたことでも有名です。
このツールの最大のメリットは、抽象的な目標を達成可能な具体的な行動の要素に分解できる点にあります。目標達成までの道筋を網羅的に可視化し、日々のタスクへの落とし込みを容易にします。チームで目標を共有する際にも、メンバー間の認識のずれを防ぎ、共通理解を深める有効なツールです。
マンダラチャートの基本的な書き方は次のとおりです。
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まず、中央のマスに最終目標を記入します。
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次に、目標達成に必要な8つの要素(行動、スキルなど)を周囲のマスに埋めてください。
さらに効果的な活用法として、書き出した8つの要素それぞれを新たなマンダラチャートの中心に据え、個別に8つのアクションプランを展開する方法があります。これにより、日々のタスクレベルまで目標が具体化され、最大72個もの行動アイデアを導き出すことができ、着実な目標達成につながるでしょう。
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要素 |
説明 |
|---|---|
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Wish(願い) |
達成したい、挑戦的だが実現可能な目標を記述します。 |
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Outcome(結果) |
目標達成で得られる最高の結果を具体的にイメージして書き出します。 |
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Obstacle(障害) |
目標達成の過程で生じうる、自分自身の内なる障害(例:不安、悪い習慣)を特定します。 |
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Plan(計画) |
「もし障害が起きたら、〇〇する」というif-then形式で具体的な行動計画を立てます。 |
WOOPシート|“実行できる目標”に変える習慣化フレーム
WOOPシートは、Wish(願い)、Outcome(結果)、Obstacle(障害)、Plan(計画)の4つの要素で構成される目標設定フレームワークです。単にポジティブな未来を想像するだけでなく、目標達成を阻む「内なる障害」をあらかじめ特定し、それに対する具体的な対処計画を立てる点に大きな特徴があります。
WOOPシートの具体的な記入方法は、以下の4ステップで進めます。
WOOPシートの4つの要素と記入内容
このフレームワークは、心理的対比と実行意図という科学的根拠に基づいています。理想と現実の障害を対比させることで目標への本気度を高め、事前に行動計画を立てることで、無意識レベルで行動を促し、目標達成と習慣化を強力にサポートする効果があります。
ビジネスシーンにおける具体的な活用例として、「新規顧客へのアプローチを先延ばしにしてしまう」という営業担当者の課題を挙げましょう。この場合、Planとして「もしアプローチをためらう気持ちが湧いたら、まず1社だけ企業サイトを見てみる」といった小さな行動計画を立てることで、行動のハードルを効果的に下げることが可能です。
スキルマトリクス|社員のポテンシャルを見える化する
スキルマトリクスは、個人やチームが保有するスキルや能力を一覧表形式で可視化するツールであり、誰がどのようなスキルをどの程度のレベルで持っているかを一目で把握できます。例えば、Excelのテンプレートを活用することで、組織全体のスキル状況を効率的に管理できるでしょう。
このツールは目標設定において非常に有効です。「現在のスキルレベル」と「目標とするスキルレベル」のギャップを明確にできるため、社員自身が習得すべき具体的なスキルを目標として設定しやすくなります。このギャップを特定し、必要なトレーニングを効率的に計画できる点も大きなメリットです。
スキルマトリクスを用いることで、社員のポテンシャル、すなわち「伸びしろ」を客観的に把握できます。これにより、以下のような効果が期待できます。
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上司は部下の強みや育成ポイントを理解し、適切な指導に役立てることができます。
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社員自身も自身のキャリアパスを考える上で、具体的な指針を得られるでしょう。
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チーム全体のスキルバランスを考慮した目標設定が可能となります。
【職種別】モチベーションを高める目標設定シート記入例

これまで、目標設定の重要性や効果的なフレームワークについて解説してきました。本章では、それらの知識を具体的な業務にどう活かすのか、職種別の目標設定シート記入例を通してご紹介します。職種によって求められる役割や成果は多岐にわたるため、画一的な目標設定では社員のモチベーション維持は困難です。特に、営業職のように成果が定量化しやすい職種がある一方で、事務職や広報職のように数値目標の設定が難しい職種も存在します。
ここでは、35種類の職種に及ぶ幅広い具体例の中から、主要な職種をピックアップしてご紹介します。単なる成果目標だけでなく、個人の成長やチームへの貢献といった「納得感」につながる要素がどのように盛り込まれているかにご注目ください。これらの記入例が、皆さまの目標設定の一助となれば幸いです。
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項目 |
内容 |
|---|---|
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新規アプローチ数 |
月間50件(架電数や訪問数を含む) |
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提案書提出数 |
月間30件 |
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商談成立率 |
30%の維持 |
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既存顧客フォロー |
週次での既存顧客へのフォローアップ |
営業職|成果主義でもやる気を保つ“納得感ある”目標例
営業職は、成果が直接評価に結びつく成果主義の傾向が強いため、目標設定では「結果目標(KGI)」が重視されがちです。しかし、売上目標のようなKGIだけでは、市場の動向など、本人がコントロールしにくい外部要因に左右されやすくなります。そのため、努力が必ずしも結果に直結しない場合に、社員の納得感やモチベーションが低下する原因となることがあります。
そこで重要となるのが、本人が日々の業務でコントロールできる「行動目標(KPI)」をKGIと組み合わせて設定することです。KPIを設定することで、結果に至るまでのプロセスや日々の努力が可視化され、モチベーションの維持につながります。例えば、結果目標を「四半期売上1,000万円達成」とする場合、具体的な行動目標(KPI)として、以下のような例が挙げられます。
行動目標(KPI)の具体例
さらに、数字目標だけでなく、「顧客との関係構築」や「提案スキルの向上」といった、個人の成長につながる定性目標を盛り込むことも有効です。例えば、「顧客からの感謝の声月2件獲得」や「最新の営業ツールの学習と実践」などが挙げられます。短期的な成果だけでなく、個人のスキルアップや長期的なキャリア形成を見据えた目標は、社員の主体性を引き出し、より深い納得感を持って業務に取り組む原動力となるでしょう。
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部門 |
目標記入例 |
|---|---|
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経理部 |
請求書処理フローを見直し、月間残業時間を前期比10%削減する。 |
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人事部 |
社員からの問い合わせ対応マニュアルを整備し、関連部署からの質問件数を前期比20%削減する。 |
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総務部 |
備品管理システムの導入により、月間の発注プロセスにかかる時間を15%短縮し、年間購入コストを5%削減する。 |
管理部門|定型業務の“貢献”を見える化する目標記入例
管理部門の業務は定型的なものが多く、売上のように直接的な数値で成果を示すことが難しい傾向にあります。そのため、「目標設定が曖昧になりがち」「貢献度が見えにくい」といった課題を抱えることがあります。ここで重要となるのが、日々の業務における貢献度を「見える化」する視点です。
管理部門の貢献を測る具体的な切り口としては、以下の点が挙げられます。
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業務効率化(時間短縮、自動化など)
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コスト削減(経費見直し、無駄の排除など)
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品質向上(ミス削減、正確性向上など)
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他部署への貢献(サポート体制強化、情報提供の質向上など)
これらの視点を取り入れることで、管理部門でも具体的な目標設定が可能です。以下に、経理、人事、総務それぞれの目標記入例を示します。
各部門における目標記入例は以下の通りです。
このように、行動と成果を明確にすることで、日々の業務が組織に与える影響が可視化され、モチベーション向上にもつながります。
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種別 |
目標例 |
|---|---|
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定性目標 |
企業ブランディングを強化するWebコンテンツ(ブログ、動画など)を企画・公開する(週1本更新) |
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定量目標 |
Webサイトへの流入数20%増(前年同期比)、特定キーワードでの指名検索数15%増加、新規リード獲得数〇件、SNSエンゲージメント率10%向上、プレスリリース経由のメディア掲載数〇件 |
広報・マーケ職|“創造性”と“数字”を両立する目標例
広報・マーケティング職では、ブランドイメージの構築や認知度向上といった創造的な活動と、売上やリード獲得数といった数値目標の間で、評価の基準が曖昧になりがちです。これにより、自身の貢献が正当に評価されているか不安を感じ、モチベーションが低下するケースも少なくありません。広報活動におけるKPI設定の難しさも課題として指摘されています。
この課題を解決するためには、定性的な活動がどのように定量的な成果に結びつくのか、その因果関係を明確にした目標設定が重要となります。例えば、「ブランドイメージ向上施策の企画・実行」といった定性目標に対し、以下に示す定量目標を紐づけることが考えられます。
広報・マーケティング職における目標設定の具体例を以下に示します。
目標シートには、定性的な施策が定量的な結果にどう繋がるか、その仮説を具体的に記述します。例えば、「〇〇というWebコンテンツを発信することで、新規顧客層の共感を呼び、結果としてWebサイトへの流入数が△%増加する」といったロジックを明示します。このように、創造的な活動がビジネス貢献として可視化され、数値で成果を実感できることは、社員のモチベーション維持・向上に繋がるでしょう。
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フェーズ |
対話の目的 |
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過去 |
行動と学びの振り返り |
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現在 |
現状の課題特定 |
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未来 |
次のアクション設定 |
1on1で「目標が動く組織」に変える対話の設計
目標設定シートが形骸化するのを防ぎ、社員が主体的に行動するよう促すには、上司と部下が定期的に行う1on1ミーティングが非常に重要です。1on1を単なる進捗確認の場ではなく、目標達成に向けた「伴走」の機会として位置づけましょう。この対話を通じて、目標達成における現状の課題や障壁、さらには部下のモチベーションの変化を共有し、必要なサポートを提供することが目的です。ヤフー株式会社をはじめ、多くの企業が1on1を効果的に活用し、目標管理を進めています。
効果的な1on1では、以下のフレームワークに沿った対話が有効です。
部下が自ら考え、行動を言語化できるよう、「やってみて何に気づきましたか?」「この課題を解決するために、次に試せそうな小さな一歩は何でしょう?」といった具体的な質問を投げかけます。上司は答えを与えるのではなく、傾聴と問いかけを通じて部下の内省を促す、コーチング的なアプローチを心がけましょう。部下が本音で話せる心理的安全性を確保し、安心して意見を伝えられる環境づくりが不可欠です。
また、外部環境の変化や本人の成長に応じて、目標が現状にそぐわなくなることもあります。そのような場合でも、1on1の場で柔軟に目標を修正・再設定するプロセスを設計することが大切です。目標変更を「失敗」ではなく「学習と適応」と捉える文化を醸成することで、社員は前向きに目標と向き合い、挑戦し続けることができるでしょう。
小さな努力に“即フィードバック”を届ける仕組みとは
年に数回の評価面談だけでは、社員の日々の努力に対するモチベーション維持が難しいという課題があります。こうした状況を打開するためには、行動をリアルタイムで評価し、即座にフィードバックを行う「即時フィードバック」が重要となります。実際に、人事評価システムを導入し、マネージャーが日常的に従業員を評価する事例も多く見られます。即時フィードバックは、行動の定着や改善サイクルを加速させ、社員が自身の努力を認められている実感を得やすくする効果があります。
さらに、上司だけでなく同僚同士で称賛や感謝を送り合う「ピアフィードバック」も効果的です。これは、管理職の目が届きにくい細かな貢献やチームワークへの寄与を可視化し、個々の従業員の成長を促進する強力なツールです。具体的な仕組みとしては、以下の方法が有効です。
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チャットツールに称賛チャンネルを設置する
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日々の貢献に対してポイントを送り合うピアボーナス制度を導入する
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週次ミーティングで「グッドニュース共有」の時間を設ける
これらの仕組みを組織文化として定着させるには、管理職が率先してフィードバックを送る姿勢が不可欠です。また、フィードバックは「なぜ助かったのか」「どのように良かったのか」など、具体的に伝えることで、相手への影響力を高め、ポジティブな行動変容を促します。
【Unipos活用例】称賛を“日常に埋め込む”ことでエンゲージメントを加速

従業員のエンゲージメントをさらに高めるには、日々の小さな努力や貢献を見逃さず、リアルタイムで称賛する文化を育むことが不可欠です。ピアボーナスツール「Unipos(ユニポス)」は、まさにその目的のために設計されており、従業員同士が感謝の気持ちとともに少額のインセンティブを送り合うことで、社内にポジティブな相互作用を生み出します。実際に、Uniposは240社以上の企業に導入され、99%と高い継続率を誇り、多くの組織がその効果を実感しています。
Uniposを目標設定シートと連携させることで、目標達成に向けた日々の行動を可視化し、称賛を日常に埋め込むことが可能です。例えば、「#〇〇プロジェクト推進」のように目標に関連するハッシュタグを付けて投稿することで、個人の具体的な努力が承認され、達成感につながります。この仕組みは、目標設定シートの「プロセス目標」の進捗をリアルタイムで共有し、奨励する上で非常に有効です。
投稿された称賛はタイムライン上で全社に共有されるため、個人の努力が部署内だけでなく、組織全体に認められる機会となります。これにより称賛の輪が広がり、社員は安心して意見を交わし、新しい挑戦ができる心理的安全性の高い職場環境が醸成されます。組織の行動指針や理念がハッシュタグを通じて自然と浸透し、組織全体の一体感を高める効果も期待できるでしょう。
Unipos活用によって期待できる主な効果は以下の通りです。
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個人の努力が全社的に認められる機会の創出
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称賛の輪が広がり、心理的安全性の高い職場環境の醸成
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組織の行動指針や理念の自然な浸透
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組織全体の一体感の向上
実践事例:GMOインターネットグループにおけるUnipos活用
公開されている事例によると、GMOインターネットグループでは、テレワークや組織再編の影響で部署間コミュニケーションが希薄化していました。この課題に対し、ピアボーナスツール「Unipos」を導入し、称賛や感謝を日常的に可視化する仕組みを構築。
社内イベント化した「MVP制度」や、部署横断での投稿促進施策などを通じて、感謝の文化を全社的に定着させています。
特に注目すべきは、導入後の離職率が約10%改善したという成果です。公開データでは、エンゲージメントや心理的安全性の指標も向上したとされ、目標設定シートにおける「プロセス目標」との親和性も高い取り組みといえます。


