
業務の生産性や、社員のモチベーション向上が期待できる目標管理制度。
既に導入している会社も多いのではないでしょうか。
しかし、
「運用がなかなかスムーズに行えていない…」
「マネージャーの業務が増えてしまっている…」
といった悩みを抱えていませんか?
目標管理をよりスムーズに、より効果的に行うために、目標設定シートを導入する方法があります。
今回は目標設定シートの概要から、効果や目的、おすすめテンプレートのご紹介まで詳しく解説します。
ぜひ最後までご覧ください!
1.目標設定シートとは
目標設定シートとは、目標管理を行う際に使用されるシートのことで、規定のフォーマットを用います。
そもそも目標管理の仕組みは、米国の経営学者ピーター・F・ドラッガーによって体系化された組織マネジメントの手法です。MBO(Management by Objectives)と呼ばれることもあります。
日本企業で目標管理制度の導入が増えてきたのは1990年代後半と、意外にも歴史の浅い制度です。成果主義の広まりとともに浸透し、近年では多くの企業で採用されているため、目標設定シートを活用する機会も増えています。
目標設定のフォーマットはさまざまなパターンがありますが、いずれのフォーマットを使用しても、社員の目標を効率的に管理できるようになります。
目標設定シートには、具体的な目標・達成基準・期限・達成までのプロセス・最終的な成果を記入するのが一般的で、期末など定期的なタイミングで作成します。
2.目標設定をする目的
目標設定の目的は、目標達成までの道筋を可視化することです。
仕事に取り組む時に目標が明確に定まっていないと、漫然と目の前に降ってくるタスクを消化するだけになってしまいます。
目標を設定することで、達成までの道筋において自分が今どの位置にいるのか、目標達成のために今すべきことは何かを把握できるので、目標に向かって最短ルートで進んでいくことができます。
逆に目標設定を誤ってしまうと、誤った目標に向かって努力し、時間とコストを無駄にしてしまうこともあります。目標設定は業務を進める上で非常に重要な指標となるのです。
また、目標のレベルが高ければ高いほど、自然と自分なりの工夫を凝らしたり、周囲の人を巻き込みながらチームで協力したりなど、主体的に仕事に取り組むことができるようになります。
こうした傾向は、結果的に仕事の生産性向上やモチベーション向上につながり、組織にとって大きなメリットとなるでしょう。
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3.目標設定シートの効果
ここまでお伝えしてきた通り、目標設定は確かに重要なのですが、目標管理業務の負荷が増大してしまっては、本末転倒です。こうした事態を避けるためにも、目標設定シートを上手に活用しましょう。
目標設定シートの効果は、以下の3点が挙げられます。
①目標と手順を整理できる
②管理者が適切に目標を管理できる
③管理者の指導に役立つ
1つずつ詳しく解説します。
効果①:目標達成までの手順を整理できる
目標管理は、目標を立てて終わりではありません。目標達成までの手順を理解し、手順に沿った行動を取る必要があります。
目標設定シートを使用することで、頭の中で思い描いているイメージを実際に文字に起こすことができます。すると、目標達成の期限やプロセスなどがより具体的に整理され、自分が取るべき行動が一目で分かるようになります。
効果②:管理者が適切に目標を管理できる
小さい組織であれば、一人ひとりの目標をアナログに管理していても特に問題はないかもしれません。しかし、組織が大きくなればなるほど、一人の管理者あたりの部下の人数も増えてしまいます。
目標管理は、人事評価制度と連動していることがほとんどです。適切な目標管理は、適切な人事評価にもつながります。
その点、目標設定シートはフォーマットが統一されているので、管理者であれば部下全員の、人事担当者であれば社員全員の目標を把握しやすくなり、適切な管理ができます。
効果③:管理者の指導に役立つ
部下の目標を管理し、達成までのサポートをすることは、管理者のマネジメント業務にあたります。
目標設定シートがあれば、その内容を理解しやすくなることはもちろん、管理者として一人ひとりにどんな指導をすべきかを考えやすくなります。
管理者のマネジメント力向上は、組織を活性化させ、会社全体に良い影響を及ぼします。適切な目標管理は、組織力向上にも寄与するのです。
4.シート記入前に改めて確認!目標設定のやり方
いきなり目標を立てようと言われても、なかなか手が動かない方もいるでしょう。
目標設定シートを活用する以前に重要なのが、目標設定の仕方です。
目標設定のポイント
目標を立てる際に重要なのは、「誰が見ても明確な目標になっているか」という点です。
そのためには、以下の3点を中心に内容を整理してみましょう。
・What:何を目標にすべきか
・When:いつの達成を目指すべきか
・Why:なぜその目標にすべきか
目標は評価とも連動する部分があるので、客観的かつ具体的な目標を作ることで、自分にとってすべきことが明確になるほか、他人から見ても業務の進捗を把握しやすくなります。
目標設定に使えるフレームワーク
フレームワークを活用して目標を考えてみるのもオススメです。
ここでは、フレームワークの例として「SMARTの法則」をご紹介します。
「SMARTの法則」とは、明確な目標を立てるための以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。目標を立てた後の具体的なアクションにつなげやすいのが特徴です。
①Specific(具体的に)
:誰が読んでも理解できる具体的な表現や言葉で作成する
②Measurable(測定可能な)
:達成度合いが誰からも分かるように定量的に作成する
③Achievable(達成可能な)
:希望や願望でなく、実際に達成できる内容か検討する
④Related(経営目標に関連した)
:方針が組織としての目標に沿っているか確認する
⑤Time-bound(時間制約がある)
:いつまでに達成すべきなのか期限を設ける
目標は、最終的に行動につなげて達成することがゴールです。
SMARTの法則に従って目標を立てることができたら、具体的なアクションプランを同時に策定するのも良いでしょう。
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5. 目標設定シート おすすめテンプレート4選
目標設定シートは、インターネットで検索するだけでも既にさまざまなテンプレートが存在します。無料で使えるものも多いので、導入コストを押さえることが可能です。
オススメのテンプレートを4つ選び、ご紹介します。
テンプレート①:マンダラチャート
マンダラチャートは、株式会社クローバ経営研究所・社長の松村寧雄氏が考案したフレームワークです。
メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手が、高校時代に使用していたことでも有名です。
方法
マンダラチャートは以下の手順で作成します。
非常にシンプルな設計なので、誰でも簡単に作ることができます。
①9×9のマスを作り、中心に「自分の成し遂げたいこと」を書く
②中心から1マス離れた8マスに「成し遂げたいこと」の達成に必要な要素を埋めていく
③8つの要素を得るために必要な8つの行動目標を書く
効果
マンダラチャートを作成することで、目標を達成するための行動を視覚化することができ、日々の努力やアクションにつなげやすくなります。
また、行動の優先順位も付けやすく、最短での目標達成をすることができるでしょう。
マンダラチャートをいつも見る場所に貼っておいたり、常に持ち歩いたりすることで、モチベーションの維持にも役立ちます。
▽テンプレートのダウンロードはこちら(無料)
https://www.bizocean.jp/doc/detail/521059/
テンプレート②:woopの法則を活用した目標シート
woopの法則とは、アメリカの心理学者ガブリエル・エッティンゲン博士によって提唱された目標達成術です。
woopとは、「願望(wish)」「結果(outcome)」「障害(obstacle)」「計画(pllan)」の頭文字をとったもので、このステップで行動すると目標達成率を高めることができると言われています。
方法
woopに沿って、自身の考えをまとめながら目標を立てます。また、同時に達成までの道筋をイメージすることで、何が障害になる可能性があり、どうやってその障害を克服していくべきかを具体的に落とし込むことができます。
ご参考までに、woopの4ステップを解説します。
「願望(wish)」
自分が成し遂げたい目標を立てます。目標の難易度はモチベーションが維持できるくらいのレベルを意識し、「自分の能力よりも少し高いレベル」に設定しましょう。
「結果(outcome)」
目標が達成できた時のことを想像し、どんな結果が得られるかを考えます。
この時、設定した目標が抽象的だと、結果が上手く想像できないはずです。目標が単なるスローガンになっていないかを確認しましょう。
「障害(obstacle)」
設定した目標と想定される結果のギャップを見つけます。
少し高いレベルで目標を設定すると、何かしらの困難や障害があるはずなので、それらを克服するためには何が必要かを考えます。
なお、もしここで想定される困難や障害がどうにもならない内容であれば、レベルが高すぎる目標を設定している可能性もあるので、再考してみましょう。
「計画(plan)」
困難や障害を乗り越えるための具体的な行動計画を策定します。
PDCAサイクルを回しながら、行動する中で新たに生じる小さな課題を潰していくことを継続させましょう。
効果
woopの法則では、想定される結果を見据え、困難や障害に対処しながら行動をすることで、目標達成率を向上させる効果があります。
▽テンプレートのダウンロードはこちら(無料)
https://www.bizocean.jp/doc/detail/543596/
テンプレート③:MBO目標設定シート
MBOとは、「Management by Objectives(目標による管理)」の略で、経営学者のピーター・ドラッカーが1954年の著書『現代の経営』で提唱したマネジメント理論です。
現在多くの日本企業で導入されている目標管理制度は、MBOの考えに基づいています。
方法
基本的に1年に1回目標を設定し、社員本人と上司の間で共有することで人事評価の参考にします。
MBO目標設定シートの必須項目は決まっていませんが、「基本情報」「業務目標」「具体的アクション」「振り返り」「上司からのフィードバック」などの項目を作成するのが一般的です。
効果
トップダウン型のノルマ管理ではなく、自主的な目標設定を行うことで、社員の自主性やモチベーションの向上につながります。
また、目標達成までのプロセスが分かりやすく、後から自身の業務内容を振り返ってみたり、見直してみたりすることが簡単にできるメリットがあります。
▽テンプレートのダウンロードはこちら(無料)
https://www.bizocean.jp/doc/detail/540384/
テンプレート④:スキルマトリックス
作業工程が明確化している仕事をしている場合、導入しやすいのがスキルマトリックスです。
業務進行に必要なスキルを見える化することができるので、目標管理と評価がしやすいという特徴があります。
方法
シートに作業名とその内容を一つずつ羅列し、各作業に対するスキルの到達度を記入します。
現状不足しているスキルが一目瞭然になるので、不足点を中心に目標を作成します。
評価時にはここで立てた目標に対してスキルがどう変化したかを参考にしましょう。
効果
スキルを言語化・定量化することで、必要なスキル基準を揃えることができるので、適切な人事評価に役立ちます。
▽テンプレートのダウンロードはこちら(無料)
https://www.bizocean.jp/doc/detail/534902i/
6. 【職種別】目標設定シート記入例7つ
目標を立てると一口に言っても、その内容は職種によって大きく異なります。例えば、定量化しやすい仕事もあれば、なかなか難しいという場合もあるはず。
「目標設定シートに何を書いたら良いのか分からない」
「自分の職種における目標のイメージが湧かない」
という方向けに、職種別の目標設定シートの記入例をご紹介します。
職種①:営業
営業は比較的目標を定量化しやすい職種ではありますが、法人向け営業と個人向け営業という観点でも少し内容が異なってきます。
例(法人向け営業):1ヶ月ごとに新規の顧客を10件獲得し、半期の売り上げ1000万円を達成する。
例(個人向け営業):月に1回実施していた自宅訪問を2回に増やし、成約率を10%向上させる。
職種②:総務
業務範囲が幅広く、さまざまな仕事に携わっている総務。
ルーティンになってしまっている作業も、具体的な目標に起こしてみましょう。
例:現在導入している経費精算システムを見直し、再度比較検討することで、管理費100万円を削減する。
例:備品リストの更新作業を完全自動化し、作業時間を1日1時間削減する。
職種③:経理
管理系の職種の中でも、特に事務的な作業が多いのが経理の仕事です。
業務の効率化はもちろん、正確さに関する指標も盛り込むと良いでしょう。
例:請求書の送付を郵送からメールに変更し、1万円/月の経費削減を達成する。
例:簿記2級を取得し、知識を向上させることで経理処理のミス0を目指す。
職種④:広報
広報の仕事は、メディアの露出やイベントの参加者など、比較的定量化しやすいものが多いです。
数字を達成するための具体的な手法も合わせて記載しましょう。
例:テレビCMを年間2本打つことで、社名認知度調査の結果を30%向上させる。
例:企業SNSの更新を1回/日から3回/日に増やし、今年中にフォロワー1万人を達成する。
職種⑤:人事
例えば対外的な採用と社内向けの労務では、全く仕事内容が異なります。
人事は担当業務によって評価されるポイントが大きく変化するので注意しましょう。
例:求人媒体掲載への頻度を2倍に向上させ、エントリー数を100名増加させる。
例:今年中に全従業員と個別面談を実施し、社内の課題を調査し、新たな施策を2つ以上実行する。
職種⑥:マーケティング
例:日頃から数字の分析などを行うシーンが多いマーケティング職。
定量的で明確な目標を立てましょう。
例:露出メディアを3つ以上増やし、会社名でのキーワード検索10000を達成する。
例:webメディアの更新を月10本→20本にし、年間平均PVを昨年比+20%を目指す。
職種⑦:デザイナー
デザイナーの仕事は、直接的な結果に結びつける難しさはありますが、作業効率化などの観点でも目標が立てられます。
例:クライアントとの打ち合わせ回数を1回→2回/週に増やすことで、認識の齟齬を防ぎ、出戻り率を30%削減する。
例:デザインソフトを見直し、高スペックなソフトを導入することで作業時間を2時間/日短縮する。
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7.目標設定シートの振り返り方法
目標設定の管理・運用において、振り返りは欠かせない重要事項です。
むしろ、どんなに素晴らしい目標を立てていたとしても、振り返りが十分にできていなければ、十分な効果が得られないこともあります。
振り返りの際は、YWT(やったこと」「わかったこと」「つぎにやること」を書き出し振り返る方法)や、KPT(「Keep良かったこと」「Problemうまくいかなかったこと」「Try今後実施すること」を整理し改善に結び付ける方法)などのフレームワークを使用するのもオススメです。
また、振り返りの形式として、上司と部下でフィードバック面談を行うケースも多いでしょう。その際は以下の点に注意してください。
面談のポイント①:場所
面談の重要性をお互いに認識できるよう、オープンな場所ではなくミーティングルームなどを使用して面談を行うのが良いです。
面談のポイント②:時間
面談の頻度はそう多くは設けられないので、しっかりと時間が取れるタイミングで予め日程を決めて実施します。
中身の濃い面談ができるよう、多少延長してしまうことを見越して、後の予定なども事前に調整しておくとベストです。
面談のポイント③:頻度
面談は半期〜1年に1回程度しか行わないという企業も多いでしょう。面談の重要性は分かっていても上司の業務負荷を考えるとなかなか増やしにくいのも事実です。
しかし、効果的にPDCAサイクルを回したいのであれば、1回あたりの時間を短くしてでも理想は月に1回くらいの頻度で実施するのがオススメ。
こまめな目標管理やフィードバックは、部下のモチベーション向上にもつながります。
8.目標設定シート導入の注意点
目標管理は、基本的に一度開始したら継続的に行うものです。
よって、運用の仕方や目標設定シートのフォーマットもあまり高頻度で変更を繰り返してしまうと、社員の混乱を招いてしまう可能性があります。
導入時には、
・目標管理の運用を通じて何を達成したいのか(目的の明確化)
・目的に応じたフォーマットはどれか
・フォーマット導入にかかるコストはどれくらいか(無料/有料)
・フォーマットに記載されている項目は、誰にとっても分かりやすく記入しやすいか
などの点に注意して、使いやすいものを選ぶようにしましょう。
9.まとめ
本記事では、目標管理に役立つ「目標設定シート」に着目し、オススメのテンプレートや目標設定のコツなどを紹介しました。
今回の内容をおさらいしましょう。
・目標設定シートとは、目標管理を行う際に使用されるシートのことで、規定のフォーマットを用いる。
・目標設定シートには、具体的な目標・達成基準・期限・達成までのプロセス・最終的な成果を記入し、期末など定期的なタイミングで作成する。
・目標設定シートを使用することで、目標達成までの手順が明確化するほか、人事評価もしやすくなる。
・目標設定シートには無料のものでもさまざまなフォーマットがあり、目的に応じて選ぶと良い。
・目標を振り返る際は、フレームワークを用いて整理を行い、上司とのフィードバック面談を適切に行うことが重要。
目標に向かって仕事に取り組み、PDCAサイクルを回しながら達成することは、社員の成長に大きくつながります。
ぜひ今回の内容を参考にして、効果的な目標管理の運用を行ってみてくださいね。