
社内へのSDGsの推進は決して簡単なことではありません。経営層の理解を得た後は、従業員にどう浸透させるのかという課題が待っています。withコロナで社会が大きく変化するなか、企業はどのようにSDGs推進に取り組むべきなのでしょうか。
コロナ危機を乗り越え、真にサスティナブルな経営を目指すための考え方と取り組みについて、株式会社サーキュレーション ソーシャルデベロップメント推進室代表・信澤みなみ氏をゲストをお迎えし、Unipos株式会社・代表取締役社長・斉藤知明との対談を2020年6月18日開催のUniposウェビナーにて実施しました。
▽実施ウェビナー概要
・2020年6月18日開催
・イベント名:withコロナ時代のSDGsに新たに必要な視点と実践方法とは
・登壇:株式会社サーキュレーション ソーシャルデベロップメント推進室代表・信澤みなみ氏、Unipos株式会社・代表取締役社長・斉藤知明
▼今後のウェビナー情報はこちらよりご確認いただけます
https://unipos.peatix.com/view
1. コロナ危機がSDGsに与えた影響
コロナ以前に起きた世界的な経済危機といえば2008年のリーマンショックです。当時、多くの企業がCSR(企業の社会的責任)対応の予算を減らしました。今回のコロナ禍でまた、同じことが起きるのではないかと心配される方も多いのではないでしょうか。
斉藤はトヨタ自動車の2020年3月期決算発表を例に挙げ懸念を払拭します。
「トヨタ自動車はコロナ危機の直撃を受け、決算発表では減収減益となったことを発表しました。しかし、同時に『SDGsに本気で取り組んでいく』ことも表明しています」(斉藤)
これを受けて信澤氏は同意を示しつつ、「今回のコロナ危機はリーマンショックのときとは違うという声をよく聞きます」とコメント。その理由として「多くの企業がSDGsを経営戦略として捉えているのでコストカットの対象になっていない」ことを挙げられました。
では、「SDGsを経営戦略として捉える」とはどういうことでしょうか。
背景にあるのは「事業は常に外的環境に左右される」という事実です。外的環境はコントロールが効かず、いつ何が起きるかわかりません。これからの企業は外的環境の変化に耐えられるよう備えておく必要があるのです。
外的環境の最たるものが環境問題をはじめとする社会課題です。SDGsとはそうした課題の解決に取り組むこと。つまりSDGsを推進することで、外的環境の変化に耐える強い組織をつくることができるというわけなのです。
もっとも、コロナ危機がSDGsに影響を与えていないわけではありません。むしろ、SDGsも大きな変化を迫られたと言えます。
たとえばSDGsへのアプローチの方法は、フォアキャスティング(現在を起点として未来を予測する)からバックキャスティング(未来の理想から逆算して現在やるべきことを考える)へと変化しました。
さらに、SDGsを推進する主体も経営陣やCSR推進室だけではなく、全社を巻き込んで取り組むことがより重要になっています。
2. 海外ではSDGsへの取り組みが企業経営にも影響
もちろん、それは簡単なことではありません。事前に聴講者の皆様にご回答いただいたアンケートによると、多くの方が「トップのコミットをどう引き出すか」、そして「現場をどう巻き込むか」という点について課題を感じていることがわかりました。
トップのコミットを引き出すことができないのは、「目的の認識をそろえることができていないから」だと信澤氏は言います。
「会社が存続する前に、地球や人類、人権を正しく存続させる必要があります。日本ではまだそのことを考えられている人が多くありません。企業が存続する目的、SDGsを推進する目的が何なのか、議論が不足しています」(信澤氏)
たとえば海外では、多くのCEOがSDGsをはじめとする社会貢献に対して積極的に推進を表明しています。明確にコミットしていなかったために、優秀な従業員がボイコットしたり退職したりするケースもあるそうです。
これを受けて斉藤は、「たしかに日本人のSDGsへの意欲は低いという声もあります」と同意。
海外におけるSDGsへの意識の高さがうかがえる例として、「ベルリンで40万人が参加した環境問題に関するデモの当日、企業はその日を休日にして社員のデモへの参加を支援しました。その事実がブランディングにつながり、採用がうまくいったそうです」(斉藤)といったエピソードを紹介しました。
現状では海外に比べてSDGsへの取り組みが遅れている日本ですが、「SDGs推進の土壌はある」と信澤氏は強調します。
「日本人の根っこには自然崇拝がありますし、よく『三方良し』ともいいます。これはまさにSDGs的な思想です。日本人にはSDGsは馴染み深い思想のはずなんです」(信澤氏)
もう一つの課題である「現場(従業員)をどう巻き込むか」という点については、SDGsを推進したい経営層を悩ませる問題です。そもそも興味を持ってもらえなかったり、取り組みを知ってもらう方法がわからなかったり、“のれんに腕押し”状態になっている企業も多いのではないでしょうか。
この課題を解決するためには「従業員目線で喜びを感じられる体験設計」が重要になると信澤氏は言います。
「大切なのは社員に“自分ごと化”してもらうことです。メリットや利益ではなく、自分ごとなんだと理解してもらうための施策が必要なのです」(信澤氏)
ポイントは、「会社ではなく自分自身の人生」について考えてもらうこと。自分の人生をより良いものにするためにどうするべきかという視点でフラットに問いかけてみると、自分ごと化できるのだそうです。
3. 国内企業がSDGs推進に成功できたポイント
ここで、信澤氏からは実際に全社を巻き込みSDGsを成功させた国内企業の例をご紹介いただきました。
まず、従業員数600名の大手金融グループで成功のポイントになったのは、事業部長クラスに対して「経営戦略へのSDGs組み込み」を理解してもらうため、研修を行ったことでした。
そこで活躍したのが信澤氏が所属されている株式会社サーキュレーション、つまり外部のプロフェッショナルです。このようなケースでは外部からの客観的な意見がないと妥当性が理解してもらえないことが多々あるとのこと。コンサルタントが並走することで外部の視点を取り入れ、SDGs推進に成功した例といえます。
続いて大手総合リース会社の例です。
ここでポイントになったのは、現場社員への理解を進めたのが各事業部長だったという点です。先にワークショップで事業部長がSDGsを理解し、それから推進室と事業部長が連携して現場に浸透させていきました。
また現場社員に対しては、自分たちの仕事とステークホルダーの洗い出しを行わせ、さらにステークホルダーがどんな状態になると幸せなのかという点について問いかけたそうです。この問いから社員の意識が会社の“その先”へと向かい、環境や社会へ紐付ける意識の醸成ができたといいます。
4. SDGsの推進が目的になってはいけない
こうした事例を受けて斉藤は、「個人の“良くありたい”という欲求が社会的要請に変わり、それに企業が応えることで企業価値向上につながっていく。社会と組織と事業が持続的に成長していくためにはこのサイクルをどう作れるかが大事ですね」とコメント。
これに信澤氏は同意を示し、「普段仕事を業務として捉えて働いている方でも、実は社会のため、誰かのためになっていたんだと気づくことができると、想像以上に社員は喜びを感じられるものなんです」と述べました。
今回の対談を通して信澤氏が何度も強調されていたのは、「推進する目的を”SDGsを推進すること”にとどめてはいけない」ということです。推進の先にある目標や答えはそれぞれの会社で決めていくものであり、「どういう状態を目指すのか」が決まってから「それを実現するためにどうするのか」を考える流れでなければうまくいかないといいます。
しかし、多くの経営者はどうしても短期的な事業の目線で考えてしまいがち。そこで信澤氏は対談の最後に、次のような問いかけを「魔法の一言」として紹介されました。
「部長はお孫さんにどんな社会を残したいですか?」
重要なのは会社や事業を離れたフラットな視点で「どんな社会であるべきか」を問いかけることだそうです。この質問をきっかけに議論が良い方向に進むことも多いのだといいます。
まだまだ国内では道半ばのSDGs推進ですが、グローバルではすでに企業経営に影響をもたらすほど重要な取り組みとして評価されています。会社、従業員、そして地球の未来のためにもSDGsを推進し、持続可能な社会の実現を目指しましょう。
変化に対応できる強くしなやかな組織をつくるための「Uniposウェビナー」とは
働く仲間同士、異なる部門同士、企業と個人が相互理解を深めたら、組織はもっと強くなる。「あなたの組織を一歩前へ進めるUniposウェビナー」は、変化に対応できる強くしなやかな組織をつくるためのウェビナー。コロナ危機をきっかけに2020年5月開始し、毎回数百名の方にご参加いただいています。
組織課題解決やSDGsのプロ、識者、実践者を毎回ゲストにお呼びし、予測不可能な時代を生き抜く組織のあり方を共に考え、実践のヒントをお伝えします。みなさまお誘い合わせの上、お気軽にご参加下さいませ。
▼過去ウェビナー参加者様の実際の声
「経営陣や上層部に対してのアプローチに悩みを持っておりましたが、今回の講演で素敵なヒントをいただくことができました。どうもありがとうございました。」
「今まで何度か同テーマのセミナーに参加しましたが、一番腑に落ちる内容が多いセミナーでした。 又、参加させて頂きたく思います。」
「いまプロジェクトを担当していますので本当に助かりました。」
「いくつものヒントをいただけて、同じように悩んでいる方が大勢いることもわかりました。今は、さぁどこから手をつけようか、と前向きに考えています。」
「目から鱗で感動しました。」
▼次回ウェビナー情報はこちらよりご確認いただけます。
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運営メディア:「あなたの組織を一歩前へ ONE TEAM Lab」 https://media.unipos.me/
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