クレドの意味とは?クレドカードを作成する際の手順と導入事例

クレドとは、企業における行動指針のことです。企業と勤務する社員のあり方について文章化したもので、それを携帯できるようにカードにしたものをクレドカードと呼びます。国際社会との競争の激化や働き方改革など、変化が激しい現代社会において、経営層や社員がコンプライアンスを守り主体的に行動するために、クレドを意識した働き方が重要視されています。

今回はクレドの意味や活用法、作成の方法に加え、すでに活用してる企業についてご紹介します。

1.クレドの意味とは?

クレドとは、企業の信条や行動指針を簡潔に示した言葉です。ラテン語で「信条」を意味するクレド(Credo)に由来しています。クレドは経営判断や社員が現場で行う判断の指針となります。企業内や取引先、顧客との間に共有し、馴染ませることで効果を発揮するのです。

代表的なクレドとして、ザ・リッツ・カールトンホテル カンパニー L.L.Cの「ゴールドスタンダード」が有名です。以下にクレドの文章をご紹介します。

“リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。

私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。

リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

出典:ザ・リッツ・カールトンホテル カンパニー L.L.C・企業理念「ゴールドスタンダード」

https://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards

有名企業5社のクレドの詳細については5章にて後述します。

1-1.企業理念との違い

クレドは企業理念と似ていると感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、クレドと企業理念には違いがあります。

企業理念は企業の存在意義や基本的な考え方を示したものです。創設時に定められることが多く、基本的には大きく変わらずに使い続けられます。また、企業理念はトップダウンで作られ、抽象的な文言が使われているケースが多くあります。

クレドは具体性のある文言で簡潔に作られており、社員に伝わりやすい言葉になっているのが特徴です。全社員で話し合いながら、ボトムアップで作られます。また、その時々の企業の状況に合わせ、クレドの内容を変えるケースもあります。

1-2.クレドカードはクレドをカード化したもの

経営層や社員にとって企業理念よりも具体性があり、実行する際の指針にしやすいクレド。普段から意識できるように、クレドの文言をカードに落とし込んだものがクレドカードです。

クレドをカード化することで常に携帯でき、内容を社員に浸透させやすくなります。また、自然とクレドを遵守した行動につながるため、仕事と真剣に向き合うようになり、業務レベルの向上が期待できます。

クレドカードには紙製のものとプラスチック製のものがあります。紙製のものは三つ折りやジャバラ折りにできるため、記載する情報量を増やせます。プラスチック製の場合は強度がありコンパクトなので、財布や名刺入れなどに入れて携帯しやすくなります。

2.クレドを導入するメリット

クレドを導入することで、以下の3つのメリットが考えられます。

  • 社員がコンプライアンスを守るようになる
  • 企業を背負った人材の育成
  • 社員のモチベーションアップ

2-1.社員がコンプライアンスを守るようになる

クレドが普及した理由の1つに、企業の不祥事があげられます。2000年代に入り、企業の粉飾決算や検査データの改ざん、食品の産地偽装などの問題が報道されたことで、各企業はコンプライアンスに注力する必要に迫られました。

経営層だけでなく、社員一人ひとりがコンプライアンスを意識して行動するためには、普段からクレドを意識し、企業としての行動指針を理解しておくことが重要なのです。

2-2.企業を背負った人材の育成

一人ひとりの社員がクレドの内容を理解し、それを規範として行動するのが理想です。取引先や顧客に対して、企業を背負う者としてふさわしい振る舞い方を意識できます。その時々で適切な行動を心がけることは、社員の主体性の向上へとつながるでしょう。

IT関連の発達や物流の進歩など、これまで以上にスピード感を持って働くことが求められる時代です。日々の業務において、上層部の判断を待たずに現場レベルで考えて行動しなければならない場面も増えてきます。クレドを意識し、社員が経営層と同じ目線で状況を判断できるようになるのも、大きなメリットです。

2-3.社員のモチベーションアップ

日々の業務の中でモチベーションを保ちながら働ける環境の維持は、社員の能力を引き出すうえで欠かせません。クレドを意識しながら働くことで主体性を持って仕事ができるため、やらされている感がなくなりモチベーションアップにつながります。

モチベーションの維持には、携帯できるクレドカードの存在が重要です。仕事がうまくいかない時や落ち込んだ時にクレドカードを読み直すことで、自社の行動指針に沿った働き方を再認識できます。

3.クレドが浸透した事例「タイレノール事件」

クレドの存在が広く知れ渡ったきっかけは、1982年の930日に起きた「タイレノール事件」だといわれています。

3-1.毒物混入事件が発生

解熱鎮痛薬タイレノールにシアン化合物が違法に混入される事件が起きました。ジョンソン・エンド・ジョンソンはこの事件に対し、マスコミを使った積極的な情報の開示や、異物の混入を防ぐ新しいパッケージを開発するなど、迅速に対応。事件の約2ヶ月後には、事件前の売上の80%まで回復しました。

タイレノール事件の詳細はこちら

http://tylenol.jp/story02.html

3-2.クレドに基づいた迅速な対応

 毒物混入事件においてジョンソン・エンド・ジョンソンは、クレドである「我が信条」の「第一の責任」に基づいた意思決定を下しました。

緊急時の迅速な対応の裏には、「消費者に対する責任」を重視した結果、全社員の意識の共有ができ、問題へとスムーズに対処できたことがあげられます。1986年には2度目のタイレノール事件が発生しましたが、この時も新たな毒物混入対策を取り、的確に対処しています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドについてはこちら

https://www.jnj.co.jp/about-jnj/our-credo

4.クレドの導入企業例5社とその内容

実際にクレドを導入し、社員に共有している企業を5社紹介します。

  • ザ・リッツ・カールトン
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン
  • 楽天株式会社
  • グリー株式会社
  • 小田急電鉄株式会社

4-1.ザ・リッツ・カールトン

世界的にホテル事業を展開している、ザ・リッツ・カールトンホテル カンパニー L.L.C(ザ・リッツ・カールトン)では、企業理念「ゴールドスタンダード」においてクレドを定めています。

質の高いサービスの提供には、クレドによる社員の意識の向上が欠かせないからです。このクレドはクレドカードにまとめられており、「サービスの3ステップ」や「従業員への約束」などとともに記載されています。

ザ・リッツ・カールトンの社員はクレドカードを常備し、必要な時に読むことで、自身の行動が企業の理念と乖離していないかを常に振り返れるようになっています。

ザ・リッツ・カールトンのクレドの詳細はこちら

https://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards

4-2.ジョンソン・エンド・ジョンソン

3章でご紹介したジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドについて、詳しく解説します。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは「我が信条」としてまとめられており、これはA4サイズの用紙1枚に収まる内容です。

クレドには顧客だけではなく、社員や地域社会、株主からなる4つのステークホルダー(利害関係者)への責任について具体的に記載しています。クレドができてから60年以上が経過しましたが、現在でも社員一同の行動指針として機能し続けています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドの詳細はこちら

https://www.jnj.co.jp/about-jnj/our-credo

4-3.楽天株式会社

 インターネット通販業界の大手、楽天株式会社のクレドは、「成功のコンセプト」という5つで構成されています。

社内へのクレドの浸透により、企業理念への共感を高める狙いがあります。楽天市場のクレドは、「常に改善、常に前進」「顧客満足の最大化」など具体性が高いものとなっており、社員は常にスピード感を持ち、自主的な行動を意識できるようになります。

楽天株式会社のクレドの詳細はこちら

https://corp.rakuten.co.jp/about/philosophy/principle/#success

4-4.グリー株式会社

ソーシャルゲーム業界で長い歴史を持つグリー株式会社。企業のMission(存在意義)として、「インターネットを通じて、世界をより良くする。」があり、その実現のために、「ロジカル × クリエイティブ × スピード。」「現状に甘んじない。さらに高い目標をめざす。」など5つのValue(行動規範)を設けています。

グリー株式会社のクレドカードにはMissionValueに加え、Vision(目指す姿)の3つの項目が記載されています。

グリー株式会社のクレドの詳細はこちら

https://corp.gree.net/jp/ja/corporate/mission/

4-5.小田急電鉄株式会社 

「ロマンスカー」で知られる小田急電鉄株式会社には、「ロマンスカークレド」があります。箱根と都心をつなぎ、60年以上に渡って親しまれて来たロマンスカーですが、時代の流れとともに乗客数が減少。

顧客の多様なニーズに対応することが急務でしたが、社内ではサービスに対する社員間の意識の違いがありました。

そこで、ロマンスカークレドの策定プロジェクトが発足。運転士や車掌などロマンスカーの乗員を中心にチームが組まれ、他の企業のクレドやサービスの研究、グループ内の関係社員へのインタビュー調査を行いました。

完成したクレドはカードにして全乗務員に配り、行動指針や大切にしたい想いを浸透させています。

小田急電鉄株式会社のクレドの詳細はこちら

https://www.odakyu.jp/recruit/shinsotsu/expert_railroad/feature/feature03.html

5.クレド・クレドカード作成の手順

クレドとそれを携帯できるクレドカードの作り方をご紹介します。

ここで重要なのは、クレドはボトムアップで作り上げるということ。企業理念は経営層を中心に決めますが、クレドは社員の意見を集めながら形にしていきます。

 

5-1-1.プロジェクトチームの選定

 まずは、クレド作成のためのプロジェクトチームの選定から始めます。前の章でご紹介した小田急電鉄株式会社のロマンスカークレドの例のように、クレドの作成は一般の社員を巻き込んで行います。

チームのメンバー選定にあたっては、各部署からさまざまな役職の社員を集めるようにするとよいでしょう。なるべく多角的な視点の意見を集めることで、クレドの精度を高められます。トップダウン式になるのではなく、ボトムアップで社員全員が納得感を持てるクレド作成をめざしましょう。

クレド・クレドカード作成の手順

  1. プロジェクトチームの選定
  2. 社員へのヒアリングやアンケートの実施
  3. 経営層へのヒアリング
  4. クレドの作成
  5. クレドカードの作成・配布

5-2-2.社員へのヒアリングやアンケートの実施 

 プロジェクトチームが発足したら、全社員の意見を集めます。経営層から現場の社員まで幅広い意見を取り入れることで、一体感のあるクレドを作成できるでしょう。

規模の小さい企業ならミーティング形式で意見を聞く方法もありますが、社員数の多い企業ではそうもいかないため、全社員へのヒアリングやアンケート調査を行います。事業所や部署単位で意見を収集するのが効果的です。

アンケートで調査する内容として、以下の例を参考にしてください。

社員へのヒアリング・アンケートの例

  • 顧客対応について
  • 業務への取り組み方
  • 部署の仲間について
  • 自社について
  • 提供する商品やサービスの内容について


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3.経営層へのヒアリング

 社員へのアンケートと並行して、経営層へのヒアリングを行います。クレドは全社員の行動指針となるため、社員と経営層の考え方が一致している必要があるからです。

そのため、考え方に乖離が起きないように、意見をすり合わせていきます。社員数が多いほど経営層と社員の距離が遠くなってしまうため、双方の意見をまとめることはクレド作成において非常に重要なのです。

5-4-4.クレドの作成

 全社員の意見を聞いたら、それをまとめて文章化します。

クレド作成において大切なのは、わかりやすく、全社員にとって納得感があることです。特に、簡潔でわかりやすいことはとても重要です。

クレドは社員にとっての行動指針となるため、理解がしやすく容易に説明できる内容にする必要があります。また、内容に具体性を持たせることも忘れてはなりません。クレドは企業理念よりも具体的な行動指針として存在しなければならないからです。

5-5-5.クレドカードの作成・配布

 完成したクレドを普及させるには、カード化して全社員に配布するのが効果的です。

クレドカードは財布や社員証などに入れて携帯することで、気になった時にすぐクレドを確認できるため、社員の間に浸透しやすいというメリットがあります。

クレドカードは携帯しやすいように、なるべく1枚のカードに収まるレイアウトと分量で作成しましょう。ある程度の強度を持たせるために、カードの素材はプラスチック製にするのがおすすめです。

6.まとめ

クレドは経営層から一般社員までが規範とする、行動指針のことです。企業理念よりも具体性があり、普段の業務の中で意識しやすいものでなくてはなりません。

クレドの作成には、全社員の意見が必要なのがポイントです。クレドは企業理念のようにトップダウンではなく、現場を支える社員からのボトムアップによって作り上げることが重要になります。

クレドの浸透によって企業と社員の方向性を合致させ、自主性を高められる効果が期待できるのです。