丸井グループはいかにしてウェルネス経営に取り組み、組織の発展につなげたのか(ウェビナーレポート)

・2021年4月8日開催

・タイトル:丸井グループ執行役員小島玲子氏と考える コロナ禍の企業成長に「ウェルネス経営」が必要な理由

・登壇:株式会社丸井グループ執行役員 ウェルネス推進部部長 専属産業医 小島玲子氏、Fringe81株式会社 執行役員 兼 Uniposカンパニー社長 斉藤知明

今後のウェビナー情報はこちらよりご確認いただけます

https://unipos.peatix.com/view

コロナ禍により、未来が予測できない世界が到来しました。そうした中で企業が成長していくためには、社員一人ひとりが“豊かで幸せな心”を持ち、生き生きと働くことが不可欠です。このような経営の考え方を「ウェルネス経営」と呼び、現在注目が集まっています。

では、ウェルネス経営を実現するには、具体的にどのように取り組んでいけばいいのでしょうか。

4月8日、Uniposウェビナー「丸井グループ執行役員小島玲子氏と考える コロナ禍の企業成長に『ウェルネス経営』が必要な理由」を開催。丸井グループ執行役員であり、専属産業医として「ウェルネス経営」を主導する小島玲子氏をお迎えして、丸井グループが実践してきたウェルネス経営のポイントについてご講演いただきました。

経営危機を経て、企業風土の変革が経営課題に

そもそも丸井グループが「ウェルネス経営」を本格的に推進することになったきっかけは何だったのでしょうか。

この点について小島氏は「経営危機を経て、企業風土の変革が経営課題になったこと」を挙げています。

丸井グループは1931年に家具の月賦商として創業。現在は関東を中心に「マルイ」や「モディ」23店舗展開する小売事業および「エポスカード」などのフィンテック事業、そして「未来投資」からなる三位一体のビジネスモデルを展開しています。創業以来、順調に成長を続けてきたかに見える丸井グループですが、実はいくつかの経営危機と“革新”を経験して現在に至っています。

中でも大きく変革するきっかけになったのが、2009年から2011年頃にかけての時期でした。創業以来、初めて赤字を計上するなど経営危機を迎えた丸井グループは、それまでの「受身的・軍隊的な企業風土」の変革を強く打ち出し、「自分で考え、行動する」ことをテーマに、従業員が生き生きと働ける「ウェルネス経営」を目指すことになったのだといいます。

ウェルネス経営と似た言葉に「健康経営」がありますが、小島氏によると「健康経営という表現だと、健康診断や病気の予防というイメージがつきがち」とのこと。

「本来、“健康”という言葉は身体面だけでなく、“肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること”を指しています。丸井グループでも最初は健康経営と呼んでいましたが、社員から名称を変えた方がよいという意見が出たためウェルネス経営と呼ぶことにしました」(小島氏)

社員が自ら手を挙げてプロジェクトに参加

そんな丸井グループのウェルネス経営の特徴は2つあります。

「経営理念と一体であること」と、「手を挙げて参加する自律的な取り組みであること」です。

これらの特徴を体現する活動として、2本柱になっているのが「全社横断ウェルネス経営推進プロジェクト(一般社員)」と「レジリエンスプログラム(GM職・役員)」です。

「全社横断ウェルネス経営推進プロジェクト(一般社員)」は、挙手制の全社プロジェクトであり、2016年から取り組みが始まりました。挙手制――すなわち当時5,700名いた全社員を対象とした公募制で、「なぜ健康経営プロジェクトに参加したいのか」をもとにレポートを提出してもらったのだといいます。

このレポートについて、氏名や所属を伏せた上で内容を審査し、50名の枠でメンバーを選出。選ばれた社員がウェルネス経営推進プロジェクトに取り組んできました。

活動の内容は多様です。たとえば第一期メンバーが取り組んだのは、社員自らビジョンを策定し浸透させるプロジェクト。管理職研修を開催し、新入社員が司会を務めるなど、立場を越えた取り組みにより、「“健康”の理解」を進めてきました。

第一期メンバーの活動を引き継ぎ、第二期メンバーは職場でのウェルネスアクションの拡大に従事、第三期メンバーはさらに他社とのセミナーを開催するなど、活動を社外へと広げていきました。

第四期メンバーはちょうどコロナ禍と時期が重なったため、大変な面が多かったとのことですが、逆に「今こそウェルネスを通じて社会を幸せにしよう」という思いで活動を続けてきたといいます。

たとえば、テナント企業と共同でオリジナル動画を制作、配信したり、社内でパーパス研修や心理士との共同セミナーを開催したりするなど、ウェルネスの発信に努めてきたそうです。

中でも、社員が自ら講師となって、自分の価値観や人生の目的、仕事への向き合い方を深く考え共有する「パーパス研修」は、受講した社員にも非常に好評だったとのことです。

ウェルネス経営プロジェクトで組織状態が改善

次に、GM職や役員を対象とした「レジリエンスプログラム」ですが、こちらも約1年をかけてしっかりとおこなったとのこと。

その結果、ウェルネスの取り組みが活発な事業所では、ストレスチェック組織分析において、「職場の一体感」や「個人の尊重」などの指標が向上するという効果が得られたといいます。

こうしたウェルネス経営に関するプロジェクトは、受講者はもちろん、プロジェクトを推進したメンバー自身にもよい影響を与えたと小島氏は振り返ります。

「プロジェクトにはこれまでに300名弱が参加しています。アンケートを取ったところ、プロジェクト参加前と参加後では、働きがいや自己効力感が高まるといった効果が出ています」(小島氏)

これまでの取り組みを通して、小島氏は時代の変化を強く感じているといいます。

かつて、大量生産がよしとされていた昭和の時代。それから時が経つと共に、社会や人々は成熟し、よいモノやよいサービスを求めるようになっていきました。

さらに令和を迎え、現在は「感性」や「心のありよう」を大事にする時代になったのだと小島氏は言います。

「変化や困難の多い社会において、物質的な豊かさよりも心を豊かに、幸せにする経験や体験が求められる時代になりました。働き方も同様です。人生100年時代といわれる今、単に病ではない、弱っていないということではなく、人生を豊かに、幸せにする取り組みが求められているのです」(小島氏)

ディスカッション~丸井グループはなぜ“変革”できたのか

斉藤は丸井グループのウェルネス経営への取り組みに感銘を受け「取り組みの前後で社風も変わったと思うが、なぜ変われたのか?」と質問しました。

これに小島氏は「健康経営というキーワードだけで進めようとすると難しかったと思う」と述べたうえで、「経営課題として企業文化を変革するというトップの強いコミットがあったことが大きかった」と答えました。

また、トップのコミットメント、すなわち丸井グループの青井社長がなぜそうした決意に至ったのかという点については、

「以前は重要な会議でも、寝ている人がいた。このままではだめだろうということで、挙手制にした」と、主体性を持った社員がさまざまな取り組みに参加する『手挙げ式』を浸透させた理由を説明。その結果、企業文化の変革が加速したと述べました。

このやり方について斉藤は「全員をいきなり動かすことは難しい。一部の意識の高いメンバーを巻き込んで広げていったのはよい進め方だった」と称賛しました。

一方で斉藤は、「サステナビリティやESGと同じように、ウェルネス経営もどうしても目標がふわっとしがち。サーベイのポイントが上がったとして、社内から“それで?”と言われてしまうこともある」と指摘します。

この点について小島氏は、「丸井グループではサステナビリティの取り組みにより、株価とEPS(一株あたりの当期純利益)に差が出ており、この差分を“ESGプレミアム”(ESGに取り組んだ結果、生まれた株価プレミアム)と捉えている」としたうえで、「このプレミアムが拡大しているからこそ、我々はこれからもサステナビリティに取り組んでいくと、ある種の宣言をしている」と説明します。

もちろん、本当に株価が上がった効果が、サステナビリティへの取り組みの結果かどうかは不明です。しかし、それは「人事の研修がどれだけ売上に貢献しているのかを証明できないのと同じ。だからといって研修に意味がないという人はいないでしょう」と小島氏は言います。

「人事の研修と違って、サステナビリティやウェルビーイングの取り組みについては“財務面への効果を表せなくても、意味はあるのだ”というコンセンサスが、社会ではまだありません。ただ、そろそろコンセンサスが醸成されないといけない時期にきていると考えています」(小島氏)

さらに小島氏はウェルネス経営を成功させるポイントについて、「その企業の社員に響きやすいやり方があるはず。文脈を踏まえて進めるべき」とアドバイスします。

「丸井グループは接客や人が好きで入社した社員が多いのが特徴です。人と話したり、一緒に活動したりするのが好きな社風があったので、それなら“皆でよくしていこう”というコンセプトのプロジェクトが向いていると思いました」(小島氏)

加えて、小島氏は成功のポイントに「職場の互いの前向きな声掛け」を挙げます。ハピネス・メッセージとは前向きな感情が様々なよい影響を与えるという考え方で、「創造性が増す」や「生産的になる」、「健康にもよい影響がある」などの影響が研究により判明しているのだといいます。

こうした声掛けを戦略的に増やしていくことで、組織の改革はよりスムーズに進むのだと小島氏は説明しました。

また、小島氏は前向きな感情を生み出すソリューションであるUniposにも着目。著名な研究「スリーグッドシングス」を引用し、「1日の終わりに、よかったことを3つ思い浮かべることで、気持ちがリセットされてポジティブになれる。Uniposがまさにそれができる仕組み」と称賛しました。

* * *

経営危機をきっかけに企業風土の変革に着手し、ウェルネス経営を実践して大きな成果をあげてきた丸井グループ。成功の理由は、ウェルネス経営を「経営理念と一体にした」こと、そして「手を挙げて参加する自律的な取り組みをおこなったこと」でした。

コロナ禍を経て、人々の意識はより「感性」や「心のありよう」を大事にする方向に進んでいます。身体的な意味での“健康”だけではなく、心の安定も含めた“ウェルネス経営”こそ、これからの企業に求められる取り組みなのです。

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心理的安全性を高め、挑戦する組織をつくるための「Uniposウェビナー」とは

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働く仲間同士、異なる部門同士、企業と個人が相互理解を深めたら、組織はもっと強くなる。「あなたの組織を一歩前へ進めるUniposウェビナー」は、変化に対応できる強くしなやかな組織をつくるためのウェビナー。コロナ危機をきっかけに2020年5月開始し、毎回数百名の方にご参加いただいています。

組織課題解決やSDGsのプロ、識者、実践者を毎回ゲストにお呼びし、予測不可能な時代を生き抜く組織のあり方を共に考え、実践のヒントをお伝えします。みなさまお誘い合わせの上、お気軽にご参加下さいませ。

過去ウェビナー参加者様の実際の声

「経営陣や上層部に対してのアプローチに悩みを持っておりましたが、今回の講演で素敵なヒントをいただくことができました。どうもありがとうございました。​」

「今まで何度か同テーマのセミナーに参加しましたが、​一番腑に落ちる内容が多いセミナーでした。 ​又、参加させて頂きたく思います。」​

「いまプロジェクトを担当していますので本当に助かりました。」​

「いくつものヒントをいただけて、同じように悩んでいる方が大勢いることもわかりました。今は、さぁどこから手をつけようか、と前向きに考えています。」​

「目から鱗で感動しました。」

<今回の登壇者プロフィール>

株式会社丸井グループ執行役員 ウェルネス推進部部長 専属産業医 小島玲子氏

医師、医学博士。大手メーカー専属産業医として約10年間勤務。人と組織の活性化について研究するため北里大学大学院に在籍、10年医学博士号取得。11年丸井グループの産業医となり、14年 健康推進部(現 ウェルネス推進部)の新設に伴い部長に就任。19年から現職。著書に『産業保健活動辞典』 (バイオコミュニケーションズ、共著)、『職場面接ストラテジー』(同)など。