組織はどのように崩壊する!?危険な7つの予兆と崩壊を防ぐ5つの対策

2 組織を崩壊させない5つの対処法

冒頭でも触れましたが、組織崩壊について、数年前に話題になったひとつのマニュアルがあるのを知っていますか?

アメリカ・CIA(中央情報局)の前身であるOSS(米国戦略諜報局)がつくったSIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL」(通称「サボタージュ・マニュアル」)」です。

第二次世界大戦末期の1944年、諜報活動の一環として敵の組織に潜入し妨害工作をする際のマニュアルとしてつくられ、長年にわたって機密資料とされていたのが、近年公開されたものです。

ではなぜこれが話題になったのでしょうか?

それは、この「妨害工作」の中に、日本の組織ではよく見られる「日本企業あるある」がたくさん書かれていたからです。

例えば以下のようなことは、あなたの会社でもあるのではないでしょうか?

  • ペーパーワークや手続きをなるべく増やす
  • 会議はできるだけ大人数で行う
  • 一度決まったことを再度持ち出して検討したがる
  • 仕事のできない者を昇進させ、できる者を冷遇する

「サボタージュ・マニュアル」では、これらは「妨害工作」とされています。
つまりこれらを行なっていると、組織は崩壊するというわけです。

言いかえれば、日本の組織の中には正常な運営を妨げる「妨害工作」のような悪習がはびこっているということです。

が、一方で視点を逆にすると、「その妨害要因を食い止めることさえできれば、組織が崩壊するのを阻止し、正常な運営に戻すことができる」とも言えます。

そこで、この章ではこの「サボタージュ・マニュアル」を参考に、組織崩壊への対処法を逆説的に考えていきたいと思います。

※引用はすべてSIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL5. SPECIFIC SUGGESTIONS FOR SIMPLE SABOTAGE からで、翻訳部分はこちらで追記したものです。

2-1.「手続き」やペーパーワークを簡略化する

まず最初の対処法は、煩雑な手続きや多すぎるペーパーワークを簡略化することです。
具体的には以下のような改善をしましょう。

決裁や事務手続きはできるだけ簡略にする
必要書類の数を減らし、事務作業を最少化する

というのも、「サボタージュ・マニュアル」に「手続きやペーパーワークを増やして煩雑にする」ことが「妨害工作」として指示されているからです。
翻訳しましたので、原文とともに見てみましょう。

【サボタージュ・マニュアルの妨害工作】

a-1Insist on doing everything through “channels.”
Never permit short-cuts to be taken in order to expedite decisions.

 どんなことでも正しい行程を通して行うよう主張しましょう。
 迅速な決定を行うためにショートカット(=近道)することを許可してはいけません。

b-1 Demand written orders.

 文書による指示を要求しましょう。

b-12 Multiply paper work in plausible ways.
Start duplicate files.

 もっともらしいやり方で、ペーパーワークを増やしましょう。
 ファイルの写しを作るところから始めましょう。

b-13 Multiply the procedures and clearances involved in issuing instructions, pay checks, and so on.
See that three people have to approve everything where one would do.

 指示出しや小切手の支払いなどに関する認可手続きを増やしましょう。
 ひとりの許可でいいものも、すべて3人の承認が必要だとして確認しましょう。

出典:SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL

まさに旧態依然とした組織ではよくある事柄ばかりですよね。

  • 何をするにも手続き厳守で柔軟性がなく、例えば「急いで見積もりを出さないと、大きな取引を逃してしまう」「今回はこの書類は業務に関係ないので、提出しなくてもいいのでは?」などと訴えても、「規則なので所定の手続き・書類を守って申請してください」と差し戻されてしまう
  • サインペン1本をもらうだけでも、申請書類を提出して担当者と上長からの許可が必要
  • 報告書や申請書が多く書類仕事で何時間も取られてしまうため、本来の業務を圧迫している
  • 細かいことでも部長まで3人の決裁をもらわなければならず、時間がかかりすぎる

などという状況は、「うちの会社でもあるある!」と共感する人も多いでしょう。
ですが、これらのことが、組織崩壊の一因になるというのです。

確かに、煩雑な手続きや何枚もの申請書類は、組織のメンバーの貴重な時間を奪い、業務効率を下げ、仕事のスピード感を失わせます。
何もいいことはありません。

「ペーパーレスならいいだろう」と、各種手続きをウェブ上に移行する会社も増えていますが、蓋を開けてみればモニター画面で以前と同じ手順を行なっているだけ、という残念なケースもあります。

では、これらの問題を解決し、組織を崩壊から守るにはどうすればいいのでしょうか?
自明ですよね、このマニュアルの指摘とは反対のこと、つまり手続きや事務仕事の簡略化をするだけです。

各種の申請手続きが効率化されれば、メンバーのストレスも減り、成果につながるはずです。

2-2.プロジェクトやチームは少人数にする

次の対応策は以下です。

プロジェクトやチームの人数は、少数精鋭の必要最小限にとどめる
提案や意見を出しやすく、リーダーまで通りやすい仕組み、環境を作る

逆に「サボタージュ・マニュアル」では、何でも大人数の会議で話し合うようにと指示しています。

【サボタージュ・マニュアルの妨害工作】

a-3) When possible, refer all matters to committees, for “further study and consideration.”
Attempt to make the committees as large as possible — never less than five.

 可能であれば、「さらなる研究と検討」のためとして、すべての事項を委員会に付託しましょう。
 委員会はできる限り大人数にし、決して5人以下にはしないように。

d-8 If possible, join or help organize a group for presenting employee problems to the management.
See that the procedures adopted are as inconvenient as possible for the management, involving the presence of a large number of employees at each presentation, entailing more than one meeting for each grievance, bringing up problems which are largely imaginary, and so on.

 可能であれば、従業員の問題を経営陣に提示するためのグループに参加するか、そのようなグループを組織するようにしましょう。
 そこで採用する手順は、経営陣にとってできるだけ不便なものにします。
 プレゼンには多数の従業員が出席する、苦情があるごとに複数の会議が必要、ほぼ想像上だけの問題を取り上げる、などです。

出典:SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL

ここで言う「委員会」とは、現代の組織ではプロジェクトなどに当てはめてもいいでしょう。

  • やたらと「◯◯プロジェクト」「◯◯検討委員会」などを作って、何でも集団で検討したがる
  • 会議の人数と回数が多すぎて、いつも意見がまとまらない
  • 新しい提案をしたくても、まずプロジェクト全体で検討した上で全員の同意が必要なので、いつも途中で頓挫してしまう

など、「大人数が寄り集まって決める」ことの弊害には、心当たりがあるのではないでしょうか。

「三人寄れば文殊の知恵」とはよく言いますが、それを常に当て嵌めていてよいのでしょうか?ケースバイケースですよね。

人が多すぎると意見がまとまらないだけでなく、ひとり当たりの発言のボリュームも少ないので議論が深まらない恐れもあります。

「役員全員に周知して承認をうける必要がある」という場合などは、もちろん全員参加が当然です。

ですが、新しいことを始めるときや仕組みを作るとき、すぐに解決しなければならない問題があるときなどは、意見を出し尽くして思考を深める必要があるため、少数精鋭が望ましいでしょう。

2-3.会議やミーティングを効率化する

3つめの対処法は、2つめと同様に会議に関する改善ですが、前項が会議の人数の問題だったのに対して、会議の内容や進行についてです。

会議ごとに議題と「今日は何を決めるか」というゴールを定める
リーダー以外のメンバーから司会を決め、司会は発言のバランスや時間、方向をコントロールする
「議題には全員が自分の意見を述べる」「反論する際にはかならず解決策・対案も提示する」など、会議のルールを決めておく

以上のように会議を風通しよく効率的なものにし、かならず毎回何らかの結論にたどり着くように進行する必要があります。

というのも、「サボタージュ・マニュアル」では会議の信仰を妨げる言動が奨励されているからです。

【サボタージュ・マニュアルの妨害工作】

a-2 Make “speeches.”
Talk as frequently as possible and at great length.
Illustrate your “points” by long anecdotes and accounts of personal experiences.
Never hesitate to make a few appropriate “patriotic” comments.

 「演説」をしましょう。
 できるだけ頻繁に、長々と話してください。
 「要点」を説明する例として、逸話や個人的な経験を長々と説明します。
 ためらわずに適当なところで「愛国心が強い」コメントをいくつか挟みましょう。

a-4 Bring up irrelevant issues as frequently as possible.

 関係ない問題をできるだけ頻繁に持ち出しましょう。

a-6 Refer back to matters decided upon at the last meeting and attempt to re-open the question of the advisability of that decision.

 前回の会議で決まった事項に戻って言及し、その決定が妥当だったかという疑問を蒸し返しましょう。

a-7 Advocate “caution.”
Be “reasonable” and urge your fellow-conferees to be “reasonable” and avoid haste which might result in embarrassments or difficulties later on.

 「慎重さ」を訴えましょう。
 (自分が)「合理的」になり、会議参加者たちにも、「合理的」になってあとで恥ずかしい思いをしたり面倒なことになる可能性がある軽率な行動は避けよう、と訴えかけましょう。

a-8 Be worried about the propriety of any decision — raise the question of whether such action as is contemplated lies within the jurisdiction of the group or whether it might conflict with the policy of some higher echelon.

 どんな決定に対しても、それが妥当なのかを不安視しましょう — 想定した行動がグループの管轄内にあるのか、それとも上層部のいずれかの方針と矛盾する可能性があるのか、という疑問を提起しましょう。

出典:SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL

こんなことをされたら、議論は進まないしいつまで経っても結論は出ませんよね。
現代の組織に置き換えると、以下のようなケースが当てはまるでしょうか。

  • 会議中、上司の関係ない話が長すぎて議題が進まず、何も決まらないまま終わってしまった
  • ひとつの議題を話し合っている途中に、いつも「そういえばあれはどうなった?」と別の議題を持ち出す人がいて話が脱線する
  • 前回の会議に欠席していた上司のひとりが、「◯◯が決まったみたいだが、こういう問題が起きる可能性があると思うので再検討しよう」と言い出し、反論したかったが誰も言い出せなくて結局話が前回の振り出しまで戻ってしまった
  • どんな提案をしても、「でもそれは、◯◯じゃない?」「◯◯になったらどうするの?」とネガティブな反論ばかりしてくる人がいるせいで、何も決められないしみんなのモチベーションが下がる

実際、会議の進め方というのは難しいものです。

なんとなくリーダーが進行役を務める形になりがちですが、そうすると他のメンバーは意見が言いづらくなってしまいます。

ましてや反論するのはハードルが高く、結局リーダーの独擅場で終わるケースも多いでしょう。

議論が深まらず、ひとりの意見だけで終始してしまうのであれば、ミーティングの意味はありません。

ただ時間と労力を奪われるだけで、やる気はどんどん失われていきます。

そんな無駄な会議に時間を費やさずに、効率的で風通しよく、かならず結論が出る会議を目指してください。

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