組織風土とは何か?具体例を交えて意味や要素を分かりやすく解説!

「組織風土」は非常に曖昧な言葉ですが、シンプルに表現するならば「組織内の構成員で共有されている、独自のルールや価値観、考え方」を指す経営学用語です。

「個人プレーではなく、チームプレー重視」

「トップダウンで社員の自主性が低い」

「社内の風通しがよく、社員同士の仲が良い」
こうした要素も、すべて組織風土のひとつと言えます。

組織風土を理解するポイントは以下の3つです。

  • ハード要素(目に見える要素)
  • ソフト要素(目に見えない要素)
  • メンタル要素(心理面に強く影響する要素)

本記事では、組織風土の全体像をしっかり掴んでいただくため、以下の内容を解説しています。

この記事で解説している内容 

  • 組織風土の意味・具体例
  • 類似した言葉との違い
  • 組織風土を構成する3つの要素「ハード・ソフト・メンタル」
  • 組織風土の重要性
  • 組織風土のメリット
  • 組織風土を活用するにあたっての注意点

この記事を最後までご覧いただければ、組織風土を正しく理解することができるようになります。

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目次

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  1. 1.組織風土とは?意味と具体例
  2. 2.組織風土を醸成する「ハード要素」「ソフト要素」「メンタル要素」
    1. 2-1.目に見える組織風土「ハード要素」
    2. 2-2.目に見えない組織風土「ソフト要素」
    3. 2-3.ソフト要素の中でも特に心理面に働きかける「メンタル要素」
  3. 3.組織風土と類似する言葉との違い
    1. 3-1.企業風土とは「企業全体における明確なルールや価値観」
    2. 3-2.組織文化は「価値観」、社風は「人柄」
  4. 4.組織風土は企業の業績をも左右する
  5. 5.良い組織風土が与える6つのメリット
    1. 5-1.企業の目指す方向やビジョンを従業員と共有できる
    2. 5-2.従業員同士の関係性がよくなる
    3. 5-3.従業員の働きやすい職場環境になる
    4. 5-4.従業員が自社を好きになる
    5. 5-5.モチベーションの高い人材を育てることができる
    6. 5-6.生産性がアップし、業績を向上させることができる
  6. 6.組織風土を活用するにあたっての注意点
    1. 6-1.すべての組織風土を洗い出すのは非常に難しく、時間がかかることを理解する
    2. 6-2.企業内に深く根付いているものなので、改革には時間を要することが多い
    3. 6-3.悪い組織風土を浸透させてしまうと、社内トラブルや業績悪化に繋がる恐れがある
    4. 6-4.改革に失敗してしまうと、最悪の場合、企業が成り立たなくなってしまう恐れがある
  7. 7.企業の状態や時代に応じて組織風土の改革を検討しよう
  8. 8.まとめ

1.組織風土とは?意味と具体例

組織風土とは、「組織において明確化されているルール」と、「組織において表面化されている価値観や考え方」の総称です。

「組織において明確化されているルール」とは、企業理念や事業計画、人事制度など
「組織において表面化されている価値観や考え方」とは、社員同士の仲の良し悪しや、仕事に対する意欲などを指します。
組織風土には、目に見えるものから目に見えないものまで、非常に幅広い要素が含まれています。

そんな組織風土は、組織で活動する人々の行動やモチベーションに大いに影響を及ぼすものです。
社内の雰囲気や人材定着率、ときには業績にまで影響を及ぼします。

とはいえ、「組織において表面化されているルールや価値観」とだけ言われても、なかなかイメージが湧きづらいですよね。
そこで、以下に組織風土の具体例を挙げてみました。
相反する2パターンの組織風土を挙げているので、それぞれの違いをご覧ください。

組織風土の具体例|成果ファーストと顧客ファースト

・パターンA(成果ファーストな組織風土)
A社では、月ごとに厳しいノルマが課せられている。
そのため、社員は数字を稼ぐことばかり考え、数字に繋がりやすい新規顧客にのみ丁寧な接客をし、そうでない既存顧客にはぞんざいな対応を取る傾向にある。
ノルマの達成率が賞与に直結するため、自分の優位を保つためには同僚の足を引っ張ることすら辞さない雰囲気があり、社員同士の間にはいつも険悪な空気が漂っている。

その結果、目標に対する達成率は高いものの、サービスの継続率は悪い。

・パターンB(顧客ファーストな組織風土)
B社では、数字目標に加え、定期的に行うアンケートによる顧客満足度も評価対象とされている。
そのため、新規顧客を開拓して数字を稼ぐことと同様に、既存顧客へのアフターサポートも丁寧に行うなど、顧客を第一に考えた対応を心がけている。
目標はチームごとに割り振られるため、社員同士で助け合う風潮ができており、チーム内の結束力が非常に高くてプライベートでも仲が良い。

その結果、サポートが丁寧であるとの口コミが広がって新規顧客の獲得がしやすくなり、サービスの継続率も向上傾向にある。

評価制度や人事制度、賞罰の在り方といった「目に見える組織風土」を受けて、社員の対応やモチベーション、社内の雰囲気といった「目に見えない組織風土」が醸成されていることがお分かりいただけたでしょうか。
それらすべてが影響し合うことで、業績や企業の評判が良くなったり、あるいは悪くなったりします。

組織風土のおおよそのイメージは掴めたでしょうか?

より深く組織風土を理解するためには、

・ハード要素(目に見える要素)
・ソフト要素(目に見えない要素)
・メンタル要素(心理面に強く影響する要素)

3つを理解することが欠かせません。

次の章では、そんな3つの要素について、詳しく解説していきます。

2.組織風土を醸成する「ハード要素」「ソフト要素」「メンタル要素」

組織風土は、大きく分けて「ハード要素」と「ソフト要素」の2種類から醸成されます。
ソフト要素の中の一部を「メンタル要素」と呼び、「ハード要素」「ソフト要素」「メンタル要素」の3種類に分類するケースもあります。

組織風土を解説する本やウェブサイトでは、よく組織風土を氷山モデルで表しています。

海面の上に突き出た、目に見える部分がハード要素
海面の下に潜む、目に見えない部分がソフト要素
ソフト要素の中でも、とりわけ心理面に大きな影響を与えるものがメンタル要素です。

この章では、組織風土におけるハード要素とソフト要素、およびメンタル要素について解説します。
それぞれの具体例も交えて解説しますので、この章を読めば、より深いレイヤーで組織風土を理解することが可能ですよ。

それでは、早速見ていきましょう。

2-1.目に見える組織風土「ハード要素」

組織風土を醸成する要素のうち、目に見えるものを「ハード要素」と呼びます。
組織の中で明文化されたルールであり、組織側が主体的に整理・実行することが可能です。

ハード要素の例 

  • 企業理念
  • 就業規則
  • 人事制度
  • 組織構造
  • 業務内容や業務プロセス
  • 明文化されたコンプライアンス etc…

こうしたハード要素に従って、組織はさまざまな意思決定を下します。
その意思決定が社員の行動や考え方、モチベーションに影響を与え、新たな組織風土が醸成されます。

たとえば、「残業は原則禁止とする就業規則(ハード要素)」があれば、「仕事とプライベートのメリハリを大事にする風潮(ソフト要素)」が芽生えますし、「チームへの貢献率を重視する人事制度(ハード要素)」があれば、「チーム間で積極的に助け合う環境(ソフト要素)」が芽生えるでしょう。

ハード要素とは、人の手によって設定される明文化されたルールであり、その内容に応じてさまざまなソフト要素を醸成するものなのです。

2-2.目に見えない組織風土「ソフト要素」

組織風土を醸成する要素のうち、目に見えないものを「ソフト要素」と呼びます。
ソフト要素は、行動や考え方、人間関係など多岐に渡って存在し、暗黙のルールや、従業員の価値観などがこれにあたります。

改めて、氷山モデルのイラストを見てみましょう。

イラストを見ても分かるとおり、ソフト要素はハード要素よりもずっと膨大で、組織風土において非常に重要な要素となります。

そんなソフト要素には、以下のようなものが挙げられます。

ソフト要素の例 

  • 組織内のローカルルール
  • 信頼関係
  • 責任の所在
  • チームワーク力
  • コミュニケーション
  • 人間関係
  • 個人のモチベーション etc…

これだけでは少し分かりづらいので、より踏み込んだ具体例を見てみましょう。
各要素に対し、AパターンとBパターンの具体例を挙げています。

ソフト要素の具体例

・組織内のローカルルールの具体例
A:役職に関わらず、すべての従業員が定時時間ぴったりに出社するのが当たり前
B:新入社員は定時30分前には出社し、デスク周りの掃除をしておくのが当たり前

・信頼関係
A:上司の機嫌によっては理不尽な叱責を受けることも多く、報連相が疎かになっている
B:いつも正しい気付きをもらえるので、積極的に報連相を行っている

・チームワーク力
A:チーム全体の達成率が評価されるので、困った人がいれば助け合う雰囲気がある
B:個人の達成率が評価されるので、助け合いよりもライバル関係の雰囲気がある

・コミュニケーション
A:業務関係の報告は行っているが、困った時やつまづく前に相談できる雰囲気ではない
B:業務関係の報告はもちろん、業務の進め方なども気軽に相談できる環境がある etc… 

このように、表面化しているものの明文化はされていない暗黙のルールや、雰囲気や環境といった「目には見えない要素」がソフト要素です。
目に見えないことと、その量が膨大であることから、すべてを洗い出すのが非常に難しい要素であるといえます。

2-3.ソフト要素の中でも特に心理面に働きかける「メンタル要素」

目に見えない要素であるソフト要素の中でも、とりわけ従業員の精神や心理面に大きな影響を及ぼす要素を「メンタル要素」と呼びます。
感情という、容易にコントロールすることのできない要素が関わるため、メンタル要素の改革には時間と労力を要しますが、従業員のモチベーションを大きく左右するとても重要な要素です。

メンタル要素をはかる指標としては、以下のようなものが挙げられます。

メンタル要素をはかる指標の例 

  • 役職に関わらず、しっかりとコミュニケーションを取れているかどうか
  • 言われたことをただこなすのではなく、自発的な言動があるかどうか
  • 従業員同士が互いを思いやり、積極的に助け合っているかどうか
  • トップダウンに終始するのではなく、ボトムアップの姿勢も盛んかどうか
  • チーム間で活発に意見交換をできる環境かどうか etc…

こうした要素は、経営者や人事担当者といった立場から把握することが難しいため、現場の声を漏れなく拾い上げることが重要です。

また、部署やチームによっては、まるで異なるメンタル要素が存在することも多いもの。
メンタル要素を洗い出すためには、現場の従業員一人ひとりの声に耳を傾けることから始めましょう

3.組織風土と類似する言葉との違い

組織風土と似た言葉に「企業風土」「組織文化」「社風」が挙げられます。
どれも似たようなニュアンスで使われることも多い言葉ですが、それぞれの区分や定義には細かな違いがあります。

言葉ごとの違いを見ていきましょう。

3-1.企業風土とは「企業全体における明確なルールや価値観」

組織風土と企業風土は、一緒くたにされることも多い言葉ですが、その違いは読んで字のごとくです。
組織風土は「組織における明確なルールや価値観」であり、企業風土は「企業全体における明確なルールや価値観」を指します。

同じ企業であっても、部署が違えばまるで雰囲気が異なることがしばしばありますよね。
ある部署では革新的な手法を積極的に取り入れ、活気が溢れている一方で、ある部署では従来のやり方を踏襲し続ける傾向にある、といったこともあります。
もしかすると、別部署の同僚と飲みに出かけた際、「そっちの部署はいつも和気あいあいと楽しそうでいいよな」なんて愚痴を聞いたこともあるかもしれません。

このように、組織(部署やチームなど)によって異なるものは「組織風土」
企業全体に浸透しているものは「企業風土」となります。

企業風土がマクロ的な要素であるのに対し、組織風土はよりミクロ的な要素であるといえます。

3-2.組織文化は「価値観」、社風は「人柄」

組織文化と社風は、どちらも組織風土の一部として捉えられます。
それぞれの言葉の意味としては以下のとおりです。

  • 組織文化:従業員の行動原理となる価値観(ソフト要素の一部)
  • 社風:従業員が感じる組織の雰囲気や考え方(メンタル要素の一部)

これだけでは理解が進みませんので、分かりやすいように、組織をひとりの人として例えてみましょう。

組織風土は、組織が長い時間をかけて築き上げてきた「性格」そのもの。
組織文化は、組織の性格と、時代の流れを反映して築かれた「価値観」。
社風は、組織の性格と価値観が合わさって生み出された「人柄」です。

よりイメージしやすくするために、具体的な例を挙げてみましょう。

「性格」「価値観」「人柄」の違いと関係性

社交的で、誰に対しても気さくに話しかけられる「性格」の人がいます。
その性格で多数の人と触れ合ってきた経験から、人と関わることは自身の成長を助けるとの「価値観」を持つようになりました。

気さくな性格と、自身の成長のためにもより人と積極的に関わろうという価値観が影響し、周囲の人は彼の「人柄」を『話しかけやすい人』と感じています。

「性格」「価値観」「人柄」の違いと関係性が分かったところで、改めて「組織風土」「組織文化」「社風」の違いと関係性を見てみましょう。
こちらも具体的な例を取って説明します。

「組織風土」「組織文化」「社風」の違いと関係性

会社創立メンバーの存在感が強く、意思決定の権限は創立メンバーが掌握するという「組織風土」の企業があります。
その組織風土を受けて、従業員らは、創立メンバーが難色を示しやすい革新的なアイデアよりも、安定性の高い保守的なアイデアを提案した方が良いという「組織文化」を持つようになりました。

意思決定は創立メンバーが行うという組織風土と、保守的なアイデアばかり提案するという価値観から、新しいことを受け入れづらい「社風」が社内に蔓延しています。

このように見ると、それぞれの言葉の違いと関係性を理解しやすいのではないでしょうか。

改めて、それぞれの言葉をおさらいしてみましょう。

組織風土は、組織が長い時間をかけて築き上げてきた「性格」そのもの。
組織文化は、組織の性格と、時代の流れを反映して築かれた「価値観」。
社風は、組織の性格と価値観が合わさって生み出された「人柄」。

「性格(組織風土)」と「人柄(社風)」は長い時間をかけて築き上げたものであり、一朝一夕では変わりません。
ある日突然新しい性格(組織風土)・人柄(社風)が芽生えることも、まずありえないでしょう。
「価値観(組織文化)」は、基本的には性格(組織風土)に基づいて構成されるものですが、時代の流れを受けて新たな価値観(組織文化)が芽生えることもあります。

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4.組織風土は企業の業績をも左右する

企業の価値観である組織風土は、組織内のさまざまな要素に強い影響を及ぼします
とりわけ、その組織に属する従業員に対して、大きな影響を与えます。

具体的に、組織風土は以下のようなものに影響を与えます。

  • 社員の行動
  • 社員の感情
  • 社員のモチベーション
  • 人材の定着率
  • 人材の成長率
  • 労働生産性
  • 業績 etc…

実際に、組織風土がそれらに影響を与えた結果、どのような事象が起こりうるのでしょうか。
具体例を取って見てみましょう。
良いケースも、悪いケースも含めてご紹介します。

組織風土が企業に与える影響の例

良いケース:「ワークライフバランスを大切に」という組織風土を持つ企業

【社員の行動】
「ワークライフバランスを大切に」という組織風土に影響され、定時を過ぎるとほとんどの社員が退社している。

【社員のモチベーション】
ワークライフバランスのように、社内を活性化する革新的なアイデアを提案し、実際に採用されると報奨金が貰えることから、定常的な業務以外にも「現状を良くすることはできないか」を常に考えている社員も多い。

【人材の定着率】
そうした傾向から「この会社をみんなで良くしよう」という気持ちが根付いており、新卒・中途入社を問わず離職率は低く、平均勤続年数も伸びつつある。

【業績】
革新的なアイデアの採用による数々の改革と、高い平均勤続年数に裏打ちされた経験豊富な人材のおかげで、業績は5年連続右肩上がりを続けている。

悪いケース:「企業の方針はすべてトップダウンで決まる」という組織風土を持つ企業

【社員のモチベーション】
「企業の方針はすべてトップダウンで決まる」という組織風土に影響され、自発的な提案をする社員がおらず、任された定常的な業務をこなすだけとなっている。

【社員の感情】
「張り切って提案しても、どうせ何も採用されない」「頑張って築き上げたものも、上層部の一声でひっくり返される」という不満が募っている。

【人材の定着率】
上層部は現場のことをあまり理解しておらず、無理な注文も多いため、優秀な人材は早々に見切りをつけて去っていってしまう。

【業績】
上層部の顔色ばかり気にする社員だけが残り、消費者の意向を無視した商品開発ばかりが続いた結果、業績が前年を大きく下回ってしまった。

組織風土がどのように形成されているかによって、従業員ひとりひとりの動きが変わり、ひいては業績をも左右することになります。
組織風土を形成する際は、こうした影響力の大きさに十分注意するようにしましょう。

5.良い組織風土が与える6つのメリット

従業員の行動や感情に影響を与え、その業績をも左右する可能性を秘めた組織風土。
そんな組織風土ですが、企業において良い形で機能した場合、どのようなメリットを与えてくれるのでしょうか

具体的には、以下の6つのメリットを受けることができます。

・企業の目指す方向やビジョンを従業員と共有できる
・従業員同士の関係性がよくなる
・従業員の働きやすい職場環境になる
・従業員が自社を好きになる
・モチベーションの高い人材を育てることができる
・生産性がアップし、業績を向上させることができる

組織風土がどう影響することによって、これらのメリットを受けることが可能になるのでしょうか。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

5-1.企業の目指す方向やビジョンを従業員と共有できる

組織風土のハード要素(企業理念やコンプライアンスなど)は、企業の目指す方向やビジョンに基づいて制定されます。
企業の目指す方向やビジョンを明文化したものがハード要素(組織風土)である、と言い換えることもできるでしょう。

ハード要素(組織風土)を従業員に周知することによって、従業員は企業の目指す方向やビジョンを知ることができます。
また、従業員がハード要素(組織風土)に従って行動し続けることで、企業の目指す方向やビジョンをより深く理解し、共有することが可能になります。

5-2.従業員同士の関係性がよくなる

良い組織風土は、従業員同士の関係性をより良いものへと成長させます

「不明点があっても周囲に聞きづらい環境」
「失敗するとひどく責め立てられるため、失敗を隠そうとする文化」
など、悪い組織風土が根付いてしまうと、従業員同士のコミュニケーションもスムーズにいかなくなってしまいます。

一方で、
「社内の風通しが良く、気になったことはすぐに誰かに相談できる環境」
「リスクを恐れず挑戦するため失敗もあるが、しっかりとプロセスが評価されるため失敗ばかりを責め立てられることはない」
といったように、良い組織風土が広まっていると、従業員同士の関係性もぐっと良くなります

従業員同士がお互いを信頼し、高め合う関係性の企業になるには、良い組織風土が欠かせないのです。

5-3.従業員の働きやすい職場環境になる

組織風土は、職場環境にも大きな影響を与えます。
組織風土が良いものであればあるほど、職場環境も従業員にとって働きやすいものになります。

例えば、従業員のワークライフバランスを考えた就業規則になっていれば、従業員はプライベートも充実させつつ、メリハリをつけて働くことができます。
ワークライフバランスの重視を企業理念としても掲げ、上層部が率先して早帰りをすることで、ワークライフバランス重視の組織風土はより浸透しやすくなります。 

そうした働きやすい職場環境であれば、従業員は毎日を充実させつつ働くことが可能です。

5-4.従業員が自社を好きになる

良い組織風土が浸透している企業であれば、従業員はきっと自社を好きになってくれるはずです。

なぜなら、良い組織風土が浸透している企業であれば、従業員同士の関係性が良く、働きやすい職場環境が整えられているわけですから、非常に居心地が良いのです。
また、組織風土を通じて企業の目指す方向やビジョンを理解できているわけですから、「自分のやりたいことと違う」などのズレが生じることもありません。

良い組織風土によって従業員同士の関係性や職場環境などが整えられた結果、従業員が自社を好きになってくれるという、非常に良いモチベーションが芽生えるのです。

5-5.モチベーションの高い人材を育てることができる

良い組織風土は、モチベーションの高い人材の育成にも貢献します。

人間、嫌いなものや無関心なもののためにはなかなか頑張れませんが、好きなもののためであればいくらでもやる気が湧いてくるもの。
良い組織風土が浸透した企業の従業員は、自社のことを好きでいてくれるわけですから、「会社のために」と高いモチベーションで働いてくれます
また、必然的に人材定着率も高くなりますので、「せっかく手間暇かけて育成したのに、あっさり転職してしまった」といった損失も防ぐことができます。

良い組織風土を定着させ、「会社のために」と本心から思って行動してくれる、モチベーションの高い人材育成へと繋げましょう。

5-6.生産性がアップし、業績を向上させることができる

この項目は、この章で解説してきた内容の総決算のようなものです。

企業が目指す方向やビジョンが従業員に共有されており、
従業員同士の関係性が良く、
働きやすい職場環境が整えられていて、
自社が好きだという従業員が集まっており、
従業員のモチベーションが高く、人材定着率も高い。

そんな企業であれば、生産性がアップし、業績が向上するのは自明の理です。

企業風土を改革したからといって、一朝一夕で業績がアップすることは有りえません。
しかし、良い企業風土は、確実に、企業そのものをより良いものへと変えていってくれるのです。

そんな組織風土ですが、組織風土を活用するにあたっては注意点も必要です。
次の章をご覧ください。

 

6.組織風土を活用するにあたっての注意点

企業の根幹に深く関わり、あらゆる要素に影響を与える組織風土。
先述したとおり、良い組織風土は企業を大きく活性化させますので、「良い組織風土を浸透させて、会社をより良いものにしよう!」とはやる気持ちも十分理解できます。

しかし、組織風土は企業と密接に関わる要素のため、注意点を理解しないまま組織風土の活用に着手してしまうと、最悪の場合、企業そのものを崩壊させてしまいかねません

組織風土の活用に着手する前には、以下の注意点に留意しましょう。

  • すべての組織風土を洗い出すのは非常に難しく、時間がかかることを理解する
  • 企業内に深く根付いているものなので、改革には時間を要することが多い
  • 悪い組織風土を浸透させてしまうと、社内トラブルや業績悪化に繋がる恐れがある
  • 改革に失敗してしまうと、最悪の場合、企業が成り立たなくなってしまう恐れがある

それぞれについて、順に解説していきます。

6-1.すべての組織風土を洗い出すのは非常に難しく、時間がかかることを理解する

組織風土は、目に見えるハード要素と、目には見えないソフト要素・メンタル要素から成っています。

目に見える要素の洗い出しは簡単ですが、先述したとおり、組織風土の大半は目に見えない要素です。
そのため、すべての組織風土を洗い出すのは非常に難しく、仮にできたとしても非常に時間がかかってしまうものです。

かといって、洗い出せた一部の組織風土だけに注目して改革を考えても、うまくいかないことが大半です。
組織風土はそれぞれが影響しあって醸成されているものなので、洗い出しが中途半端なまま改革に着手しても、問題の根本部分を明らかにできないままになってしまい、改革が進まない恐れがあります。

組織風土を活用する場合は、しっかりと時間をかけて、できるかぎり多くの組織風土を洗い出すことを心がけましょう。
従業員ひとりひとりの声に耳を傾け、明文化されていない「暗黙のルール」を聞き取ることが大切です。

6-2.企業内に深く根付いているものなので、改革には時間を要することが多い

いざ組織風土の改革に着手したとしても、完了までには大きな時間を要することがほとんどです。

本記事の3章で、「組織風土は、組織が長い時間をかけて築き上げてきた『性格』そのもの」であると述べました。
一朝一夕では性格を大きく変えることなどほぼ不可能であるのと同様に、組織風土もまた、一朝一夕では改革することができないものです。

組織風土の改革には、その洗い出しも含め、非常に長い時間がかかるものだと理解しましょう。
そして、長きにわたる改革に耐えうるチーム体制を整えたうえで、改革に着手するようにしましょう。

6-3.悪い組織風土を浸透させてしまうと、社内トラブルや業績悪化に繋がる恐れがある

良い組織風土が与えるメリットは先述したとおりですが、逆に、悪い組織風土が浸透してしまうと、さまざまなデメリットが企業に表れてしまいます

たとえば、「個人の営業成績が、賞与に雲泥の差を与える」という組織風土の企業があったとしましょう。
その企業では、以下のような事態が起こっています。

「個人の営業成績が、賞与に雲泥の差を与える」組織風土の企業で起きること

人間誰しも、少しでも多くの賞与が欲しいもの。
そのため、自分の営業成績をなんとかして伸ばそうと奮闘します。

もちろん、他人の手伝いをしている暇なんてありません。
従業員同士が助け合う風潮などは芽生えるはずがなく、すべての従業員がライバル同士としてしのぎを削っています。
それだけならいいのですが、時にはライバルを蹴落としてでも自分の成績を上げようとするので、従業員同士の間には険悪なムードが漂っています。
【従業員同士の関係性が悪くなる】

オフィスには常にピリピリとしたムードが漂い、誰もが他人のミスに敏感になっています。
課長は、自分のチームの営業数字が賞与に反映されるので、営業成績の悪い従業員を容赦なく責め立てます。
公衆の面前で罵倒することで、本人や周囲のやる気を発奮させようと課長は思っているようですが、従業員は萎縮する一方です。
【従業員が働きづらい職場環境になる】

こうした環境のため、心身を病んでしまって辞職していく従業員も少なくありません。
一部のエリートだけは高い営業成績を記録し続けていますが、後継を育てられる環境が整っておらず、新入社員の定着率も悪化の一途をたどっています。
転職サイトにおける企業のクチコミは非常に悪く、業界ではブラック企業として知られています。
【従業員が自社を嫌いになる】
【モチベーションの高い人材が育たず、人材が居着かない】

それでも、一部のエリートの営業努力でなんとか業績を保っていましたが、エリートの転職を機に営業成績が大幅に落ち込み、業績が前年を大幅に割ってしまう結果になりました。
「従業員同士で助け合うことをせず、自分の営業成績を第一優先にする」という風土のために、引き継ぎもろくに行われないままエリートが転職してしまったため、業績悪化を食い止めるにも時間がかかってしまっています。
【生産性が下がり、業績を悪化させてしまう】

上記は悪い面を強調したものですので、実際にここまで状態が悪化するとは限りません。
しかし、一度悪い組織風土が根付いてしまうと、なかなか簡単には取り払うことができず、さらに悪い組織風土の芽生えを招いてしまう恐れがあります。

6-4.改革に失敗してしまうと、最悪の場合、企業が成り立たなくなってしまう恐れがある

悪い組織風土を取り払い、良い組織風土を浸透させようとしても、中身の伴わない改革であれば、企業を崩壊させてしまいかねません

たとえば、蔓延化している残業を減らそうとして「毎週水曜日はノー残業デーとし、定時時間で退社すること」というルールだけを定め、帰りやすくするための工夫(業務量の調整や旗振り役の選任など)を疎かにしていたとします。
結局、業務量は変わらないのに「早く帰りなさい!」と急かされたところで、定時時間に退社することはできませんよね。

「なぜ『残業が蔓延化している』という組織風土が育ってしまったのか」という中身を考えないまま、表面化している問題だけをどうにかしようとしたせいで、こうした失敗が起こるのです。

中身の伴わない組織風土改革は、従業員に余計な負荷を与えてしまいます。
さらに、「上層部は現場のことを何も分かっていない」という不信感も芽生えてしまいます。

こうした失敗を積み重ねてしまうと、企業そのものへの不信感や不満が募り、人材がどんどん離れていってしまう恐れがあります。
企業のこれからを支える「次世代の人材」を育てられる人材がいなくなり、いつまで経っても人材が育たなくなった結果、企業そのものが成り立たなくなってしまう可能性すらあるのです。

7.企業の状態や時代に応じて組織風土の改革を検討しよう

「最悪の場合、企業を崩壊させる可能性があるのであれば、下手に組織風土を改革しない方がいいのでは……?」

注意点を読んで、そんなふうに考えた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、良い企業を育てるためには、企業の状態や時代に応じて”求められる姿”に合致するよう、組織風土を改革していくことが欠かせません。

企業の状態や時代に合わせ、適宜組織風土を改革していく
それこそが、企業をより強く成長させるために欠かせないステップなのです。

自社の現況課題を振り返り、必要に応じて組織風土を改革する
このサイクルを定期的に繰り返すことにより、企業の状態や時代と組織風土が乖離してしまう状況を防ぎ、企業をより良いものへとステップアップさせましょう。

組織風土を改善し、チームのパフォーマンスを上げる!成長する組織がもつ「心理的安全性」とは?

 

8.まとめ

今回の記事では、組織風土という言葉の意味や3つの構成要素、類似する言葉との違いや、組織風土によって得られるメリットや注意点などを解説しました。
それぞれの章で具体的な例を挙げて解説しましたので、より組織風土のイメージが掴みやすかったのではないでしょうか。

改めて、記事の内容について振り返ってみましょう。

  • 組織風土とは「組織において明確化されているルール」と「組織において表面化されている価値観や考え方」の総称
  • 組織風土は「ハード要素」「ソフト要素」「メンタル要素」の3つから醸成される
  • 目に見える「ハード要素」は、ソフト要素やメンタル要素といった他の要素の醸成に大きく影響する
  • 目に見えない「ソフト要素」は、ハード要素の何倍にもなる量があり、その種類も多岐にわたる
  • 心理面に働きかける「メンタル要素」は、従業員のモチベーションを大きく左右する
  • 組織風土は社員の行動や感情、モチベーションや、はては企業の業績までをも左右する
  • 組織風土には下記6つのメリットがある
    • 企業の目指す方向やビジョンを従業員と共有できる
    • 従業員同士の関係性がよくなる
    • 従業員の働きやすい職場環境になる
    • 従業員が自社を好きになる
    • モチベーションの高い人材を育てることができる
    • 生産性がアップし、業績を向上させることができる
  • 組織風土活用の際には、下記の4つに注意する
    • すべての組織風土を洗い出すのは非常に難しく、時間がかかることを理解する
    • 企業内に深く根付いているものなので、改革には時間を要することが多い
    • 悪い組織風土を浸透させてしまうと、社内トラブルや業績悪化に繋がる恐れがある
    • 改革に失敗してしまうと、最悪の場合、企業が成り立たなくなってしまう恐れがある

この記事が、組織風土の理解に役立ちましたら幸いです。

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