
「従業員のモチベーションが低い」
「離職率が高まり続けている」
「部門間の連携が上手くいっていない」
こうした組織課題に頭を悩ませている経営層は決して少なくないでしょう。企業が抱えるこうした課題の背景には「組織風土」が関係している可能性があります。
企業ごとに時間をかけて根付いた考え方や行動指針である組織風土の改革には、企業全体を挙げての取り組みが欠かせません。
そこで本記事は、以下の内容について掘り下げて説明していきます。
- 組織風土のパターン4つ
- 組織風土の改革によって得られる5つの効果
- 組織風土別の改革例
- 組織風土改革を実行する際の5ステップ
組織風土を改革するパターン別の例と、実行に移す際の流れについて解説します。
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1. 組織風土とは?
組織風土とは、組織内での共通認識となっている独自のルールや価値観などを指します。
多くの社員が直接的、または間接的に組織風土の存在を感じており、普段の業務や行動、精神面に無意識のうちに影響を受けています。
組織風土の例としては、例えば以下のようなものがあります。
- 経営層によるトップダウンが強い
- 風通しの良い雰囲気で、社員が活気に溢れている
- 個人の成果重視なので、社員同士の関係がドライ
企業ごとに様々な組織風土が存在し、組織に影響を与えています。
1−1. 組織風土が企業に与える影響
組織風土は企業のあり方を大きく左右します。
スピード感を重視するベンチャー企業と、会議を重ねて意思決定をする大企業とでは、企業風土が大きく異なるのが顕著な例です。
・ベンチャー企業
失敗を恐れず、トライアンドエラーを繰り返しながら成長していく、という組織風土が根付いているケースが多くある。
・大企業
成長だけでなく組織の安定も重視しなければならないため、判断基準が厳しく何事にも慎重になりがち。
企業ごとに特色のある組織風土は、経営層や企業が歩んできた歴史、社員の個々の判断基準や行動によって形作られているケースが多くあります。
そのため、社員個人の考え方や行動は企業やチーム内に浸透した考え方、組織風土に基づいた基準に従いがちです。
長い年月をかけて形作られた組織風土は、企業全体の意思決定にも少なからず影響を及ぼしているといえます。
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2. 組織風土のパターン4つ
企業ごとの組織風土はさまざまです。
中小企業の場合は、大きく分けて以下の4つのパターンに分類されるケースが多くあります。
出典:『日経トップリーダー 2019年6月号』 日経BP社、2019年6月、21ページ
- ブリリアンス型
- 仲良しグラブ型
- ギスギス型
- 腐敗型
同じ規模の企業同士でも、組織風土には大きな違いがあることがわかると思います。
2−1. ブリリアンス型
ブリリアンス型の組織風土を持つ企業は、チームワークが発揮されており、成果への意識も高い傾向にあります。
具体的には、以下のような特徴を持っています。
- 職場の雰囲気は明るく活気がある
- 社員同士の協力関係が強い
- 人間関係に煩わされず、のびのび自由に仕事
- 社員には充実感があり、人も育つ
社員同士が対立したりお互いの足を引っ張り合うことなく、協力して成果を追い求められる理想的な組織風土といえそうです。
仕事面でも裁量に合わせた自由な働き方ができ、人間関係でストレスを感じることも少ない傾向にあります。離職率が低いため、人材育成にも前向きに取り組めます。
楽しんで仕事に打ち込めるため、社員同士で成長する相乗効果が期待できるのです。
2−2. 仲良しクラブ型
仲良しクラブ型の組織風土を持つ企業は、チームワーク力は高い反面、成果への意欲は低い傾向にあります。
- 雰囲気はよく見え、嫌われないように互いに気を使う
- 重要な情報が伝わらない
- 前向きさに欠ける
- 社員に不安感がある
社員同士の仲がよいため社内の雰囲気は悪くありませんが、表面上だけの場合も多くあります。
お互いに嫌われないようにと指摘を避けるため、社員同士の成長につながる要素が阻害されてしまうデメリットがあります。
経営層をはじめ、仲良くしすぎる社風を貫いてきたことが、成果への意識を低くする原因につながっているのです。
2−3. ギスギス型
ギスギス型の組織風土を持つ企業は、成果への意識は高い反面、チームワーク力は低い傾向にあります。
- 仕事として割り切って努力
- ミスは他人のせい
- 職場はギスギスした雰囲気
- 社員にはストレスと疎外感
成果を追い求めるあまり社員同士の協力やサポートが行われず、職場の雰囲気はよくない状態にあります。
仕事の進め方などでつまづいても誰にも相談できず、トラブルが発生しても責任転嫁するような流れが出来上がっているかもしれません。
個人目標の達成を淡々とめざす組織風土の中では、社員は不安を抱き離職率を高める結果につながる恐れがあります。
2−4. 腐敗型
腐敗型の組織風土を持つ企業は、成果への意識、チームワーク力ともに低い傾向にあります。
以下のような特徴を持っています。
- 職場がどんよりと暗い
- 社員同士の会話がほぼない
- 社員同士が互いに無関心
- 社員には諦めと絶望感
企業内の雰囲気がよくなく、社員はお互いに無関心で必要最低限の会話しかありません。
このような状態では業務を効率的に進めることは難しく、成果につなげることも非常に厳しい環境であるといえるでしょう。
社員が独断で不正を行ったり、離職率を高めてしまうなどの弊害があります。
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3. 組織風土の改革が必要とされる状況一覧
組織風土は企業ごとに分類できることがわかりました。
自社がどのパターンに属しているか判明したでしょうか?
組織風土の改革が必要とされる状況はいくつか存在します。
ここでは、改革すべき企業内の状況をまとめました。
- 社員の成長意識が低く、企業の状態に関わらず現状維持を求める
- 伝統的にやってきた業務内容を、不要と判断されても頑なに実施し続ける
- 競合他社の動向に興味がない社員が多い
- 社内の雰囲気が暗く、社員間の挨拶が行われない
- 社員が相談せず独断で行動するようになっている
- 社員ごとに業務内容が属人化している
- 若手社員の離職率が高い
- 社員同士が業務上のミスの責任転嫁をする
- 他の社員に対して無関心
- 社員間の悪口が横行している
- 来客に積極的な挨拶ができていない
上記のような傾向が見られる場合は、企業に根付いた組織風土が影響している可能性があります。
企業の未来、長期的な成長を考えた場合、組織風土の改革を実施する必要があるでしょう。
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