金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案について人的資本の側面から読み解いてみる|田中弦のCEOBlog-vol.7

※こちらのブログは、UniposサイトのCEOblogから転載/リライトしています。

 

昨今話題になってきている「人的資本」という言葉、皆さんはどう捉えていらっしゃるでしょうか。
このCEOブログでは、CEOの田中がこれからの企業経営について得た人的資本経営に関する情報をまとめ、見解を踏まえて投稿していくシリーズです。

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非財務情報について、23年3月期の有価証券報告書から記載を義務付けると金融庁が発表

こんにちは。UniposCEOの田中弦です。

先日、共同通信から以下の報道がありました。

▶︎上場企業の男女格差、公表義務化 23年3月期から、4千社対象

金融庁は7日、上場企業の男女の賃金格差や女性管理職の比率、男性の育児休業取得率の非財務情報について、企業が2023年6月ごろ公表する23年3月期の有価証券報告書から記載を義務付けると発表した。パブリックコメント(意見公募)を同日開始し、12月7日まで意見を求めた上で内閣府令を改正する。約4千社が対象となる。  報告書の「従業員の状況」の項目に追加する形で記載する。金融庁の金融審議会の作業部会が6月、記載を義務付ける制度整備を提言していた。

引用元:上場企業の男女格差、公表義務化 233月期から、4千社対象

こちらのニュースにつき、人的資本の開示についてアップデートがあったのだろうか、と思い、いそぎ金融庁のウェブサイトにアクセスしてみたところ👇

▶︎「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について

が発表されていました。

見る限りでは、人的資本の開示において重要な改正案だなと思いましたので、ざっと見た感想や浮かんだ疑問について、書いてみたいと思います。

※なお、まだパブリックコメント前の案段階のものですので、私の解釈や疑問が、正しいとは言えませんし、最終案でも変わる可能性があると思いますので、随時修正したいと考えています。

女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女の賃金格差の記載が義務付けに

以下、上記URL内にある、

企業内容等の開示に関する内閣府令の一部改正(案)※上記【1】(1)サステナビリティ全般に関する開示に係る改正案

より引用しています。

有価証券の「従業員の状況」にd-eまでが加わっています。

女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女の賃金格差の記載が義務付けとなっています。

人材確保の多様性、人材の育成、社内環境整備に関する方針にたいしても、目標及び実績を記載することと記載

「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の、30-2が大幅に加わっています。特にc-(a)において、

  • 人材の確保の多様性
  • 人材の育成
  • 社内環境整備に関する方針

につき、戦略、指標を用いた目標および実績を記載すること、とあります。

これまで、多くの上場企業では「統合報告書」などに人的資本の取り組みや指標につき開示をすることが多いものでした。また、統合報告書は開示義務はありませんでした。(かなり増加していますが)

今回は「有価証券報告書」に記載すること、とありますので、上場企業はすべて開示の義務が発生するのだな、と読めます。

「対象は4,000社」。上場企業のほぼすべてが人的資本の取り組みや指標につき、開示義務が発生することに

共同通信の報道には、「対象は4,000社」とありますので上場企業すべてが対象と解釈できます。そうなると、2021年に改定された、コーポレートガバナンスコードとの関係も気になるところです。

以下は「コーポレートガバナンス・コードへの 対応状況」から引用しています。

この区分では、プライム市場とスタンダード市場は補充原則まで含めたものが適応されていましたが、グロース市場は5原則にとどまっていました。

また、中核人材の多様性の確保や、人的資本の開示などについては、「補充原則」に該当していました。つまりグロース市場は基本原則以外は適応されていなかったと認識しています。

このコーポレートガバナンスコードにおける区分けと、今回の金融庁の公表した改正案は、いずれ整理されるのではないかな、と思いますが、今回の改正案は有価証券報告書への開示義務についての案ですので、より強い書き方になっているな、と感じます。

未上場企業や社会へのインパクト大。今後の企業それぞれの取り組みに注目

結論としては、人的資本の開示において、かなり踏み込んだ案となっており、上場企業がすべて開示対象だとするならば、

未上場企業や社会へのンパクトも非常に大きい

のではないでしょうか。

 

まとめ

実質的な労働人口が減っていく日本において、これからの時代、雇用する企業側の変革も求められています。社員の働きがいやキャリアプランも鑑みながら、対等な立場として「選ばれる」企業になるためにも、努力が必要となってきた時代になってきたのでしょう。

 

引き続き人的資本の開示について、随時更新予定ですのでまた次の機会に。

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 代表取締役社長CEO 田中 弦
1999年にソフトバンク株式会社のインターネット部門採用第一期生としてインターネット産業に関わる。ブロードキャスト・コム(現 Yahoo!動画)の立ち上げに参加。その後ネットイヤーグループ創業に参画。 2001年経営コンサルティング会社コーポレイトディレクションに入社。 2005年ネットエイジグループ(現UNITED)執行役員。モバイル広告代理店事業の立ち上げにかかわる。2005年Fringe81株式会社を創業、代表取締役に就任。2013年3月マネジメントバイアウトにより独立。2017年8月に東証マザーズへ上場。2017年に発⾒⼤賞という社内⼈事制度から着想を得たUniposのサービスを開始。2021年10月に社名変更をし、Unipos株式会社 代表取締役社長として感情報酬の社会実装に取り組む。2022年10月に著書「心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100(ダイヤモンド社刊)」を刊行。