
「最近、うちの会社は人が定着しない」「離職率が高くなってきている気がする」――そんな不安を抱えていませんか。
実はその背景には、単なる労働条件の問題ではなく、人間関係や評価制度、企業文化に潜む“見えにくい病巣”*が隠れていることが多いのです。
この記事では、離職率が高い職場に共通して見られる7つの課題を取り上げます。
人が辞めていく原因を理解し、改善の糸口を見つけることで、働き続けたいと思える組織づくりにつなげられるはずです。
なぜ「離職率の高さ」は放置してはいけない危険なサインなのか?
「うちの業界は離職が多いから仕方ない」と片付けてしまう企業もありますが、これは非常に危険です。
離職率が高い状態は、会社にとって赤信号のようなもの。人が辞めるたびに、企業はコストや信頼を失い、組織の力を徐々に弱めてしまいます。
例えば、新卒1人を採用するのに平均90万円近いコストがかかると言われます。半年以内の早期離職となれば、採用費・教育費・業務の停滞による損失を含め、1,000万円規模のダメージになるケースもあるのです。
さらに、離職はお金だけの問題ではありません。
人が辞めることでノウハウが社外に流出し、生産性は下がります。残された社員の業務量が増え、モチベーションは下がります。職場の雰囲気は悪化し、「自分も辞めよう」という心理が連鎖することも珍しくありません。
これが、いわゆる「離職の負のスパイラル」です。
採用区分・手法1人あたりの費用目安(税抜)
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新卒採用 |
約93.6万円 |
マイナビ「2024年卒 マイナビ企業新卒採用調査」
※総合職文系平均(選考・広報・内定フォロー等含む)
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中途採用(営業職) |
約103.3万円 |
リクルートワークス研究所「中途採用実態調査2023」
※営業系職種平均(広告+工数換算含む)
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中途採用(事務職) |
約73.2万円 |
リクルートワークス研究所「中途採用実態調査2023」
※事務・管理系職種平均
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スカウトサービス利用時 |
約114.6万円 |
BizReach「ダイレクトリクルーティング白書2023」
※平均スカウト単価+工数換算
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民間職業紹介事業者利用時(紹介型) |
約120〜140万円 |
厚生労働省「職業紹介事業報告書2022」
+人材紹介会社各社公開データ(成功報酬:年収の30〜35%)
注釈・補足
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上記金額は**採用単価(1名あたり)**の目安です。
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工数コスト(人事・現場面接官の稼働時間)を含む数値を採用しています。
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実際の金額は業界・地域・採用難易度によって前後します。
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特に中途採用は職種による差が大きく、エンジニア職や専門職はさらに高額になります。
離職が重なるとどうなるか?
実際の企業現場で起きやすい悪影響は、以下のようなものです。
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属人化の進行:その人しか分からない業務が滞り、ノウハウが失われる。
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コストの膨張:採用・教育を繰り返すことで経営資源が圧迫される。
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社員の不安拡大:信頼していた同僚が辞めると、自分も将来に不安を抱く。
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エンゲージメント低下:やりがいが失われ、会社に愛着を持ちにくくなる。
こうした状況が積み重なると、組織の競争力は確実に低下します。だからこそ、離職率の高さは決して放置してはいけないのです。
離職率が高い会社に共通する「7つの病巣」とは?
従業員が会社を去る理由は、決して「給与」や「勤務時間」といった条件面だけではありません。
その奥には、人間関係の不和、評価への不満、成長機会の欠如、経営理念の形骸化など、組織の深層に潜む問題があります。
これらは一夜にして現れるものではなく、日々のコミュニケーションの歪みや制度運用のズレが積み重なった結果として、
最終的に「離職率の上昇」という形で表面化します。
以下で紹介する「7つの病巣」は、離職率が高い企業に共通して見られる構造的な課題です。
あなたの組織にも、思い当たる節がないか確認してみてください。
属人化したノウハウの流出と、組織全体の生産性低下
社員が退職すると、その人が培ってきた知識やスキル、顧客との関係性といった重要な資産が組織から失われるリスクがあります。特定の個人に業務が集中する「属人化」が進む職場では、退職の影響は甚大です。例えば、属人化が進んだ職場では、以下のようなトラブルが頻繁に発生し、業務の停滞や品質低下を招くことがあります。
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担当者の長期不在による問い合わせ対応の遅延
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前任者しか業務内容を把握しておらず、引き継ぎが困難になる
実際に報告されている具体的な損失事例は以下の通りです。
失われたノウハウをゼロから再構築するには、多大な時間と労力がかかります。その間、残された社員は業務の空白を埋めるために過剰な負担を強いられ、本来の業務に集中することができません。結果として、組織全体の業務効率は著しく低下し、生産性の落ち込みに直結します。個人の頭の中に情報が閉じ込められ「サイロ化」している状況は、企業にとって看過できない大きなリスクと言えるでしょう。
残った社員のエンゲージメント低下と、さらなる離職の連鎖
一人が退職すると、その業務は残された社員に集中し、一人ひとりの業務負担が増加します。結果として、長時間労働や過度なストレスにつながる可能性があります。
信頼していた同僚、特に優秀な人材が会社を去ると、残った社員は「この会社に将来性はあるのだろうか?」と不安を感じやすくなります。これは、会社への信頼感や働くモチベーション(エンゲージメント)を著しく低下させる要因となるでしょう。
業務負担の増加と将来への不安が募るにつれて、社員の間で不満や愚痴が広がり、職場全体の雰囲気は悪化します。こうした状況は、さらなるエンゲージメント低下を招く悪循環を生み出すことになります。
複数の組織心理学研究で「Turnover Contagion(離職の伝染)」として明らかになっているように、エンゲージメントが低下した社員は「自分も辞めよう」と決断しやすくなります。このようにして次の退職者を生み出す「負の連鎖」が発生し、離職率の問題を一層深刻化させる危険性があるのです。
【診断】あなたの職場はいくつ当てはまる?離職率が高い会社に共通する7つの特徴(病巣)

従業員が会社を辞める理由は、給与や労働時間といった表面的な条件だけではありません。その裏には、組織の文化、評価制度、コミュニケーションといった、職場に根深く潜む「病巣」が隠れていることがほとんどです。
あなたの職場は今、どのような状態にあるでしょうか?これからご紹介する7つの特徴は、離職率が高い会社によく見られる共通点であり、いわば組織の健康状態を示す危険なサインでもあります。この診断リストを活用して、ぜひ客観的に現状を振り返ってみてください。
続く項目では、これらの「病巣」が具体的にどのような問題を引き起こし、なぜ離職へとつながるのかを、文化の病巣、評価の病巣、成長の病巣、コミュニケーションの病巣、経営の病巣という5つの観点から詳しく解説していきます。
特徴1:【文化の病巣】称賛・感謝がなく、貢献が「当たり前」になっている
成果を出しても上司や同僚から感謝や労いの言葉がなく、「やって当然」という空気が支配している職場では、社員は自分の努力が軽んじられていると感じます。
心理学者ウィリアム・ジェームズが「人間の最も深い欲求は、他者に認められたいという欲求」と述べたように、承認の欠如は人の心を蝕みます。
承認欲求が満たされない職場では、次第に「ここでは努力しても意味がない」と感じ、離職につながるのは自然な流れです。
特徴2:【文化の病巣】心理的安全性が低く、挑戦や意見が歓迎されない
会議での発言がすぐに否定されたり、失敗が厳しく追及されたりする環境では、社員は「無知と思われたくない」「余計なことは言わない方がいい」と考え、沈黙を選びます。
Googleの研究「プロジェクト・アリストテレス」でも示されたように、心理的安全性はチームの成果に直結します。
安全な環境を欠いた職場では、新しい挑戦や創造的な意見が生まれにくくなり、結果的に「ここでは成長できない」と判断した社員が外に活躍の場を求めて離れていくのです。
特徴3:【評価の病巣】評価基準が曖昧で、納得感のない人事評価が行われている
「頑張っているのに、なぜ正当に評価されないのだろう?」――そんな不満を抱く社員が多い職場は、離職率が高まりやすい傾向にあります。調査でも、人事評価に不満を感じる社員の6割以上が「評価基準が不明瞭」だと答えています。
評価が上司の主観や一部の社員への贔屓で左右されると、「何を達成すれば評価されるのか」がわからなくなり、社員は目標を見失います。その結果、日々の業務へのモチベーションは低下し、会社に対する不信感が募っていくのです。
特に若手社員やZ世代は「何をすれば評価されるか」を重視する傾向が強いため、納得感のない評価が続けば、優秀な人材ほど「この会社では成長できない」と見切りをつけ、他社に流出してしまうリスクが高まります。
特徴4:【成長の病巣】キャリアパスが不明確で、成長を実感できない
「このまま働き続けても、自分は成長できるのだろうか?」――そうした不安が社員の心に芽生えると、離職の引き金になりやすくなります。キャリアパスが明確に示されていない企業では、自分の将来像を描けず、仕事への意欲を失ってしまうのです。
昇進・昇格の基準が不透明で、挑戦できる機会やロールモデルも不足していると、社員は「ここにいても市場価値は高まらない」と感じてしまいます。結果として、学びや成長を重視する人材は、キャリア形成の見通しが立つ他の環境を求め、転職を選びやすくなります。
特徴5:【コミュニケーションの病巣】上司が部下に関心を持たず、1on1が形骸化している
本来、1on1ミーティングは部下の成長やキャリアを支援する場であるはずです。しかし現実には、単なる業務報告や指示確認の場に終始しているケースも少なくありません。
上司が部下の個性や価値観に関心を示さない「無関心マネジメント」が続くと、社員は「自分は尊重されていない」と感じます。信頼関係を築けないままでは本音の相談もできず、孤立感が深まります。その結果、「ここでは成長できない」と判断して離職につながるのです。
特徴6:【コミュニケーションの病巣】部署間・チーム内の連携が悪く、情報が遮断されている
部署ごとに壁ができ、必要な情報が十分に共有されない「サイロ化」。この状態は離職率の高い会社にしばしば見られる特徴です。
例えば、「あの案件どうなってる?」と毎日のように確認し合ったり、他部署に問い合わせると何度もたらい回しにされる――。そんな状況は、社員に強いストレスを与えます。実際に、情報伝達のミスで納期が遅れ売上が10%減少したり、同じ作業を各部署で重複して行い月40時間以上のムダが発生する事例もあります。
さらに問題なのは、部署ごとに利害を優先する「セクショナリズム」が強まることです。営業と製造の評価軸が食い違う、互いに「相手は何をしているのか分からない」と不信感を募らせる――こうした状態では組織としての一体感は失われます。自分の役割が全体にどう貢献しているのか見えなくなった社員は、やりがいを感じられず、より協力的な職場を求めて離職を選んでしまうのです。
特徴7:【経営の病巣】ビジョンや理念が浸透しておらず、仕事の意義を感じられない
額縁に掲げられた立派な理念やビジョンも、現場レベルに落とし込まれていなければ意味がありません。経営層が掲げる言葉と日々の業務が乖離していると、社員にとって理念は「ただの飾り」にしか映らないのです。
社員が「自分の仕事が会社の大きな目標や社会貢献にどう繋がっているのか」を実感できなければ、日々の業務は単なる作業と化します。その結果、やりがいや誇りは失われ、モチベーションも低下。最終的に「ここで働く意味がない」と感じて退職を選ぶ社員が増えてしまいます。
兆候としては、経営層が語るビジョンと現場の業務内容がずれている、部署や個人の目標が会社の理念と連動していない、といったケースが挙げられます。理念の形骸化は組織全体の方向性を曖昧にし、離職率上昇を招く大きな要因となるのです。
特徴に当てはまったら?明日からできる改善への3つのステップ

もし自社の状況が「7つの病巣」に当てはまっていたとしても、悲観する必要はありません。離職率の改善は、大掛かりな制度改革だけでなく、明日から実践できる小さなアクションから始められます。大切なのは課題に気づき、動き出すこと。ここでは、職場をより良くするための3つのステップをご紹介します。
ステップ1:現状を「見える化」する
まず必要なのは、「なんとなく問題がある気がする」といった感覚ではなく、客観的なデータに基づいた現状把握です。
従業員サーベイやパルスサーベイを実施して、社員が職場に対してどう感じているのかを数値化しましょう。週1回や月1回の短い質問形式でも、組織の小さな変化をすぐに察知できます。
さらに、退職者へのイグジットインタビューや、現役社員との1on1を通じて本音を拾うことも有効です。こうした「見える化」が、離職率改善の第一歩になります。
ステップ2:「小さな承認」を意図的に増やす
次に取り入れたいのが、日常的な「小さな承認」を意識的に増やすことです。
成果だけでなく、日々の努力や挑戦を言葉にして認めることで、社員のモチベーションや心理的安全性は大きく向上します。会議で一言感謝を伝える、チャットでポジティブなリアクションを返す――そんな小さな行動が文化を変えるきっかけになります。
ピアボーナス®のような仕組みを活用すれば、部署を越えて感謝を可視化でき、組織全体の一体感を高めることにもつながります。
ステップ3:コミュニケーションの「場とルール」を再設計する
最後に必要なのは、コミュニケーションのあり方そのものを見直すことです。
1on1を「業務報告の場」から「キャリアや悩みを共有する場」に変える、部署を横断したランチやワークショップを設けるなど、安心して話せる「場」を設計しましょう。
同時に、「否定しない」「人格ではなく行動にフォーカスする」などのルールを組織全体で共有することも欠かせません。建設的な対話の文化が根づけば、社員は安心して意見を出し合え、組織は強くしなやかに成長できます。
よくある質問
ここまで、離職率が高い会社に共通する「7つの病巣」と、その改善に向けた3つのステップをご紹介しました。
「うちも当てはまるかも…」と感じた方もいるのではないでしょうか。
ここからは、よく寄せられる質問にQ&A形式でお答えします。基本的な「離職率の計算方法」から、業界ごとの平均、さらに退職者インタビュー(イグジットサーベイ)の進め方まで、実務にすぐ役立つ情報をまとめました。
Q. 離職率の適切な計算方法を教えてください。
離職率とは、一定期間にどれだけの社員が会社を辞めたかを示す指標です。
最も一般的な計算式は以下の通りです。
離職率 = 離職者数 ÷ 期首の在籍者数 × 100(%)
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「離職者数」には、自己都合・会社都合いずれの退職も含まれます。
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計算期間中に入社してすぐ辞めた人は除くのが一般的です。
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「期首の在籍者数」は、期間の始まり時点の従業員数を指します。
算出期間は月単位・四半期・年間など自由に設定できますが、1年単位で見るケースが多いです。大事なのは、自社で「どの期間」「どの範囲の社員を対象にするか」を統一して継続的に追いかけること。厚労省の「雇用動向調査」など公的データと比較することで、自社の課題がより明確になります。
Q. 業界別の離職率の平均はどのくらいですか?
厚生労働省の調査によると、日本全体の年間離職率は 約15.4%(令和5年時点)。ただし、業界によって大きく差があります。
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宿泊・飲食サービス業:約30%前後(新卒3年以内は49.7%)
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生活関連サービス・娯楽業:47.4%(新卒3年以内)
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医療・福祉:38.6%
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製造業:約10%前後(新卒3年以内は18.5%)
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電気・ガス・水道業:10.6%(新卒3年以内)
宿泊・飲食や医療・福祉のように勤務環境が厳しい業界では高く、製造やインフラ系は比較的低い水準です。
ただし、業界平均はあくまで目安。自社のフェーズや地域、従業員構成などを考慮して評価する必要があります。
Q. 退職者へのインタビュー(イグジットサーベイ)では何を聞けばいいですか?
退職者インタビューは「辞めた理由を知るため」だけではなく、組織改善のために本音を拾う絶好の機会です。以下のような質問を意識すると有効です。
1. 退職理由を掘り下げる
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退職を決意した一番の理由は何ですか?
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次の職場を選んだ決め手は何でしたか?
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もし条件が違えば、残っていたと思いますか?
2. 業務・評価・キャリアについて
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自分の働きは正当に評価されていたと感じましたか?
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この会社で成長できる環境があったと思いますか?
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仕事内容や役割で特に不満に感じた点はありますか?
3. 人間関係・組織文化について
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上司や同僚との関係で課題を感じたことはありましたか?
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会社の文化や風土について、改善すべき点はありますか?
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もしあなたが経営者なら、この会社をどう変えますか?
こうした質問は、データだけでは見えない「職場のリアルな問題」を浮き彫りにします。退職者の声を改善策に活かすことが、結果的に離職率の改善につながります。
