
エンゲージメントは近年、人材の定着や生産性向上に不可欠な要素として、従業員ゲージメントが注目されています。しかし、「エンゲージメント」という言葉は知っていても、具体的な施策となると頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。この記事では、従業員ゲージメントを劇的に向上させた企業の事例を参考に、すぐに取り組める施策をまとめました。明日から使えるノウハウや、成功のヒントが満載です。ぜひ最後まで読んで、あなたの会社を「ブンゴト」として捉え、いきいきと働く社員で溢れる組織へと変革させていきましょう。
エンゲージメントと従業員満足の違い

エンゲージメントとは、社員が自らの意思で組織に貢献しようとする“前向きなつながり”を指します。これは単なる「従業員満足」とは異なり、福利厚生や職場環境への満足度だけでは測れません。満足は受動的な感情ですが、エンゲージメントは主体的な行動意欲の表れです。
企業が抱える本質的な課題、たとえば離職率の高さやチームの分断といった問題の背景には、この“貢献意欲”の欠如がある場合も少なくありません。社員が組織のビジョンや目標に共感し、自らの役割を自覚して動ける状態──それが高いエンゲージメントであり、企業にとって最大の成長エンジンになります。単なる快適さにとどまらない、人材の“内発的な熱量”こそが、持続的な組織力を支える鍵なのです。
“楽しい職場”だけでは足りない本当の理由
おしゃれなオフィスや豪華な福利厚生、頻繁な社内イベント──こうした施策は一見、社員の満足度を高めるように見えます。確かに従業員にとって心地よい職場環境は重要ですが、それだけでエンゲージメントが育つわけではありません。
エンゲージメントの本質は、社員が「この会社のために力を尽くしたい」と思えるかどうか。企業のビジョンに共感し、自分の仕事が組織の成果につながっているという“貢献実感”がなければ、表面的な快適さは長続きしません。
単なる従業員満足では測れない“心のつながり”──これが企業と従業員との信頼関係を深め、社員の自律的な行動を引き出します。楽しいだけの職場ではなく、「意味のある仕事」に社員が本気で向き合える環境こそ、真のエンゲージメントを生む基盤なのです。
従業員エンゲージメントが組織の応答力を鍛える
エンゲージメントが高い従業員は、ただ満足して働いているのではなく、組織の課題や変化に“自分ごと”として向き合い、積極的に行動します。これは単なる業務遂行を超えた、企業との深い結びつきがあってこそ生まれる姿勢です。
急速な市場変化や顧客ニーズの多様化が進む現代、企業にとって「応答力」──すなわち変化に素早く対応できる柔軟性は、生存戦略の一部です。
エンゲージメント施策によって、従業員の声を拾い上げる仕組みを整えると、経営層と現場の間に健全なフィードバックサイクルが生まれます。これにより情報循環が活性化し、課題の早期発見・改善につながるのです。
結果として、エンゲージメントの向上は、持続可能な企業成長に不可欠な「組織の応答力」を鍛える強力なドライバーとなります。
数字で証明する──人的資本経営とエンゲージメントの関係

人的資本経営が注目を集める今、従業員エンゲージメントは「感覚」ではなく「数字」で示すべき経営指標として扱われるようになっています。従業員をコストではなく“資本”と捉え、その活躍によって企業価値を高めようとするこの潮流の中で、エンゲージメントは欠かせない非財務指標となりつつあります。
投資家や取引先は、企業がどのように人材へ投資し、どのような成果を上げているのか──つまり、生産性の向上や離職率の低下、イノベーションの実現などを“証明”することを求めています。
この証明責任を果たすことは、単に外部からの信頼を得るためだけでなく、社内での施策効果を可視化し、改善に活かす意味でも極めて重要です。人的資本情報の開示が進む今、エンゲージメントの数値化と戦略的活用は、企業の未来を左右する鍵といえるでしょう。
失敗するエンゲージメント施策、その原因と対策

エンゲージメント向上を目指した施策が、思うように成果を上げない──そんな悩みを抱える企業は少なくありません。よくある失敗の要因は、「表面的な取り組みにとどまってしまうこと」「従業員の声を拾わず、一方的に施策を進めてしまうこと」、そして「結果の評価や改善がないこと」です。
たとえば、豪華なイベントや福利厚生の拡充は一時的な満足度を高めるかもしれませんが、「この会社で貢献したい」という深い意欲には直結しません。また、現場の実情を知らずにトップダウンで決められた施策は、従業員にとって“やらされ感”が強く、逆効果となることもあります。
重要なのは、現状の課題を丁寧に可視化し、目的を明確にしたうえで、施策の効果を継続的に評価・改善していくこと。対話を重ねながら、組織と個人が同じ方向を向ける設計が求められます。
投資家が重視する「非財務指標」としての位置づけ
エンゲージメント施策において、最初の一歩として導入されがちなエンゲージメントサーベイ。しかし、その実施が“目的化”してしまっては本末転倒です。「とりあえず流行に乗って」「数値を可視化して終わり」といった見切り発車では、得られる価値は限定的です。
近年では、エンゲージメントは企業の“非財務指標”として注目されており、投資家もその数値の裏にある「実行力」や「改善の仕組み」に敏感になっています。単なる測定ではなく、課題を見極めたうえで改善アクションに結びつける姿勢こそが、企業の信頼性を左右するのです。
サーベイの実施後に何が変わったか──その答えが社内外に明確に示されなければ、従業員の信頼を損ない、投資家からの評価も得られません。サーベイは“入口”であり、本質はその先の行動にあります。可視化、対話、実行というプロセスを通じて、エンゲージメントを真に価値ある資産へと育てることが求められています。
エンゲージメントはどう可視化・証明されるべきか?
エンゲージメント施策が形骸化する背景には、「とにかく何かやること」に意識が向きすぎ、本来の目的である“エンゲージメントの向上”が置き去りになる構造があります。特に注意すべきなのは、KPIが「施策の実施数」や「イベント開催回数」に偏り、従業員の実感や変化を捉えていないケースです。
このような状態では、現場との温度差が広がり、「やらされ感」や形だけの取り組みによって、むしろモチベーションが低下してしまうこともあります。離職率の上昇やエンゲージメントスコアの悪化は、そうしたサインの一つといえるでしょう。
真に有効な可視化とは、サーベイの数値だけでなく、「現場の声」や「行動の変化」など多面的に観測する姿勢です。施策の前後で何が変わったのか、どのような影響があったのかを振り返り、人事部門が現場と対話しながら“証明可能な施策”へと昇華させていくことが不可欠です。数値化は“終点”ではなく、“はじまり”。その後のアクションと改善こそが、エンゲージメント向上の鍵なのです。
失敗するエンゲージメント施策とその落とし穴

従業員エンゲージメントの低迷を招く要因のひとつに、「伝わらない施策」があります。過去と似た名前、意図の見えない表現では、「またか」と従業員の興味を失わせてしまいます。施策の目的やメリットが明確でなければ、やらされ感が強まり、組織への信頼すら損なわれかねません。施策を本気で機能させるには、従業員目線での丁寧な説明と対話が不可欠です。なぜ行うのか、何が変わるのか──そこに納得感があってこそ、社員の意欲は自発的に動き出します。「伝え方の設計」こそが、エンゲージメント成功の鍵を握っています。
施策が“やったことリスト”化してしまう理由
エンゲージメント施策が陥りやすい罠のひとつが、「数値目標の達成」だけに終始してしまうことです。スコアやサーベイ結果を追いかけるのは大切ですが、それはあくまで組織の状態を映す“手段”であり、“目的”ではありません。従業員の感情や声を無視して数値だけを評価軸にすると、現場には「数字しか見ていない会社だ」という不信感が広がります。本音を言っても無駄だという空気が定着すると、施策そのものへの関心も薄れていきます。組織が真に信頼を得るためには、1on1や対話の場を通じて、数値には現れない“気持ち”に寄り添う姿勢が必要です。従業員との丁寧な向き合いが、やがて自発的な貢献意欲へとつながっていくのです。
サーベイだけで終わる組織の共通点
多くの企業がエンゲージメントサーベイを導入していますが、「調査して終わり」になっている組織は少なくありません。その共通点は、改善アクションに結びつける体制が整っていないこと。サーベイ結果を分析するだけで満足し、現場の課題や従業員の声に耳を傾けることなく放置してしまうのです。こうした姿勢は、かえって従業員の信頼を損ね、「どうせ何も変わらない」という諦めを生みます。エンゲージメント向上には、サーベイ後の丁寧な対話と、組織全体で課題を共有するプロセスが不可欠です。現場の反応を汲み取り、小さくても具体的な改善行動を繰り返すことで、初めて「調査が活きている」と実感されるのです。
数値目標だけに囚われた失敗パターン
エンゲージメント向上において、数値目標ばかりを追いかけてしまう企業は少なくありません。スコアや指標は「可視化された結果」であって、ゴールではないはずです。従業員が抱える本質的な課題や感情を置き去りにし、表面的な数値改善に固執すれば、かえって現場の信頼を失うこともあります。例えば、「数値を上げるための施策」が優先されることで、従業員の声が軽視され、対話の文化が損なわれるといった事態も起こりがちです。エンゲージメントの本質は、組織の内側にある“関係性”の質にあります。数字の裏側にあるリアルな声に目を向け、継続的な改善につなげる姿勢が、持続的な成長を支える鍵となるのです。
伝え方が響かない──“またこれか感”を脱するには?
エンゲージメント施策が従業員に届かない最大の理由は、「またこれか」という既視感にあります。過去と似たような施策名や曖昧な説明では、共感は生まれません。従業員にとって「自分ごと」として受け取れるかどうかは、伝え方に大きく左右されるのです。目的が不明確なままでは、どんなに優れた施策でも“やらされ感”だけが残ります。重要なのは、施策の背景や意図、職場環境との接点を、丁寧に言葉で紐解くこと。信頼を得るには、トップダウンの一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションが欠かせません。従業員の声に耳を傾け、納得感を醸成することで初めて、本質的なエンゲージメント向上につながっていくのです。
成功に導くエンゲージメント施策の進め方【導入ステップ】

エンゲージメント施策を成功させるには、感覚的なアプローチではなく、明確なステップを踏んだ実行計画が不可欠です。ただサーベイを実施するだけではなく、その後にどう活用し、どのように現場へ浸透させていくかが問われます。
ここからは、施策の効果を最大化するために押さえておきたい「導入のステップ」について、具体的に見ていきましょう。
まず現状を可視化する(サーベイ活用のポイント)
エンゲージメント施策の第一歩は、従業員の本音や職場の実情を「見える化」することです。そのための有効な手段がエンゲージメントサーベイ。質問設計や分析軸を工夫することで、数値に現れない“声”まで読み取ることができ、施策の出発点として極めて重要です。
パイロット導入で“小さな成功体験”を設計
エンゲージメント施策を全社展開する前に、小規模なパイロット導入で“小さな成功体験”を積み重ねることがカギです。現場のリアルな反応や改善点を事前に把握しながら、成功事例として社内に展開することで、施策への納得感と期待値が高まります。
“推進チーム”が現場と経営をつなぐ
現場の声を吸い上げ、経営の意図を正確に届ける──その橋渡し役を担うのが、エンゲージメント施策の“推進チーム”です。多様な立場のメンバーで構成し、各部門との連携や施策展開を円滑に進める体制を築くことで、組織全体の一体感が生まれます。
PDCAを回し、施策を定着させる仕組みづくり
エンゲージメント施策は一度きりで終わらせず、PDCAサイクルで「仕組み化」することが重要です。定期的なサーベイ、現場からの声の収集、経営層へのフィードバックを繰り返すことで、施策が組織文化に根付き、持続的な成果につながっていきます。
エンゲージメントを高めた企業の実例【成功事例まとめ】

従業員エンゲージメントの重要性や施策の進め方について理解が深まったところで、次に注目すべきは「実際に成果を上げた企業は、どう取り組んだのか?」という具体例です。実際の成功事例を知ることは、自社の課題解決に向けた有力なヒントとなり、現場レベルでのアクションに落とし込むうえでも大いに役立ちます。
本章では、さまざまな業界・規模の企業が、それぞれの背景と課題に応じてどのようにエンゲージメント向上に取り組み、どのような成果を上げたのかを、実例とともにご紹介します。
それぞれの企業が持つ「自社らしい工夫」や「失敗を乗り越えるプロセス」から、自社で活かせるヒントを見出し、より効果的な施策立案の参考としていただければ幸いです。
三菱電機|称賛文化の醸成で挑戦行動が増加
三菱電機の半導体・デバイス事業本部では、組織風土の硬直化や挑戦意欲の低下といった課題に対し、従業員エンゲージメントを高めるための新たな取り組みを開始しました。その中核となったのが、称賛文化の醸成です。
具体的には、ピアボーナスツール「Unipos」を導入し、従業員同士が日々の貢献に対して感謝の言葉と少額のインセンティブを送り合う仕組みを構築。関係会社も含めた4,400人超が利用し、導入から1年ほどで、職場内に自然な称賛の文化が広がっていきました。
こうした文化の変化により、従業員の挑戦意欲が高まり、自発的な提案や役割を超えた協力行動が増加。結果として、エンゲージメントの向上だけでなく、業務に対する前向きな姿勢や組織の一体感にも好影響が生まれたとされています。
この事例は、制度やツールの導入自体よりも、「ポジティブな相互作用が日常的に生まれる職場づくり」に重きを置くことが、持続可能なエンゲージメント施策の鍵であることを示しています。
(参考情報)
日本ゼオン|“つながり”の可視化とサイロ化の解消
化学メーカーの日本ゼオンでは、研究部門において専門性が高いがゆえに、部門ごとに情報や知識が閉じた状態──いわゆる「サイロ化」が進行する課題がありました。このようなサイロ化は、部門間の連携不足や情報断絶を生み出し、組織全体での一体感やイノベーションの創出を妨げる要因とされています。特にリモートワークの浸透が進んだ近年では、物理的な距離が心理的な隔たりをさらに強めるリスクも高まっていました。
こうした背景を踏まえ、日本ゼオンでは研究組織内の「つながり」を再構築するための施策に着手。具体的には、部門を越えたネットワークを可視化するツールの導入や、横断的な共同プロジェクトの促進といった取り組みが実施されました。
その結果、組織内の人と人との関係性が見える化されることで、研究者間のコミュニケーションが活性化。知見の共有や相互支援の機会が生まれ、従来にはなかった連携やアイデアの創出につながったとされています。また、部門間の心理的障壁が低下することで、若手研究者が孤立しにくくなり、定着率や組織へのエンゲージメントの向上にも一定の効果が見られました。
このように、専門職集団における“つながりの設計”と“サイロ化の解消”は、エンゲージメント向上と組織成果の両立に寄与する重要な視点であるといえるでしょう。
(参考情報)
ハイフライヤーズ|感謝の見える化で離職率が27%改善
保育施設を運営するハイフライヤーズでは、長年にわたり保育士の高い離職率が課題とされてきました。子どもの成長を支える重要な役割を担いながらも、業務量の多さや精神的な負担が重なり、現場を離れる保育士が後を絶たなかった背景があります。
そうした中で、同社が打ち出したのが、職場内の「感謝の気持ち」を日常的に可視化する取り組みでした。具体的には、保育士同士が互いの貢献に対してメッセージとポイントを送り合えるシステムを導入し、見過ごされがちな日々の努力や協力に感謝の言葉を添えて承認する文化づくりを推進しました。
この施策の導入により、組織内の心理的安全性が高まり、保育士同士の関係性も良好に。結果として、離職率が27%改善されるという目に見える成果が得られました。また、数値的な改善に加えて、職場の雰囲気がポジティブに変化し、「働きやすさ」や「続けやすさ」を感じる従業員の声も増えてきているようです。
この事例は、感謝や承認といった非金銭的な報酬が、従業員エンゲージメントの向上や離職防止に大きな効果を発揮することを示す好例といえるでしょう。
(参考情報)
明日から実践できる!エンゲージメント向上の3つの行動

エンゲージメントを高めるための施策というと、制度改革やツールの導入といった大掛かりなものを想像しがちですが、実は日々のちょっとした行動にも大きな意味があります。上司から部下へ、あるいは同僚同士の何気ない一言や気配りが、職場の空気を変え、信頼関係を育む第一歩になります。
ここでは、すぐにでも始められ、実際に多くの企業で効果が報告されている「小さな行動」にフォーカスを当て、3つの具体例をご紹介します。
1on1の“傾聴タイム”をつくる
エンゲージメント向上の鍵のひとつが「傾聴」です。多くの企業で導入が進む1on1ミーティングは、その最たる実践の場といえますが、単なる業務報告の場になってしまっているケースも少なくありません。
そこで注目されているのが、“傾聴タイム”という考え方です。これは、1on1の時間の中に「上司が話す」のではなく、「部下の話を聴く」ことに専念する時間帯を意識的に設けるというシンプルな工夫です。たとえば最初の10分は「仕事以外のことでも自由に話してもらう」など、部下が本音や不安を吐き出せるような余白をつくることが、心理的安全性を高め、信頼関係を築く大きな一歩になります。
傾聴を重視した1on1の継続は、部下の感情の動きや価値観の変化にいち早く気づくことを可能にし、結果として離職防止やモチベーションの維持にもつながります。日常業務に追われがちな現場だからこそ、あえて「話を聴く時間」を意図的に設ける。この小さな習慣が、組織のエンゲージメント向上に大きく寄与していきます。
日常の“感謝と承認”を意識して伝える
従業員エンゲージメントを高めるうえで、日常的な「感謝」と「承認」の言葉が持つ影響は想像以上に大きいものです。組織の中では、成果や結果に目が向きがちで、日々の小さな努力や貢献が見過ごされてしまうことも少なくありません。そうした中で、「ありがとう」「助かったよ」といった言葉が自然と交わされる職場では、従業員同士の信頼関係が深まり、心理的安全性が育まれていきます。
特に管理職やリーダー層が積極的に承認の姿勢を示すことは、部下の自己効力感やモチベーションを高めるうえで極めて重要です。たとえば、朝の朝礼後やちょっとした会話の中で「昨日の対応、すごく助かったよ」「あの提案は本当に良かった」など、具体的な行動に対して言葉で認めることは、それだけで相手の存在価値を感じさせる力を持っています。
大きな制度を設けるよりも、こうした日常の中の小さな積み重ねこそが、エンゲージメントの土台を支えています。感謝と承認は、職場に温度をもたらす“潤滑油”のような存在なのです。
まずは一つ、エンゲージメントに関する情報に触れる
エンゲージメント向上に取り組む第一歩としておすすめなのが、「まずは知ること」。具体的には、エンゲージメントに関する書籍や記事、事例集などの情報に日常的に触れることから始めてみるのが有効です。なぜなら、エンゲージメントという言葉は浸透しつつある一方で、その本質や実践方法については、まだ十分に理解されていないケースも多いからです。
例えば、「エンゲージメントとはモチベーションとは違うのか?」「心理的安全性との関係性は?」「どんな施策が効果的なのか?」といった疑問に答える情報を少しずつでも吸収していくことで、自分なりの視点や問題意識が育まれていきます。これは、現場での小さな工夫やチーム内での会話の質を高めるための土壌となります。
情報に触れる手段はさまざまです。専門メディアの記事を読む、社内で共有されたサーベイ結果を見返す、あるいは他社の事例に目を通すだけでも大きな一歩。まずは気になったトピックから、エンゲージメントという“視点”を日常に取り入れてみることが、変化の起点になるでしょう。
まとめ──エンゲージメントは「手応え」を育てる経営資源

ここまで、従業員エンゲージメントの定義や必要性、よくある落とし穴とその対策、そして成功企業の実践例や今すぐできるアクションまでを網羅的に見てきました。
エンゲージメントの向上は、一朝一夕に完了するプロジェクトではありません。むしろそれは、企業と従業員がともに築いていく「継続的な関係性」であり、育てていくべき“組織文化”とも言えるものです。
その中核にあるのが、従業員一人ひとりが感じる「手応え」です。仕事を通じて、自分の存在や貢献が組織に影響を与えていると実感できるか。挑戦を重ね、成果が認められ、感謝される体験があるか。そうしたポジティブな循環が、エンゲージメントを深める土壌となり、結果として組織全体の活力や創造性にもつながっていきます。
この記事でご紹介した三菱電機や日本ゼオン、ハイフライヤーズのような企業では、称賛文化の定着や“つながり”の可視化、感謝の仕組みづくりといったアプローチを通じて、この「手応え」を丁寧に育てていました。これらの事例は、業種や規模を問わず、多くの組織にとって実行可能なヒントを提供してくれます。
エンゲージメント向上は、「社員が辞めないようにするため」だけのものではありません。従業員が本来持つ力を引き出し、いきいきと働ける環境を整えることで、企業としての持続的な成長力や競争力を高める──それが真の目的です。
明日からの一歩が、数ヶ月後の大きな変化につながるかもしれません。この機会に、エンゲージメントを「経営資源」として見直し、自社の未来を形作る土台として本格的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

