従業員満足度と顧客満足度には相関関係がある!調査結果を基に解説

「従業員満足度(ES)を上げると、顧客満足度(CS)も本当に上がるの?」
「ESなくしてCSなしっていうけど、嘘なんじゃないの?」

従業員満足度を上げる施策にはコストも労力もかかるので、つい懐疑的になってしまう方もいるかもしれません。このコンテンツを読んでいる方の中にも、「従業員満足度を上げる取り組みをしたいのに、なかなか上層部の承認を得られない…」と悩んでいる人事担当者の方がいるかもしれませんね。

確実な裏づけデータがなければ、なかなか重い腰を上げられない…という方もいるかもしれません。

そんな方にお伝えしたいのは、「ESとCSには正の相関関係がある」こと、さらに「ESやCSを上げると企業の業績が向上する」ことも、いくつもの調査研究や事例で明らかになっているという事実です。

このコンテンツでは、ESとCSの相関関係や、ESとCSを上げることで業績が向上するということを、以下のような順番で説明していきます。

◎そもそもCSとESとは何か?
◎ESとCSが業績向上に直結する3つの理由
◎ESとCSの関係を明らかに3つの調査研究結果

ESとCSが業績向上に寄与するということが書かれているページはたくさんありますが、相関関係についての調査研究データにまで触れているページはあまりありません。

このコンテンツを読めば、なぜ従業員満足度を上げなければいけないのかを、具体的な研究結果に基づいて説明できるようになるでしょう。ぜひ参考にしてください。


1. そもそもCSとESとは?

従業員満足度と顧客満足度の関係について説明する前に、まずはこれらの言葉の意味を正しく理解していきましょう。

基礎的な説明となるので、もう理解しているという方は、この章を飛ばして「2. ESが上がるとCSも上がる!その仕組みや理由は?」から読むことをおすすめします。

1-1. 従業員満足度(ES)とは

従業員満足度は、その名の通り、従業員が会社にどのくらい満足しているのか、その度合いを測る指標です。「Empleyee Satisfaction」を訳したもので、一般的に「ES」と表現されます。

従業員満足度は、職場と従業員を取り巻くさまざまな要因によって決まります。

動機づけ要因
(満足度がプラスに働く要因)

衛生要因
(満足度がマイナスに働く要因)

  • 仕事(やりがい、適性、量、質など)
  • 評価(公正性、納得感、透明性など)
  • 処遇(ポストの納得性など)
  • 自己の成長(成長実感、人材育成、将来性など)
  • 組織風土(職場の雰囲気、風土など)
  • 対人関係(上司や部下との関係、協力体制など)
  • 報酬水準(年収や賞与など)
  • 経営方針(ビジョン、経営陣、帰属意識など)
  • 福利厚生や労働条件(勤務時間、休暇など)

従業員の満足度が上がると、顧客へのサービスが向上し、優秀な人材が定着し、生産性が向上します。これが、顧客満足度につながります。

顧客に良いサービスを提供するためには、まずは会社で働く従業員の満足度を上げる必要があるとして、多くの企業が従業員満足度(ES)向上を目指しています。

1-2. 顧客満足度(CS)とは

次は、顧客満足度についてです。

何か商品を購入したとき、期待以上の効果があれば商品に対する満足度が上がり、不満点が多ければ満足度は下がりますよね。

このように、商品やサービスを購入した顧客がどのくらい満足したかを測る指標や概念のことを「顧客満足度」といいます。顧客満足度は「Customer Satisfaction」を訳したもので、一般的に「CS」と表現されます。

顧客の満足度が上がると、以下のようなメリットを得ることができます。

・業界の中で競合優位性を得られる
・売上が上がる
・取引が充実する

つまり顧客満足度(CS)は、業績向上や利益率の向上に直結する大切な要素と言えます。


2. ESが上がるとCSも上がる!その仕組みや理由は?

ここからは、ESとCS、そして業績の関係について、少し具体的に説明していきます。

「ES(従業員満足度)向上、CS(顧客満足度)向上が、業績向上に直結する」
「企業利益を生み出すためには、まずはESとCSを上げることが必要である」

このように言われる理由について、正しく理解していきましょう。

顧客満足度が上がれば業績が上がるというのは、直感的に理解できますよね。しかし、従業員の満足度が上がると、なぜ顧客満足度も上がるのでしょうか?

その仕組みと理由について解説します。

2-1. ESが上がるとCSが上がる仕組み(満足のピラミッド)

ES(従業員満足度)が上がるとCS(顧客満足度)が上がり、さらに企業の業績も上がる仕組みは、以下の「満足のピラミッド」で説明できます。

<ES→CS>
従業員の満足度が上がると、顧客へのサービスが向上し、優秀な人材が定着し、生産性が向上します。これが、顧客満足度につながります。

<CS→業績>
顧客の満足度が上がると、業界の中で競合優位性を得られ、売上が上がり、取引が充実し、業績が上がります。

<業績→ES>
業績が上がると、従業員への還元、教育制度の充実、労務改善などができるようになり、従業員満足度をより一層上げることができます。

この「満足のピラミッド」のサイクルが上手く回っている企業は、従業員が生き生きと働き、商品やサービスへの顧客満足度が高く、業績も好調である「三方よし」の状態と言えるでしょう。

この仕組みを念頭においた上で、ES→CSにつながる2つの理由を詳しく説明します。

2-2. ESが高いと顧客に質の高いサービスを提供できる

ESが上がるとCSが上がる理由は、ハーバード・ビジネススクールのヘスケット教授らが提唱した「サービス・プロフィット・チェーン」というモデルで説明できます。

イラストの赤い部分が、従業員満足度に関連する部分です。企業が社内サービスの質を上げて従業員満足度が上がれば、従業員の定着率や生産性が上がります。

そうすると顧客に対するサービスの質や価値が上がるため、顧客の満足度やロイヤルティが上がります(青い部分)。ロイヤルカスタマーが増えれば、売上や利益拡大につながり業績が伸びるというサイクルができあがります。

つまり、ESが直接的にCSに影響を及ぼしているというよりも、ESを上げることで顧客に提供するサービスの質が上がり、それが間接的に顧客満足度に影響するということが見えてきます。

2-3. ESが上がると優秀な人材の離職率を下げられる

ES(従業員満足度)を上げるとCS(顧客満足度)を上げると、優秀な人材の流出を防ぐことができます。

会社に不満を抱えている社員が多い会社は離職率が高く、常に人材が定着しません。そうした状態では、企業は常にコストをかけて採用活動をしなければならず、求人広告を運用したり面接の時間を取ったり、入社した社員の教育をしたりするコストや時間も必要となります。

特に優秀な人材が会社を辞めてしまうと、会社にとって大打撃です。顧客に対しても「担当がコロコロ変わる」「知識が浅いスタッフばかり」などの悪印象を与えてしまうため、顧客満足度も下がり、業績も下がる要因となります。

一方で従業員満足度が高い会社は従業員の定着率も高いので、採用活動に時間やコストを取られることもなく、本来の業務に集中することができます。高いモチベーションを持った社員は顧客に良いサービスを提供し、業績の向上につながるのです。


3. ESとCSには正の相関があるという調査・研究データ

ESが上がるとCSが上がるという関係性については、実際にいくつもの調査研究で結果として出ています。ここからは、その調査結果を紹介します。

3-1. ESとCSの間には、99%の因果関係が認められる

顧客満足についての権威であり、ハーバード・ビジネス・スクールの教授でもあるジェームス・L・ヘスケットは、「カスタマー・ロイヤルティの経営」の中で以下のような調査結果を明らかにしています。

・ESとCSとの間に、99%の因果関係が認められた
(MICコミュニケーション、ウエスタン・ユーロピアン・マネー・センター銀行、メイジャーUSトラベル・サービス、ランク・ゼロックス)

・CSが平均水準以上に得られた店舗の78%が、ESでも平均水準以上だった(チッキンフィレ社)

・ESが1%増加すると、CSが0.22%増加する(メリー・メイド社)

米国企業での調査ですが、多くの会社でESとCSの間に高い数値での因果関係が認められていることを考えると、「ESを上げればCSが上がる」という根拠に十分なりえることがうかがえます。

参考:書籍「カスタマー・ロイヤルティの経営―企業利益を高めるCS戦略」(ジェームス・L.ヘスケット他)

3-2. 従業員満足度が上がると同時に顧客満足度も上がる

2018年に東京海上日動コミュニケーションズの田口浩が発表した論文「コンタクトセンタにおける社員満足度と顧客満足度の関係性について」では、自社のコンタクトセンタを舞台に、社員満足度と顧客満足度の関係性を調査しています。

・社員満足度が上がると、同時に顧客満足度(NPSの数値)も上がる

同社では、2012年度から2016年度までの間、社員満足度と顧客満足度をそれぞれに計測しています。社員満足度が前年よりも下がった年には必ず顧客満足度も下がり、社員満足度が上がった年には顧客度は上がっています。

参考:論文「コンタクトセンタにおける社員満足度と顧客満足度の関係性について」

3-3. ESはサービスの質を向上させ業績指標を向上させる

2013年に鈴木研一と松岡孝介が発表した論文「従業員満足度,顧客満足度,財務業績の関係―ホスピタリティ産業における検証―」では、ホテル業を営む日本企業A社を6年間に渡って調査し、従業員満足度と顧客満足度、財務業績の関係を検証しています。

・従業員満足度とサービスの質の相関には、正の関係が見られた
・サービスの質と顧客満足度の相関には、正の関係が見られた
・顧客満足度は、稼働可能客室当り粗利益への効果が認められた

つまり
・従業員満足度→サービスの質→顧客満足度→財務業績という
サービス・プロフィット・チェーンは成立する

こうした一連の関係を同時に分析した調査は他に例を見ないため、有意義な調査といえるでしょう。

参考:論文PDF「従業員満足度,顧客満足度,財務業績の関係―ホスピタリティ産業における検証―」


4. ESとCSを同時に高めている企業事例

「ESなくしてCSなし」を体現するように施策として取り入れている会社があります。その事例を見ていきましょう。

4-1. ザ・リッツ・カールトン・ホテル

出典:ザ・リッツ・カールトン ホテル

ホスピタリティが高いサービスの事例として必ず登場するほど有名な「ザ・リッツ・カールトン・ホテル」。

リッツ・カールトンは、従業員も顧客と同じように「紳士淑女」として大切に扱っています。従業員第一主義を貫くことで、従業員は顧客を喜ばせることに最善を尽くし、顧客を感動させるサービスを生み出すことができるのです。

また、従業員には2,000ドルの決裁権が与えられており、従業員はスピード感を持って目の前の顧客を感動させるサービスを提供することができます。

ESを重視した経営スタイルを取ることで、非常に高いCSを獲得している事例と言えるでしょう。

4-2. GMOインターネット株式会社

出典:GMOインターネット株式会社

「世界一のサービスを提供するためには、世界一の人財が不可欠」という言葉を掲げ、人財(=人材)を何よりも大切にしているGMOインターネット株式会社。

従業員満足度やエンゲージメントを上げるために、さまざまな施策を行っています。

・食事やドリンクが全て無料の食堂を、24時間365日オープン
・金曜の夜は食堂でバーをオープンし、従業員同士の交流が図れる
・パパやママが安心して働けるように、生後57日から預けられる社内託児所を設置
・従業員用のマッサージスペースと仮眠スペースを完備
・お昼寝を推奨し、生産性をアップ
・従業員が業務に集中できるよう、社内コンシェルジュを配備

従業員が伸び伸びと楽しく仕事できる職場環境が、同社の成長を支えています。


5. まとめ

ES(従業員満足度)とCS(顧客満足度)には本当に相関関係があるのかについて解説してきました。顧客満足度や業績を上げるためになぜ従業員の満足度を上げなければいけないのか、理解できたのではないでしょうか。

最後に、もう一度この記事内容について振り返ってみます。

ES(従業員満足度)とは、従業員が働いている会社に対してどの程度満足しているかの度合いのこと。
CS(顧客満足度)とは、ある商品やサービスに対する顧客の満足度合いのこと。

ESを上げることでCSが上がり、企業の業績も上がるという好循環を生み出すことができる。

その理由は、

・ESが上がれば従業員のモチベーションが上がり、顧客へのサービスの質も上がるから
・ESが上がれば従業員の定着率が上がり、不要な採用コストを抑えられるから

ESとCSに正の相関関係があることはいくつもの調査結果で明らかになっており、その中で3つの調査結果を紹介しました。

また、ESを上げることでCSを上げる取り組みを行っている企業として、ザ・リッツ・カールトン・ホテルとGMOインターネット株式会社を紹介しました。

従業員満足度を上げるには、正直コストも時間もかかります。しかし従業員のモチベーションを上げ、社内を活性化させることが、企業の業績を上げるためにとても重要なことなのです。

従業員満足度を上げる取り組み方法や事例についてもっと知りたい方は、「従業員満足度向上の取り組みを解説!8の方法&12の企業事例を紹介」 という記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

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