
エンゲージメント研修とは、従業員のエンゲージメントを高めるために行う研修のことです。従業員一人ひとりが会社に対する愛着や貢献意欲を高めることで、生産性向上や業績アップにつながります。
本記事ではエンゲージメント研修の概要や実施により得られること、研修内容の一例を紹介します。
従業員のやる気を引き出す!エンゲージメント研修の成功法則
エンゲージメント研修とは、エンゲージメントの向上を目的に行う研修のことです。エンゲージメントとは会社と従業員間の信頼関係を意味し、従業員は会社に対して貢献意欲を示すとともに、企業は従業員の貢献に対して報いる相互関係があります。
ここではエンゲージメントの意味や研修が注目される背景を紹介します。
そもそもエンゲージメントとは
エンゲージメントとは、従業員が企業に対して抱く愛着や貢献意識のことです。英語の「engagement」は「契約」という意味があり、深いつながりをもつ関係性を表します。
エンゲージメントを構成するのは会社への理解と共感、貢献意欲です。企業理念やビジョンの理解と共感があり、自主的に貢献しようとする姿勢・意欲がエンゲージメントを構成します。
また、エンゲージメントを向上させる要素には、働きやすさや仕事へのやりがいがあげられます。人間関係が良好に保たれ、労働環境が整っていることや、仕事に満足感・達成感を得られることが大切です。
これらの要素を満たしてエンゲージメントを向上させることにより、生産性の向上や従業員の離職防止につなげられます。
エンゲージメント向上の悩みは研修で解決!
従業員のエンゲージメントを高める手段のひとつが、エンゲージメント研修です。研修に企業理念やビジョン、キャリアアップに関する内容などを盛り込むことで、エンゲージメントの向上を図れます。
従業員は企業理念の理解を深めることで会社への愛着や貢献意欲を持ち、キャリアアップの支援により仕事への意欲やモチベーションを高めることが期待できるでしょう。
研修に際しては従業員のエンゲージメントを事前に調査し、エンゲージメントが低い状態を生み出している原因を分析します。そこで得た課題を研修のカリキュラムに取り入れることで、効果的なエンゲージメント向上を図れるでしょう。
エンゲージメント研修が注目される背景
エンゲージメント研修が注目される背景には、人材の流動化や人手不足があげられます。近年は終身雇用制が崩れ、キャリアアップや働きやすさを求めて転職する人が増えている状況です。優秀な人材ほどスキルアップへの関心やキャリア志向が高く、人材の流出が防げないという事情があります。
また、少子高齢化で労働人口が減少し、人手不足に悩む企業が増えています。離職を防止するには従業員の帰属意識を高め、長く働きたいと思ってもらうことが必要です。そのために重要なのがエンゲージメントであり、エンゲージメントを効率的に高めるためには研修が有効と考えられています。
エンゲージメントが注目されているのは、人的資本経営に取り組む企業が増えていることも理由のひとつです。人的資本経営とは、人材を会社の「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで企業価値向上につなげようという経営手法です。
これまで、人材は「ヒト・モノ・カネ」という資源の1つとされてきました。資源はコストとして消費するものであり、できる限り効率的に回すことが基本です。そのため、人材にかける費用も、できるだけ抑えようとする傾向にありました。
しかし、人的資本経営において人材は価値を生む存在であり、「資源」ではなく「資本」に位置づけられます。資本としての人材に投資することが重視され、その施策のポイントとなるのが従業員エンゲージメントの向上です。従業員のエンゲージメントを高めることが生産性の工場や業績アップにつながり、企業価値を高めるとされています。
エンゲージメント研修で得られるメリット
エンゲージメント研修の実施により、企業理念の浸透や生産性の向上など、さまざまなメリットを得られます。
ここでは、エンゲージメント研修で得られる主なメリットを解説します。
企業理念が浸透して従業員が同じ方向性を持つ
エンゲージメント研修に企業理念や方針についての理解を深めるカリキュラムを設けることで、従業員に理念・方針が浸透します。それにより、従業員が同じ方向性で仕事を行えるようになるのがメリットです。
理念や方針を理解せずにただ与えられた仕事をこなしても、仕事への価値ややりがいは見出せません。方向性を見失い、モチベーションも低下するでしょう。
研修を通して理念を方針を理解することで、一人ひとりの従業員が同じ方向・目標に向かって仕事を行えるようになります。従業員の主体的・自発的な行動も期待できるでしょう。
エンゲージメント研修で生産性を向上
研修でエンゲージメントを高めた従業員は会社への貢献意欲を高め、主体的になって業務に取り組みます。一人ひとりの生産性が高まり、業績アップにつながるでしょう。
また、エンゲージメントを高めるためには、働く環境が自分にとって心地良い場所でなければなりません。エンゲージメント研修では従業員同士の交流機会を設けたり、コミュニケーション能力を高める内容を取り入れたりすることで、社内コミュニケーションの活性化を図れます。
その結果、上司や部下、同僚との連携がスムーズになり、業務が効率良く進むことも生産性向上につながるでしょう。
エンゲージメント研修で離職率を下げる
研修でエンゲージメントが向上した従業員は、会社への貢献意欲を高めます。組織の一員としての自覚を持ち、仕事への誇りを持つようになるでしょう。「この会社で長く働きたい」という気持ちが強くなり、離職率の低下が期待できます。
エンゲージメントを高めた従業員は同じ目標に向かって仕事に取り組むため、職場の一体感も強まり、活気のある組織風土を醸成できるのもメリットです。
離職率が低く、活気に溢れた組織風土は求職者にとっても魅力的です。入社を希望する求職者が増え、求人募集には多くの応募を集めることができるでしょう。
研修は自社で行う場合と外部委託する場合の2種類
エンゲージメント研修は「自社で行う研修」と「外部業者に委託する研修」に分けられます。どちらを選ぶかで、研修内容が変わります。
それぞれの特徴やメリットをみていきましょう。
自社でエンゲージメント研修を行うメリット
自社で行う研修は独自のカリキュラムにアレンジでき、企業理念や方針、自社で行うキャリアアッププランなどを研修内容に盛り込めるのがメリットです。
自社で自由に研修内容をカスタマイズできるため、企業理念やビジョン・ミッション、事業の方針などを従業員に共有できます。会社について理解を深めた従業員は仕事への価値を見出し、取り組む姿勢も変わってくるでしょう。
自社での開催は、研修対象の従業員に合わせた内容を用意できるのもメリットです。従業員の理解や習熟度に応じて内容をアレンジできます。適切な内容に調整し、十分な準備をして実施できるのが利点です。また、従業員からの感想や意見を集め、改良を行いながら次につなげることもできるでしょう。
外部委託でエンゲージメント研修を行うメリット
外部に委託する研修は、エンゲージメント向上に向けた汎用的なカリキュラムが組まれています。自社では集めることが難しい、最先端の情報を取り入れられるのがメリットです。
社内とは異なる価値観に触れて、新たな発想やスキルを習得できます。また、外部委託の研修には社内研修のような準備の手間がなく、プロによる専門的な講義を受けられるのもメリットといえるでしょう。社外の講師からレクチャーを受けることは、従業員にとっても新鮮な体験になります。
エンゲージメント向上を目指す研修の一例
エンゲージメントを高める研修はさまざまなカリキュラムがあり、自社の課題によっても適切な内容は会社ごとに異なります。
ここでは、研修内容の一例を紹介しましょう。
企業理念やビジョンを理解する研修
従業員のエンゲージメントを高めるには、企業理念やビジョン、価値観などへの理解と共感が必要です。これら企業理念やビジョンを浸透させることで、エンゲージメントの向上を図れます。
浸透したといえるためには、企業理念やビジョンについて知るだけでなく、行動に落とし込まれることが必要です。企業理念がしっかり浸透していれば、何のために業務に取り組むのか、どのような基準で判断するかといった価値観を全従業員が共有し、一体感を持って仕事に取り組めます。
研修では、企業理念やビジョンがつくられた経緯や背景を伝えるとともに、企業理念やビジョンに基いた場合、どのような行動が望ましいのかを明らかにします。
企業理念やビジョンを浸透させるには、最終的に習慣化することが大切です。現場において従業員各自が自然に企業理念に基づいた行動をできるようになれば、浸透させたということができるでしょう。
良好な人間関係の構築を目指す研修
会社へのエンゲージメントを高めるには、居心地の良い職場であることが必要です。また、従業員が「この会社でずっと働きたい」という意識を持ってもらうためには、担当業務だけではなく、チーム全体の仕事に対する当事者意識が欠かせません。
これらを実現するために必要なのは良好な人間関係であり、職場の人間関係を改善するための研修が役立ちます。
社内コミュニケーションが少ないという課題がある会社は、従業員同士の交流を図ったり、コミュニケーションスキルを高めたりするカリキュラムを設けるとよいでしょう。
従業員同士がお互いの価値を認め、誰もが自由な意見を発言できる環境が整っていれば、職場は安心して働ける場所となります。会社への愛着心も高まるでしょう。
研修ではありませんが、社内コミュニケーションの活性化に役立つのシステムとしておすすめなのが、ピアボーナスのUniposです。従業員同士がお互いの成果や貢献に称賛のメッセージをおくるシステムです。
感謝や称賛を気軽に伝え合う文化が醸成され。職場の仲間から評価されることで、仕事に対するやりがいが高まります。その結果、エンゲージメントの向上につながるでしょう。
主体性を身につけるマネジメント研修
エンゲージメントが高まれば、従業員は主体性を持って働けるようになります。しかし、上司が押し付け型のマネジメントをしては、主体性を発揮できません。そのため、管理職には部下の主体性を引き出すマネジメントスキルが必要です。
研修では、エンゲージメント向上のために管理職として求められる役割を学び、管理職としてどのように会社のビジョンや方針を部下に浸透させていくか、アプローチ方法を習得します。
また、価値観が多様化する時代に、管理職には部下が働きやすい環境を整える役割もあります。求められるのは、誰もが他人の反応を恐れず自分の意見を自由に発言できるという、心理的安全性が保たれた環境です。心理的安全性を高めるために管理職ができることは何かを学ぶことも必要になるでしょう。
成長する機会を提供する研修
成長機会を提供する研修も、エンゲージメントの向上に有効です。外部委託の研修を利用することで、自社では集めきれない最先端の情報や技術などを学べる研修を受けられます。研修により従業員は成長できることを実感し、モチベーションを高めるでしょう。
研修では講師から一方的な知識を伝えるだけでなく、ワークやロールプレイを取り入れたトレーニングも行われます。主体的に学ぶ機会をつくり、行動を変えることを促す内容です。
行動計画の策定を行うカリキュラムもあり、習得したスキルを現場で活用することもできるでしょう。
キャリアデザインをサポートする研修
理想のキャリアを思い描けない状況では、仕事に対するモチベーションが上がらず、エンゲージメントの向上は期待できません。今後のキャリアを設計するサポートを行う研修を行うことで、従業員のエンゲージメント向上を図れます。
キャリアデザイン研修は、以下のような内容で実施します。
- キャリアを棚卸しする
- 自己分析により強みを把握する
- 将来のキャリアを考える
- 中長期的なキャリアプランを策定する
キャリアの棚卸しとは、過去を振り返ることです。これまでどのような業務を行い、どのようなスキルを身に付けてきたかを振り返ることで、現在のスキルを把握します。
次に、自己分析で自分の強みや弱み、仕事に対する価値観を明確にしてから、将来のキャリアを見据えます。把握した強みを前提に、これからどのようなスキルを身につけ、キャリアを積んでいくかを考えるという流れです。最後は、具体的に中長期的なキャリアプランを策定します。
エンゲージメント研修を成功させるポイント
エンゲージメントに影響を与える要因はさまざまで、どの会社にも一律に効果的なエンゲージメント研修というものはないと考えてよいでしょう。そのため、エンゲージメント研修を成功させるためには、まず自社の課題を把握し、課題の解決に必要なカリキュラムを考える必要があります。
また、研修の効果を高めるため、研修の目的を明らかにすることも大切です。さらに、従業員のポジションに合わせた研修内容にすることも欠かせません。
ここでは、エンゲージメント研修を成功させるために押さえたいポイントを解説します。
エンゲージメントサーベイやヒアリングなどで課題を把握する
エンゲージメント研修を行う前には、現状のエンゲージメントの状態と、自社が抱える課題を把握しておくことが大切です。
「会社のどのような慣習や文化からエンゲージメントが生み出されているのか、あるいは向上を妨げているのか」を明確にします。そのために、エンゲージメントサーベイやアンケート調査、ヒアリングなどを行いましょう。
調査をする際は、調査対象とする従業員や調査期間、調査方法などを決定します。調査する前に、従業員には必ず調査の目的を伝えてください。目的が明らかでないと、評価に影響すると考えた従業員は本音を回答してくれない可能性があります。より正確なデータを取りたい場合は、匿名にするのもよいでしょう。
また、調査の参加が従業員の負担にならないよう、配慮することも大切です。
具体的な質問項目は会社ごとに異なりますが、主に調査では以下の質問が行われます。
- 従業員の個人的な思い、仕事に対する意欲など
- 従業員と会社、従業員と上司・同僚・部下との関係
- 職場環境は良いか、仕事をしやすい設備は整っているか
- 社内制度や福利厚生に満足しているか
調査を実施したら、結果の分析を行います。結果の良くない項目を検証したり、ポジティブや意見が多い従業員とそうでない従業員の違いを考えたりします。結果からいくつか仮説を立て、改善策を検討しましょう。
研修の目的を明らかにする
研修を実施する際は、何を目的としてエンゲージメント研修を実施するのかを従業員に伝えなければなりません。そのためにも、研修の目的を明らかにしておきましょう。目的が曖昧なまま実施すると、研修の趣旨がわからない従業員は参加への意欲を下げてしまいます。
ただ「エンゲージメントを高めるため」と伝えるのではなく、調査結果を分析して得られた内容について説明し、具体的にどのような課題があってどのように改善したいかを伝えましょう。
目的を共有することで、従業員は何を学び身につけるべきかを把握し、課題解決に向けて意欲的に参加できるでしょう。研修の効果を高めることが期待できます。
従業員のポジションに合う研修内容にする
エンゲージメント研修は、新入社員や中堅社員など、従業員のポジションに合わせた研修内容にすることが大切です。ポジションごとに、エンゲージメントを高める要素は異なります。
例えば、新人社員に中堅社員向けの研修を行っても、思うような効果は得られないでしょう。
新入社員向けの研修では、企業の理念や今後のビジョンを浸透させるための研修を行い、会社についての理解を深めてもらいます。また、新しい職場に早く慣れるよう、コミュニケーションスキルの取得や人間関係構築のための研修も効果的です。
中堅社員は業務に慣れているものの、マンネリ化してやる気が落ちている傾向にあります。エンゲージメント研修ではポジティブになる考え方を身につけ、モチベーションを高める内容を取り入れるとよいでしょう。
管理職は、部下のエンゲージメントを高めるために重要な役割があります。エンゲージメントについて理解を深め、部下とのコミュニケーションの取り方やマネジメント方法などを学ぶ研修が必要になるでしょう。
まとめ
エンゲージメントとは、従業員が企業に対して抱く愛着や貢献意欲のことです。エンゲージメントの向上により従業員は主体的に仕事に取り組むようになり、生産性を高めるというメリットがあります。従業員のエンゲージメントを高めることが、会社の成長のために必要です。
エンゲージメントを高める施策はさまざまですが、特に効果的なのがエンゲージメント研修です。エンゲージメント研修を行う際は、まず現状のエンゲージメント調査が欠かせません。従業員のエンゲージメントについて調査し、結果を分析しましょう。
研修の効果を高めるため、実施前には研修の目的を従業員に伝えることも大切です。研修で従業員のエンゲージメントの向上を図り、企業価値を高めましょう。