離職率改善に役立つeNPSとは?メリット・調査方法・事例まで解説

「eNPS」を一言で言うと、「自分の職場で働くことを、親しい人に勧めたいかどうか」を数値化し、従業員の会社に対する意識を測定する指標です。他人には悪いものを勧められない心理が働くことから、従業員の本音が現れやすいという特徴があります。

eNPSはすでに、アップル社など多くの企業で従業員エンゲージメント(会社に対する評価・愛着心)を測り、改善する方法として採用されています。最近では、顧客満足度(ES)調査よりも優れた手法としても注目されています。

しかし中途半端にeNPSを導入すると、逆に従業員の士気を下げてしまう危険性があるため注意が必要です。

調査結果を正しく分析し、従業員の不満の元を改善して初めて、eNPSを導入する意味があります。「調査に協力したのに全然改善されない…」とならないためには、その後の施策を見据えたeNPS導入が必要です。

そこで、この記事では、実際にeNPSを導入してみたいという方が完全に理解できるよう、以下を説明していきます。

◎eNPSについての基礎知識

◎導入すると何がいいのか

◎導入した企業の事例

◎調査分析するための3ステップ

◎調査分析を委託する場合のおすすめ企業3選

◎スコアを上げる方法

eNPS調査分析を外部委託する場合のおすすめ企業や費用も紹介していますので、読み終わった時点でeNPSをすぐにでも導入できる状態になっています。さらに、eNPSのスコアを上げて従業員の満足度を上げる具体的な方法も紹介します。

社員のモチベーション低下や離職率の高さにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. eNPSとは?正しく理解するための基礎知識

まずは「eNPS」とはどういう意味の言葉なのか、正確に理解していきましょう。

1-1. eNPSとは、従業員が会社を他人に勧めたい度合いを数値化したもの

突然ですが、質問です。

あなたの親しい友人から「あなたの勤めてる会社に転職したいんだけど、どう思う?」と言われたら、あなたはどう答えますか?自信を持ってお勧めできますか?

仕事内容だけでなく、待遇面ややりがい、会社の方向性について、総合的に不満がなければ、答えはイエスとなるでしょう。反対に、不満に思っている点がひとつでもあれば、手放しでお勧めはできないですよね。

このように、職場を他人に推奨する度合いを測る指標をeNPSといいます。

eNPS(従業員NPS)とは、「employee Net Promoter Score」を略したものです。

日本語で表現すると「従業員ロイヤルティ(忠誠心・愛着心)」または「従業員エンゲージメント」などとなりますが、これでは意味が分かりにくいので英語の言葉の意味を紐解いていきましょう。

「employee Net Promoter Score」を順番に訳すと、「従業員」「正味」「推奨者」「値」です。直訳すると「従業員のうち、正味どのくらいの人が、会社の推奨者になってくれるかを示した値」となります。

つまり、「自分の会社を他人におすすめしたいぐらい満足しているかを測る指標」ということができるでしょう。

eNPS調査では、まず「あなたの家族や友人から『あなたの職場で働きたい』と言われた時、推奨する度合いはどのくらいですか?」という質問を投げかけます。その点数の割合をもとに算出したスコアが、eNPSのポイントとなります。

詳しい計算式は後述しますが、高い点を付けた推奨者が多いほど、eNPSのスコアは高くなります。

eNPSスコアが高いということは、職場を親しい人にも勧めたいと思っている従業員が多く、良い職場環境が実現できていると見なすことができるのです。

1-2. eNPSは、NPS(顧客ロイヤルティ)から派生した言葉

ところで「eNPS」はなぜ「e」だけ小文字なのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。「eNPS」は元々「NPS(Net Promoter Score/顧客ロイヤルティ)」という言葉から派生した言葉です。

<元となる指標「NPS」とは>

「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」は、フレッド・ライクヘルドが提唱したマーケティング用語です。「あなたはこの商品を親しい人に勧めたいですか?」という質問に0~10点までの点数で評価してもらう方法で、顧客の継続利用意向を数値化した指標です。

NPSのスコアは、評価が低いマイナス100ポイントから、評価が高い100点までの数値となります。単純に「商品を好きか」ではなく「他人に勧めたいか」という未来の行動を点数化できるため、今後の収益性と連動すると考えられる指標です。

eNPSは、NPSでの「商品」を「自分の会社(職場)」に置き換え、従業員が自分の職場に満足しているかどうかを測る指標に転用したものです。

つまり「eNPS」とは、従業員が自分の職場を親しい他人に紹介したいくらい、良いものだと捉えているかを数値化する指標となります。

一般的には、「自分の職場で働くことを、親しい人に勧めたいかどうか」という質問を軸に、その点数を付けた理由や、いろいろな側面からの補足質問項目を同時に調査し、従業員エンゲージメントを上げる具体的な施策へとつなげていきます。

1-3. ES(従業員満足度)との違い

これまで従業員のモチベーションや満足度を測る調査として、「ES(Employee Satisfaction、従業員満足度)」調査が使われてきました。記事を読んでいる方の中にも、「ES調査はやったことある」という方がいるかもしれません。

ES調査もeNPS調査も、基本的な目的自体はほとんど変わりはありません。従業員の職場への評価や満足度を調査し、改善点を特定して、最終的には離職率を低下させたりパフォーマンスを向上させたりするのが目的です。

ただ、これから説明する3つの観点から、ESよりもeNPSの方が優れた点があり、今後はeNPS調査を取り入れる企業が増えるのではないかと考えられます。

1-3-1. eNPSの方が、従業員の本音を引き出しやすい

eNPS調査は、従業員が本当に自分の職場に満足しているのかを、ES調査よりも正確に把握しやすいといわれています。

「会社に満足しているか?」という曖昧な質問では、なんとなく「はい」と答える社員もいるでしょう。

しかし「親しい人にもお勧めしたいか?」という質問では、本当に良いものでなければ親しい人に紹介できないという心理が働きます。

周りに勧めたくなるほどいい職場なのか従業員に本気で考えさせた後に細かい質問項目に入っていくので、ES調査よりも正確に従業員の評価を測ることができるのです。

1-3-2. eNPSは3つのセグメントごとに対策を考えられる

eNPS調査の優れた点は、社員を「批判者」「中立者」「推奨者」という3つの分類に分けられる点です。このことにより、例えば「批判者」はどの項目で点数が低いのか(=不満を持っているか)や、逆に「推奨者」はどの項目に満足しているのかを分析することができます。

分析した結果から、3つのセグメントそれぞれに最適な打ち手を実行できるのです。

批判者は離職率が高い傾向があるため、このセグメントに属する社員をフォローすることで離職リスクを低減させることができます。

また「推奨者」はどこを評価しているのか分析することで、会社にとって重要な「推奨者」を増やすための施策も見出せるでしょう。

1-3-3. eNPSは最低2問から調査できる

ES調査は、従業員の満足度を分析するためにあらゆる角度からさまざまな質問をするため、設問数が多くなりがちです。

一方eNPSのスコアは、「自分の職場を親しい人にも勧めたいか」というひとつの質問だけで測ることができます。ただ、それだけでは評価した理由がわからないため、補足質問でその理由を探ります。自由回答形式の「その理由は?」という質問なら、設問数はたった2問から調査が可能です。

この場合、調査を外注委託しなくても社内で完結させることができます。その分コストをかけずに調査が可能です。

もちろん、分析する時間やリソースがない場合や社内で分析するのが難しい場合には、eNPS調査のノウハウを知り尽くした調査分析会社に委託する方法がおすすめです。

2. eNPSを導入する3つのメリット

eNPSを導入することで具体的にはどのようなメリットがあるのか、解説します。

2-1. 離職率を下げて社員を定着させることができる

有効求人倍率は高い水準が続き、人手不足を実感する企業が多い中、どうにか離職率を下げて社員を定着させたいと考える企業は多いことでしょう。そこで活用できるのが、eNPSです。

eNPS調査で従業員が付けたスコアと離職率には、相関があることが分かっています。

・低い点を付けた「批判者」は、推奨者や中立者に比べて離職率が2倍になる(※1)

・継続勤務動向(今の職場で働き続けたいか)とeNPSスコアは、0.99という高い相関係数になった(※2)

※1:ベイン・アンド・カンパニー公式サイトの情報より

※2:IMJによる10業界別 eNPSベンチマーク調査より

「批判者」のフォローを行わず放っておけば、離職者が増えるばかりです。

前章でも解説しましたが、eNPS調査では「批判者」「中立者」「推奨者」のセグメントごとに調査項目を分析することができるため、「批判者」がどの項目において不満を持っているのかを把握することができます。

つまり調査によって明らかになった「批判者」に対して、不満の原因となるボトルネックを取り除いたり、丁寧にフォローをしたりすることで、離職させず会社に定着させることが可能になります。

2-2. 採用にかかるコストを削減できる

新たな人材を採用する際には、求人媒体への掲載費や転職エージェントへの報酬など、膨大な採用コストがかかります。そのコストを削減するために、「リファラル採用」という手法が注目されているのはご存知のことでしょう。

リファラル採用とは自社の社員に人材を紹介してもらう採用方法のことで、採用コストがかからないのが大きなメリットです。職場を理解している社員が紹介する人材なので、良い人材が集まりやすいというメリットもあります。

eNPS調査をきっかけにして職場への信頼度や満足度が上がれば、リファラル採用に推薦してくれる社員が増え、採用コストを削減できます。採用広告を出さなくても社員が優秀な人材を呼び込んでくれる、そんな良いサイクルへ繋げることができるでしょう。

2-3. 生産性を向上できる

eNPSを正しく把握しコントロールすることで、生産性を向上させ、最終的には会社の収益性を高めることができます。

自分の職場に対するエンゲージメントやモチベーションが高い(=eNPSが高い)従業員は、熱意を持って仕事に取り組むため、エンゲージメントが低い従業員に比べて高い生産性を持っています。また、顧客に対してより良い価値を提供したいという気持ちがあり、丁寧で優れたサービスを提供することができます。

従業員の満足度が上がり職場が良い雰囲気になれば、良い意見やアイディアが生まれやすくなります。こうしたポジティブな姿勢を持った従業員を増やしていくことで、周囲の士気が高まり、会社の業績が上がる好循環を作り出すことができます。

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