週休3日とは?週休3日制のメリット・デメリット、導入企業の事例を紹介

さまざまな働き方改革が叫ばれる中、「週休3日制」が注目を浴びています。

2019年の8月には、日本マイクロソフトが1ヶ月限定で金曜日を休みにした、週休3日制を試験導入したのは記憶に新しいでしょう。他にも、佐川急便など大手企業の一部はすでに週休3日制を制度として取り入れています。

労働者からすれば、「休みが増える」喜びと、「給与が減ってしまう」不安の両方がある週休3日制。メリットとデメリットを含め、週休3日制についてご説明します。

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1 週休3日制の企業は全体の6.9%

 

平成30年に厚生労働省が行なった調査によると、週休3日制(「月1回以上週休3日制」、「33休」、「34休等」)の企業は、6.9%でした。

平成29年の調査では6.0%だったので微増していますが、まだまだ全体的に普及しているとはいいきれません。現状では何らかの週休2日制をとっている企業が84.1%と、最多となっています。

 

 主な週休制 1)の形態別企業割合  (単位:%

※:1)「主な週休制」とは、企業において最も多くの労働者に適用される週休制をいう。

※:2)「完全週休2日制より休日日数が実質的に少ない制度」とは、月3回、隔週、月2回、月1回の週      2日制等をいう。

※:3)「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」とは、月1回以上週休3日制、33休、34休等をいう。

参考:厚生労働省・平成 30 年就労条件総合調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaikyou.pdf

1-1 ワークライフバランスの促進が目的

週休3日制の導入は、働き方改革の中でも「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」の促進が目的です。ワークライフバランスとは、働く人々が、「仕事」と育児や介護、趣味や学習、休養など「仕事以外の生活」と調和し、双方を実現させる働き方・生き方のことです。

近年の働き方改革から、多くの企業でワークライフバランスの重要性が議論されるようになりました。週休3日制により休日が増えることは、ワークライフバランスの実現にとっても重要だといえるでしょう。

2 すでに週休3日制を導入している企業例

 週休3日制を導入している企業は少しずつですが、増加傾向にあります。

中には社名を耳にする機会の多い大企業も含まれています。代表的な4社を確認しましょう。

2-1 佐川急便株式会社

 運送業界の大手、佐川急便株式会社は週休3日制を導入している企業です。

その目的は、ドライバーの人材不足の解消だといわれています。週休3日制を利用した場合、平日の勤務時間が8時間から10時間へと2時間長くなる「変則労働制」を導入し、給与額に変更はありません。ま

た、休日の副業も認めるなど、多様な働き方を提案することで、人手不足の解消をめざしています。

2-2 Zホールディングス株式会社(Yahoo!

 Zホールディングス株式会社(ヤフー株式会社から社名変更)は、小学生以下の子を持つ社員や、家族の介護・看護が必要な社員を対象に、土日の休日に加え1週あたり1日の休暇を取得できる「えらべる勤務制度」を導入しています。

社員の平均年齢が上がり、介護などの問題が浮き彫りになったため、解決策として週休3日制を導入したとのこと。

社員の働き方に応じて制度を整備した企業例です。

2-3 株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)

 「オンもオフも充実させたい」「仕事と家庭を両立させたい」という社員の声から、週休3日制がスタートした、株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)。

変則労働制を利用して労働時間を調整することで、給与を減らさず平日に休暇を取得できます。

介護や育児を目的とするだけでなく、勉強などの自己研鑽のために週休3日を利用する社員もいるそうです。

2-4 KFCホールディングス株式会社(ケンタッキーフライドチキン)

 KFCホールディングス株式会社(ケンタッキーフライドチキン)では、2016年から「限定社員制度」を導入し、その一環として「時間限定社員」の制度を開始。

働く時間を選べるというもので、この制度により週休3日制を実施しています。

正社員として、生活スタイルに合わせた多様性のある働き方の実現をめざしてほしいとの意図があります。

エンゲージメント向上施策に潜む7つの落とし⽳とは|社内施策を進める上でのポイントを徹底解説

3 週休3日制を導入するメリット

 

実際に週休3日制を導入した場合、社員にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか? 以下、4つにまとめました。

3−1 家庭やプライベートに多くの時間をかけられる

 今まで仕事に費やしていた分を、家族との時間や自分のプライベートな時間に費やすことができます。

休みが3日になれば、長期の旅行計画も立てやすくなるでしょう。家族と触れ合える時間が大幅に増えます。また、趣味などプライベートな時間も増えることになります。

1日を丸々休息にあてる人もいるでしょう。

3−2 自己投資の時間が増える

 現パナソニックの創業者である松下幸之助氏の手により、1965年に日本で初めて週休2日制が始まりました。

これは他の企業や官公庁に先駆けてのことであり、現代では多くの企業が何らかの週休2日制を採用しています。

松下氏が残した、「1日休養、1日教養」という言葉には、「週の1日は自己成長の機会にあてる」という意味があります。

週休3日制が導入されれば、従来の週休2日制だけは取れなかった、学びや成長につながる時間をより多く捻出しやすくなるといえるでしょう。

3−3 仕事にメリハリをつけられる

 休みが1日増えた分、当然ながら週の労働時間が減ってしまいます。

その分は平日の労働時間を調整するケースが多いのですが、基本的には限られた時間の中で仕事をこなさなくてはなりません。

つまり、週休2日制の時よりも普段のパフォーマンスを高めた働き方が不可欠になるのです。そのため、メリハリのついた時間感覚を持ちながら、仕事を進めていくことになります。

これにより、生産性が向上する可能性も考えられるのです。

3−4 仕事や通勤のストレスを軽減

「明日も仕事か……」と思いながら毎晩ベッドに入る方も少なくはないでしょう。

週休3日制になれば、仕事の前日という憂鬱な夜を1日減らすことが可能なため、仕事におけるストレスもぐんと少なくなるはずです。

また、満員電車で通勤している人も多くいらっしゃるでしょう。電車に乗るのが1日減るだけでもストレス面で大きく違ってきます。

4 週休3日制を導入するデメリット

 

週休3日制はメリットばかりではありません。デメリットといえる部分も存在しています。

4−1 平日の仕事量が増える

 週休2日制の場合、週の労働時間は「8時間×5日間」で合計40時間でしたが、週休3日制の場合は変則労働制を適用すると、「10時間×4日間」となります。

つまり、休みが1日増えたことにより、1日の労働時間が2時間延びるのです。

また、これまで週5日かけて行ってきた仕事を週4日でやらなくてはならず、プレッシャーに追われる人も中には出てくるかもしれません。

4−2 給料が減ってしまう

変則労働制を適用しない企業の場合、週の出勤日数が1日減るわけですから、その分減給になる可能性があります。

また、これまでは残業代が出ていた時間も通常の勤務時間となるため、相対的に社員の月収が減ってしまうことが考えられます。

4−3 社内のコミュニケーション不足

週休3日制を導入したとしても、社内のすべての部署がすぐに対応できるわけではありません。

週休3日制にできない部署があった場合、勤務中にコミュニケーションが取れない問題が発生します。必要な情報が得られずに、仕事が頓挫してしまう、などということも考えられるのです。

4−4 営業中の取引先とのやりとりの問題

自社が週休3日制を導入しても、取引先が週休2日制のままなら、やり取りに1日の間隔が空いてしまいます。

うまく乗り越えられれば問題ありませんが、取引など大きな機会損失につながるリスクがあります。取引先としては、必要な時に相手が休んでいるのですから困るはずです。

5 日本マイクロソフト社の週休3日へ向けての取り組み

 

冒頭でもお話ししましたが、日本マイクロソフト株式会社が20198月の金曜日すべてを休みにする、自社実験プロジェクト、「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」を実施しました。日本マイクロソフトは金曜にはオフィスを閉めて、約2300人の社員が特別有給休暇を取得しています。

大手企業として週休3日への取り組みを真剣に検討している日本マイクロソフト。その意図は何なのでしょうか?

5−1 「ワークライフチョイス」による働き方改革

 日本マイクロソフトは企業をあげて、働き方改革を経営戦略の中心としています。

その基本理念ともいえるのが「ワークライフチョイス」です。ワークライフチョイスとは、社員一人ひとりが仕事や生活の事情や状況に合わせた柔軟で多様な働き方を、自身でチョイス(選択)可能な環境をめざすというもの。これは、ワークライフバランスよりも一歩進んだ考え方だといえそうです。

5−2 「仕事」と「休み」を選ぶのではなく、「働き方」を考える

 年齢や立場によって働きたいと思える時間は変わるし、出産や育児といったタイミングでは家庭に時間を割きたいと思う人もいるでしょう。

つまり、社員の多様さにより配慮したのがワークライフチョイスというわけです。

ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏はその一環として、「短時間で働き、よく休み、よく学ぶ」ことへのチャレンジによって、生産性と創造性の向上を目標にしました。

5−3 休日中の対応は社員の判断に委ねられる

 ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏では、全社員が一斉に毎週金曜日に休みを取ることになります。

しかし、世間では平日なので、取引先との兼ね合いもあるでしょう。日本マイクロソフトでは、事前に取引先との予定が入っている場合は、上長に相談してあらかじめ別日を休みにするケースがありました。

予定通り休みを取ったり、ボランティアに参加したりした社員の場合、休暇中の取引先からの連絡は法務部の代表が取り継ぐようにしています。

問い合わせ内容によっては、法務部から担当社員に連絡することもありますが、週末の間に返信がなくても問題ないとしたそうです。また、社員のほとんどは休日前に取引先と事前に緊急連絡先を決めておくなど、柔軟な対応を心がけています。

6 週休3日制を実現するための4つの策

 

週休3日制には課題がありますが、実現できれば社員の働き方を大きく変えることができるでしょう。

ここからは、週休3日制を実現するために必要な4つの政策について考えていきましょう。

6−1 1日の予定を濃密なものに

週休3日制の場合、週の勤務日数が5日から4日に減ります。その分12時間ほど労働時間が増えますが、

相対的に見ると、働く時間が1日減った気分になりますよね。そのため、時間の無駄をなくした働き方が必要です。週の計画をしっかりと立て、毎日を集中して働ける体制を整えましょう。

6−2 ミーティングは最低限の時間と人数で

 週の労働時間が減るわけですから、1日の流れを可能な限りスムーズにしていかなくてはなりません。

その一環として、ミーティングをスリム化する方法があります。3人で1時間かけていたミーティング

があれば、参加は代表の1人だけにしましょう。それだけでも、社員1人あたりが担っていたミーティングの時間を2時間減らすことができます。

また、これまでミーティングに1時間をかけていたのなら、半分の30分に減らす取り組みをしてもいいかもしれません。

6−3 社内の連絡ツールを活用する

 ミーティングを減らした分、コミニュケーション不足に陥ることが懸念されます。

そこで、社内SNSや社内Wiki、チャットなどのツールをうまく活用しましょう。メールなどとは違い、改まった文面が必要ないので、思いついた時に気軽に連絡できるのがメリットです。なるべく目的を端的に伝えることで、コミュニケーションの質は下げずにかかる時間を削減して行きましょう。

6−4 「何」に対しての「報酬」か再考する

 週休3日制になると、1日の労働時間が2時間増える分、これまで残業代として出ていた分の給与が減ることが想定されます。

残業代を生活の糧にしていた人にとってはショックかもしれませんが、考え方を変えてみましょう。労働の対価というものは、「時間」ではなく「結果」に対して支払われているものです。

週休3日制を含むライフワークバランスの普及は、これまでの長時間労働を見直します。つまり、結果に対する新たな報酬であると考えることもできるわけです。

そこで、働くという意味を一度考え直してみることで、より生産性の高い働き方を実現できるのではないでしょうか?

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7 まとめ

週休3日制の導入は、ライフワークバランスの実現にとって非常に重要だとわかりました。

労働時間や通勤時間が減ることで、日々の生活にゆとりが生まれ、以前よりもメリハリを持って働けるようになるかもしれません。

また、週休3日制は働く社員だけに恩恵があるわけではありません。きちんと週休3日制の労働条件を整備することで、人手不足の昨今、企業側にも新たな素晴らしい人材との出会いが巡ってくる可能性があります。

現状では課題点の多い週休3日制ですが、うまく社内の制度として盛り込むことで、社員と企業の双方にとって素晴らしい企業文化が生まれるのが期待できます。