その離職防止対策は的外れ?離職防止に効果的な5つの施策とツールを紹介!

自社の社員が辞めてしまうことにお困りでしょうか。人事としてできることはやっているつもりでも、退職者が後を立たない。具体的な理由はわからないし、自社の人的リソースがこれ以上流出するのはストップさせたいと考えているかと思います。

そこで今回は、

1.離職防止のために人事が出来ること

2.離職防止マネジメントの3大ポイント

3.離職防止のための具体的5大施策

をまとめました。最後までお読みいただければ、自社が離職防止のために何から取り組めば良いのかがわかり、離職率が下がるだけでなく、採用した人材が定着してくれるような企業風土作りの一助になります。

1.離職防止のために出来ること

ここでは、離職防止のためにできることを説明します。

1-1.離職理由を把握する

自社を辞める理由を把握しておく必要があります。厚生労働省が調査をした「仕事を辞めた者の退職理由」によれば、正規雇用者が離職をする主な理由は多い順に

①給与に不満がある(40.7%)

②会社の将来に不安を感じた(31.7%)

③労働時間が長い・休めない(30.9%)

④経営方針に不満(30.1%)

でした。この言葉だけを額面通りに受け取ってしまうと、離職者の本当の退職理由はわからないままです。辞めた人の腕を掴んで「理由を教えて」とお願いしても、自分が去った場所が今後成長するための言葉は貰えないのが当たり前ですから、残されたものが現場の実情と比較しながら真剣に考えるしかありません。例えば

①の給与に不満がある

給与の不満は金額アップが一番なのですが、企業の運営状態によっては答えられない場合もあるかと思います。その場合は実質的な生活や家計を補填・補助してあげられるような対応を増やす

  • 福利厚生面(生活用品・生活雑貨・家事代行・介護サービス代行などの割引)
  • 少ない時間でも働ける時短制度の導入
  • 副業を許可する

など、金額が上がらなくても、具体的に生活に潤いや余裕を与える対応で離職を食い止めることが可能です。

②会社の将来に不安を感じた・④経営方針に不満

「経営陣が信用できない」という、不信感から離職をしています。別の理由のように受け取りがちですが、この2つは会社そのものに不満があるという意味では同じです。経営方針とは言っても、多くの会社員は経営に関与することはありませんので、具体的には、会社が標榜する経営理念とかけ離れた経営をしているため、仕事内容に疑念を抱いたまま続けてきたが、我慢ならなくなったという可能性があります。

実際のところ、人事が経営に対して諫言できることはほとんどないかと思いますが、それでも

  • 在籍時に社員の声を拾っていたか
  • 不当な扱いを受けている社員はいなかったか
  • 経営のずさんさなど、社員の信用を失うようながなかったか
  • 適切な配置かを再検討する

など、社員のために誠実に対応してあげられることはあります。

③の労働時間が長い・休めない

「自分の時間がない」「働かされすぎ」のために離職をしています。

残業時間や休日出勤の多さなど、労働時間や休暇制度に対して改善される見込みがなく、長い目で見て、働き続けるのが難しいと感じたので退職を決意しています。

どのような理由で休暇が取れない、労働時間が長いのかは職種によっても理由が違いますが、一律に状況を改善するためには

  • 労働スタイルの多様化(リモート・時短などの取り入れ)
  • 仕事量の割り振りの見直し
  • 出勤・退社時間の廃止または自由化(フルフレックス制度)

など、作業効率をよくする、仕事の不均衡などを是正して離職率を下げることは可能です。

1-2.適切な離職率を把握する 

実は、適切な離職率の絶対値は存在しません。理由は、国・事業内容・規模・企業サイクルなどにより、適正な離職率は変わるからです。それでも一律に%として離職率が問題に上がるのは、その企業の労働環境を外部から知るための手がかりとして、求人票などに記載があるためです。

そもそも離職率とは「一定期間を定め、その期間内にどれだけの社員が離職したか」を示した率で、その期間・計算方法ともも法的な規定はなく、企業によってさまざまな基準で計算されています。そのため、たとえ離職率0%を謳っている企業があったとしても、どのくらいの期間、何人の採用で計算したのかまでわからないと、その企業の実情は見えてきません。

もっとも多い離職率の計算方法は「起算日(年度初め)〜1年間の離職者数÷起算日における在籍者数×100」という計算方法です。例えば、

  • 社員数:100名
  • 起算日までに離職者:10名(その後の採用は計算に入れない)
  • 計算>10名÷90名×100=11%

となり、この企業の離職率は11%になります。この計算方法を元に、厚生労働省の出した平成30年上半期雇用動向調査結果の概況を元に計算すると、現在、日本の離職率は

  • 離職者432万人÷常用労働者49942万人×100=約8.6%

ということになりますので、この計算方法では、8.6%が適切な離職率を判断する目安になります。

【参照:平成 30 年上半期雇用動向調査結果の概況

【参照:離職率 ウィキペディア

1-3.離職率が上がる社会背景

企業のグローバル化とIT化により大量の情報が溢れかえっている現代では、誰もが転職のための情報を簡単に得て自由に移籍ができます。同時に、企業も必要な人材を育てるよりも「即戦力」になる人材を外で探してきて雇う方が効率的であると判断しており、長い時間をかけて「生え抜き」の社員を育てることがなくなりました。

また、リーマン・ショックなどにより、大企業や有名企業であっても突然の倒産・リストラが起きる可能性があること、MAで企業そのものが内資企業ではなくなる可能性があることなどを通じて

  • 終身雇用は絶対ではない
  • 長期雇用も確約ではない
  • 大企業でも安心はできない

という認識が定着したため、より安全な場所へと転職することへの社会的・心理的なハードルが下がったことも理由にあげられます。

【参照:一般社団法人 日本経済団体連合会 経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方】

【参照:リーマン・ショック

2.離職防止マネジメントの3大ポイント

ここでは、離職防止マネジメントを活用し、社員を自社にとどめておくための三大ポイントを説明します。

2-1.お金以外の方法でも引き止めるようにする

辞める意志がある社員を引き止めるために、昔からよく使われていた方法として

  • 給料を上げる
  • ボーナスを増やす

などの金銭的な改善策ですが、今や、このような方法だけでは人の流出を止めるのは難しいでしょう。社員が離職を決意する時は、額面だけではなく「総合的に見て、この会社に残ることは自分にとってデメリットである」と判断するからです。

経団連のまとめた「経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方」というレポートによると、現代人は就職活動で会社選択をする時に「非金銭的な報酬」を軸に会社を選んでいることがわかっています。つまり、多くの人は仕事に、お金よりも

  • 人生を楽しく生きること
  • 自分の能力や個性を活かせること
  • 自分らしく仕事をすること

という、お金があるだけでは解決ができない「生き方と働きかたの両立」を求めており、できることなら会社に長期雇用をしてもらいながらゆっくりキャリア形成をしきたいという淡い人生の目論見があります。つまり、人が今の企業から転職する時にも、同じように

  • やりがいが欲しい・楽しく働きたい
  • スキルをあげて、力を試したい
  • 自分らしいキャリアを積んでいきたい

という、「お金以外の価値」求めて転職するケースの方が多いと見るのが妥当です。就労ニーズの多様化に合わせた職場環境の変化ができれば、自社の離職率が大幅に下がる可能性があるので、積極的に取り組むべき課題と言えます。具体的な対応策に関しては3章に詳細があります。

【一般社団法人日本経団連 経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方

2-2.従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントを高めると離職率は下がります。従業員エンゲージメントの調査をした世界的コンサルティング企業 ウイリス・タワーズワトソンのレポートによれば、従業員エンゲージメントの高い社員の離職率が1.2%なのに対し、従業員エンゲージメントの低い社員の離職率は9.2%と7倍近い離職率を示しています。

従業員エンゲージメントとは、会社と社員の間に育まれた「行動に基づく絆」です。日本では馴染みのない言葉ですが、世界では組織作りの際に必ず取り入れられるスタンダードな考え方です。ウイリス・タワーズワトソンが定義する、組織への従業員エンゲージメントは以下になります。

    従業員それぞれが、企業が実現しようとしている戦略や目標を理解し、

    腹落ちして、そこに向かって自らの力を発揮しようとする自発的な貢献意欲

    このようなエンゲージメントがされている社員は仕事に対して

    • 組織の目指す方向性を理解し、それが正しいと信じて積極的に取り組み
    • 組織に対して帰属意識や誇り・愛着の気持ちを持ち
    • 組織の成功のため、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲に満ちている

    という、ポジティブで充実した心理状態にあります。平たくいうと、働くのが楽しくて仕方がないという状態です。従業員エンゲージメントを高めるには、定義の中にある「自発的な貢献意欲」を社員に発揮してもらわなくてはなりません。そこで、企業側は社員に対し

    • ワークライフバランスが充実できる環境

    十分に働き、健康が維持できる仕事環境と生活環境を提供する

    • 適切な人事評価制度を採用するシステム

    見落としなく、成果を正当に褒めるシステム

    • 才能の発掘

    まだ本人も気づいていない才能を引き出す

    • 人材育成をする

    企業にとって必要な人材を丁寧に育て上げる

    といった、従来のようなお金や待遇面以外の施策や準備をする必要があります。【参照:業績を高めるエンゲージメント向上の取組み

    【参照:経営学レポート 効果的なエンゲージメント戦略の定量的分析「Driving Performance and Retention Through Employee Engagement」

    2-3.社員の裁量を広げる

    社員が会社に残る理由が主に「やりがい」の部分であるならば、各社員の裁量範囲を広げましょう。本章1.2と通じ、「お金」「待遇」ではない部分に人を引き止める効果があることが明らかですから、社員にモチベーションと仲間意識(帰属意識)を向上してもらうためには、自分の仕事を自分で仕切らせる方がやる気が出ます。何をするにも上司の判断を仰ぎ、何1つ自分で決められない環境では、人は「やらされ感」はあっても「やる気」にはならないものです。

    同時に、管理職にも職責レベルに合わせた裁量権を拡大し、管理職にも「やりがい」が生まれると組織内の動きがよくなります。上司と部下が、共に自分で決めて仕事を配分し、自分と仲間の成長を感じていく過程で仲間意識や一体感が生まれます。

    3.離職防止のための具体的5大施策

    本章では、離職防止のための具体的な施策を説明します。

    3-1.スキル・キャリア向上支援をする

    社内に、キャリアアップに関した相談窓口や専門アドバイザーを設置しましょう。またそのような役職を社内で育てるための資格取得を新たな視野に入れても良いでしょう。人事部が主催となって、キャリア研修セミナーを実施し、社内で働いている中でも十分なキャリアアップができることを実感してもらいます。

    さらに社員が自発的にキャリアアップしてもらうために、人事を公募や社内FAなどの新しい取り組みがあると、やる気になる社員が増えます。企業内での「役」は限られていますが、より適正でより公正な人材配置のためにも効果があります。

    また、このような公募システムなどの競争に応募をしないタイプの社員たちのために、Thank You Cardなどの給与には直接反映しない評価サブシステムを持ち、社員全員にスポットライトが当たるチャンスを作り、やる気の維持に努めましょう。

    3-2.ワーク&ライフバランス実現環境を整える

    働き改革に伴い、ワークライフバランスの見直しが必要になっています。長時間労働の「状態化」は雇用促進かワークスタイルの変更で、すぐにでも改善しましょう。

    従業員のライフスタイルに合わせた

    • 在宅勤務
    • 時短労働
    • フレックスタイム制
    • 育児休暇制度

    のような、幅広い働き方と勤務形態を取り入れた、ワークライフバランスの実現は、自分らしい生き方と働きかたの両立求める現代人にマッチします。

    3-3.コミュニケーションをしやすいツールを使う

    2章で説明した従業員エンゲージメントが高まるためには、社員同士が気楽で自由に意見を交換し、必要な議論ができる雰囲気、つまり企業風土と環境が必要です。社員同士の関係がうまくいけば、自動的に職場の連帯感が生まれます。ここではコミュニケーションに役立つツールを紹介します。

    unipos

    • 特徴:褒め言葉をメインに社員同士がポイント付きで送り合える
    • 使い方:日々の業務で起きる「ありがとう」「助かりました!」「すごいです」など、小さな感謝や褒め言葉を互いに送り合うことが目的のコミュニケーションツール。1週間に1人400ポイントが割り当てられ、自由な配分で好きな人に送って良く、消費しきらなかった分は翌週リセットされる。送られたポイントは1ポイント=1円換算され、翌月の給与に反映されます。(平均、1人800円分前後)
    • 効果:言おうと思っていたけどタイミングが……で伝えきれなかった小さな会話を、社内で送りあえるため、離れていてもコミュニケーションが成立する。また、「いつも会議室のコーヒー片付けてくれてありがとう」など、従来ならば気が付いてもらえることがなかった無償奉仕も、ちゃんと見てくれている人がいたことがわかり、ほっこりと嬉しい気持ちになる。業務だけではない、温度のある何かを生み出すことができる。
    • 向いている企業:

    ・忙しすぎて業務以外の会話が成立しない職場

    ・急速に拡大した企業

    ・地方の事業所など顔を合わせない仕事相手が多い

     

    カオナビ

    • 特徴:従業員の満足度調査ができる人材重視型のCRM
    • 使い方:
      • 社員の情報を顔写真つきで人事管理ができる
      • 定期的なアンケート機能で社員の現時点での満足度を定期調査できる
      • 個別面談の記録とアンケート結果のクロス診断で、モチベーションの上下を自動アラートしてくれるので、必要なタイミングで声かけができ、手厚い人事対策ができる
      • 顔写真つきCRMとして、普段、社員同士がコミュニケーションボードとしても利用できるので、社内のコミュニケーションが活発になる
    • 効果:各社員の個別の性質などを、アンケートと本人の面談結果を中心に蓄積したデータを元に、上司と部下の相性マッチング診断ができるので、組み合わせの失敗が少なくなった。退職者分析よりも、「退職しそうな人分析」ができるため、離職防止と、離職しそうな理由を同時に収集できる。
    • 向いている企業:

    ・適切な人事配置をしたい企業

    ・社内コミュニケーションを良くしたい企業

    ・人事データ量が多い企業(社員情報を一元管理できる)

    ・離職フラグが立った人を知りたい企業

    3-4.経営者(経営陣)との対話機会を設ける

    社員にとって経営陣との直接会話は、企業の根幹の考え方が伝播しやすくいため、モチベーションアップにつながります。また、雲の上の人だと思っていた経営陣との会話は、社員にとっては強く記憶に残り、感動します。結果的に組織の風通しを良くし、社員の団結力を高めてくれます。

    対話の時間は定期的に設け、1対複数人で行うのが理想的です。中には萎縮してしまう人がいるからです。場所は社内で、気さくな感じでできると理想です。慣れないうちは、人事が司会進行役で共に参加をしてあげましょう。

    経営陣が自社社員の日々の仕事に耳を傾け、その努力や成果に関心を示す行為は、各社員に「自分は会社経営のパートナーである」ことを認識させ、従業員エンゲージメントの要である「信頼関係」を深める効果があります。

    3-5.面接で「志望者と企業理念のマッチ度」を重視して評価する

    初めから企業理念に合致した人材を選別する方法です。採用面接の段階で、コーチングのような面談をすると、最終的な離職防止につながります。主に企業理念の部分と、面接者の働き方の考えが一致していると、離職する可能性が低くなります。

    面接者が仕事に対し、現代的な「やりがい」「生き方」の部分を大切にしている場合に限りますが、企業と社員が共にゴールを目指す共同体であるという発想で見た場合、「考え方の一致」した部分が両者の絆となり、企業につなぎとめることができます。

    採用面談の時間では「弊社の企業理念の、どの部分に関心を持ちましたか」という質問の回答に良く耳を傾けましょう。そして、面談が進んでも毎回、同じ質問を繰り返しましょう。就活のために丸暗記してきた答えを繰り返すうちに、その人の内側にある、本音が出てきます。

    • その人がやりたいことが企業の中にあること
    • 企業がしてほしいことをその人がしてくれること
    • 2つの条件と環境が企業の中にあること

    が、共に幸せな結果を招きます。このような人材が多く揃うと、従業員エンゲージメントの高い企業になります。【参照:フレデリック・ラルー ティール組織

    離職を防止し、従業員エンゲージメント向上をするための社内施策に潜む7つの落とし⽳とは|ポイントを徹底解説

    まとめ

    いかがでしたでしょうか。離職防止のために役立つ

    1.離職防止のために人事が出来ること

    2.離職防止マネジメントの3大ポイント

    3.離職防止のための具体的5大施策

    をまとめました。これから離職防止対策をする企業は、ぜひ、ご活用ください。

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