
「心理的安全性が重要って聞くけど、具体的にどうやってつくればいいのか、わからない!」
今、“心理的安全性の実践”でつまずく人が増えています。あなたも、心理的安全性の作り方がわからず、情報収集しているところかもしれません。
心理的安全性とは、
「従業員が、そのチームで、気兼ねなく自由に発言したり行動したりできるかどうか」
を測るものさしのこと。当然、心理的安全性が高いに越したことはありません。
しかし、“心理的”という言葉の通り、心理的安全性は心の中に存在します。
「さあ、心理的安全性を高めよう!」
と呼びかけて高まるような単純なものではなく、その実践には知識とスキルが必要です。
そこでこの記事では、「心理的安全性が高いチームを作りたい」と願う人が今すぐに使える
「心理的安全性の知識とスキル」をご紹介します。
<本記事のポイント>
・心理的安全性を高めるためにすべきこと
・心理的安全性の高いチームづくりの実践方法
・成功企業の具体的な事例
・つまずきやすい注意点
心理的安全性の高いチームづくりに成功しているマネジャーは、現場で数々の施策を実践しています。
あなたも、この記事を通して、“心理的安全性を高めるスキル”を自分のものにしてください。心理的安全性は、日々の積み重ねで確実に高めることができます。
では、さっそく続きをご覧ください。
「心理的安全性」とは
心理的安全性とは、他人の反応を恐れずに自然体で過ごせる環境のことです。
穏やかで、なおかつ恥ずかしがらずに自分をさらけだせるので、安心感のある環境ともいえます。
また、心理的安全性は、その環境において誰もが安心感を感じられるものでなくてはいけません。
特定の人だけが自然体で過ごせる環境では、自然体で過ごせない人はストレスを受けていると考えられます。
誰もが穏やかで共感を持って過ごせる環境こそが、心理的安全性といえるのです。
関連記事:心理的安全性とは?高める5つの方法とメリットを解説
心理的安全性の高い組織をつくる4つの因子
心理的安全性の高い組織は、次の4つの因子から成り立っています。
- 話しやすさ
- 助け合い
- 挑戦
- 新奇歓迎
それぞれの因子が具体的に何を指すのか見ていきましょう。
話しやすさ
心理的安全性のある会社では、誰もが話しやすさを感じています。
自分の本当の思いを伝えやすく、「言いたくても言えない」「これを言ったら変に思われるかも…」といったためらいを感じずにコミュニケーションを取れます。
また、「話せば理解してくれるかもしれないという安心感が前提としてあるため、相手に対して注意や指摘がしやすいのも特徴です。
ポジティブなこともネガティブなものも受け入れる土壌が育っているため、表裏のない居心地の良さを感じられます。
助け合い
心理的安全性がある会社なら、社員一人ひとりにお互いが協力し合う精神があります。
何かできないことがあっても、それぞれが補いあい、高め合っていきます。
このような助け合いのある環境では、「他人事」という感覚があまりありません。
すべての事柄を「自分事」と受け止め、見返りを期待せずに純粋な善意から手を差し伸べます。
挑戦
心理的安全性が見られる会社とは、ただお互いが穏やかに過ごす生ぬるい環境ではありません。
社員一人ひとりが挑戦する気持ちを持ち、失敗を恐れずに「とりあえずやってみよう」と考えます。
また、失敗したときも慰め合うだけではなく、各自が「自分ごと化」として、どうすれば良かったのか?と振り返り、
互いに意見を交わすことで、組織がより良い状態に底上げしていくことでしょう。
新奇歓迎
個性的な人を「変わっている人」「協調性がない人」と受け止める風土では、自分をさらけ出すことは難しくなります。
本当にしたいことがあっても周囲からどう思われるだろう」といった気持ちが先立ち、チャレンジできないまま時間だけが過ぎていくでしょう。
心理的安全性のある会社では、新奇歓迎の風土があります。
個性を尊重し認め合い、自分の主観で他人を判断するようなことはしません。
自分が自分らしく居られる場所。それが心理的安全性のある会社といえるのです。
心理的安全性を高めるためには対人リスクの排除が必要
実践方法をご紹介する前に、心理的安全性を高めるために何が必要なのか、確認しておきましょう。
心理的安全性を高めるためには必要なのは「対人リスク」を排除することです。なぜなら、対人リスクこそが、心理的安全性を下げる原因だからです。
対人リスクとは、具体的には以下のようなものです。
- 無知だと思われる不安
- 無能だと思われる不安
- ネガティブだと思われる不安
- 邪魔だと思われる不安
それぞれの不安について、具体的に説明します。
阻害要因1.無知と思われる不安
「無知だと思われる不安」とは、知らないということに対して、「こんなことも知らないのか?」と馬鹿にされるのではないか、という不安です。
例えば、会議中に1つわからないことがあったとしましょう。
手を挙げて尋ねたいのだけれど、「こんなことも知らないなんてと馬鹿にされたらどうしよう」という不安が先立ち、聞きたいのに聞けません。
阻害要因2.無能だと思われる不安
「無能だと思われる不安」とは、失敗したら無能だと思われるかもしれないという不安です。
例えば、新しいことに挑戦したいという気持ちが芽生えたとしましょう。
しかし、無能だと思われる不安が強いと、「失敗したらどうしよう。失敗したくないから
とりあえずノルマだけこなしておこう」と挑戦から目をそむけてしまいます。
結果として会社全体に進歩がなくなり、長期的に見れば衰退するかもしれません。
阻害要因3.ネガティブだと思われる不安
「ネガティブだと思われる不安」とは、人と意見が対立した場合、批判的な意見をしたら、
ネガティブな人間だと思われるのではないかという不安です。
例えば、チーム内の会議で同僚と意見が対立したとしましょう。
「自分の意見を主張して嫌な人間と思われるよりは、黙っていよう」と、
途中で自分の意見を捻じ曲げて相手に合わせることがあるかもしれません。
いつも自分の意見を押し殺すことでストレスが溜まるだけでなく話し合いが成立せず、
仲間同士で切磋琢磨する環境ではなくなってしまうかもしれません。
阻害要因4.邪魔だと思われる不安
「邪魔だと思われる不安」とは、手伝って欲しいといったら迷惑になってしまうかもしれないという不安です。
例えば、仕事が多すぎてどうしても終業時間までに終わらないとしましょう。
周囲を見ると暇そうな人もちらほらいます。しかし、邪魔だと思われる不安が強いと、気軽に「手伝ってほしい」ということがいえません。
結果として一人で遅くまで残業をすることになり、やるせない思いを抱えることになってしまいます。
心理的安全性のある会社は、これらの4つの阻害要因がない会社です。
つまり、次の通り言い換えることができます。
- 無知だと思われる不安がない
- 無能だと思われる不安がない
- ネガティブだと思われる不安がない
- 邪魔だと思われる不安がない
一言でいうならば、「チームメンバーが対人リスクにまつわる不安を感じない状態をつくること」です。心理的安全性のある会社を目指すとき、目指す地点はここです。
※ここでは必要最低限の知識のみ解説しました。
より深く心理的安全性の概念を理解したい方は「心理的安全性とは?意見が言い合えるチーム作りの新概念を徹底解説」をご覧ください。
心理的安全性の高いチームをつくる8つの実践方法
「チームメンバーが対人リスク(=無知・無能・ネガティブ・邪魔と思われる不安)を感じない状態をつくる」
というゴールを常に念頭に置きながら、ここからは8つの実践方法を学んでいきましょう。
1.チームメンバーを人として承認する
対人リスクの不安が大きくなるのは、「私は人として承認されていない」と感じるときです。
例えば、自分が新人の頃を思い出してみましょう。「人格を否定された」と感じる出来事は、ありませんでしたか?
「仕事上の問題で叱責を受けるなら耐えられても、人として否定されることには耐えられない」という人が多いはずです。
とにかくまずは、チームメンバーを人として承認しましょう。ここでいう承認とは、仕事の成果への承認ではありません。相手の「存在」に対する承認です。
部下・上司・同僚などの関係性の前に、「人間」として相手を尊重する姿勢を持つこと。それが、チームメンバーを人として承認するということです。具体的な行動としては、以下が挙げられます。
・あいさつやメールを無視しない
・フィードバックするときにバカにした言い方をしない
・忙しいときに話しかけられても邪険に扱わない
・部下に対して無関心にならない
・怖い顔をせず笑顔で接する
・嫌みを言わない
・相手の目を見て話す
・どんなときでも屈辱的・侮辱的な表現は使わない
・反対意見を言われても不機嫌な態度を取らない
こうして並べてみると、基本的すぎるほど基本のことかもしれません。しかし、上司と部下の関係になると急に態度が乱暴になり、できなくなる人が多いのです。
過去にあなた自身の上司だった人のことや、管理職だった人のことを思い浮かべてみてください。彼ら彼女らは、心理的安全性を高める態度で接してくれていたでしょうか。
心理的安全性の高いチームを目指すマネジャーが肝に銘じておきたいのは、「部下を萎縮させる上司は、心理的安全性の最大の妨げである」ということです。
逆にいえば、マネジャーのあり方を変えるだけで、チームの心理的安全性を飛躍的に高めることができます。それほどチームの心理的安全性にマネジャーが与える影響は大きいことを知っておきましょう。
2.マネジャー(上司)自身が自己受容する
マネジャー(上司)が「チームメンバーを承認するのが難しい」と感じるとき、
その原因はマネジャー自身の心の中にあるかもしれません。
「自分を認めることができていないから、人を認めることができない」という状況に陥っている可能性があります。
その理由は、家庭環境の影響で自己肯定感がうまく育たなかった、
問題ある上司の下で働きコンプレックスを抱えている、
心に大きなトラウマがある……など、さまざまな要因が考えられます。
どんなケースにおいても、まずやるべきことは自己受容です。
自分の強み・弱みを見つめ直し、自分という存在をまるごと受け入れて承認しましょう。
「自分は自己肯定感が非常に低い」という自覚がある方は、カウンセリングを利用するなど外部のサポートに頼るのも有効な手段です。
3.マネジャーがチームに弱みをさらけ出す
「このチームでは、弱みをさらけ出しても大丈夫だ」とチームメンバーに感じてもらう上で良い影響を与えるのが、
マネジャー自身がチームのメンバーに弱みをさらけ出すことです。
例えば、次のような上司や先輩に出会ったことはありませんか。
- 素直に失敗を認めて頭を下げてくれた
- 本当は上司自身も悩んでいることを正直に打ち明けてくれた
- 上の立場の人なのに自分の短所を開けっぴろげに語ってくれた
こういった上司や先輩がいるチームならば、自分も弱さをさらけ出して大丈夫と信じられるものです。
逆に、弱みを一切見せず完璧に振る舞う上司のもとでは、部下たちは弱みを見せてはいけないと緊張してしまいます。
マネジャー自身が、積極的に弱さを開示していきましょう。その勇気が、チームの心理的安全性を高めることにつながります。
4.1on1(ワン・オン・ワン)を行う
心理的安全性をチームづくりに活かしている企業はGoogleが有名。
Googleでマネジャーに義務づけられているのが「1on1(ワン・オン・ワン)」です。
1on1とは、マネジャーとメンバーが2人だけで、1対1で行う対面ミーティングのこと。
複数の人数で行うミーティングとは違い、ワン・オン・ワンの時間は、そのメンバーのためだけに割く時間です。
1on1を行うこと自体が「時間をあなたに割いている(=あなたの存在を認めている、あなたを大切にしている)」というメッセージになります。
Googleでは、マネジャーはすべてのチームメンバーと週に1回・1時間の1on1を行うことがルール化されています。
仮に8人部下がいれば、週のうち1日(8時間)は1on1に費やしている計算に。それだけ重視されている証拠でもあり、ぜひ真似したい施策です。
5.価値観や想いをベースにした会話を増やす
1on1や雑談の中で積極的に取り入れたいのが「価値観・想い」をベースとした会話です。
価値観・想いをベースとした会話とは、
「どう感じたか?」
「どんな価値観を持っているか?」
「あなたは(私は)どんな人間なのか?」
など、感情・気持ち・信念を中心に据えた会話のことです。
価値観・想いをベースとした会話の対極にあるのが、「ファクト(事実)」をベースとした会話です。
ロジカルシンキング(論理的思考)を重視するあまり、ファクトベース以外の会話を“無駄な雑談”として排除してしまう企業が増えています。
これは、心理的安全性を高める意味では逆効果です。
心理的安全性は、価値観・想いをベースとした会話を増やすことで高まります。
チームメンバーの気持ちや考えに耳を傾けましょう。
6.愚痴や不満を建設的な言葉で言い換える
価値観や想いをベースとした会話をする中で、メンバーから愚痴や不満が漏れ出てくることがあるかもしれません。
ネガティブな本音をメンバーが口にすることは、決して悪いことではありません。
心理的安全性が低い環境では、愚痴や不満は抑圧され、発信されることはないからです。
部下が不満や愚痴を言うということは、それだけ心理的安全性が高まってきた証拠と捉えることができます。
そこで、愚痴や不満が出てきたら、まずは否定せずによく話を聞きます。
その上で、マネジャーは建設的な言葉を選んで使うようにしましょう。
例えば、
「最近、新しい仕事が多すぎて、なんかもう疲れちゃいました」
とメンバーが愚痴を言ったとします。
「そうか、今は大変な状況なんですね」
と受け入れた上で、建設的な会話へと進めていきます。
「仕事量を減らして、じっくり取り組めるようにしたいんですね」
「疲れを取るための休暇が必要でしょうか」
このようにメンバーの愚痴を建設的な言葉で言い換えながら、次のステップを一緒に探っていきます。
悪い例は、メンバーの愚痴や不満を頭ごなしに否定したり、解決するための指示を与えたりすることです。
人は、“自分を否定する人・コントロールしようとする人”に、強い対人リスクを感じます。
メンバーの自律性を尊重しながら、建設的な方向へ導くことが、心理的安全性を高めることにつながるのです。
7.心理的安全性を損なう評価制度を改善する
職場における心理的安全性は、「評価が下がるのではないか」という不安と直結しています。
企業として心理的安全性の向上に取り組むのであれば、人事評価制度を改善することも検討しましょう。
例えばゼネラル・エレクトリック社(GE)では、GE自身が生み出し世界的に有名になった評価制度「9ブロック」を2016年に廃止。
「PD(パフォーマンス・デベロップメント)」という新しいシステムに移行しました。
それぞれの違いは、以下の通りです。
9ブロック |
社員を順位づけする格付け式の評価制度 |
PD |
上司・同僚・部下からのインサイト(気づき)を共有するためのフィードバックやコミュニケーションをベースとした評価制度 |
GEがこのような大きな転換をした理由は「従来の評価制度は心理的安全性を損なうから」といわれています。
9ブロックに代わる新たな仕組みであるPDは、ざっくばらんとした日々のコミュニケーションを通した成長を目指しています。
まさに心理的安全を高めるために好適な仕掛けといえるでしょう。
8.感謝の気持ちを見える化する
「自分はチームに必要とされている」という実感が強いほど、心理的安全性は高まります。
その実感は、チームのメンバーから感謝されたときに得られるものです。
この感謝の気持ちを見える化する「ピアボーナス」という仕組みが、心理的安全性を高める手法として注目されています。
ピアボーナスとは、同僚に「ありがとう」の気持ちを伝えたいとき、少額のボーナス(お金)と感謝のメッセージをおくれる制度です。
チームのメンバー同士が感謝し合い尊敬し合う文化が醸成できるため、組織レベルで心理的安全性を高めることができるのが特徴です。
Google、メルカリ、マイナビ、DeNA…など導入企業が急増していることからも、その効果がうかがえます。詳しくはピアボーナス「Unipos」 のページをご覧ください。
心理的安全性を重視している日本の企業事例
チームの心理的安全性の研究は、アメリカで盛んに行われてきたものですが、近年では国内でも心理的安全性に取り組む企業が増えています。
そこで、本章では以下の2企業の事例をご紹介します。
①ねぎしフードサービス
②ZOZOテクノロジーズ
③カヤック
自社で実践する上で、参考になるヒントがたくさんあります。
ねぎしフードサービス
出典:ねぎしフードサービス
牛タン・とろろ・麦めしのチェーン店を展開する株式会社ねぎしフードサービスは「HRアワード2013」「中小企業技能人材育成大賞知事賞」など人材アワードの受賞歴が多く、人材育成の分野で評価されている企業です。
ねぎしフードサービスの組織図の特徴は、逆ピラミッド型。社長はその底辺に位置する存在となっています。
実際、経営の目的(ビジョン)に第一に掲げられているのは「働く仲間の幸せ」です。
出典:ねぎしフードサービス
ねぎしフードサービスには、立場を超えて本音で意見を交わし合える風土があります。心理的安全性の高い環境が根付いていることがうかがえます。
執行役員で人材共育部長の石野直樹氏によれば、コミュニケーションをとにかく重視しているとのこと。
「どんな場合も重要視しているのは、コミュニケーションです。これがないまま『はい時間、お疲れ』で終わってしまうと、モノとして扱われているような気がしてしまう。社員でもアルバイトでも、人として認められているという安心感があることが風通しの良さやモチベーションの高さにつながっているのではないでしょうか」心理的安全性のあり方 – リクルートマネジメントソリューションズよより
キーワードは「人として認められているという安心感」。まさに心理的安全性を高めるためにやるべきことをやっているのが、ねぎしフードサービスの特徴です。
ZOZOテクノロジーズ
出典:ZOZOテクウノロジーズ
『ZOZOSUIT』など革新的な取り組みを行っているZOZOグループを技術的に支えるテクノロジー企業の同社。「心理的安全性を感じながら働くことは、革新的な技術を生み出すために必要不可欠」だと代表取締役CINO(Chief Innovation Officer)の金山 裕樹氏は名言しています。
しかし元々は、機密情報を取り扱うことが多く社内の風通しに課題を抱えていました。そしてそれが、従業員の心理的安全性を阻害していたそうです。
そこで取り組み始めたのが「DM禁止」「経営会議の議事録の公開」「Uniposを活用した互いの仕事を認め合う文化醸成」です。
「人にやってほしいことがあったら、まずは自分から」が持論です。だから例えば、情報共有のためのチャンネルにも、「こんなニュースがあって、こんな風に思うんだけど、どう思う?」みたいな感じで、議論の火付け役として、自分が率先して投稿するようなことも行っています。
ほかには、「Unipos」(同僚と成果給をおくりあえるシステム)を導入して、お互いの仕事を認め合う文化を醸成したり、エンプロイー・サーベイで従業員満足度を定量化し、3カ月に1回振り返って、行動を見直したりといったことも行っています。これらも広い意味で、デジタル心理的安全性を高めるための取り組みと言えるでしょう。
機密情報の取り扱いなどの結果、風通しが悪くなってしまっている企業は少なくないはずです。「事業上の特性だから」と諦めるのではなく、まずはこうした取り組みをチーム単位などで試してみるのはいかがでしょうか。
カヤック
出典:面白法人カヤック
ゲームやWEBなどのコンテンツ制作を手がける株式会社カヤック。ホームページにアクセスすると、「面白法人カヤックの、いちばん面白いコンテンツは、仲間です。」というメッセージが目に飛び込んできます。
カヤックでは、上司のアイデアに「それはおもしろくない」と意見する場合も、リスクを感じることはないそう。そんな心理的安全性の高さを作り出しているのが「役割はあっても役職はない」というフラットな組織。
その評価制度は非常にユニークで、社員の給料は何と「サイコロ」で決まります。以下は、カヤックのホームページからの引用です。
サイコロで給料を決めるなんて不謹慎?いや、人間が人間を評価するなんて、そもそもいい加減なもの。もっともらしく説明したって、上司の感情ひとつで、どうにでも変わってしまうもの。
だったら、給料の仕組みにも、そのくらいの遊びがあっていいのでは?自分の客観的評価を見つめるのは必要だけど、他人からの評価で暗い気持ちになるのはもったいない。面白法人カヤックより
「他人からの評価で暗い気持ちになるのはもったいない」というフレーズが、心理的安全の核心を突いています。評価によって心理的安全性が損なわれるのを回避する仕組みが秀逸です。
カヤックでは他にも、社員が別の社員の長所を褒めて給与明細に記載する「スマイル給」制度や、CEO以下役員が率先して失敗を認め弱みをさらけ出す雰囲気など、心理的安全性が高まる環境を整えていることがわかります。
参考:心理的安全性のあり方 – リクルートマネジメントソリューションズ
心理的安全性が高いチームをつくる上での注意点
最後に、心理的安全性が高いチームづくりに取り組む上で注意したい点を2つ、お伝えします。
心理的安全性が高い=仲良しでゆるい職場ではない
心理的安全性を高める」と聞くと、次のような懸念を示す人がいます。
「職場が仲良しグループみたいな雰囲気になるのは困る!職場は学校じゃないんだ!」
「雰囲気がユルくなる分、プレッシャーが減って成果が下がるのではありませんか?」
結論からお伝えすると、これらは心理的安全性とは無関係です。心理的安全性は、仲良しでゆるい職場をつくるためのものではありません。
心理的安全性を高めることは、心理的安全性が低いことによって起きる「従業員の、会社にとってマイナスになる態度」を排除することともいえます。
会社にとってのマイナスになる態度の例を挙げましょう。
-
会社のためには言うべきことなのに、反論されるのが怖くて言えない
- すぐ不機嫌になる上司に気を遣って、YESマンに成り下がっている
- 失敗して査定にひびいたらイヤだから、チャレンジしない
- 助けを求められる雰囲気ではないので、仕事をひとりで抱え込む
- 皆の前で叱責されたのがトラウマで、以降ミスは隠している
心理的安全が低いまま放置することは、企業にとって大きなリスクとなることが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
心理的安全性が高くなれば、皆が気兼ねなく、のびのび働けるようになります。表面的な仲良しチームごっこをしていた会社では、逆に意見の対立が目立つようになるかもしれません。
あるいは、遠慮して厳しい意見を言いづらかったメンバーたちが、健全なプレッシャーをかけ合う関係性へ変化するかもしれません。
心理的安全性が高いチームは生産性が上がり、成果を上げやすくなります。当然、企業の業績向上につながっていきます。
心理的安全性を高めるためには意図的な促進が欠かせない
前の章では、心理的安全性を重視している国内企業の事例として「ねぎしフードサービス」「カヤック」をご紹介しました。
これらの事例からもわかるように、心理的安全性は放っておいて自然と高まる類いのものではありません。心理的安全性が高い企業は、高めるための意図的な働きかけを行っています。
「心理的安全性を高める」と決めたら、そのための施策をきちんと行っていくことが重要です。まずはこの記事でご紹介した8つの実践方法からスタートしましょう。
心理的安全性は意図的に促進しないと向上しませんが、施策を行えば行っただけ、徐々に上がっていくものでもあります。ぜひ、今日からコツコツと実践してみてください。
まとめ
心理的安全性を高めるためには、対人リスクの排除が必要です。対人リスクとは、無知・無能・ネガティブ・邪魔などと思われる不安のこと。
対人リスクを排除するための実践方法として、以下の8つをご紹介しました。
①チームメンバーを人として承認する
②マネジャー(上司)自身が自己受容する
③マネジャーがチームに弱みをさらけ出す
④1on1(ワン・オン・ワン)を行う
⑤価値観や想いをベースにした会話を増やす
⑥愚痴や不満を建設的な言葉で言い換える
⑦心理的安全性を損なう評価制度を改善する
⑧感謝の気持ちを見える化する
心理的安全性を重視している国内企業には、ねぎしフードサービスやカヤックがあります。
心理的安全性が高いことと、職場の仲良し度・ユルさは無関係です。むしろ心理的安全性が高い職場には、本音で意見をぶつけ合い、意見の対立も恐れない活発さがあります。
心理的安全性は、勝手に高まることはありません。高めるためには、意図的な促進が必要です。
ぜひ8つの実践方法を通して、心理的安全性の高いチームを作っていってください。それが、企業の成長へつながっていきます。