
近年ビジネスの現場で注目を集める「心理的安全性」。
Googleが4年の歳月をかけた実証実験の末に「生産性の高いチームにとって最も重要」と結論づけて以来、「心理的安全性」を取り入れる企業や組織は少しずつ増えてきました。
しかしながらまだまだ馴染みの薄い「心理的安全性」、自社で取り入れたいと考えても、どうしたら皆に理解してもらえるか?どう実践していったらよいのか?心理的安全性の高い組織づくりへの一歩がなかなか踏み出せず悶々としている方もいるのではないでしょうか。
本記事ではそういった方に向けて、心理的安全性を高める「研修」や「ワークショップ」を紹介します。
いきなり「研修」や「ワークショップ」というとちょっと大袈裟に感じる方もいるかもしれませんが、概念だけでなく、理的安全性の価値を実際に皆で体験・実感できるメリットは非常に大きなものがあります。
心理的安全性の高い組織づくりを目指す方は、ぜひ一度ご検討してみてはいかがでしょうか。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授(専門:リーダシップ、組織学習)が、1999年に初めて提唱した概念です。そこでの定義は「対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」といったものでした。
その後、Googleが生産性の高いチームに必要な要素を抽出すべく始めた一大プロジェクト「アリストテレス」にて4年の歳月を費やした実証実験を行い「心理的安全性が生産性の高いチームに最も重要」と結論づけたことで、世間の注目を集めるようになっていきます。
心理的安全性が高いチームとは、簡単に言うと「役職や立場に関わらず、メンバー同士が率直に意見を交わし、良い仕事に注力できるチーム」のことです。
逆に心理的安全性がないチームとは、メンバー同士が言いたいことを率直に言えず、良い仕事のへの積極的な行動が減っているチームと言えます。
また、心理的安全性の醸成には組織の構造や形態も大きな影響を与はしまうすが、ピラミッド型組織であっても、上司部下関係なく1人ひとりの意見やアイディアにしっかりと耳を傾け、重要視できる組織は心理的安全性をつくり出すことができます。
ハード面も大切ですが、何よりも1人ひとりの行動次第で、組織に心理的安全性をつくり出すことは可能である、ということが重要なポイントです。
心理的安全性を高める研修・ワークショップがおススメな理由
心理的安全性は1人ひとりの行動次第でつくることができると述べましたが、ではその中でも、とりわけ心理的安全性の醸成に大きな影響力を持つ人物とは誰でしょうか?
それはその組織・チームのリーダーです。
組織の責任者やリーダーが変わったとたん、現場の雰囲気がガラッと変わったという経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
リーダーは良くも悪くも、そのチーム・組織の風土や文化に大きな影響を与えます。つまり、まずリーダーの言動が変わることで、チームを望む方向に変えて行きやすくなるのです。
心理的安全性の高いチームを作りたいのなら、メンバーの話をすぐに否定せずまずは共感し受け止める、傾聴する、こういった行動をリーダーが増やせると、少しずつ心理的安全性が高まっていくでしょう。
また、それと同時に持って欲しいのが「高い目的意識」です。
単なる仲良しクラブではなく、高い目標を達成すべくともに行動する仲間であるという意識を、全員で共有することが大切です。
この会社のビジョンは何なのか?自分達はそのビジョン達成のためにどんなミッションを持っているのか?そして具体的に今何をすれば、そのビジョン達成に近付くのか?
心理的安全性をベースに目指すべき高いゴールを共有し、その実現に向けて共に歩んでいるからこそ、多様なアイディアや意見を出し合い、健全な対立が生まれ、結果生産性が高まるのです。
とはいえまだまだ実践できている組織も少ない「心理的安全性」、とりあえず概念だけ理解して「良さそう」と思っても、リーダーはもちろん1人ひとりの納得や実感が伴わないと、なかなか実行に移されないのが実状ではないでしょうか。
そこでおススメしたいのが、心理的安全性を理解・体験できる「研修」「ワークショップ」です。
リーダー・メンバーが同時に受けるもの、それぞれを対象にしたものなど様々ありますが、1人ひとりが心理的安全性の価値を実感することで、組織・チームで心理的安全性を作り出す言動を一気に増やしやすくなることがメリットです。
心理的安全性を高める一つの方法として、次章を参考にぜひ検討してみてください。
心理的安全性を高める研修・ワークショップを選ぶときのポイント
心理的安全性に関する研修には多くの種類があります。
どうやって自社に合ったものを選べばよいのか、迷っている方もいらっしゃるかと思いますので、ここでは研修やワークショップを選ぶ際のポイントをご紹介します。
「企業型」「個人型」自社にはどちらが合っているかを考える
企業型の場合は、研修やワークショップを提供する会社が実施内容を企業に合わせてカスタマイズしてくれます。自社の状況や目指す姿などを相談した上で内容を調整できるので、より効果の出る研修を受けられる可能性が高まります。
一方個人型では、研修やワークショップを提供する会社が用意したプログラムに、各企業の個人が参加します。カスタマイズは難しいですが、こちらは1人から参加できるというメリットがあります。
対象になるメンバーが少ない場合、個人型に数名を参加させた方が費用面では合理的というケースもあります。また、他企業の似た立場の方が参加することも多いので、企業間交流としても活用できるでしょう。そこから大いに刺激をもらい戻ってくるというケースも少なくありません。
研修・ワークショップを検討する際は、まずは「企業型」「個人型」のどちらが自社に合っているかを考えるようにしましょう。
心理的安全性を高める研修、ワークショップを紹介!
それではいよいよ、心理的安全性を高める5つの研修・ワークショップをご紹介します。
1名から参加できるもの、無料で参加できるものもあるので、是非参考にしてみてくださいね。
研修『部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る』(株式会社インソース)
【研修概要】 対象:管理職・リーダークラス
部下とのコミュニケーションの仕方を工夫することで、どのように心理的安全性を高めていくのか習得します。
言いたいことを伝えるためのアサーティブコミュニケーション、本音で話せる環境を作るための、1対1面談の活用方法を実際によくあるケースをもとに実践的に学びます。研修の最後には、自分のチームの心理的安全性を高めるための具体的な方法を検討していただきます。
【形式】オンライン
【こんな方におススメ】
・悪い報告でもすぐ上がってくるチームを作りたい管理職・リーダーの方
・風通しの良い、フラットな組織を実現するためのヒントがほしい方
・互いに「よかれ」と思う提案や忌憚のない意見交換ができるチーム作りをしたい方
【所要時間】6時間45分(10:00~16:45)
【金額】30,500円(税込)
【研修内容】
・心理的安全性とは?
・心理的安全性を高めるためのポイント
・自分の行動を変え、心理的安全性を高める
・言いたいことを伝えるアサーティブコミュニケーション
・本音で話せる環境を作る1対1面談
・チームの心理的安全性を高める ~仕組み・文化を作る
https://www.insource.co.jp/bup/bup-open-work-environment.html
【受講者の声】
- 現状の職場は心理的安全性が高いが、もう少し積極的に雑談を含めてコミュニケーションをとっていく必要があると感じた。
- 心理的安全性を少しずつでも高めていくことができるように、アサーティブな関係づくり、コミュニケーションを実践していきます。自分が関わるチームから、全体に広げ、心理的安全性を土台に一人一人が力を発揮しやすい職場にしていきたいです。
- 「対等」というワードが大変印象に残りました。週にたとえ10分間でも雑談タイムを作るとよい、というアドバイスをいただいたのは参考になりました。
- 心理的安全性が担保されていない組織は活性化しないし、規律も維持できないのでリーダー自身が率先して働きかける必要があると感じました。今後は、コミュニケーションをより意識してとることを心掛けます。まずは、グループミーティングや1対1面談を実施してみたいです。
- 現状やり取りに苦慮しているメンバーとの関係改善に役立てられる考え方が多く提示されたので、さっそく明日から活用します。心理的安全性について改めて考え、現在のチーム状況は危険な状態にあると認識できたので、まずは挨拶から始めていきたいです。
研修『心理的安全性/サイコロジカルセーフティの作り方 体験セミナー』(株式会社ザ・アカデミージャパン)
【研修概要】 対象:人事・研修担当者
心理的安全性の効果的な高め方を科学的根拠を背景にお伝えします。
現在、多くの人が「本来の自分を隠す」ことに時間とエネルギーを費やしています。
組織でこれほど無駄を生んでいる要素は他にはありません。心理的安全性が高まり、自然体の自分をさらけ出す環境が整うと、メンバーみんなが思ったことを自由に発言したり、行動することができ、お客様や社会に向かってイノベーションを起こし続けるエネルギーに費やすことができるのです。
まずは目には見えない心理的安全性の存在とその重要性に気づき、チームの心理的安全性を高めるためにまずはリーダー自らの意識と行動を変えるためのヒントを学んでいただきます。
【研修内容】
・心理的安全性とは
・今の時代、心理的安全性がなぜ必要か
・心理的安全性の高いチーム、心理的脅威の高いチームを体感する
・チームの心理的安全性に大きな影響を与えるリーダーの存在
・チームの心理的安全性を阻害するリーダーのエッジ(自己防衛心)に気づく
・チームの心理的安全性を高めるメンバーの自己肯定感の高め方
【形式】オンライン
【参加人数】30名まで
【所要時間】2時間30分(13:30~16:00)
【金額】無料
http://www.academy-japan.com/seminar/2019/psychologicalsafety.php
ワークショップ『心理的安全性を知り、高めるゲーム型研修「ベストチーム」』(株式会社ハートクエイク)
【研修概要】 対象:チームリーダー・メンバー共に参加可
心理的安全性を知り、高めるためのゲーム型の研修プログラム「ベストチーム」。
ベストチームはチームに与えられた行動カードを必要枚数集めることによって、行動の効果が発揮され、チームに得点がもたらされるというゲームです。
行動カード(青)は22種類存在し、各チームにバラバラに配布されています。したがって、他のチームがどのカードを持っているのかを情報収集し、交渉によって自分たちの求めるカードを手に入れる必要があります。
ゲーム後の振り返り・ミニ講義では「心理的安全性」についてや、それらを阻害する要素、組織に必要な支援について学び、最高のチームとは何かを考えるきっかけを提供します。
【研修内容】
・ルール説明
・作戦タイム
・行動タイム
・決算タイム
・結果発表
・振返り+ミニ講義
【形式】集合型
【所要時間】1時間30分~3時間(標準2時間)
【金額】講師派遣165,000円~(税込) キットレンタル55,000円(税込)
https://heart-quake.com/article.php?p=7265
研修『「心理的安全性」を高める チームのつくり方セミナー』 (JMAマネジメントスクール)
【研修概要】
Google社にも見られる「心理的に安全」な状態を体感できます。2日間のワークを通して、目指すべきロールモデルが明確になります。
チーム内の「自己開示」が進み、信頼関係を築くことができます。互いに情報開示することで信頼関係が深まり、結果を残す集団が出来上がります。心理学とコミュニケーション論に基づいた体系的な知識・具体的なスキルを習得できます。
本セミナーは、心理学とコミュニケーション論のプロが講師を務め、講師によるデモンストレーションを交えながら、実習を通して体験的に学べます。
【研修内容】
・心理的安全性とは?
・心理的に安全な部下・メンバー育成
・共感、自己開示する
・鏡になるコーチング(対話による成長の促進)
・自分の感情をコントロール
・心理的に安全なチームのつくりかた
・建設的な対立を歓迎する「ファシリテーション」
【形式】集合型
【対象者】管理職・リーダークラス
・「本音で話せるチーム」を目指したい管理職・リーダーの方
・チーム内のミスを減らし、生産性を向上させたい管理職・リーダーの方
・部下・メンバーとの人間関係、コミュニケーションが難しいと感じている管理職・リーダーの方
【研修時間】2日間(両日とも10:00~17:00)
【金額】137,500円(税込)
https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=151260
研修『心理的安全性の高い職場をつくる5つの方法』(ビジネスコーチ株式会社)
【研修概要】
「みんな常に忙しいと口にする」「他の人が何をしているのか分からない」「メールでのやり取りが主で、対話をしない」など、職場で「働きにくさ」を感じていらっしゃる方は少なくないのではないでしょうか。
企業の競争力や成長力を決めるのは、やはり「人」です。個々のモチベーションを向上させ、能力や個性を最大限に引き出すために、働きやすい職場づくりは必須条件です。
本セミナーでは「心理的安全性の高い職場とはなにか」という基本的概念の理解から、生産性を高める基礎となる対話の質を上げるための「職場の人間関係を改善する秘訣」といった具体的な改善策までを、実践的に学んでいただけます。
ご自分の職場を活性化したいビジネスリーダー、対話によって会社の組織風土を変えたい経営企画や人事担当者、自ら職場を変えていく意志のあるビジネスパーソン必見の講座です。
【研修内容】
・組織のチェック〜実態を知る
・組織へのリーダーの関わり方
・対話力をアップする
・集団の質を高める
・相互信頼、相互理解を促進する
・フィードフォワードワーク
【形式】オンライン
【対象者】経営者・管理職・人事
・働き方改革を推進しているリーダー
・組織活性化の方法を学びたい管理職
・人事部、経営企画部など全社的な視点での組織風土改革に関心のある方
【研修時間】2日間(両日10:00~12:00)
【金額】22,000円(税込)
【受講者の声】
- 「思考の枠」という考え方は知識としてなかったので、今後の仕事に役立てられる。
- 傾聴できていないことに気付けた。部下に気持ちよく話してもらうために、もっとできることがたくさんあることがわかった。
- 自部門で問題となっている点の解決策があり、実施してみたいと思います。
- チームワークを良くするため、コミュニケーションが欠けている部分があるので、そこに大いに役立つと思いました。自分の意識も変えていくともっと良くなるだろうと思いました。
https://www.businesscoach.co.jp/seminar/s200403_2day.html
研修・ワークショップを受ける際の注意点
以上、心理的安全性を高める研修やワークショップをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。受けてみたいと思えるものも沢山あったのではないでしょうか。
研修やワークショップを受けるとき、常に念頭に置かなければならないのは「ここで学んだこと、体験したことをどう日々の組織作りに活かすか?」です。
当たり前過ぎることかもしれませんが、充実した素晴らしい研修を受けても「受けてよかった!」「学びになった!」だけで終わらせてしまい、翌日からの自分の行動は何も変わらない、といったケースは非常に多いです。それはとてももったいないことです。
受講後に社内で、すぐに実行に移せる具体的なアクションを共有し合う会などを設け、学んだことを逃がさず実現に移す工夫を合わせてしていきましょう。
まとめ
最後に、本記事でご紹介した内容を簡単にまとめます。
まず、心理的安全性が高いチームとは「役職や立場に関わらず、メンバー同士が率直に意見を交わし、良い仕事に注力できるチーム」のことでした。
そして心理的安全性が高いチームをつくるには、リーダーの行動変容と組織の目的意識が重要であり、リーダーを中心にメンバー1人ひとりが心理的安全性の価値を理解・実感することが大切です。
研修やワークショップは、そうしたリーダー・メンバーの心理的安全性への理解・実感を深める上で大変効果があり、研修を選ぶ際には「企業型」「個人型」をしっかりと意識し、具体的アクションを持ち帰る工夫を忘れないことで、有意義な受講となります。
コロナ禍によるテレワークの浸透などで、組織のマネジメントやコミュニケーションには、これまで以上に心理的安全性が求められていると言えます。心理的安全性を作り出す初めの一歩として、研修やワークショップの有効活用をぜひ検討してみてください。