
「心理的安全性」を高めるためには、一人ひとりの意識や行動を変えていく必要があります。
しかし、どのように意識や行動を変え、組織やチーム全体の心理的安全性を高めればよいのか、具体的なイメージが浮かばないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、組織課題解決のため「心理的安全性」を高めたいと考える方へ向けて、「心理的安全性を高めるゲーム」について解説します。
実際にゲームを体験した企業事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
心理的安全性を高めるゲームとは?
そもそも「心理的安全性」とは、組織やチームの中で、誰でも気兼ねなく発言できるかどうかを表す概念です。
他のメンバーに意見を言っても拒絶されることがなく、たとえ自分が失敗してしまった場合でも安心して共有できる状態が、心理的安全性の高い状態だと言えるでしょう。
一方で、
「トラブルが起きているけれど、上司の反応が怖くて言い出せない」
「新しい業務をよく理解できていないものの、恥ずかしくて同僚に質問できない」
などという環境は、心理的安全性が低いと考えられます。
心理的安全性の低さは、問題の発見を遅らせたり、生産性を低下させたりと、組織やチームに好ましくない影響をもたらす可能性があるのです。
心理的安全性を高めるゲームの概要
心理的安全性を高めることは、迅速な問題解決や生産性の向上など、企業の成長に欠かせない要素です。とはいえ、心理的安全性の概念は、説明を聞いても理解しにくく、行動に移しにくいのも事実でしょう。
そこで有効なのが、心理的安全性を高めるゲームです。心理的安全性を高めるゲームとは、体験型の研修として楽しみながら、「心理的安全性の高いチームとはどのようなチームなのか」を一人ひとりが考え、理解を深めていくゲームです。
例えば、予期せぬ出来事が生じた際に、他のメンバーはどのように反応するか、また、その反応はチーム全体にどのような影響を与えるかということを、擬似体験していくゲームが挙げられます。
カードゲーム形式がメイン
心理的安全性を高めるゲームは、カードゲーム形式が中心で、あらかじめ時間を設けチームで集まって実施するものが一般的です。
ゲームに必要なキットをレンタル・購入すれば、いつでも取り組めますが、より深く学びたい場合には、講師の派遣を依頼できるものもあります。
心理的安全性は、状況に応じて生まれる雰囲気が重要な要素になるため、微妙な変化が読み取りやすいオフラインでの実施が一般的です。
ただし、ゲームの種類や講師により、オンラインでの実施が可能な場合もありますので、状況に応じてオフラインとオンラインを比較検討してみてもよいでしょう。
心理的安全性を高めるゲームで期待できる4つの効果
心理的安全性を高めるゲームの実施により、さまざまな効果が見込めます。ここでは、その中でも代表的な4つの効果をご紹介します。
心理的安全性の概念を理解できる
最も重要な効果として、心理的安全性の概念を肌で感じ、理解できることが挙げられるでしょう。
先に述べたように、心理的安全性の概念は、説明を聞いても完全には理解しにくいものです。
しかし、ゲームを実施することで、「心理的安全性ってこういうことか」と一人ひとりが楽しみながら体感できるため、心理的安全性の基本的な考え方を自然に理解できるようになるのです。
学びを実践に移しやすくなる
心理的安全性を高めるゲームは、実際のチームメンバーで、現実に起こり得るシチュエーションを想像しながら取り組むものです。
そのため、単にインプットするだけの研修と比べて、ゲームを通して学んだことを、そのまま実践に移しやすいと考えられるでしょう。
また、ゲーム終了後に振り返りの時間を設けることで、さらに実践に移しやすい流れをつくることができます。
常に考える姿勢が身に付く
チームで心理的安全性を高めるゲームに取り組むことで、一人ひとりの考え方や感じ方の違いを知ることになります。
たった一つの言葉であっても、相手に自分の意図しない影響を与えてしまう可能性もあるのです。
心理的安全性を担保する難しさを体感できるため、細かい点まで常に考える姿勢が身に付くでしょう。
失敗や懸念がオープンになる
ゲームでは、現実でも起こり得るシチュエーションを仮定し、失敗した場合はどうするか、トラブルが生じた際はどうするかなどと意見を出し合って進めます。
失敗や懸念を積極的に話題にする雰囲気を擬似体験しているため、実際にそのような状況が生じた際にも、失敗や懸念を隠さずオープンにできるでしょう。
結果として、問題や課題の早期解決につながると想定されます。
心理的安全性を高めるゲームを紹介
心理的安全性を高めるゲームには、代表的な2種類のカードゲームがあります。
今回は、それらのゲームについて、ルールや費用を簡単にご紹介します。
心理的安全性ゲーム
「心理的安全性ゲーム」とは、「やっとむ」こと安井 力さんが開発したカードゲームです。4〜5人のチームで、心理的安全性についての理解を深めていきます。
《ゲームのルール》
1.「発言カード」と「オプションカード」を1人4枚ずつ配る
2.最初のメンバーが「平和を乱す役」になり、「状況カード」を1枚引く
3.平和を乱す役のメンバーは、引いた状況カードの内容を、実際の状況を想像しながらチームに口頭で報告する
※状況カードの例:「クレーム発生!この件誰が担当する?」「わからない 誰か教えて」
4.他のメンバーは、手持ちの発言カードとオプションカードの中から反応を選び、そのとおりに演技する
※発言カードの例:「一緒に考えよう」「わたしに言わないで」「(無視する)」
※オプションカードの例:「ほがらかに言う」「ため息をついてから言う」「相手の目を見て言う」
5.平和を乱す役のメンバーは、それぞれの反応に対して、自分がどう感じたかを述べる
6.今回の経験が、未来の自分の行動にどう影響しそうか考え、当てはまるボードの上に石を置く
※ボードの例:「失敗を共有できるようになる」「挑戦が増えるようにはならない」
7.この流れを繰り返し、全員が平和を乱す役を体験したら終了
ゲームを実施する際には、自分自身の心理的な反応をしっかり見つめるよう意識すると、さらに効果が高まります。
また、1〜7までの手順が一通り終了したら、振り返りの時間を設け、続けてもう一度チャレンジすることが推奨されています。
ゲームに使用するキットは、2,500円(+送料400円)で購入可能ですが、すべて自作する方法も。
さらに、やっとむさんによるバーチャルクラスルームも実施しています。その際の費用は、1名あたり22,000円(税込)です(※4〜5名での実施)。
参考:心理的安全性ゲーム(https://games.yattom.jp/safety)
ベストチームゲーム
さまざまなビジネスゲームを開発する、株式会社HEART QUAKE(ハートクエイク)の「ベストチーム」は、心理的安全性を知り、高めるゲームです。
各チームが一つの「企業」になりきって、業績拡大と人間関係のバランスをどのように保つかを考えていきます。
《ゲームのルール》
1.各チームに7枚の「行動カード」を配る
2.手元の行動カードから、最初にどのカードを集めるか、どのくらいのポイントが獲得できそうかなど、チーム内で作戦を練る【作戦タイム】
3.他のチームの所持しているカードを調査し、お互いが納得のいく交渉によりカードを交換して、必要枚数を集めていく【行動タイム】
4.必要枚数がそろうと、「得点カード」がもらえる
※得点カードには、業績ポイントと関係性ポイントの2種類が記載されており、得点がマイナスになる場合もある
5.行動タイムが終了したら、得点計算シートを用い、決算を行う【決算タイム】
6.2〜5をあと3回(3期分)繰り返し、戦略的にカードを集め、利益を伸ばしていく
7.全4期分の決算が完了したら、優勝チームを決定する
このゲームは、心理的安全性を高めることはもちろん、業績の拡大も目指すゲームとなっています。
「行動カード」は全部で22枚存在し、うち11枚には業績を上げる行動が書かれ、残り11枚には関係性を高める行動が書かれています。
そのため、業績にばかり意識が傾くと、関係性がないがしろになってしまうしくみです。
「ベストチーム」は、キットレンタル(社内講師型)の場合は最低5万円から、講師派遣の場合は最低15万円からとなっています。
参考:心理的安全性を知り、高めるゲーム型研修「ベストチーム」 | ゲームを用いた企業研修なら| 株式会社HEART QUAKE(https://heart-quake.com/article.php?p=7265)
ゲームを実施した2社の企業事例と参加者の感想
先にご紹介した「心理的安全性ゲーム」と「ベストチーム」を実際に活用した、2社の企業事例を解説します。
併せて、参加者の感想もご紹介しますので参考にしてください。
キラメックス株式会社
オンラインスクールや転職支援サービスを運営するキラメックス株式会社では、社内勉強会において、やっとむさんの「心理的安全性ゲーム」を実施しました。
いつも一緒に仕事をしているメンバーでチームを組み、どのような発言が心理的安全性を保ち、高められるのかを学びました。
また、ゲーム終了後には、「心理的安全性が高いチームを目指すためにはどのような心がけが必要か」を一人ひとりが考え、付箋に書き出し振り返りをしています。
それぞれのチームでどのような振り返りをしたかを他のグループとも共有することで、組織全体の心理的安全性への意識を高められたようです。
参考:心理的安全性ゲームを行ってチーム力を高めました!! | キラメックス株式会社(https://www.wantedly.com/companies/kiramex/post_articles/169719)
参考:キラメックス株式会社 – KiRAMEX(https://www.kiramex.com/)
東京未来大学
東京未来大学(学校法人三幸学園)では、中途職員の割合が多く、多様な価値観が衝突することも多いといいます。
そこで、一人ひとりの日常の言動における気付きを得るため、職員総勢68名で「ベストチーム」を実施しました。
ゲームにおける自身の役割が、普段の業務や仕事のスタンスと密接に関係していたため、仕事に対する「強み」や「弱み」などの気付きを得られました。
また、チームとして仕事をするうえで、心理的安全性の観点から、自分自身の足りない点や改善したほうがよい点にも気づけたため、内省を深めるきっかけにしてほしいと述べています。
全体として、ゲームという体験型の研修で楽しみながら、アクティブに取り組めたようです。
参考:【導入事例】東京未来大学様で「ベストチーム」を導入いただきました | ゲームを用いた企業研修なら(https://heart-quake.com/article.php?p=7864)
【参考】参加者の感想
「心理的安全性ゲーム」に参加した、さまざまな企業の参加者の感想を、抜粋してご紹介します。
・チームでシチュエーションを想像して、どのように言われたらどう感じるのか、を話あいながら進めることができました。いままで意識はしていましたが、今回のゲームで改めて考えていこうと思いました。
・想像以上に議論が深まり、とても面白かったです。またただ遊ぶのではなく、そこから得た学びをメモし、仕事に活かす姿勢はとても勉強になりました。
・安心して言い合えるチームが自分にとっては安心できるチームなんだなと実感しました。
無視・他人事にされるのがかなり辛かったので、それが起きないようにするにはどうすれば良いか今後の課題としたいと思います。
・普段のコミュニケーションで良い方向に行くもいかないもは発言する側にもされる側にも原因があると思いました。今回はカードで発言することが限られていましたが、普段の生活では言葉は自分で選べることができるので、自分の周りの心理的安全性を高めるためにも普段から自分自身の発言には気を付けて、何をいうべきか言わないべきかを考えながら行動していきたいです。
参考:心理的安全性ゲーム 感想アンケート(https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf6k8P6_hpZWDk3RrDZrr0iO7x9mvzMZDJflWZtE59BbiYmNQ/viewanalytics)
ゲームを実施する際の3つの注意点
心理的安全性を高めるゲームの効果を発揮するためには、実施の際に注意しておくべき点があります。3つの注意点を以下で見ていきましょう。
実際のチームメンバーで取り組む
心理的安全性を高めるゲームでは、ゲームを通して学んだことを実践に移しやすくするため、できるだけ実際のチームメンバーで取り組むことを推奨します。
もちろん、あまり関わらないメンバーで行っても学びは得られますが、集中的に心理的安全性の高まりを目指す場合には、望ましくないでしょう。
必ず振り返りを取り入れる
ゲームによって心理的安全性の概念を体感できますが、「他のメンバーも自分と同じように感じているのだろうか?」と、疑問が生じます。
人によって、何が心理的安全に効果があると考えるかも異なるものです。
そのため、振り返りやディスカッションの時間を十分に確保し、さらにその内容を他のチームとも共有するのが、ゲームの効果を最大限に発揮するポイントだと言えます。
進行は柔軟に
ゲームのルールは、あくまで基本ルールです。
それぞれの意見を柔軟に取り入れ、チームにとって効果的な方法で進行していくと良いでしょう。
「もっとこうしたら、効果的なゲームになるのでは?」といった意見を言いやすく、受け入れやすい環境こそが、まさに心理的安全性の高い環境でもあります。
まとめ
今回の記事では、心理的安全性を高めるゲームについて解説しました。
改めて、記事の内容について振り返ってみましょう。
・心理的安全性を高めるゲームとは、「心理的安全性の高いチーム」について体感しながら理解を深めていくゲーム
心理的安全性を高めるゲームでは、以下の4つの効果が期待できる
- 心理的安全性の概念を理解できる
- 学びを実践に移しやすくなる
- 学びを実践に移しやすくなる
- 常に考える姿勢が身に付く
- 失敗や懸念がオープンになる
心理的安全性を高めるゲームの代表例は、以下の2つ
- 心理的安全性ゲーム
- ベストチームゲーム
ゲームを実施した2社の企業事例
・キラメックス株式会社
・東京未来大学
・ゲームを実施する際の3つの注意点
・実際のチームメンバーで取り組む
・必ず振り返りを取り入れる
・進行は柔軟に
心理的安全性が高い組織・チームは、ますます成長していくでしょう。
この記事が、心理的安全性に対する意識改革の一助となりましたら幸いです。