自己効力感とは?意味や自己効力感のメリット、高め方を紹介

社員一人ひとりの成長が、企業の競争力を左右する時代です。その成長を支える心理的な土台として注目されているのが「自己効力感」。耳にしたことはあっても、正確な意味や高め方まで説明できる方は少ないかもしれません。

本記事では、自己効力感の定義からビジネスで求められる理由、高めるメリットと具体的な方法までをまとめて解説します。

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そもそも自己効力感とは?

自己効力感とは、ある目標や課題に対して「自分ならできる」と信じられる認知的な感覚を指す心理学用語です。カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱しました。

自己効力感のイメージ

人材育成の場面で耳にする機会も多いこの言葉。まずは概要と、ビジネスシーンで必要とされる理由を押さえましょう。

自己効力感の意味

自己効力感(Self-efficacy)とは、特定の状況下で目標を達成するために必要な行動を自分が遂行できるという確信のことです。「自己革新」「自己可能感」と訳される場合もあります。

かみ砕くと、目標を達成するための「自信」です。ただし単なる楽観ではありません。「自分には、適切な行動を選んでやり遂げる力がある」という認知がベースにあります。

つまり、「自分ならできる」「やり遂げられる」と感じられる力が自己効力感です。

ポイントは、この自信に客観的な根拠がなくても成り立つこと。自己効力感は結果の保証ではなく、自分を肯定して信じる力そのものだといえます。

自己効力感の提唱者──アルバート・バンデューラ

自己効力感は、カナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura, 1925–2021)が1977年に提唱した概念です。社会的学習理論の第一人者として知られています。

バンデューラは博士号取得後、臨床実験を重ねながら「恐怖の克服」を深く研究していました。多様な恐怖症を乗り越えた人へのインタビューを通じて、強い恐怖感を克服した人ほど自分を肯定的に捉える心理が働くことを発見。ここから自己効力感という概念が生まれました。

さらに研究を進めた結果、自己効力感の高い人は困難な状況でも現状を打破する行動をとれること、そして失敗からの立ち直りが早いことが実証されています。

自己効力感の3つの種類

自己効力感は心理学の観点から「自己統制的自己効力感」「社会的自己効力感」「学業的自己効力感」の3種類に分類されます。それぞれ発達の背景や発揮される場面が異なります。

自己統制的自己効力感

自己統制的自己効力感とは、自分の行動をコントロールできるという確信から生まれる効力感です。端的にいえば、「自分ならできる」という気持ちそのもの。

たとえば、新規事業の立ち上げを一任された場面を想像してください。やる気や忍耐力、状況に応じた振る舞いが求められます。こうした場面で自分の行動を制御しながら成果を出すには、自己統制的自己効力感が欠かせません。

この力が強いほど失敗しても素早く立ち直り、次の一手を打てます。

社会的自己効力感

社会的自己効力感とは、対人関係において「自分はうまくやれる」と感じられる効力感です。乳児期や児童期の経験で最も発達するとされ、共感能力と深く結びついています。

社会的自己効力感が高い人は、気難しい相手とも「きちんと話せば関係を築ける」とポジティブに捉えられます。職場で落ち込んでいる人がいれば、自然と思いやりの言葉をかけられるでしょう。その結果、円満な人間関係を築き、組織の中でもうまく立ち回れるようになります。

学業的自己効力感

学業的自己効力感とは、学習や知識習得において「自分は学べる」と信じられる効力感です。学校や塾などでの達成経験をベースに育まれます。

この力が高い人は、社会に出てからも学習意欲を維持できます。ビジネスの場で業務ノウハウを一から習得する必要があるときにも前向きに取り組める。社会人としての成長を支える土台になる力です。

自己効力感がビジネスで重要視される理由

自己効力感がビジネスで注目される最大の理由は、目標達成率やパフォーマンスに直接影響するためです。自己効力感の高い人は成功率が高く、低い人は物事をやり遂げる力が弱い傾向にあります。

ビジネスシーンは日々変化し、従来のやり方だけでは通用しない場面が増えています。新しい手法を開拓し、実践する機会が求められるなかで、「自分ならやれる」「成功させてみせる」と前向きに行動できるかどうかは、自己効力感の高さに左右されます。

こうした背景から、自己効力感の高い人材を育てることはビジネスの現場で優先度の高いテーマになっています。臨床心理学にとどまらず、教育や予防医学など幅広い領域でもその効果が認められています。

自尊心・自己肯定感との違い

自己効力感と自尊心・自己肯定感は似た概念ですが、明確に異なります。自尊心・自己肯定感が「自分には価値がある」という感情であるのに対し、自己効力感は「自分にはこの行動を遂行できる力がある」という認知・判断です。

生活や仕事のメンタルに影響するという共通点はあるものの、自尊心・自己肯定感は「感情」、自己効力感は「認知」という違いがあります。混同せず、場面に応じて使い分けましょう。

自己効力感を構成する4つの要素(情報源)

バンデューラの理論では、自己効力感は主に4つの情報源から形成されるとされています。「直接的達成経験」「代理経験」「言語的説得」「生理的・情動的喚起」の4つです。

自己効力感の4つの要素

それぞれの要素を理解すれば、自己効力感を意図的に高めるヒントが見えてきます。

直接的達成経験

直接的達成経験とは、自分自身が目標を達成した成功体験のことです。4つの要素のなかで自己効力感に最も強い影響を与えるとされています。

過去に「自分の力でやり遂げた」という実感があれば、次の困難にも「自分ならできる」と自信を持てます。たとえば資格の取得や、前年度を超える営業成績の達成といった身近な成功体験が土台になります。

ただし注意点もあります。簡単すぎる目標ばかりクリアしても、本質的な自己効力感は育ちにくい。むしろ楽観視するクセがつくリスクがあります。あくまで「努力の結果として達成した」という経験が、自己効力感を確かなものにします。

代理経験

代理経験とは、他者の成功体験を観察することで「自分にもできるかもしれない」と感じる経験のことです。「モデリング」とも呼ばれます。

自己効力感は自分の体験だけでなく、身近な人の成功を見聞きすることでも高まります。モデルとなる人物が自分と近い立場であるほど、効果は大きくなる傾向です。

代理経験には2つのタイプがあります。「類似性」は「同じくらいの能力の人ができたなら自分にも」という思考。「優位性」は「あの人より自分のほうがうまくやれる」という思考です。

ただし、他人の成功を見ただけで根拠のない自信に変わってしまうリスクもあります。代理経験をきっかけに、自分自身で行動を起こすことが大切です。

言語的説得

言語的説得とは、他者から「あなたならできる」と言葉で励まされることで自己効力感が高まる現象を指します。

人はスキルや能力を他人から認められると、自分を肯定する気持ちが芽生えます。「あなたなら達成できる」「その調子でいい」と繰り返し伝えられるうちに、自己効力感は徐々に強まっていきます。

親や教師に「絵が上手だね」と褒められた子どもが絵をもっと描くようになるのと同じ原理です。褒められたことをきっかけに行動し、結果が出れば、さらに自己効力感が高まるという好循環が生まれます。

一方で、批判的な指摘を受けると自己効力感が下がることもあります。言語的説得は他者の言葉に左右されやすい要素だからこそ、組織として「認め合う文化」をつくることが重要です。

たとえばUniposのようなピアボーナスの仕組みを使えば、日常の小さな貢献にも感謝や称賛の言葉が届きます。上司からだけでなく同僚同士で認め合える環境は、言語的説得の機会を自然に増やし、チーム全体の自己効力感を底上げする効果が期待できます。

生理的・情動的喚起

生理的・情動的喚起とは、自分の身体的・感情的な状態の変化を認知することで自己効力感が左右される現象です。

日々の気分や体調は、自己効力感に直接影響します。たとえば大勢の前でのプレゼンで失敗し、汗をかいたり心拍が上がったりした経験があると、次のプレゼンに対する自己効力感は下がりやすくなります。

逆に、心身がリラックスした状態であれば自己効力感は保たれやすい。前日まで高かった自信が、翌日の体調不良で一気に崩れるケースも珍しくありません。だからこそ、日常的に心身の健康を整える習慣が自己効力感の維持につながります。

自己効力感が高いことによるメリット

自己効力感が高い人材は、困難への耐性が強く、挑戦意欲が高く、自分の意見を発信できるという特徴があります。これらはいずれもビジネスの成果に直結する要素です。

自己効力感が高い人のビジネスメリット

打たれ強くなる

自己効力感が高い人は、失敗や困難に直面しても早期に立ち直り、次の行動に移せる回復力(レジリエンス)を持っています。

「自分ならやり遂げられる」という感覚があるため、トラブルが起きてもすぐに対処に動けます。仮に失敗しても「どうすれば次はうまくいくか」と考え、アクションを起こすことができます。

失敗から学び、次に生かす。この繰り返しの中で行動の精度が上がり、成果にもつながっていきます。

積極的にチャレンジできる

自己効力感が高い人は、未知の領域や新しい課題に対しても「やってみよう」と前向きに取り組める傾向があります。

新しいことへの挑戦は、誰でも不安を感じるもの。けれど自己効力感が高ければ、「自分ならできる」と捉え直せます。根拠がなくても「できる」と思い込めることで、恐れずにチャレンジできるのです。

さらに、結果が出るまで粘り強く努力を続けられるのも強み。たとえ思うような成果が出なくても、「次に生かせる」「もう一度やってみよう」と前を向ける。こうした挑戦の積み重ねがやがて成果につながり、さらに自信が深まるという好循環を生みます。

自己主張ができるようになる

自己効力感が高い人は、自分の考えや意見を臆せず周囲に伝えられます。問題解決の場面でも主体的に発言し、チームを動かす力を持っています。

「自分には問題を解決する力がある」という確信があるからこそ、恐れずに意見を述べられます。ビジネスの場で何か問題が起きたとき、自分の頭で考え、周囲にきちんと説明できる人材は組織にとって大きな財産です。

自己効力感を高めるための方法

自己効力感は生まれ持った性質ではなく、意識的な取り組みによって後天的に高められます。ここでは、個人と組織の両面から実践できる具体的な方法を紹介します。

自己効力感を高める方法のイメージ

小さな成功体験を積み重ねる

自己効力感を高める最も確実な方法は、成功体験の積み重ねです。まずはハードルの低い目標から始めましょう。

小さな目標でも、努力して達成すれば「自分にもできた」という実感が得られます。反対に、大きすぎる目標を掲げて未達に終わると「自分はだめだ」と感じてしまい、逆効果になりかねません。

簡単な目標をクリアしたら、少しずつレベルを上げていく。このステップアップ方式が自己効力感を着実に育てます。

過去の成功体験を洗い出す

実は過去に達成経験があるのに、自分で気づいていないケースは多いもの。一度立ち止まって、過去の経験を棚卸ししてみましょう。

些細なことでも紙に書き出してみてください。「以前よりできるようになったこと」「周りに感謝されたこと」など、見落としていた成功体験が見つかるはずです。過去の積み重ねを認識するだけでも、自己効力感は自然と高まります。

成功した姿をイメージする

目標を達成した自分の姿を具体的にイメージする方法も有効です。心理学では「想像的体験」と呼ばれ、アスリートが試合前に成功シーンを思い描くのと同じ手法です。

たとえ思い込みであっても、脳は成功イメージをポジティブに処理します。過去の成功体験が思い出せないときや、手軽に始めたいときには、まずイメージトレーニングから試してみてください。

周りからの評価をポジティブに受け止める

他者からの言葉や態度は自己効力感に大きく影響します。批判的なフィードバックを受けると気分が落ち込みやすいものですが、視点を変えればプラスに転換できます。

「注意されたのは期待の裏返し」「指摘された箇所以外はできている証拠」──こうしたリフレーミングを意識するだけで、ネガティブな評価から自己効力感を守れます。

応援・フォローしてくれる環境を探す

自己効力感を高めるには、自分を認めてくれる人や環境の存在が欠かせません。「あなたならできる」と繰り返し声をかけてもらえる環境に身を置くことで、自信は着実に育ちます。

適切な環境が身近にない場合は、社内の勉強会やグループワーク、社外のコミュニティに参加してみるのも一つの手段です。他者から褒められたり励まされたりする経験が、自己効力感の土台になります。

組織全体で自己効力感を高めたいなら、称賛や感謝を日常的にやりとりできる仕組みづくりが効果的です。Uniposは、部署や役職を超えて感謝のメッセージとピアボーナスを送り合えるサービス。「言語的説得」の機会を組織に自然と組み込める点で、自己効力感の向上施策と相性が良いといえます。

自己効力感を高めて企業の成長につなげよう

自己効力感で企業成長を実現するイメージ

自己効力感とは、「自分ならできる」という肯定的な認知のこと。この感覚が高い人は新しい挑戦に積極的で、困難にも立ち向かえる力を持っています。

変化の激しい市場で生き残るために、企業は自己効力感の高い人材を育てる工夫が求められます。小さな成功体験を意図的に設計すること、そして日常的に称賛やフィードバックが飛び交う組織文化をつくること。この二つが自己効力感を組織全体に広げる鍵です。

従業員一人ひとりの「自分ならできる」を引き出す取り組みを、今日から始めてみませんか。

自己効力感に関するよくある質問(Q&A)

Q. 自己効力感と自己肯定感の違いは何ですか?

自己肯定感は「自分には存在価値がある」と感じる感情です。一方、自己効力感は「自分にはこの課題を達成できる力がある」と判断する認知を指します。自己肯定感が"存在"への評価であるのに対し、自己効力感は"行動遂行"への確信という点で異なります。

Q. 自己効力感が低い人にはどのような特徴がありますか?

自己効力感が低い人は、新しい課題を避けがちで、困難に直面すると早期にあきらめやすい傾向があります。また「どうせ自分には無理だ」という思考パターンに陥りやすく、挑戦の機会を自ら減らしてしまうケースが見られます。

Q. 自己効力感は大人になってからでも高められますか?

はい、高められます。自己効力感は先天的な性格特性ではなく、経験や環境によって変化する認知です。小さな成功体験の積み重ね、周囲からの称賛、ロールモデルの観察などを通じて、年齢に関係なく向上させることが可能です。

Q. 職場で自己効力感を高めるにはどうすればいいですか?

まずは達成しやすい目標を設定し、小さな成功体験を積ませることが有効です。加えて、上司や同僚が成果を認め合い、称賛する文化をつくることが重要です。ピアボーナスや1on1ミーティングなど、承認の仕組みを制度として整えると、組織全体の自己効力感が底上げされます。

Q. 自己効力感を提唱したバンデューラはどんな人物ですか?

アルバート・バンデューラ(1925–2021)はカナダ出身の心理学者で、スタンフォード大学の教授を長年務めました。社会的学習理論(社会的認知理論)の提唱者として知られ、自己効力感の概念を1977年に発表。心理学のみならず教育・医療・経営など幅広い分野に影響を与えた研究者です。