
サンクスカードを導入したものの、「なんだか意味がなかったかもしれない」と感じている。あるいは導入を検討しているけれど、ネットで「サンクスカード 意味ない」という言葉を見かけて、足が止まっている。この記事はそんな方に向けて書きました。
結論から言えば、サンクスカードが意味ないと感じる原因の多くは、サンクスカードが得意なことと、組織が狙いたい効果のズレにあります。社員のやる気や人柄の問題ではありません。まず何を狙うかを決め、その狙いに合った設計をする。順番さえ間違えなければ、サンクスカードはきちんと働きます。
ピアボーナス®サービスを提供するUnipos自身も、段ボールの投票箱から始めて数々の失敗を重ねてきました。その実体験も交えながら、「意味ない」の正体と、何を狙うべきかの判断軸を整理します。
「サンクスカードは意味ない」と感じるのはなぜか

サンクスカードが意味ないと感じる原因は、社員の問題ではなく、サンクスカードが得意なことと組織が狙う効果のズレにあります。まずは、多くの組織で実際に起きている「うまくいかない」の声から見ていきましょう。
「最初だけ盛り上がって消えた」「一部の人しか書かない」という声
導入直後はみんなが珍しがって書く。ところが1〜2か月もすると、投稿がぱたりと止まる。気づけば、いつも同じ顔ぶれの数人だけが続けている。サンクスカードを運用したことのある組織なら、一度は通る道です。
よく聞くのは、こんな声です。
- 最初の盛り上がりが続かず、自然消滅してしまった
- 書いてくれるのは一部の人だけで、全社に広がらない
- 「書きなさい」と言うと義務になり、形だけのカードが増えた
- カードの集計や掲示の管理が、担当者の負担になっている
どれも、現場では切実な悩みです。そして多くの担当者が「うちの社員は感謝が足りないのだろうか」と自分たちを責めてしまいます。
これは社員の頑張りや人柄のせいではない
結論を先に言うと、続かないのは社員の人柄や頑張りの問題ではありません。仕組みそのものに、続きにくい構造が組み込まれているからです。
導入を検討している段階の人が抱く不安も、ほとんどが同じところに集約されます。
- 結局、書く人と書かない人に分かれてしまうのではないか
- カードの管理や集計が大変なのではないか
- 口下手な人や文章が苦手な人には、ハードルが高いのではないか
- そもそも、何を書けばいいのか社員が迷うのではないか
これらの不安は、的外れではありません。むしろ正しく構造を見抜いています。だからこそ、感情論で「もっと感謝しよう」と呼びかけるのではなく、なぜズレが起きるのかを冷静に分解する必要があります。
そもそもサンクスカードが「得意なこと」と組織が「狙いたい効果」はズレている

サンクスカードが得意なのは一時的な感情報酬やその場のお礼です。一方、組織が狙うエンゲージメント向上や離職率改善は中長期の効果であり、ここにズレがあります。この章では、そのズレの正体を表で整理します。
| サンクスカードが得意なこと | 組織が狙いたい効果 | |
|---|---|---|
| 性質 | 一時的な感情報酬・その場のお礼 | エンゲージメント向上・離職率改善・働きがい向上 |
| 時間軸 | 短期 | 中長期 |
| 必要なこと | 手軽に始められる | 続くための事前設計が必須 |
「意味ない」と感じる正体は、このズレ
「意味ない」と感じる正体は、得意なことと狙いたい効果のズレにあります。サンクスカードは、その場の「ありがとう」を可視化することが得意です。受け取った人はうれしいし、書いた人も少し気分がよくなる。これは紛れもない効果です。
ただ、その効果は基本的に短期のもの。一枚のカードがエンゲージメントスコアを押し上げたり、離職を食い止めたりするわけではありません。組織が本当に欲しいのは後者なのに、施策が得意とするのは前者。この食い違いが、「やった割に効果が見えない」という感覚を生みます。
得意なこと以上を期待すると「効果がない」と感じてしまう
道具にはそれぞれ得意な仕事があります。ドライバーで釘は打てません。打てないからといって、ドライバーが役立たずなわけではない。使いどころが違うだけです。
サンクスカードも同じです。短期の感情報酬という得意分野を超えて、中長期の組織改善まで一足飛びに期待すると、必ず「効果がない」という結論にたどり着きます。問題は道具ではなく、期待のかけ方。だからこそ、次の判断が出発点になります。
狙う効果で決める|短期施策か中長期施策か

短期的な感情報酬が目的なら続くことを重視しなくてよく、中長期的な組織改善が目的なら続くための設計が不可欠です。まず何を狙うかを決めることが出発点になります。
短期的なお礼が目的なら、続くことにこだわらなくていい
もし狙いが「日々のちょっとしたお礼を、その場で可視化したい」だけなら、続くことに神経質になる必要はありません。プロジェクトの打ち上げや繁忙期の労い、イベント時のお礼など、期間限定で盛り上がればそれで目的を果たします。
この場合、一部の人しか書かなくても、数か月で熱が冷めても、失敗ではありません。最初から短期の道具として割り切っているからです。
エンゲージメントや離職率改善が目的なら、続くための設計が必須
一方、狙いが「組織全体のエンゲージメントを底上げしたい」「離職を減らしたい」なら、話はまったく変わります。中長期の効果は、感謝のやり取りが日常に溶け込んで初めて生まれるもの。続かなければ、そもそも効果が立ち上がりません。
つまり中長期を狙うなら、「続くかどうか」は運任せにできない最重要項目になります。手軽に始めただけでは届かない領域です。
「何を狙うか」を先に決めないと、施策選びを誤る
多くの「意味ない」は、この最初の一歩を飛ばしたところから始まります。狙いを決めないまま「とりあえず流行っているから」とサンクスカードを導入し、後から中長期の効果を期待してしまう。順番が逆なのです。
短期なのか中長期なのか。先に狙いを定めれば、サンクスカードで足りるのか、別の仕組みが必要なのかも自然と見えてきます。施策選びの前に、まず狙いを言語化してください。
中長期で狙うなら知っておくべき、続かない構造的な3つの理由

中長期の効果を狙う場合、サンクスカードが続かない3つの構造的な理由を理解しておく必要があります。参加ハードルの高さ・基準の曖昧さ・送り手への見返りのなさ、この3つです。
ここで重要なのは、これらが「やる気で乗り越えるもの」ではなく、仕組みの設計で対処すべき構造だという点です。一つずつ見ていきます。
理由1 — 参加するまでのハードルが高い
1つ目の理由は、参加そのものの障壁が高いことです。手書きが苦手、わざわざ紙を取りに行くのが面倒、もらったら返さなければという心理的な負担、外国籍メンバーにとっての言語の壁。一枚書くまでに、想像以上に多くの関門があります。
感謝の気持ちはあっても、それを表明するまでの手間が大きければ、人は動きません。やる気の問題ではなく、導線の問題です。
理由2 — 何を書けばいいか基準がわからない
2つ目は、書く基準が共有されていないこと。「こんな些細なことで感謝カードを送っていいのだろうか」「立派なエピソードじゃないと書いちゃいけない気がする」。送る側にこうした迷いが生まれると、筆が止まります。
量を重視するのか質を重視するのか、どんな行動が称賛に値するのか。この基準が曖昧なままだと、真面目な人ほど書けなくなるという逆転が起きます。
理由3 — 送った人に見返りがない
3つ目は、送り手への見返りがないこと。サンクスカードは、受け取る人がうれしい仕組みです。裏を返すと、送る人は自分の善意と時間を一方的に差し出し続けることになります。
最初は善意で回ります。けれど善意だけに頼った制度は、いつか消耗します。送る人が報われない構造は、長く続きません。これは精神論ではなく、制度設計の必然です。
では、この3つをどう乗り越えるのか。具体的な立て直しのテクニックは、運用記事で詳しく解説しています。この記事ではまず「構造を理解する」ところまでを押さえてください。
サンクスカードが定着した組織の実例

感謝・称賛の仕組みが実際に定着し、狙った効果につながった企業の例を2社紹介します。いずれも「続くための設計」を自社の状況に合わせて作り込んだ点が共通しています。
事例1:日邦産業株式会社|挑戦行動の促進を目的とした組織風土づくり
日邦産業株式会社は、創業70年を超える企業で、産業資材の販売やプラスチック成形品の製造・販売を手がけています。同社の支援事例によると、2022年の中期経営計画の転換期において、社員一人ひとりが新しい価値創造に挑戦できる組織風土づくりが課題となっていました。
導入時の目的として挙げられているのは、バックオフィスなど成果が見えにくいメンバーに光を当てること、個人商店化を防ぐことの2点です。その場の感謝にとどまらず、感謝・称賛を通じて挑戦行動を促すという、中長期の効果が狙いに置かれていたとされています。
事例では、定着に向けた具体的な取り組みも紹介されています。全社会議での投稿の呼びかけや、新入社員への活用の働きかけなどです。新入社員には周囲から歓迎の投稿が送られ、相互のやり取りが生まれることで、早期定着につながったと述べられています。
称賛のあり方についても言及があります。なんでも褒めればよいのではなく、自社やサービスへの誇りにつながる感謝・称賛を伝えることが重視されたとされています。称賛が次の良い行動を生み、その行動がまた称賛されるサイクルについて、事例の中で語られています。
出典:https://unipos.me/ja/blog/nip
事例2:株式会社Re-grit Partners|心理的安全性を土台とした挑戦環境の整備
株式会社Re-grit Partnersは、2017年創業のコンサルティングファームです。支援事例によると、同社は翌2018年にUniposを導入しています。コンサルティング業界はプロジェクト単位のクライアントワークが中心で、コンサルタントが一人で業務を進めがちなため、互いの仕事が見えにくいという課題があったとされています。
事例で挙げられている導入の狙いは、コンサルタント同士の「人間関係の線を増やす・太くする」ことです。それによって心理的安全性を担保し、挑戦しやすい土台をつくるという、中長期の目的が置かれていたと紹介されています。
事例では、「心理的安全性→挑戦→成長」というサイクルの確立を掲げていることが紹介されています。感謝・称賛を可視化する仕組みを人事戦略に組み込み、経営陣も活用しているとされています。新入社員向けの「ウェルカムミッション」など、つながりづくりを目的とした独自施策とも連動させている点にも触れられています。
なお同社は、売上高の年平均成長率57%という急成長を続けていることが公表されています。感謝・称賛の仕組みを組織文化の土台として位置づけた取り組みが事例で紹介されています。
先駆者Uniposも、失敗を重ねてきた

ピアボーナス®サービスを提供するUniposも、紙の投票箱から始まり、参加率の低さやポイントの目的化といった失敗を経て、続く仕組みにたどり着きました。続かないのは、特別なことでも恥ずかしいことでもありません。
ここからは、感謝や称賛を可視化する仕組みを長年つくってきたUnipos自身が、どんな失敗をしてきたかをお話しします。教科書的なきれいな話ではなく、実際につまずいた記録です。
段ボールの投票箱から始まった「発見大賞」
最初の取り組みは、いたってアナログでした。オフィスに段ボールの投票箱を置き、同僚の良い働きを見つけたら紙に書いて投票する「発見大賞」という仕組みです。仲間の貢献を見つけて称え合おう、という素朴な狙いでした。
ところが、参加したのは全体の3割ほど。多くの社員にとって、わざわざ紙に書いて箱に入れるという一連の動作が、思った以上に面倒だったのです。前の章で挙げた「参加ハードルの高さ」を、自分たちで体験することになりました。
社長が食事に招待して参加率8割に、しかし今度は運営負担が増大
そこで、投票してくれた人を社長が食事に招待する、というインセンティブを足しました。すると参加率は8割近くまで跳ね上がります。見返りがあれば人は動く。手応えはありました。
けれど、別の問題が浮上します。招待の手配や集計といった運営の負担が、どんどん膨らんでいったのです。続けるほど運営側が疲弊する。これもまた、長続きしない構造でした。
投稿でポイント付与、すると今度はポイント目的の投稿が続出
運営負担を減らそうと、次は投稿するとポイントがもらえる仕組みにしました。自動化が進み、運営は楽になります。ところが、今度は「ポイントが欲しいから書く」という投稿が増えてしまいました。
中身の薄い、形だけの感謝が並ぶ。可視化したかったのは本物の貢献だったはずなのに、ポイントが目的化して、肝心の質が落ちていったのです。見返りの設計を一歩間違えると、こうなります。
拍手で双方にポイントが入る設計へ、「称賛した人も称えられる」仕組みに
試行錯誤の末にたどり着いたのが、投稿に「拍手」を送ると、送った人にも受け取った人にも少額のポイントが入る設計です。良い投稿を見つけて拍手することにも価値が生まれ、称賛する人自身が報われるようになりました。
送り手が一方的に消耗する構造から、称賛が巡って双方が報われる構造へ。失敗の一つひとつが、この設計のヒントになりました。
失敗から学んだことが、続く設計につながった
振り返ると、Uniposがたどった道は失敗の連続です。参加率の低さ、運営負担、ポイントの目的化。けれど、そのどれもが「続く仕組みとは何か」を教えてくれました。続かないのは異常ではなく、設計を磨くための通過点です。
では、どうすれば続くのか

続かない3つの理由を乗り越える鍵は、参加導線の設計・感謝の基準の合意・送り手への適正な見返り、この3つです。Unipos自身の失敗が示した教訓とも、ぴたりと重なります。
ここでは方向性だけを示します。具体的な実践手順は、それぞれの専門記事に譲ります。
社員の状況に合わせて参加導線を設計する
1つ目は、参加までのハードルを下げること。手書きでなくスマホから一言送れるようにする、業務の合間に投稿できる導線を用意するなど、社員の働き方に合わせて入口を整えます。「気が向いたら、すぐ送れる」状態をつくるのが基本です。
自組織ならではの感謝・称賛の基準を合意する
2つ目は、何を称え合うのかを組織で言葉にすること。「些細なことでも送っていい」という空気をつくれるかどうかで、参加のしやすさは大きく変わります。自社のバリューや行動指針と紐づけると、基準がぶれません。
称賛の基準づくりは、それ単体で奥が深いテーマです。詳しくは称賛文化に関する記事や行動指針に関する記事もあわせてご覧ください。
送った人に適正な見返りを用意する
3つ目は、送り手が報われる設計にすること。Uniposが拍手の仕組みにたどり着いたように、称賛する側にも価値が返る構造をつくれば、善意の一方通行にならずに済みます。この考え方を制度化したものが、ピアボーナスという仕組みです。
送り手への見返りという観点は、ピアボーナスに関する記事で詳しく解説しています。
よくある質問

サンクスカードは本当に意味があるのですか?
意味はあります。ただし得意分野が決まっています。サンクスカードは、その場の感謝を可視化する短期の施策として高い効果を発揮します。一方で、エンゲージメント向上や離職率改善といった中長期の効果を狙うなら、続くための設計が欠かせません。狙いと使い方が合っていれば、しっかり意味を持ちます。
サンクスカードで中長期の効果を出すには何が必要ですか?
参加導線の設計、感謝の基準の合意、送り手への適正な見返り、この3つが必要です。これらは続かない構造的な3つの理由に対応しています。仕組みとして整えることで、感謝のやり取りが日常に定着し、中長期の効果が立ち上がります。
短期施策と中長期施策はどう使い分ければいいですか?
先に狙いを決めることが使い分けの起点です。期間限定のお礼や一時的な盛り上がりが目的なら、続くことにこだわらず短期施策として割り切ります。組織全体の改善が目的なら、続くための設計を前提にした中長期施策として設計します。狙いを言語化してから施策を選んでください。
サンクスカードとピアボーナスはどちらが続きやすいですか?
送り手への見返りという点では、ピアボーナスのほうが続きやすい構造を持ちます。サンクスカードは送り手の善意に依存しがちですが、ピアボーナスは称賛を送る側にも価値が返る設計です。ただし、どちらが優れているという話ではなく、狙う効果に合わせて選ぶことが大切です。
まとめ
サンクスカードが意味ないと感じるのは、得意なことと狙う効果がズレているからです。サンクスカードは短期の感情報酬が得意で、組織が欲しい中長期の改善とは時間軸が違います。
だからこそ、まず短期か中長期か、狙いを定めることが出発点になります。中長期を狙うなら、参加導線・基準・見返りという3つを設計すること。これが、続けるための前提です。Unipos自身も失敗を重ねてその答えにたどり着きました。続かないことを恐れず、まずは狙いの言語化から始めてみてください。
感謝や称賛が自然に巡る組織づくりに関心がある方は、ピアボーナス®サービス「Unipos」の資料をご用意しています。Uniposのサービス資料をダウンロードする
