人的資本の開示は誰にとって重要か|田中弦のCEOBlog-vol.2

※こちらのブログは、UniposサイトのCEOblogから転載/リライトしています。

このCEOブログでは、CEOの田中弦がこれからの企業経営について得た人的資本経営に関する情報をまとめ、見解を踏まえて投稿していくシリーズです。

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前回の記事では、人的資本を考える4つの視点と2つのキーポイントとして、多面的に人的資本経営について考えてみました。

その中で、人的資本経営とは、開示だけが目的ではなく、いかに人的資本について継続的に「開示」しつつ、いかに人的資本を「活用・改善」するかという点が押さえるべきキーポイントではないでしょうか、と述べました。

今回は特に「開示」について書いてみます。

「人的資本の開示」に対して、企業規模や上場しているか否かで温度感が全く異なる

どんな項目について開示が求められているのか?については内閣官房から出ている「人的資本可視化指針」が最も最新で詳しいものとなっています。(2022.10.4現在)

ただ情報量が膨大なので読み込むのに四苦八苦しました。

開示項目としては、大きく2種類の開示が求められています。

(1)自社固有の戦略やビジネスモデルに沿った独自性のある取組・指標・目標

(2)比較可能性の観点から開示が期待される事項

相談で見えてきた「開示」への温度感の違い

さて、最近、多くの企業のご担当者様とお話している中で開示項目についてご相談いただくことが多いです。

特に機関投資家との対話が株価形成上、必要な上場企業のご担当の場合にはどの項目が良いかと悩んでいる方もいらっしゃいました。

一方、未上場企業の経営者の方とお話した際には、これらの開示が上場企業を中心に開示されることによってどんな影響があるのかわからない、と考えている事もありました。

そして、上場企業の中でもプライム市場に属していないような、小型株の場合、さらにどう開示していくか、という議論もあります。機関投資家との対話が少ない上場企業もたくさんあります。

つまり、企業規模や上場しているか否かにとって、「人的資本の開示」に関する温度感が全く異なる、という事を感じています。図にまとめてみると、以下のように整理できるでしょうか。

機関投資家との対話、という観点から見る人的資本の開示

日本の上場企業は、3,836社です。

そのうち、1,000億円以上の企業価値がある企業は727社です。(参照:「日本市場 – 時価総額ランキング」)

この規模の企業ですと、機関投資家との対話が株価形成上重要ですし、海外機関投資家からも、海外企業との比較のために人的資本の開示を求められることが多いと思います。感覚ですが時価総額500億円以上となると、開示についての関心が急に上がりホットになるように思います。

一方、上場企業で時価総額100億円以下の企業も、1,524社存在します。

時価総額100億円以下となると、アナリストカバレッジが少ないケースも多く、機関投資家とのコミュニケーションも、頻繁とまではいかなくなります。

さらに、未上場企業においては、一部の成長著しいベンチャー(※をつけた箇所)を除き、機関投資家とのコミュニケーションはかなり少ないと考えて良いでしょう。

つまり、上場していて時価総額が大きい企業と、未上場の中小企業では当然ではありますが「開示」について興味関心の度合いが異なります

上場していて、中型株以上の会社ではホットで、それ以下の会社だと関心が薄くなります。

未上場企業やグロース市場の小型株は人的資本の開示は放置しておけばいいのか?

これが機関投資家とだけの対話に限定するならば、放置でも良いのかもしれません。

上場していて、企業価値が高い企業だけの問題だ、と捉えるのも無理のない話だと思います。

ただし、そうも言っていられないのでは?と思うのは、労働市場との対話」の観点を考えた場合です。

どんな企業も、継続し成長していくには、優秀な人材の獲得が必須です。

近年では、人材の流動化が高まり、転職が当たり前になってきました。転職する際に参考とする情報は、年収などの条件面に加えて、openworkさん等の口コミの存在も非常に大きくなってきています。例えば今の時代、初任給が開示されていない新卒求人はありません。

加速度的に、労働市場への情報開示は多様になってきたと言えると思います。

来年度からは、上場企業を中心とした開示の義務化がなされます。

つまり、労働市場との対話における、情報量が格段に増加していく、ということに他なりません。上のほうで述べた、独自性のあるもの、比較可能性があるものの2種類の情報が増加し続けていきます。

人的資本に対し、どのようなスタンスで、どう取り組んでいくのか。機関投資家だけではなく、労働市場に対する対話が大きく変わるのが、人的資本に関する開示が義務付けされるタイミングなのではないでしょうか。

日本の人口はますます減りますから、人材獲得の困難さが増していきます。

時価総額上位企業だけの話題ではない

上記のことを踏まえると、労働市場への情報供給量が格段に増し「人的資本の開示」は上場企業だけのものでもなく、未上場企業であってもその影響は計り知れない、と私は思っています。全ての企業にとって、「人的資本に関する開示」は影響があるものではないでしょうか。

そのためには、離職率や人材教育といった(2)比較可能性の観点から開示が期待される事項の比較できる指標だけではなく、(1)自社固有の戦略やビジネスモデルに沿った独自性のある取組・指標・目標も、各社の特色が出せるのでとても重要と言えると思います。

前回の記事において、人的資本の「開示」と「活用・改善」はセットでは、と述べたのは、開示するだけではなく、「どうやって人的資本を伸ばすのか」という視点が無ければ、機関投資家だけではなく労働市場との対話が成立しにくくなっていく(なぜなら一気に開示がはじまるため)からだと考えているからです。

まとめ

今回は、人的資本の「開示」について深掘りしてみました。

企業の規模が違えば必要度合いも変わるので、温度感の高低はありつつも、結局は「どう捉えていくのか」という視点で考えた際、企業それぞれのスタンスを考慮して経営をしていくタイミングが到来したのだと感じています。

次回、今度は「ではどういった開示をするべきか?」について考えていきたいと思います。

今後、このブログでは、以下のようなコンテンツを積極的に書いていきます。

・心理的安全性

・人的資本経営

・風土改革

・Uniposのお客様訪問記

がんばってコンテンツ出して参りますので、よろしくおねがいします。

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 代表取締役社長CEO 田中 弦
1999年にソフトバンク株式会社のインターネット部門採用第一期生としてインターネット産業に関わる。ブロードキャスト・コム(現 Yahoo!動画)の立ち上げに参加。その後ネットイヤーグループ創業に参画。 2001年経営コンサルティング会社コーポレイトディレクションに入社。 2005年ネットエイジグループ(現UNITED)執行役員。モバイル広告代理店事業の立ち上げにかかわる。2005年Fringe81株式会社を創業、代表取締役に就任。2013年3月マネジメントバイアウトにより独立。2017年8月に東証マザーズへ上場。2017年に発⾒⼤賞という社内⼈事制度から着想を得たUniposのサービスを開始。2021年10月に社名変更をし、Unipos株式会社 代表取締役社長として感情報酬の社会実装に取り組む。2022年10月に著書「心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100(ダイヤモンド社刊)」を刊行。