
クレドとは、企業における行動規範のことです。
仕事をしていると、さまざまな問題が生じたり、どちらを選択すべきか迷ったりすることがあります。
そのような場合にクレドがあると「どう問題を解決すべきか」「どう行動すべきか」が明確になり、スムーズに業務が回るようになるでしょう。
本記事ではクレドとは何か、また、クレドを設定することで何が可能になるのかについて解説し、実際にクレドを作成する方法についても解説します。
ぜひご覧になり、クレドを定める必要性について一度考えてみてはいかがでしょうか。
1.クレドとは企業の行動規範のこと
クレドとは企業の行動規範のことで、「私は信じる」あるいは「信条」を意味するラテン語を由来とする言葉です。
アメリカの衛生用品の企業・ジョンソンエンドジョンソンで最初に用いられ、ほかの企業にも広まったとされています。
クレドは簡潔かつ覚えやすい言葉で作成されることが一般的です。これにより、企業内の人々が理解を深め、クレドに基づいた行動を取りやすくなります。
経営理念との違い
クレドは企業において基本となる考え方を短くまとめたものです。
行動規範ともいえますが、理想とするところをまとめたという点では、「経営理念」と言い換えることができるでしょう。
しかし、経営理念は「経営者の思い」や「企業が目指す理想像」といった意味合いが強く、どちらかといえば経営者寄りで対外的な言葉といえます。
一方、クレドは「従業員がどのように行動すべきか」という点に重きを置いた言葉であるため、従業員寄りで対内的な言葉と位置づけられるでしょう。
2.クレドを作成する目的
従業員がどのように行動すべきかについて簡潔な言葉でまとめたクレド。
企業のホームページなどで掲載されている経営理念とは目指すところは同じであっても、より従業員に寄り添った対内的な言葉です。
目的を持ってクレドを作成することで、よりクレドが浸透し、従業員にとって身近な言葉となるでしょう。
クレドを作成する目的としては、次の3つを挙げられます。
- 企業理念を浸透させるため
- トラブルに対して迅速に対応するため
- 企業内のコミュニケーションを活性化するため
企業理念を浸透させるため
企業ホームページに掲載する経営理念や企業理念は、経営者の思いを対外的に伝える言葉です。
就活時にはチェックするかもしれませんが、入社後に何度も読み直すことはないのではないでしょうか。
しかし、クレドは従業員に向けた従業員のための言葉です。
入社後も身近に触れることを前提として作成されるため、従業員はいつの間にか記憶してしまうことになるでしょう。
つまり、クレドを作成することで従業員に企業理念が浸透し、自分たちのための言葉として理解できるのです。
トラブルに対して迅速に対応するため
クレドには従業員の行動規範が簡潔な言葉で記されています。
クレドを毎日身近に意識することで、クレドに基づいた行動を取りやすくなるでしょう。
例えば、クレドに「どんなときもお客様が最優先」といった内容が含まれているとします。
営業を終了する間際にお客様が来店し、手間のかかりそうな作業を依頼したとしましょう。
クレドが浸透していれば、お客様を最優先とし笑顔で応対することができます。
たとえ「残業をできるだけしないように」と上司から言われていたとしても、迷ったときはクレドに基づいた行動をするため「お客様を最優先する」という基本精神は揺るぎません。
予想もしないようなトラブルが起こったときに迅速な対応をするためにも、クレドを作成する意義があるといえるでしょう。
企業内のコミュニケーションを活性化するため
クレドを作成することで、すべての従業員が「クレドに基づいた行動を取ろう」と考えるようになります。
簡単にいえば、クレドはすべての従業員が持つ共通認識です。
何かに対して迷いが生じたとき、トラブルが起こったときなど、さまざまな場面でクレドを思い起こし、クレドに基づいたコミュニケーションが生まれます。
つまり、企業内のコミュニケーションを活性化する目的のためにも、クレドを作成するべきでしょう。
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3.クレド作成の流れ
クレドは企業理念や経営理念にも近い位置づけですが、まったく同じではありません。
例えば経営理念には、経営者が企業を立ち上げる際などに抱いた思いなどが含まれています。
もちろん、創業時の熱い思いを従業員すべてが共有することも大切ですが、その思いがそのまま従業員の行動規範として用いることが可能かについては判断が分かれるところです。
新たにクレドを作成することで、より従業員に寄り沿った内容になることでしょう。
以下で、クレドを作成する流れを紹介します。
- クレド作成チームを結成する
- 経営陣と従業員にヒアリング調査を実施する
- クレドを作成する
(1)クレド作成チームを結成する
クレドは従業員全員の行動規範です。
つまり、どのようなクレドを作成するかによって会社の方向性が変わります。
ただし、決して軽い内容ではないため、仕事の合間にクレドを作成するというような扱いでは不十分でしょう。
クレド作成チームを結成し、企業内の一大プロジェクトとしてクレド作成を進めていきます。
また、プロジェクトとして進めることで、従業員がクレドを知り、クレドに対する意識を高めることにもつながるでしょう。
クレド作成チームには、幅広い部署の人に参加してもらいます。
経営や管理などの特定の部署や役職にいる人だけが参加すると、クレドが特定の人にしか活用できなかったり、特定の立場にいない人の心には響かないものになったりする可能性が高いからです。
できるだけ多くの部署や立場の人を巻き込み、従業員全体に響く内容のクレドをつくっていきましょう。
(2)経営陣と従業員にヒアリング調査を実施する
クレド作成チームを結成したら、次は経営陣と従業員にヒアリング調査を実施します。
企業理念や企業ミッションがすでに決まっている企業では、それらの言葉をベースにクレドに含める要素を絞り込むことができるでしょう。
もちろん企業理念やミッションは対外的な言葉ですが、クレドと相反する内容では一貫性がなく、何かトラブルが起こったときや行動を起こすときに従業員に迷いが生じる原因になってしまうことがあります。
必ず企業理念やミッション、経営理念などとリンクしたものになるように意識してクレドを作成していきましょう。
また、クレドは従業員に向けたのものであるため、経営陣の思いだけでなく従業員の思いも含める必要があります。
企業の一員として各従業員が何を意識しているのか、どのような企業人になりたいと考えているのかについてもヒアリングし、従業員の思いを伝えるクレドを作成していきましょう。
従業員が多く、すべての従業員の思いを含めることは現実的でないときには、企業理念やミッションなどからクレドの骨子をいくつか作成し、アンケートを取って従業員に選んでもらうという方法もあります。
例えば、アンケートに自由記入欄を設けておくことによって、クレド作成チームが作成した骨子以外のアイデアに触れることができ、より幅広い視点でのクレドを完成できるでしょう。
(3)クレドを作成する
企業理念やミッション、経営陣と従業員へのヒアリング調査、アンケートなどから得られた結果をまとめ、クレドを作成します。
クレドは従業員がすぐに思い起こして問題解決や意思決定に活用するための文章なので、覚えやすく印象的なものであることが重用です。
クレドの草案を作成し、経営陣と従業員の思いや理念が余すところなく含まれているか確認したうえで、すらすらと読みやすいか、記憶しやすいか検証していきましょう。
なお、企業によってクレドの形状は異なります。
例えば、短い言葉を箇条書きにしたクレドや、文章にまとめて暗唱しやすいようにまとめているクレドもあるでしょう。
どちらが企業の精神をより表しているか、また、どちらが従業員にとって覚えやすいか考え、企業に合う形のクレドを作成してください。
4.クレドを導入する5つのメリット
クレドを作成するためには、クレド作成チームを結成し、経営陣と従業員全員を巻き込んだ一大プロジェクトを実施しなくてはいけません。
チームメンバーを募ることで、他の業務に支障が出てしまう可能性もないとはいえないでしょう。
しかし、一時的な業務の停滞などの大きな犠牲を支払ってでも、クレドを導入することには大きな意義があり、メリットもあります。
主な5つのメリットについて見ていきましょう。
- 企業の目指す方向が明らかになる
- 競合他社との差別化を図れる
- コンプライアンス教育に活用できる
- 従業員のモチベーション向上につながる
- 人材育成に活用できる
(1)企業の目指す方向が明らかになる
企業理念やミッションを掲げている企業は多いのですが、言葉が抽象的で具体性に乏しいものも少なくありません。
例えば「良い会社にしたい」という強い思いは伝わっても、具体的にどうすれば良いのかについては分かりにくいというケースもあるでしょう。
一方、クレドは具体的な行動規範として作成する言葉です。
従業員が覚えてクレドに基づいた行動を取るためにも、何をすれば良いのか明確に提示します。
クレドが存在することで、企業の目指す方向が明らかになり、企業全体と従業員一人ひとりが何を行うべきか理解しやすくなることが理想的です。
(2)競合他社との差別化を図れる
クレドは従業員に向けた言葉ですが、経営陣も強く意識し、また、企業ホームページなどで公開して他の企業や人々にも示します。
クレドを読むことで、企業の特徴や従業員としてあるべき姿が明確になり、競合他社との差別化にもつながるでしょう。
例えば、クレドに「私たちはお客様の理想を実現するためのお手伝いをします」と記載している場合であれば、同業他社と比べて顧客ファーストの姿勢であるというイメージを世の中に与えられるかもしれません。
また、クレドに盛り込んだことで従業員の対応がより顧客寄りになり、イメージだけではなく現実として顧客ファーストの姿勢が実現できるでしょう。
(3)コンプライアンス教育に活用できる
社員1人ひとりの倫理観や行動が、会社のイメージを良くも悪くもします。
つまり、すべての社員優れた倫理観を持ち、その倫理観に基づいて行動することができれば、企業発展につながる可能性が高くなるでしょう。
反対に倫理観が低く、社会性・公共性に乏しい人材では、何かトラブルが起こったときに望ましい行動ができず、問題を大きくしてしまう、ひいては企業価値を下げてしまうこともあります。
倫理観を育てるためにはコンプライアンス教育が必要ですが、従業員の行動規範を示すクレドはコンプライアンス教育にも活用できるでしょう。
「常に正直に生きる」といった内容を含めることでも、従業員に嘘をつかないことや失敗などを隠さないことを意識させることができます。
例えば、飲み会で社員が酔っ払い、飲食店の看板を壊してしまったとしましょう。
コンプライアンス教育が行き届いていれば、すぐに飲食店の店主に申告し、破損したものの修繕費用と慰謝料を支払い、誠実な態度でスムーズに謝ることができます。
部署の飲み会であれば、破壊した社員だけでなく、部長などの責任者も一緒に店主に頭を下げることができるでしょう。
しかし、コンプライアンス教育が行き届いていないと、社員は看板を破壊したことを誰にも告げずに、なかったこととしていち早くその場を離れるかもしれません。
後日、目撃者や防犯カメラから事実が明らかになり「社員教育もできていない信用できない会社」という評判が立ち、企業の信頼度が著しく落ちる可能性もあります。
従業員の行動規範を明確に示すクレドを作成することで、コンプライアンス教育に活かしていきましょう。
(4)従業員のモチベーション向上につながる
クレドは従業員の気持ちを反映させて作成するので、従業員のモチベーション向上につながる効果も期待できます。
例えば、普段から個人的に意識していることがクレドに含まれているならば、企業をより身近に感じ、企業発展のために力を尽くしたいという思いに駆られるでしょう。
また、定例会議などでもクレドについて考える時間を設けるなら、従業員全員がクレドについて考えるという一体感を持つことにつながるだけでなく、より良いクレドをつくりたいという思いにもつながるかもしれません。
なお、クレドは一度作成して終わりではなく、従業員によってより良いものへと変えていくことができます。
(5)人材育成に活用できる
クレドを周知させることで、従業員としての行動規範が身につき、望ましい行動ができる人材に成長できます。
つまり、クレドは人材育成にも役立つのです。
人材育成に時間をかけることも大切ですが、クレドを作成して、行動規範のベースとなる意識の徹底を図るなら、より短時間かつ効果的に人材育成を進めていけるでしょう。
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5.クレドを企業内に浸透させる方法
優れたクレドを作成しても、企業内で周知されなければ意味がありません。
クレドをすべての経営陣と従業員に浸透させるために、次の3つの方法を実践していきましょう。
- クレドカードを配布する
- ポスターを作成する
- クレド研修を実施する
クレドカードを配布する
クレドは従業員が常に意識しなくてはいけない言葉です。
業務に当たっているときはもちろんのこと、企業に所属する人間として、プライベートの時間を過ごすときにも意識することが好ましいといえます。
クレドを覚えるためにも、クレドを記した「クレドカード」を作成し、すべての従業員に配布しましょう。
名刺程度のサイズであれば、携帯しやすく、より一層クレドが浸透しやすくなります。
ポスターを作成する
クレドを記したポスターを作成し、社内の至るところに張りましょう。
毎日、目に触れるようにすることで、無意識にクレドを覚え、クレドに基づいた行動を取れるようになります。
例えば、化粧室や給湯室、会議室などのように毎日使用する場所に貼ることで、見る機会が増え、自然とクレドを暗唱し、クレドの精神が身につくでしょう。
クレド研修を実施する
クレドカードやポスターもクレドを浸透させる有効な方法ですが、単に言葉だけを覚えてしまうと、クレドの言葉の意味が身につかない可能性があります。
クレド研修を実施して、クレドに込められた思いやクレドの具体的な活用法などを理解する機会を設けてみてはいかがでしょうか。
クレド研修を行うことで、企業人として何が必要なのかについて、より現実的に理解できるようになるでしょう。
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6.まとめ
クレドとは、経営陣と従業員に企業人として大切な行動規範を効果的に伝えるものです。
クレドを作成することで、
- コンプライアンス意識を高められる
- モチベーションを高め、従業員にやる気を起こさせる
などの効果があり、より良い企業へと成長していくことにもつながるでしょう。
企業としてのステージを一歩進めるためにも、ぜひクレドを作成してみてはいかがでしょうか。