クレドの導入について成功事例と例文から学ぼう!

事業継続のために注目を集めているクレドを導入したいけれど、何から始めたらいいのかと悩んでいる方にために、クレドを導入して成功した企業の事例を集めました。

クレドは一見、経営理念や企業理念と似ていますが、少し違います。

成功事例と例文を紹介するので、クレドの導入を成功させるための方法について、考える参考にしてください。

そもそもクレドとは?

クレドと聞くと、企業理念や経営理念との違いがよくわからないという人も少なくありません。クレドにはどのような意味があるのでしょうか。

クレドは、ラテン語で「約束」「志」「信条」を意味する言葉であり、企業に所属する従業員が全員心掛けるべき信条という意味で使われています。

具体的な行動指針として機能しており、企業改革やコンプライアンス経営の実現、組織環境開発を目的として作成する企業が多くあります。

大きな特徴は、企業理念を具体的にしたものであり、組織全体や従業員に浸透させるための仕組みを作ることです。

従業員がどう行動すればよいのかが具体的に提示されているので、業務で迷ったときに道しるべになります。

「常に現状に満足せず新しいチャレンジをしよう」「お客様が不利益になることはやらない」などがクレドの例として挙げられます。

後者のクレドだと、しっかり営業をすることで利益がしっかり出るとわかっていても、お客様にとって不利益な状況になるのであればやめるべきだと従業員が自分で判断できるようになります。

企業として大切にすべきことをはっきり具体的に示すことで、従業員の行動が統一されやすくなるのです。

企業がクレドを導入する理由

それではなぜ、近年多くの企業でクレドの導入が進んでいるのでしょうか?

本章では、企業がクレドを導入する理由を、これまでのクレドをめぐる流れとクレド導入のメリットから見ていきましょう。

不祥事を未然に防ぎ、従業員のモラルや自主性を高めるため

クレドの導入は突然始まったわけではありません。

実は、2000年代に入って企業の不祥事が相次いで起こったことがキッカケなのです。

海外の大手企業が不祥事で経営破綻したことをきっかけに、日本でも食品偽造や金融不祥事など様々な事件が明るみに出ました。

その結果、金融商品取引法や公益通報者保護法などが設定され、企業のモラル意識向上が求められるようになったのです。

こういった流れを受け、従業員の意識や行動を企業側が改革し、自主性を高めるための手段としてクレドが活用されるようになりました。

クレド導入により組織・従業員への様々なプラス効果が期待できるから

クレドを導入すると、従業員はコンプライアンス対策を踏まえたうえでクレドに沿って行動するようになり、社会への貢献が実感できるようになります。

その結果、モチベーションが上がることが期待できます。

さらに、クレドでは具体的な行動が示されているので、従業員にとっては実践しやすく意識改革も進むでしょう。

人材育成や従業員の成長にもつながります。全従業員がクレドを基盤に行動するようになれば、仲間意識や統一感が生じ、組織全体の業績アップや離職防止にも役立ちます。

クレドと企業理念・経営理念の違い

経営理念は経営的信条を、企業理念は企業の存在価値や価値観を表すものです。

つまり、企業理念は経営者の価値観を企業全体に反映させたものといえます。

クレドは、経営理念や企業理念をより具体的でさらに実践的な内容にしたものです。

経営理念や企業理念は、起業したときからの普遍的なものですが、クレドは時代や社会を反映し、流動的に変わっていくのも違いのひとつといえます。

クレドとMVVの違い

MVVは、ミッション・ビジョン・バリューの頭文字をとった言葉です。

ミッションとは、企業の使命や任務、目的であり、経営を通して実現したいことを表現するときに使用します。何に対して価値を提供し、どのように貢献するのかを具体的に表したものといえるでしょう。

ビジョンは、企業にとっての理想的な姿です。企業の方向性や目標を明示したものであり、このビジョンをもとに従業員が目指す姿を作り上げていきます。

バリューは、企業の信条であり、MVVの中でも重要視される価値観です。つまり、バリューを軸にして事業を展開し、ミッションという社会価値を実現した結果、企業のビジョンにたどりつくという流れです。

クレドは、ミッションとビジョンを支える価値観となり、実現するための指針でもあります。抽象的に表現されるミッションとビジョンを、より具体的な行動を示したものに置き換えて表現しているのがクレドなのです。

3.クレドの成功事例「リッツ・カールトン」

クレドを成功させた企業としてよく名が上がるのが「リッツ・カールトン」です。

ゴールド・スタンダードというクレドを企業理念を設定し、全従業員が徹底して実践しています。ゴールド・スタンダードの中には、クレドとモットー、サービスの3ステップを掲げ、広くそして詳細に目指す姿を提示しています。

クレドは、「お客様に心のこもったおもてなしと快適さを提供」「洗練されたくつろぎのある最高のパーソナル・サービスの施設を提供」「お客様が言葉にしない願望やニーズを先読みしてこたえるサービスの心」の3つです。

クレドを浸透させるための仕掛け

これらのクレドを従業員に浸透させるため、リッツ・カールトンにはいくつかの仕掛けがあります。

まずは、従業員の頭の中に入るよう、入社後のオリエンテーションで必ずクレドを含むゴールド・スタンダードの中身を徹底的に説明し、従業員に求めることを明確にすることです。

従業員はひとりひとりが胸元にゴールド・スタンダードが印刷されたカードを持っており、行動に迷ったらいつでも見返せるようにしています。

また、シフト開始時には毎回ゴールド・スタンダードの読み合わせを行っているのです。このようにインプットを徹底することで、深く浸透することを目指しています。

クレドを行動化させるための仕掛け

さらに、ゴールド・スタンダードを行動に移すための仕掛けも徹底しています。

お客様のためになると従業員が判断したら、決済をせずに2000ドルを使用しても構いません。お客様に感動体験を与えることで、繰り返しリッツ・カールトンを利用してもらえるのであれば、2000ドルは安いという考えです。

さらに、ミーティング時にはマネージャーが従業員からヒアリングした素晴らしい行動をその場で誉める取り組みを行ったり、素晴らしい行動を起こした従業員に50ドルが振り込まれたりします。

ゴールド・スタンダードについて議論してフィードバックする場も保証されているため、与えられたものではなく自分たちで改善し作り上げていくものだという意識を従業員にもたせているのも、効果的な工夫といえるでしょう。

つまり、クレドの活用によって社員のモチベーションを上げながら、リッツ・カールトン全体の価値を高めることに成功しているのです。

4.クレドの成功事例「ジョンソン・エンド・ジョンソン」

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは「Our Credo」と呼ばれ、日本では「我が信条」として従業員に周知されています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドとは?

「Our Credo」は「社員」「顧客」「地域社会」「株主」の4つに対して果たすべき責任が記載されています。

この4つの責任遂行を、企業の利益追求よりも優先するといった点に世界が注目しました。

「Our Credo」が生まれたのは、1943年にさかのぼります。1935年に起こった大恐慌により、企業として地域社会への貢献が必要だと当時のCEOが考えたことがきっかけでした。

以来70年以上にわたって従業員の行動基準として引き継がれてきました。しかし、1943年当時のクレドをずっと同じように引き継いできたわけではありません。時代の変化に沿ってクレドもまた変化してきたのです。

現在は4つに対して全ての責任を等しく全うすることが大切という方針ですが、過去には優劣がつけられていたこともありました。

経営陣が中心となって議論を繰り返し、現在のクレドについて検討をします。その結果、少しずつ変化し経営戦略の基盤として役立ってきました。

クレドを基盤にした対応として、1982年に起こった異物混入事件が挙げられます。

当時、ジョンソン・エンド・ジョンソンの頭痛薬に毒物が混入しており、7名の死者が出るという事件がありました。

どの時点で混入されたかわからなかったのですが、責任逃れをすることなく、アメリカ全土からその頭痛薬を自主回収しました。

回収に伴い、メディアも活用して徹底的な情報公開を行ったこともあり、回収費用は推定1億ドルにもなったのです。さらに、遺物混入が不可能な特殊な形状のパッケージを開発し、業界のスタンダードにもなりました。

このような対応をとったことで、当初は厳しく批判していたメディアが費用をかけてでも正しいことを行ったと評価し、世界中で取り上げられたのです。

常に立ち返るためのよりどころがあるというのは、企業としての強みといえるでしょう。

クレドを浸透させるための工夫

ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、クレドを従業員に浸透させるためさまざまな取り組みが行われています。

例えば、入社時にはクレドに関するオリエンテーションが行われます。じっくり読み込み、クレドを実践する大切さについて実感できる場であり、従業員のどのような行動に反映できるのかを学ぶ場です。

さらに、会社で配布される手帳にクレドが大きく記載されていたり、オフィスのフロアや会議スペースにも貼りだされています。

入社時だけではなく、年次別の研修やグループ、チーム、部門ごとにも定期的もしくは自発的なクレドのワークショップが行われているのも、クレドが浸透している要因のひとつです。

会社が作って与えられたものではなく、自分事にするための取り組みといえます。

ワークショップを行うことで、企業全体として目指す姿だけでなく、個人としてどうあるべきかが見えてくるのです。

クレドを行動化するための工夫

社内では、クレドを実行できているか、クレドについてどう考えているかについて、調査が行われています。

そうすることで、組織ごとの意識の高さが明確になるのです。

例えば、評価項目のひとつに「リーダーがクレドに即した行動をとれているか」というものがあります。成果を上げればよいというわけではなく、リーダーがとるべき行動がクレドによってはっきりしているため、リーダーとしての責任と成果の両方が求められるのです。

このようにクレドを徹底することで、ジョンソン・エンド・ジョンソンは76期にもわたって増収を続けています。

5.クレドの成功事例「楽天」

楽天のクレドは「成功のコンセプト」として設定されています。簡潔に書かれているため、従業員は行動に落としやすくなっています。

楽天のクレドとは?

楽天のクレドは「常に改善、常に前進」「Professionalismの徹底」「仮説→実行→検証→仕組化」「顧客満足の最大化」「スピード!!スピード!!スピード!!」の5つです。

シンプルで覚えやすく、理解しやすいのが特徴といえます。

従業員一人ひとりがプロフェッショナルの一員として自覚をもって業務にあたるために、クレドを活用しています。

さらに、顧客満足度の最大化を意識し、業務を遂行することもクレドの活用により期待されています。

6.クレドの作成方法

クレドの作成にあたっては、他社を真似してもうまくいきません。正しくステップを踏み、自社に合ったクレドを作成しましょう。

ステップ① 目的の明確化

まずは、クレドを何のために作成するのかという目的をはっきりさせます。

目的がはっきりしていないと、効果的なクレドの作成には結びつきません。従業員の価値観にばらつきがある、モチベーションが低いなど課題を上げ、その解決を目的にクレド作成に取り組みましょう。

ステップ② 経営者への提案、承認

次に、経営者への提案と承認を行います。企業の価値観に沿っていないと、従業員を混乱させてしまうリスクがあります。できれば経営者自身に考え、作ってもらうのがベストです。

従業員が一体となり、会社が成長するために必要な行動指針が何なのかを考えていきましょう。

ステップ③ 従業員へのヒアリング

クレドの作成にゴーサインが出たら、従業員へのヒアリングを行います。

クレドは従業員の行動指針となるものなので、ヒアリングは欠かせません。

せっかく作ったクレドに不満が出ることのないよう、あらかじめアンケートなどで目指す姿や現場で感じる課題などをヒアリングし、現場が困っていることをつかむようにしましょう。

ヒアリングができたら、その内容をベースにクレドの作成に入ります。

経営者がベストな意思決定ができるよう、たたき台を作成したり、考えるための材料を揃えたりすることで、スムーズに作成が進みます。

クレドの方向性が定まったら、いよいよ文章にしていきましょう。あまりにも抽象的だと、機能しなくなります。

反対に具体的すぎると応用しにくくなるため、幅広い場面で使え、行動の際に判断基準となるような文章にしていくことがポイントです。

7.クレド作成の注意点

クレドを作成する際には、機能しにくい内容にならないよう気を付ける必要があります。

ありきたりな内容で形骸化

例えば、ありきたりな内容のクレドだと、形骸化しやすいです。

社会貢献する、お客様を大切にするなどの文言は、会社の独自性がなく浸透しにくくなります。

また、実際に行動するときの判断基準としてもイメージがわきません。どの会社にも当てはまるようなクレドは、避けるようにしましょう。

抽象度が高すぎる

同じく、抽象度の高い内容も要注意です。

例えば、世の中の課題を解決する、お客様の幸せを実現するといった内容だと、具体的な行動がイメージしにくく浸透しません。

行動の判断基準になるかどうかという視点から、抽象度について判断していきましょう。

8.クレドを導入するときの注意点

よいクレドができたからといって、それだけで企業がよくなるわけではありません。

従業員にしっかり浸透し、行動化できることが大切なのです。そのために、導入するときにいくつか気を付けたいことがあります。

まずはクレド導入の目的を、従業員が理解することです。

会社側から一方的に押し付けてしまったのでは、共感を得られません。ひどい場合には、反発を起こすこともあります。

やらされ感を生み出さないためにも、アンケートなどによって意見を聞く場を用意することが大切です。

自分たちもクレド作成にかかわっているという意識がもてれば、自然と行動に移してくれるようになります。

また、クレドの内容と行動が矛盾しないことも大切です。

クレド作成者が内容を的確に理解し、クレドに沿った行動を常に意識しなければなりません。従業員の数が多いほど、意見の違いも多くなり、反感が生まれやすい環境といえます。注意点を理解したうえで、適切に作成し導入しましょう。

クレドを使って会社をレベルアップしよう!

クレドは従業員が行動するときのよりどころといえます。

クレドの作成と導入が成功すれば、従業員の方向性が一致し、会社に一体感が生まれます。どう行動すればよいか、なかなか判断できず迷ったり悩んだりする従業員も少なくありません。

クレドが上手く機能すれば、悩んだときこそ個人としても企業としてもレベルアップできる機会になるのです。