社員教育の必要性と実際の教育方法や導入の進め方を解説

毎年春になると、大勢の新卒者が入社してきます。また季節を問わず、中途採用で入ってくる社員も多くいます。新入社員がいち早く社内の雰囲気やルールに慣れるために必要なのが「社員教育」です。しかし、社員教育がきちんと行えていなければ新入社員たちは不安を抱き、路頭に迷ってしまうようなことも……。

そこで今回は、社員教育が必要とされる理由や、新たに内容を見直す際のポイントについて解説します。


1 社員教育とは?

社員教育とは、企業側が社員に対して行うさまざまな教育のことです。社員教育の目的は大きく2つに分かれています。

1つは、社員に対して企業の一員としての意識を持ってもらうこと。仕事をするうえでの社内の共通認識や企業理念など、企業の看板を背負って立つ社員としての意識を育むことを前提に、内容が組まれています。顧客折衝の機会が生まれた際に、企業を代表する人間として接するわけですから、社員としての自覚を持ってもらうことは非常に重要なのです。

2つ目は、仕事に関係する知識やスキルを身につけてもらうことです。戦力として活躍できるよう、企業を挙げて人材の育成に取り組みます。


2 社員教育はどうして必要?4つの理由

社員教育が必要となる理由は、主に以下の4つです。社員のスキル向上といった業務面だけでなく、社外からの信頼を集めるためなど、目的はさまざまです。

1:社員としての自覚を持つ
2:目標意識を持った行動
3:社外からの信頼性を高める
4:社員の能力を高めて社内貢献

2−1 社員としての自覚を持つ

新入社員がこれまでに歩んできた道は多様なものです。新卒者はそれぞれ異なる学生時代を過ごし、中途採用者の場合は、以前に所属していた企業で独自の経験を積んできた人が多くいます。そのため、一度自社の社員としての自覚と共通認識を持ってもらうことが、社員教育の重要な役目です。

新卒者の場合は合わせて社会人としての心構えとビジネスマナーを学びます。報告や連絡の習慣づけから取引先への対応など、社会人としてのいろはを学んでもらうのです。

中途採用者の場合は、これまでの社会経験を活かしてもらいつつも、自社のルールや考え方になるべく早く適応してもらう必要があるため、社員教育の場が必要となります。2−2 2:目標意識を持った行動

新入社員として企業の理念を理解し、売上や社会貢献につながる行動を自主的にとれるようになることも、社員教育の重要な意義です。

2−2 新卒者は社会人としての基礎を学ぶ

新卒者の場合は、各種リテラシーについても理解を深めてもらう必要があるでしょう。SNSなどを経由した情報漏洩や、公共の場で社会人としてふさわしくない行為を取らせないために、しっかりと教育する機会が必要です。企業の看板を背負った社会人として、決して恥ずかしくない行動が取れるようになることが重要といえます。

2−2−1 中途採用者には企業理念に共感してもらう

中途採用者の場合も、企業の理念に共感し、理解してもらう必要があります。企業の発展のためには、今取り組んでいる事業の目的と将来的なビジョンを理解し、それに即した行動をとってもらうことが重要だからです。また、コンプライアンスの厳守については、新卒者と同じかそれ以上に意識して日々の業務に取り組んでもらいましょう。

2−3 社外からの信頼性を高める

社外からの信頼性を高めることも、社員の立派な役割です。普段の業績がどれだけよかろうと、社員1人の不祥事で一気に企業の経営が厳しくなる場合があります。従業員が業務中の不祥事をSNSに投稿して炎上した事例について、覚えていらっしゃる方もいるかと思います。コンプライアンス上の問題を防ぎ、健全な運営を続けることが、周囲の企業からの信頼を集めることにつながっていくのです。

2−4 社員の能力を高めて社内貢献

社員一人ひとりの能力が高まれば相乗効果を生むことがあります。社員同士が切磋琢磨し協力し合うことで、社内の業績アップにつながっていく場合があるのです。そのためには、企業についての深い理解と、ビジネススキル向上のための社員教育が欠かせません。ただし、社員個人の能力や入社からの年数なども考慮して、それぞれのステージに合わせた的確な教育を行う必要があります。


3 社員教育で導入すべき5つの内容

社員教育にはさまざまな方法があります。この章では厳選した5つの内容をご紹介します。

1:OJT
2:社員研修
3:社内マニュアルの作成
4:外部セミナーへの参加
5:e-ラーニング

3−1 OJT

OJTとは「On the Job Training」の略で、現場に入って実務経験を積みながら行われる教育のことです。多くの経験を持つ上司や先輩社員のもとで、最初は初歩的な内容から学んで行き、次第にレベルの高い業務に手をつけていきます。実戦を経験しながら学ぶ機会は貴重な場であり、即戦力の育成に効果的だとされています。

しかし、教育担当者の適性や教育スキルにより、社員の練度に差が出てしまうことが懸念されます。そのため、OJTでは教育者の属人的な教育体制にばかり依存せず、マニュアルを整備するなどの工夫が必要です。

3−2 社員研修

新卒者や中途採用者など、新入社員を集めて社員研修を行う企業は多くあります。基本的な企業理念の理解から、社内制度の把握、業務内容の基本など、学ぶことは多岐に渡ります。また、各部署の担当者が交代で部署の特色や業務内容について説明する機会が設けられている企業もあります。

3−3 社内マニュアルの作成 

社員研修を行う際には、マニュアルの存在が非常に大きなものになります。決まったフォーマットの内容を学ぶことで、新入社員同士のスキルの格差が生まれにくくなるのです。また、社内で研修を行う場合、どうしても研修担当者のスキルや知識に内容が左右される場合が出てきます。マニュアルによって属人化を防ぐ効果も期待できます。

3−4 外部セミナーへの参加

社員研修の一部やセミナーなどは、外部委託する方法があります。ビジネスマナーやパソコンの基本スキル、専門的な業務内容については、外部に委託することで専門家から直接教わる機会が生まれ、社内で行うよりも効果を発揮する場合があります。一般的なビジネスマナーについては、社内で学ぶよりも外部で他社の社員も混ぜて行った方が自社への責任感が生まれ、より深く学べる機会も多くあるのです。

3−5 e-ラーニング

一度に新入社員を集める時間や場所がない、という企業は、「e-ラーニング」という方法をとる場合があります。e-ラーニングとは、インターネット上で行う研修で、パソコンやタブレット端末を見ながら、動画やスライドなどの視覚的情報によって理解度を深めていく研修方法です。e-ラーニングは社内で作成する方法もありますが、外部に委託してサービスを提供してもらうケースも多くあります。

e-ラーニングは一度作成すれば何度も使えるため、研修にかける人員の負担を減らすことができます。しかし、受講者の理解度を測ることが難しく、中には内容を理解しないまま流し見する社員がいるかもしれないため、後日に何らかのテストを行い理解度を把握するとより確実でしょう。


4 社員教育のタイミングと適切な内容

社員教育の意味や中身を確認したところで、次は実施すべきタイミングについても把握しておきましょう。基本的には以下の4つのタイミングで行います。

入社時:基本的な内容
配属時:実務内容
昇進時:マネジメント関連
定期的:社内規範の周知

4−1 入社時:基本的な内容

新卒者は直前まで学生だったので社会経験がありません。そのため、入社直後に基本的な内容の社員教育を行いましょう。入社して間もない時期はまだ仕事を任せられないタイミングであるため、ビジネスマナーなど社会人としての基礎を学んでもらうためのよい機会です。

中途採用者の場合は、ビジネスマナーなど基礎的な知識はすでに身につけているため、初歩的な研修や教育は不要です。企業独自のルールや社内風土の理解など、中途採用者がすぐに慣れて仕事で能力を発揮できるよう、サポートする内容の社員教育を行うのがよいでしょう。

4−2 配属時:実務内容

入社時の研修が終わると各部署に配属され、研修が行われます。ここからはOJTによる研修がメインになりますが、仕事を早く覚えてもらう意味でも、新卒、中途採用者ともに効率的な社員教育の方法といえるでしょう。

しかし、OJTは教育担当者の技量に左右されやすく、配属先によっても新入社員間のスキルの差が生まれやすい部分があります。そのため、教育担当者は普段から積極的に知識の更新を行い、よりよい教え方ができるように心がける必要があるでしょう。研修を受ける側の立場になって考えることが重要です。

4−3 昇進時:マネジメント関連

昇進によって役職が変わったり、部署移動になったりすることがあります。社内での立場が変われば環境も大きく変わり、人によってはプレッシャーや不安を感じることも少なくありません。人の上に立つのが苦手という人もいるでしょう。これまでにマネジメントの経験がなければ、突然部下を任されて路頭に迷ってしまうかもしれません。

こうした昇進時にもしっかりと社内教育でフォローする体制が必要です。管理職向けの社員教育を行い、マネジメント時にありがちな不安を解消し、失敗を防ぐためにフォローしていきましょう。

4−4 定期的:社内規範の周知

社員教育のタイミングは大きく分けて、入社時、配属時、昇進時の3回に分けられます。しかし、その3つのタイミングを過ぎたら終わりというわけではありません。社員には常に学ぶ姿勢を持ってもらうことが重要だからです。仕事に慣れてきて少しだれてきたときにこそ、しっかりと引き締めなくてはなりません。

特に、会社が貸与しているパソコンやスマートフォンなどの扱いなど、セキュリティ面の教育は定期的に必要です。ふとした気の緩みが、外部にパソコンやスマートフォンを置き忘れてしまうなど、大問題に発展しかねません。また、企業は成長の場面ごとに理念や目標を変化させます。社員に対してそれらを周知徹底することも、定期的な社内教育として欠かせないものです。


5 社員教育の計画を立てる4ステップ

最後に、社内教育の計画を4つのステップをもとに立てて行きましょう。
以下の順番で計画することで、スムーズに策定できます。

1:現状の課題確認
2:目標の設定
3:カリキュラムの作成
4:社員教育の結果を確認

5−1 現状の課題確認

社員教育をすでに行っている場合も、これから実施しようという場合でも、現状の課題を洗い出す必要があります。OJTの教育係になっている社員にヒアリングを行いましょう。現状の課題点を明確にすることで改善案が見えてくるはずです。それらの問題解決を踏まえて、社員教育で「どのような社員像に育てたいのか」を明確にしていきます。

5−2 目標の設定

社員の育て方のイメージが掴めたら、次は目標計画の設定です。現場担当者からヒアリングして得られた情報をもとに、社員教育のゴールともいえる目標を設定します。同時に、どれくらいの期間までに実現できるのかも明確にしておきましょう。きちんと期限を設けることで、スピード感を持って目標の実現にあたれます。

また、企業にとってふさわしい人物像を明確にしておくのが大切です。それに合わせた社員教育により、自社への深い理解を示す社員を多く育成できるようになるでしょう。企業の上層部だけでなく、現場責任者やOJTの担当者にもヒアリングし、社員教育で伸ばすべき部分を明確にしておきます。

5−3 カリキュラムの作成

問題点が洗い出せたら、それをカリキュラムに落とし込んで行きます。社員からのヒアリングでネックになっている業務内容があったり、スキルが不足している社員がいたりする場合は、その問題点を解決するために必要な内容を盛り込むなど、具体的なカリキュラムを組んでいくのです。

以下は、新卒者と中堅社員・中途採用者用のカリキュラム例です。

新卒者用の社員教育カリキュラム例
・企業理念、求める人物像の共有
・就業規則・コンプライアンスの理解
・基本的なビジネスマナーの理解
・パソコンスキルの向上
・効率的に仕事を進める方法の理解

中堅社員・中途採用者の社員教育カリキュラム例
・企業理念、求める人物像の共有・再確認
・社内ルールの理解・再確認
・コミュニケーションスキルの向上
・将来的なキャリアの意識
・リーダーシップを身につける

5−4 社員教育の結果を確認

社員教育を実施した場合、必ずデータを取るように心がけましょう。社員教育を毎回行って終わりにしていたのでは、よかった部分と悪かった部分がはっきりとせず、ノウハウの蓄積ができません。教育係の社員だけでなく、実際に社員教育を受けた社員にもアンケートを取るようにするとよいでしょう。受講する側だからこそ見えている部分が多くあるため、今後のカリキュラムの更新に役立つはずです。


6 まとめ

社員教育は社内だけでなく、自社を背負って立つ社員にとって、自覚を持ってもらうためにも重要だとわかりました。新卒社員と中途社員では学ぶ内容に違いはありますが、基本は企業の理念や経営方針について深く理解し、立場に合わせた行動を取れるようになることが欠かせません。

また、社員教育は教える側だけの視線だけでは、改善が難しいことがおわかりいただけたでしょう。教育を受ける側と施す側の双方の意見を汲み取り、適切なカリキュラムを組んでいくことが、社員教育を形骸化させず、タイミングごとに合わせた適切な研究を行なっていくために欠かせないのです。

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