
エンゲージメントサーベイとは、従業員が会社や商品に対してどれくらい愛着心を持っているかを調査することです。
また、従業員のエンゲージメントを調査することを通して、「コミュニケーションの不足」や「従業員の主体性の欠如」のような職場の改善しなければならない具体的な課題を明確にすることができます。
「エンゲージメント」という言葉自体に馴染みがない人も多いかもしれませんが、「従業員が会社に貢献したいという気持ち」「会社と従業員の間の一体感や信頼関係」という意味で使われていて、離職率や会社の生産性にも関わる重要な指標であることが証明されています。
実際に、エンゲージメントサーベイによって明らかになった人事上の問題を解決することによって、業績や離職率が改善したといった大きな成果をあげている会社もあります。
ただ、エンゲージメントサーベイを取り入れている会社はまだ少ないため、
「そもそもエンゲージメントサーベイってどういうものなの?」「エンゲージメントサーベイを実施することで本当に効果があるの?」といった疑問や
「どんなステップで実施すればいいの?」「具体的な実施方法にはどんなものがあるの?」といった不安を持つ人もいるでしょう。
そこで本記事では、
◎エンゲージメントサーベイとは?
◎従業員満足度とエンゲージメントの違い
◎エンゲージメントサーベイを実施する効果とは?
◎エンゲージメントサーベイ準備から課題解決までの具体的ステップ
◎エンゲージメントサーベイの実施方法(おすすめサービス含む)
◎エンゲージメントサーベイを行う際に押さえておくべき注意点
のような項目をあげて、エンゲージメントサーベイの全てについて徹底的に解説していきます。
本記事を読めば、職場にエンゲージメントサーベイを取り入れるかどうかの判断ができ、すぐに実施につなげられるでしょう。
1.エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイとは、従業員が会社や商品に対してどれくらい愛着心を持っているかを調査することです。
エンゲージメント(engagement)は直訳すると「契約」や「婚約」という意味がありますが、人事用語としては主に「従業員の会社や商品への愛着心」や「従業員が所属する会社に貢献したいという気持ち」という意味で使われています。
さらに、最近では「会社と従業員の間の一体感や信頼関係」「会社と従業員が互いに貢献し合う関係」のような会社からのアプローチを含めた概念であるとも言われています。
また、「サーベイ」は「調査」という直訳そのままの意味で使われています。
エンゲージメントサーベイでは、従業員にいくつかの質問を答えてもらうことによって、会社に対する愛着心の度合いを測ることができ、さらに、会社が抱えている人事上の課題を明確化します。
そして、課題解決のための施策につなげていくことで、エンゲージメントの高い働きやすい職場へと改善させることが可能なのです。
<エンゲージメントサーベイの種類> エンゲージメントサーベイにおいては、年に1回など大規模に行う調査をセンサス、月に1回など高頻度に小規模に行う調査をパルスサーベイと呼んで区別することもあります。 |
2.エンゲージメントサーベイが注目されるようになった背景
エンゲージメントサーベイが注目を集めているのは、終身雇用や年功序列といった昔からの制度が崩壊し、従業員が会社への貢献よりも個人のスキルアップを重視するようになったことが背景にあります。
つまり、昔からの制度が崩壊し働き方の変換期にある現代においては、従業員のエンゲージメントが低下してきていると言えるのです。
実際に、日本における従業員のエンゲージメントは、アメリカの調査会社ギャラップ社が2017年に発表した調査結果「State the Global Workplace:Gallup 2017」によると、139カ国中132位という結果で、『非常に低い』と報告されています。
従業員の会社へのエンゲージメントが低い状態にあると、優秀な人材が流出してしまったり、従業員のモチベーションが下がってしまったりなど、会社に大きなデメリットをもたらす可能性が高いと指摘されています。
そのため、多くの会社が、優秀な人材の確保や会社の生産性向上につなげるために、従業員のエンゲージメントの度合いを調査する『エンゲージメントサーベイ』を実施するに至っているのです。
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3.【一覧表付き】従業員満足度とエンゲージメントの違い
エンゲージメントサーベイとは、「従業員の会社へのエンゲージメントの度合いを調査すること」と、解説しました。
ただ、エンゲージメントという言葉自体が、日本ではまだ新しい概念でもあるため「イメージするのが難しい」と感じる人もいるでしょう。
そこで、ここからは混同しやすい概念である『従業員満足度』と、『エンゲージメント』を比較することによって、エンゲージメントについてのより深い理解をサポートしていきます。
3-1.従業員満足度とは会社の制度や環境に対しての満足度のこと
従業員満足度は、福利厚生や適切な勤務時間など会社の制度や環境に対しての満足度のことで、会社自体に対する愛着心を指すエンゲージメントとは異なる概念です。
従業員満足度は、会社の処遇や環境における満足度によって成り立っているものであるため、会社の制度や環境が変わった途端に会社に失望して、従業員の離職が増える可能性があります。
従業員をつなぎとめている報酬や福利厚生に魅力がなくなれば、会社を去る決断をする従業員が多くなるのは当然のことでしょう。
一方で、会社自体への愛着心であるエンゲージメントが高い会社では、会社の制度や環境が変わった途端に従業員が会社を去るという事態にはなりにくいです。従業員と会社との関係は、処遇や環境ではなく信頼関係や貢献したい気持ちで成り立っているからです。
また、従業員満足度の向上と会社全体の生産性向上との相関関係は証明されていないこともリスクとして挙げられます。
一方で、エンゲージメントに関しては、エンゲージメントの向上と会社全体の生産性向上についての相関関係は証明されています。
3-2.従業員満足度とエンゲージメントの違いまとめ
従業員満足度とエンゲージメントの違いについて一覧表にまとめました。
<従業員満足度とエンゲージメントの違い>
|
従業員満足度 |
エンゲージメント |
特徴 |
福利厚生や報酬に対する満足度のこと |
会社に対する信頼関係や貢献したい気持ちのこと |
度合いを図るための 調査項目 |
・業務量は適切か? ・福利厚生に満足しているか? |
・会社の業績アップのために積極的に貢献したい気持ちはあるか? ・上司や部下と適切な信頼関係を築けているか? |
向上させるメリット |
・安定した制度と環境の下、安心して働くことができる ・社内秩序が整う |
・離職率の低下につながる ・会社の生産性向上につながる |
注意点 |
・顧客満足度は制度が変わった際に急に下がる可能性がある ・会社の業績アップや生産性につながる科学的証拠はなし |
・定期的に測定する必要があるため従業員の手間を要する ・会社ごとに改善策が異なり、向上させるためには時間がかかることが多い |
上記表にあるように、エンゲージメント向上のためにはいくつも施策を実行し、効果を測定しながら試行錯誤していくことが必須なので、エンゲージメント向上には時間がかかる可能性が高いというデメリットがあります。
しかし、エンゲージメントの向上は離職率の低下や会社の生産性向上と相関関係が証明されていることから、従業員満足度と比べても向上させるメリットが大きいと注目を集めています。
エンゲージメント向上施策に潜む7つの落とし⽳とは|社内施策を進める上でのポイントを徹底解説
4.エンゲージメントサーベイを実施することで得られる2つの効果
「エンゲージメントサーベイを実施して本当に効果があるの?」と疑問に感じる人もいるかもしれませんが、下記2つの大きな効果を得ることができます。
・会社やチームの人事上の課題解決につなげられる ・エンゲージメント向上により会社の生産性や離職率を改善 |
効果を知ることでエンゲージメントサーベイの有用性がより理解できるようになります。効果を証明するデータを交えて詳細に解説していきます。
4-1.会社やチームの人事上の課題解決につなげられる
エンゲージメントサーベイを実施することで、会社の人事における課題が明らかになって、会社側は解決のための施策を打つことができます。すぐに課題解決に動くことで、問題悪化や会社への大きなダメージを防ぐことが可能です。
エンゲージメントサーベイで明らかになる課題には、具体的には下記のようなものがあります。
・コミュニケーションの不足 ・マネジメントが上手く回っていない ・従業員の自己成長に対するモチベーションが低い ・従業員の主体性の欠如 |
現場の空気感を根拠に「コミュニケーションが不足している」といった問題意識を持っても、課題解決の行動にまでつなげるのは難しいと感じる人も多いでしょう。
しかし、エンゲージメントサーベイでは、課題が客観的な数字などで提示されるため、会社全体で課題を共有するきっかけになり、改善のための行動への大きな原動力につなげることができます。
4-2.エンゲージメント向上により会社の生産性や離職率を改善
エンゲージメントサーベイを行うことで人事上の課題を把握し、課題を解消していくことで、従業員のエンゲージメントが向上していきます。
エンゲージメントを向上させることには大きなメリットがあると証明されていて、最終的には離職率の低下や会社の生産性向上につながることが下記のようなデータで証明されています。
参考データ元:「Driving Performance and Retention Through Employee Engagement」CEB社
参考データ元:「The Relationship Between Engagement at Work and Organizational Outcomes」ギャラップ社
離職率のデータからは、エンゲージメントが高い従業員はエンゲージメントの低い従業員と比べて約87%離職率が低いことが分かります。
また、エンゲージメントスコア上位25%と下位25%の会社を比較したデータでは、エンゲージメントが高い会社の方が生産性も売上高も利益率も高くなり、品質の欠損や欠勤率は低くなることが分かっています。
つまり、エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、従業員のエンゲージメント向上を図ることで、離職率の低下や会社の生産性アップといった会社への大きなメリットをもたらすということが証明されているのです。
エンゲージメントを高めるメリットや方法については下記の記事で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
【エンゲージメントを高めるための具体的方法と成功した企業の施策例】
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