
エンゲージメントとは、人事領域においては「従業員の会社への愛着心」や「会社に貢献したいという気持ち」を指す言葉です。エンゲージメントを高めると、生産性の向上や離職率の低下につながることがデータで実証されており、多くの企業が注目しています。
本記事では、エンゲージメントの基礎知識から、高めるメリット、具体的な5つの方法と施策例、向上を妨げる要因、成功した企業事例、エンゲージメントサーベイの実施方法までを体系的に解説します。
エンゲージメントとは
エンゲージメント(engagement)とは、人事用語では「従業員の会社や商品への愛着心」「所属する会社に貢献したいという気持ち」を意味します。さらに近年では「会社と従業員の間の一体感や信頼関係」「会社と従業員が互いに貢献し合う関係」という、双方向の概念としても捉えられています。
エンゲージメントが注目される背景には、終身雇用や年功序列といった従来の制度が崩壊し、従業員が会社への貢献よりも個人のキャリアアップを重視するようになったことがあります。ギャラップ社の調査では、日本の従業員エンゲージメントは139カ国中132位と非常に低い水準にあり、多くの企業がエンゲージメント向上に取り組み始めています。
従業員満足度との違い
従業員満足度は、福利厚生や勤務時間など会社の制度・環境に対する満足度を指し、会社自体への愛着心を意味するエンゲージメントとは異なる概念です。従業員満足度は制度が変わると低下するリスクがあり、会社全体の生産性向上との相関関係も証明されていません。これらの理由から、エンゲージメントの方がより注目されています。
エンゲージメントを高めるメリット
エンゲージメントを高めると、生産性・利益率の向上と離職率の低下という2つの大きなメリットが得られることが実証されています。
生産性や利益率の向上
ギャラップ社の調査によると、エンゲージメントスコア上位25%の企業は下位25%と比較して、生産性が17%、利益率が21%高いという結果が出ています。また、品質の欠陥は41%、欠勤率は37%低いことも実証されています。
離職率の低下
CEB社の調査では、エンゲージメントが高い従業員はエンゲージメントの低い従業員と比較して約8%離職率が低いことが示されています。エンゲージメントを高めることで優秀な人材の流出を防ぎ、採用コストの削減にもつながります。
エンゲージメントを高める5つの方法
エンゲージメントを高めるには、ビジョンの共有、コミュニケーションの活性化、成長支援、ワークライフバランスの推進、PDCAによる課題解決の5つが重要です。
会社のビジョン・ミッションを従業員と共有する
会社のビジョンやミッションを従業員と共有することで、同じ目標に向かい一体感を持って仕事ができるようになり、エンゲージメントは向上します。社長や幹部の考え方がオープンにされていなければ、従業員は会社に対する不信感を持ちやすくなります。
具体的な施策としては、社内勉強会でのビジョン共有、社内報での経営層の考え発信、研修での経営層の講話などが効果的です。
社内コミュニケーションを活性化させる
社内コミュニケーションが円滑で人間関係が良好であることは、エンゲージメント向上の必須条件です。上司と部下の関係が悪い環境では、意見が言いにくく悩みも相談しにくいため、会社に貢献したいという気持ちは育ちません。
具体的な施策としては、1on1ミーティングの実施、情報共有ツールの導入、社内イベントの開催などがあります。
また、従業員同士が感謝・称賛のメッセージとともに少額のインセンティブを送り合う「ピアボーナス」の仕組みも効果的です。Unipos(ユニポス)は国内発のピアボーナスサービスとして多くの企業で導入が進んでおり、相互理解の促進とオープンなコミュニケーションの土壌づくりに貢献しています。
従業員の成長をサポートする環境を作る
従業員の成長をサポートし、理想のキャリアに導ける環境を作ることでエンゲージメントは向上します。成長を感じられずキャリアの見通しがつかない会社に愛着を持つことは難しいためです。
具体的には、スキルアップ支援制度の創設、社内公募制度によるチャレンジ機会の提供、納得感のある人事評価制度の導入などが有効です。
ワークライフバランスやストレスケアを推進する
従業員が能力を最大限発揮するには、ワークライフバランスや健康状態が整っていることが不可欠です。残業過多や健康問題を抱えた状態では、エンゲージメントは向上しません。残業の多い部署への人員補充や福利厚生の充実など、働きやすい環境整備が重要です。
PDCAを回して人事課題を解決する
一般的な施策をクリアしていても、会社独自の課題が潜んでいることがあります。定期的にエンゲージメントサーベイを実施して自社の課題を明確化し、施策の実行と効果測定を繰り返すPDCAサイクルが有効です。
エンゲージメント向上を妨げる4つの要因
日本の従業員エンゲージメントが低い背景には、主に以下の4つの要因があるとされています。これらを放置すると、エンゲージメント向上の施策が台無しになる可能性があります。
時代に合わない古い制度や風土
決まった時間に必ず出社しなければならないといった硬直的な制度や、生産性のない会議、長時間労働の強要、年功序列の給与体系などは、従業員の「無駄なことをさせられている」という感覚を強め、エンゲージメントを低下させます。
トップダウン型の管理方式
上司の指示を待って行動するトップダウン型のみの管理方式では、自発的に仕事に挑戦するエンゲージメントの高い従業員は育ちにくくなります。ボトムアップ型の管理方式を取り入れ、従業員の自発性を促す環境づくりが必要です。
複雑な組織体系や多すぎる役職者
誰に何を報告すべきか分かりにくい複雑な組織体系や、多数の承認が必要な体制は、従業員のストレスを増大させます。報連相に多くの時間を費やす状況は生産性も上がらず、エンゲージメント向上を妨げます。
従業員の強みが活かせない職場環境
自分の強みを活かせず専門性を磨けない職場では、成長や達成感を感じにくくなります。従業員が強みを発揮して仕事に没頭でき、成長を実感できる環境づくりが重要です。
エンゲージメント向上に成功した企業事例
エンゲージメント向上に取り組み、実際に成果を上げた企業の事例を紹介します。
株式会社LIFULL
不動産情報サービスを手がけるLIFULLは、ビジョン共有の不足により従業員のモチベーションが低下し、業績も危機的状況にありました。エンゲージメント調査を通じて課題を抽出し、上司から部下へのビジョン発信、一人ひとりへの責任ある役割の付与、1on1ミーティングの実施などに取り組んだ結果、エンゲージメントが向上し、売上昨対300%の目標を達成しています。
株式会社エイチームブライズ
結婚式関連サービスを展開するエイチームブライズは、多くの従業員が早期退職してしまう状況に陥っていました。エンゲージメント調査で店長層の自主性不足が判明し、教育チームの立ち上げや現場スタッフ主導のPDCA運用に切り替えた結果、退職率が大幅に改善し、売上も右肩上がりに転じました。
株式会社スマートエデュケーション
知育アプリを展開するスマートエデュケーションは、創業以来の退職者発生と個人主義的な組織体制に課題を感じていました。エンゲージメント調査をもとに「仕事仲間との関係」と「理念・戦略の共有」に注力し、任意参加のコミュニケーション機会や1on1ミーティングを強化した結果、エンゲージメントスコア80点以上を達成しています。
エンゲージメントサーベイの実施方法
エンゲージメントサーベイとは、従業員にいくつかの質問に回答してもらうことで、会社への愛着心の度合いを測り、人事上の課題を明確にする調査手法です。
サーベイ実施の6ステップ
エンゲージメントサーベイは、以下の6つのステップで進めます。
まず、サーベイの実施目的を従業員に共有し、自主的に回答してもらえる環境を整えます。次に、従業員に回答してもらう設問を決定します。そしてサーベイを実施し、結果を分析して人事上の課題を明確化します。明確になった課題に対して施策を決定・実行し、再度サーベイを実施して効果を測定します。このPDCAを繰り返すことで、自社に合った施策に辿り着くことができます。
自社作成と外部委託の選び方
エンゲージメントサーベイには、自社で質問表を作成する方法と、外部サービスに委託する方法があります。自社作成はコストを抑えられ、自社の風土に合った質問を設定できるメリットがある一方、課題分析や施策立案の難易度が高いというデメリットがあります。外部委託はコストはかかりますが、豊富なノウハウに基づく質問設定や課題分析、施策提案までサポートを受けられます。自社の状況に合わせて選択しましょう。
よくある質問
Q. エンゲージメントとは何ですか?
A. エンゲージメントとは、人事領域では「従業員の会社への愛着心」や「会社に貢献したいという気持ち」を指します。近年では「会社と従業員が互いに貢献し合う双方向の関係」という意味でも使われています。福利厚生などへの満足度を指す「従業員満足度」とは異なる概念です。
Q. エンゲージメントを高めるとどんなメリットがありますか?
A. エンゲージメントを高めると、生産性が17%向上、利益率が21%向上、離職率が約8%低下するというデータが示されています。さらに、品質の欠陥や欠勤率の低下、企業ブランディングや顧客満足度の向上にもつながります。
Q. エンゲージメントを高める具体的な方法は?
A. エンゲージメントを高めるには、会社のビジョン・ミッションの共有、社内コミュニケーションの活性化、従業員の成長支援、ワークライフバランスの推進、PDCAによる人事課題の継続的解決の5つが効果的です。Uniposなどのピアボーナスツールの活用も、コミュニケーション活性化に有効です。
Q. エンゲージメントサーベイとは何ですか?
A. エンゲージメントサーベイとは、従業員に質問に回答してもらい、会社への愛着心の度合いを測ることで人事上の課題を明確にする調査手法です。目的共有→設問決定→実施→分析→施策実行→再調査の6ステップで進め、PDCAを回しながら改善していきます。
Q. エンゲージメント向上を妨げる要因は?
A. 主な要因は、時代に合わない古い制度や風土、トップダウン型のみの管理方式、複雑な組織体系や多すぎる役職者、従業員の強みが活かせない職場環境の4つです。これらを放置するとエンゲージメント向上の施策が台無しになるため、事前に解消することが重要です。
まとめ
エンゲージメントとは、従業員の会社への愛着心や貢献意欲のことで、高めることで生産性向上と離職率低下という大きなメリットが得られます。
エンゲージメントを高めるには、ビジョンの共有、コミュニケーションの活性化、成長支援、ワークライフバランスの推進、PDCAによる課題解決の5つの方法が効果的です。同時に、古い制度やトップダウン型管理など、向上を妨げる要因を解消することも欠かせません。エンゲージメントサーベイを定期的に実施して自社の課題を把握し、施策と効果測定を繰り返すことで、持続的なエンゲージメント向上を実現できます。
