フレックスタイム制におけるコアタイムの仕組みとメリット・ 注意点を解説

政府が推進する「働き方改革」の一環として、注目されている「フレックスタイム制」。

「何時に出勤し、何時まで働くか」という、日々の勤務時間を社員自身で選択できる制度です。
ワークライフバランスを重視する企業では、すでに実施しているケースが多くあります。

実際にフレックスタイム制を導入するにあたっては、制度の仕組みについてはきちんと把握しておかなくてはなりません。

特に、フレックスタイム制における出勤時間を決める際に必要になる、「コアタイム」と「フレキシブルタイム」については、企業側と社員側の双方が理解しておく必要があります。

 

1. フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、「一定期間内であらかじめ設定された総労働時間内で、社員が始業・終業時間と働く時間を自分で決められる」制度です。

つまり、9時30分から18時30分までなど、毎日決まった時間に出退勤するのではなく、社員が勤務時間を選べる制度ということになります。

フレックスタイム制を導入すれば、早朝や夕方の満員電車の時間帯を避けられるなど、社員にとっては仕事と生活のバランスが取れた生活を実現できるのです。

1−1. フレックスタイム制のメリット・デメリット

フレックスタイム制を導入することによる、メリットとデメリットを紹介します。
フレックスタイム制によるメリットは以下の通りです。

フレックスタイム制のメリット

  • 毎日の出勤時間を柔軟に変えられるので、子供の送り迎えや習いごとなど、プライベートな時間を調整しやすい
  • 満員電車の時間帯を避けて出退勤できる
  • プライベートと仕事のバランスの両立がしやすくなり、生産性の向上が期待できる
  • 午前中に病院や役所で用事を済ませてから出勤できる
  • 特定の曜日は早めに帰宅し、それ以外の日に多めに働くなどの調節ができる

フレックスタイム制のデメリット

  • 社内で導入できる部署や社員が限られる場合がある
  • 勤怠管理が複雑になる
  • 取引先や顧客との時間を合わせにくくなる

フレックスタイム制の導入により勤務時間を調整できるなど、仕事とプライベートを両立した環境の実現が可能です。

反面、業種によっては導入が難しいという課題点があります。

1−2. フレックスタイム制の導入率はあまり高くない

企業と社員の双方にメリットが多いフレックスタイム制ですが、現状では導入率が高いとはいえません。

厚生労働省が行った、「平成 30 年就労条件総合調査の概況」によると、平成30年の時点でフレックスタイム制を導入している企業は、全体の5.6%となっています。

従業員が1,000人以上の企業の場合は24.4%、300~999人の企業で10.7%となっており、企業規模が大きいほどフレックスタイム制の導入が進んでいるといえます。

これは、フレックスタイム制は必ずしも全社を挙げて取り組む必要がなく、対応可能な部署や社員単位で実施できるためと考えられます。

出典:厚生労働省・平成 30 年就労条件総合調査の概況

1−3. フレックスタイム制の導入率の高い業種一覧

フレックスタイム制の導入はどのような業種で進んでいるのでしょうか?
厚生労働省の「平成 30 年就労条件総合調査の概況」によれば、平成30年の時点でフレックスタイム制を導入している業種は以下の通りです。

フレックスタイム制を導入している業種

導入率

情報通信業

25.3%

学術研究,専門・技術サービス業 

13.9%

複合サービス事業

12.3%

不動産業,物品賃貸業 

8.7%

出典:厚生労働省・平成 30 年就労条件総合調査の概況

ITを活用する情報通信業にて、フレックスタイム制が多く導入されているのがわかります。
システムエンジニアやプログラマー、デザイナーなどの職種は、納期やプロジェクトの進捗具合に合わせて働き方を変えられるため、フレックスタイム制の導入と相性がよいといえるでしょう。

2. フレックスタイム制におけるコアタイムとフレキシブルタイム

フレックスタイム制の実施において、コアタイムとフレキシブルタイムについての理解が必要になります。

通常の労働時間の制度とフレックスタイム制を導入した場合の勤務時間の考え方は、以下の図のようになります。フレックスタイムでは、コアタイムを挟んでフレキシブルタイムが設定されているのがわかります。
ここからは、コアタイムとフレキシブルについて、詳しく解説します。

2−1. コアタイムとは

コアタイム とは、社員が1日の間に必ず働かなくてはならないと定められた時間帯のことです。
コアタイムを設定する場合は、勤務の開始・終了の時間を労使協定で決める必要があり、自由に定めることが可能です。

コアタイムを設定する日としない日を設けたり、日によって異なる勤務時間帯を設定できます。
コアタイムを設定せずに、出勤日まで社員が自発的に決められるようにする場合も、所定休日は設定しておきましょう。

また、コアタイムの時間帯に勤務していない場合は、遅刻や早退の扱いになります。

フレックスタイム制におけるコアタイムは、社内に全社員が集まるタイミングです。
この時間内にミーティングの設定や業務における報告・相談を行うことで、不足しがちなコミュニケーションを補うという目的があるのです。

2−2. フレキシブルタイムとは

フレキシブルタイムとは、社員が自発的に決められる勤務時間帯のことです。

フレキシブルタイムはコアタイムの前後に設ける必要があり、設定する場合はコアタイムと同様に労使協定で定める必要があります。

例えば、コアタイムが10時から15時に設定されている場合、その前後の時間がフレキシブルタイムとなります。フレキシブルタイム中は必要に応じて業務中の中抜けが可能です。

また、勤務時間のすべてをフレキシブルタイムに設定すれば、社員が自由に出勤時間を決めることが可能となります。

2−3. コアタイムの適切な設定時間

コアタイムの設定時間は企業によって異なりますが、導入企業の約半数では、10時から15時の間で設定されています。

マイナビ転職が行った、「フレックスタイム制は本当に働きやすい? 実態、コアタイム、制度の仕組みを解説」の調べによると、コアタイムに設定されている時間帯は、10時から15時までの割合が多く、50%を超えていることがわかります。

出典:マイナビ転職・フレックスタイム制は本当に働きやすい? 実態、コアタイム、制度の仕組みを解説

また、コアタイムの時間が1日の労働時間とほぼ同じ長さになっていたり、フレキシブルタイムとして利用できる時間が非常に短い場合は、フレックスタイム制とはいえなくなる恐れがあります。
社員が始業・終業時間を決められるというフレックスタイムのメリットが失われてしまっているためです。

3. フレックスタイム制を設定するための方法

フレックスタイム制を導入するために必要となる、各種手続きについて確認しましょう。

以下の2つのフローが必要となります。

  1. 就業規則等への規定
  2. 労使協定で所定の事項を定める

    順番に解説していきましょう。

    3−1. 就業規則等への規定

    フレックスタイム制の導入によって始業・終業の時間が変更になるため、就業規則へ新たに規定する必要があります。

    通常の労働時間の場合、始業時刻が9時30分で、終業時刻が18時30分だったとします。
    フレックスタイム制を導入する場合は、社員の裁量で自由に始業・就業時間を決められるため、就業規則への変更が必要になるのです。

    以下は、就業規則の一例となります。

    (適用労働者の範囲)
    第○条 第○条の規定にかかわらず、営業部及び開発部に所属する従業員にフレックスタイム制を適用する。
    (清算期間及び総労働時間)
    第○条 清算期間は1箇月間とし、毎月1日を起算日とする。
    ② 清算期間中に労働すべき総労働時間は、154時間とする。
    (標準労働時間)
    第○条 標準となる1日の労働時間は、7時間とする。
    (始業終業時刻、フレキシブルタイム及びコアタイム)
    第○条 フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。
    ② 午前10時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。
    (その他)
    第○条 前条に掲げる事項以外については労使で協議する。

    出典:厚生労働省・フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

    また、清算期間が1ヶ月を超える場合には、所轄の労働基準監督署長への届け出が必要です。
    違反すれば罰金が課せられる場合があるので注意しましょう。
    また、後述の「清算期間」が1ヶ月以内の場合は、届け出る必要はありません。

    3−2. 労使協定で所定の事項を定める

    続いて、労使協定で所定の事項の設定へと進みます。

    フレックスタイム制の導入により、社員の勤務時間が変化するため、事前に企業と社員間で話し合いを設け、労使協定を締結しておく必要があるのです。

    労使協定で定める内容について、以下の項目で説明します。

    3−2−1. 対象となる労働者の範囲

    まずは、フレックスタイム制を適用する社員の範囲を決めます。
    対象とする社員の範囲は、導入目的に沿って選びます。
    フレックスタイム制の利用によって恩恵の受けられる社員を対象にするのがよいでしょう。

    全社員を対象とするほかにも、該当する部署やチーム、職種の社員だけに対象を限定しても構いません
    労使で対象となる範囲について十分に議論を重ねた上で、労使協定に記載しましょう。

    3−2−2. 清算期間

    清算期間を設定します。
    清算期間とは、フレックスタイム制における、社員が働くべき時間を定めた期間のことです。

    清算期間は法改正により、従来の1ヶ月間間から3ヶ月間に延長されています。
    ただし、清算期間が1ヶ月を超える場合は、1ヶ月ごとに実労働時間を社員に通知するようにしましょう。
    労使においては、繁忙期や閑散期を踏まえた上で、清算期間について議論しましょう。

    3−2−3. 清算期間における総労働時間

    労働契約において、社員が清算期間中に働くべき時間を定めたものが、清算期間における総労働時間です。所定労働時間とも呼ばれており、清算期間中に社員が何時間働くべきかを明確にするために必要となります。

    清算期間における総労働時間の設定方法としては、法定労働時間の総枠の範囲内に収める必要があります。
    詳細は、以下の通りです。

    清算期間における総労働時間 ≦ 清算期間の暦日数(7日) × 1週間の法定労働時間 (40時間)

    また、労使協定においては、以下のような定め方もあります。

    • 1ヶ月160時間とするなど、各種清算期間ごとに一律の時間を定める
    • 清算期間内で所定労働日を定め、1日あたりの時間を定める

    3−2−4. 標準となる1日の労働時間

    年次有給休暇を取得した際に支払う賃金の算定基礎のことを標準となる1日の労働時間といいます。
    清算期間内の総労働時間を、期間中の所定労働日数で割ったものを基準として設定します。

    例えば、フレックスタイム制で働く社員が年次有給休暇を取得した場合、標準となる1日の労働時間をベースに考えることになります。

    3−2−5. コアタイム・フレキシブルタイム

    コアタイムとフレキシブルタイムについての詳細を設定します。

    協定で定めるべきコアタイムの項目

    • 業務の開始と終了の時刻
    • コアタイムは自由に設定でき、設定する日、しない日を決められる
    • コアタイムを設けず出勤を社員に任せる場合も所定休日は設定する必要がある

    協定で定めるべきフレキシブルタイムの項目

    • フレキシブルタイムの開始と終了の時刻
    • フレキシブルタイムの時間帯は自由に設定できる
    • フレキシブルタイムの設定は必須ではない

    4. フレックスタイム制を設定する際の4つの注意点

    フレックスタイム制を導入で得られるものはメリットだけではありません。
    注意すべき点が4つあります。

    1. 社員に実施の意図が伝わっているか
    2. 時間の管理を社員が行えているか
    3. 社内のコミュニケションが疎かになっていないか
    4. 適用される社員の業務に適切かどうか

    企業と社員の双方が恩恵を受けられるフレックスタイム制。
    導入するからにはきちんと機能するように運用しましょう。

    4−1. 社員に実施の意図が伝わっているか

    「時差出勤が楽になる」「プライベートの時間を作りやすくなる」など、メリットの多いフレックスタイム制ですが、社員によっては煩わしく感じる場合が考えられます。

    フレックスタイム制を導入する目的や意図がきちんと伝わっていない場合、制度に不満を持つ社員が現れる可能性が考えられるのです。

    「従来通りの勤務形態を望む」声や、「上司や先輩社員よりも遅い時間に出勤するのはためらわれる」、といった意見もあるでしょう。

    フレックスタイム制導入の意図については、経営層から各部門の管理職に伝え、社員全体に伝わるようにしておくことが重要といえます。

    リーダー層から率先してフレックスタイム制を利用することで、社内の文化として根付きやすくなるでしょう。

    4−2. 時間の管理を社員が行えているか

    フレックスタイム制の利用により、普段よりも出勤の時間を遅くすることが可能です。
    しかし、労働時間を自分で決められる一方、適切にセルフマネジメントができていないと、トラブルにつながる可能性があります。

    • 時間の管理が疎かになり遅刻が増えてしまう
    • 取引先や顧客との約束の時間に出勤していない
    • 納期の間に合わなくなってしまう

    上記のように、時間を管理できないことによる問題が発生しないよう、社員が各自でスケジュール管理を徹底する必要があるのです。

    4−3. 社内のコミュニケションが疎かになっていないか

    フレックスタイム制の導入により、社員が異なる時間帯に出勤する機会が増えると、コミュニケーション量の不足が懸念されます。

    同じ部署内でも社員同士で顔を合わせる頻度が少なくなることで、情報の共有や業務連絡が疎かになりがちです。

    管理職としては、部下が抱えている業務上の問題や悩みなどに気づくのが遅れてしまい、離職率を高める原因にもなりかねません。

    そこで、コアタイムの時間帯にはコミュニケーションを多めに取るなど、社員間の関係性が希薄にならないように意識しましょう。

    上司と部下との間に1on1ミーティングを実施するなど、課題を常に共有できるように意識するのも効果的です。

    4−4. 適用される社員の業務に適切かどうか

    フレックスタイム制の導入においては、全社員に対して一斉に行う必要はありません。
    むしろ、制度の適用が適さない社員も一定数存在するためです。

    社内で多くの社員と接しなくてはならない特定の事務職や、取引先の営業時間に合わせなくてはならない営業職などでは、フレックスタイム制の利用は必ずしも適切ではないといえます。

    企業内でもフレックスタイム制の適用が適した社員と、そうでない社員を分けて考える必要があります。
    導入する際には、制度が適用されない社員が不満を抱いてしまわないように、事前にしっかりと説明を行うようにしましょう。

     

    5. まとめ

    フレックスタイム制の導入は、企業と社員の双方に多くのメリットがあることがわかりました。
    社員ごとに適した働き方を実現する上で、この制度は欠かせないものです。

    フレックスタイム制においては、コアタイムとフレキシブルタイムの設定が重要な意味を持ちます。

    フレキシブルタイム:社員が自発的に決められる勤務時間帯
    コアタイム :1日の間に働くべき時間帯

    この2つのポイントを押さえておきましょう。
    特にコアタイムの設定は、社内のコミュニケーションの頻度を保つために重要な意味を持ちます。

    社員のワークライフバランスの実現のためにも、ぜひともフレックスタイム制の導入を検討してみてください。

    本質的な課題と向き合える

    メールマガジン登録

    気づきを得られる、試してみたくなる、動きたくなる。 組織改革や人材育成に関するヒントが詰まった、管理職や人事のための無料メールマガジンです。