
人的資本経営とは?
2023年3月決算期から人的資本の情報開示が義務化され注目が集まっています。人的資本経営は、企業の持続的な成長を実現するために重要な経営戦略の一つです。しかし、人的資本経営には、さまざまな課題があります。
例えば、心理的安全性の低下や人材育成の不足などが挙げられます。これらの課題は、企業のパフォーマンスや競争力を低下させ、企業の成長を阻害する可能性があります。
そこで、本記事では、人的資本経営の課題を克服するポイントについて解説します。人的資本経営の課題について、具体的にどのようなものがあるかを整理し、克服するために、どのような取り組みが必要かを解説します。
経営者や人事担当者の方々は、ぜひ本記事の内容を参考に、自社の人的資本経営の課題を克服し、企業の持続的な成長につなげてください。
参考記事
人的資本経営の課題とは?
人的資本経営の課題とは、人的資本を最大限に活用し、企業価値を向上させるための取り組みにおいて、企業が直面する困難や問題を指します。人的資本経営の課題は、大きく分けて以下の4つが挙げられます。
1.人材データの不足や不統一
人的資本経営を推進するためには、人材に関するデータを収集・分析することが重要です。しかし、多くの企業では、人材データが不足していたり、人事システムが統一されていなかったりして、データの収集・分析が困難となっています。
2.経営層の意識改革
人的資本経営は、経営戦略と人材戦略の一体化を前提としています。しかし、多くの企業では、経営層が人的資本経営の重要性を十分に理解していないため、経営戦略と人材戦略が連動していないのが現状です。
3.人材の多様化
近年、労働人口の多様化が進んでいます。そのため、企業は、異なる価値観や働き方を持つ人材を受け入れ、活躍できる環境を整えることが求められています。
4.人的資本情報の開示の難しさ
人的資本経営を推進するためには、人的資本情報の開示が重要となります。しかし、多くの企業では、人的資本情報の開示の基準や方法が明確に定められておらず、開示が難しい状況にあります。
これらの課題が解決されないままでは、人的資本経営の有効性が十分に発揮されず、企業の競争力低下や持続的な成長の阻害につながる可能性があります。
人的資本経営の課題を解決するための取り組み
これらの課題を解決するためには、以下の取り組みが必要と考えられます。
1.多様な人材を受け入れるための制度・環境の整備
多様な人材を受け入れることは、人的資本経営の重要な課題の一つです。多様な人材を受け入れることで、企業は従業員の創造性や生産性を高め、企業の競争力を強化することができます。
多様な人材を受け入れるためには、企業は制度や環境を整備する必要があります。具体的には、以下の取り組みが考えられます。
- 採用・評価制度の見直し
- ダイバーシティ&インクルージョンの推進
- 柔軟な働き方の導入
2.人事部門と事業部門の連携強化
人的資本経営を推進するためには、人事部門と事業部門の連携が不可欠です。人事部門が人材データの収集・分析を担当し、事業部門が人材の活用を担当するといった役割分担を明確にし、両部門が密に連携して取り組むことが重要です。
具体的な取り組みとしては、以下が挙げられます。
- 人事部門と事業部門の定期的な会議の開催
- 人事部門と事業部門の合同プロジェクトの実施
- 人事部門と事業部門の間で人材データの共有
3.心理的安全性を高める
近年、心理的安全性の高まりが人的資本経営に新たな可能性をもたらしています。心理的安全性の高い環境では、従業員が安心して意見やアイデアを発信できるようになり、企業の成長につながります。
具体的には、以下の取り組みが挙げられます。
- 上司による部下へのフィードバックやコーチングの強化
- オープンなコミュニケーションの促進
- 失敗を許容する文化の醸成
4. 経営陣による人的資本経営への理解とコミットメント
人的資本経営を推進するためには、経営陣による理解とコミットメントが不可欠です。経営陣が人的資本経営を経営戦略の一環として捉え、人材の活用を重視する姿勢を示すことで、全社的な取り組みとして人的資本経営を推進することができます。
具体的な取り組みとしては、以下が挙げられます。
- 経営陣による人的資本経営の講演やセミナーの開催
- 経営陣による人事部門への支援
- 経営陣による人的資本経営の進捗状況の把握
5.人的資本の開示のための指針やガイドラインの整備
人的資本の定義や測定方法を明確にし、その成果を適切に開示するための指針やガイドラインを整備することで、企業間の開示の差異を縮め、投資家やステークホルダーが人的資本情報を活用しやすくなります。
具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 人的資本に関する情報の開示項目の明確化
- 開示情報の品質向上のための基準の策定
- 開示情報の開示方法やタイミングの標準化
6.人事制度の見直し
人的資本経営を推進するためには、人事制度の見直しも重要です。従来の人事制度は、給与や評価など、従業員の成果を評価するための制度に偏りがちでした。人的資本経営を推進するためには、従業員のスキルや経験、潜在能力なども評価する仕組みを導入することが重要です。
具体的な取り組みとしては、以下が挙げられます。
- 成果主義の見直し
- スキルアップやキャリアアップを支援する制度の導入
- 心理的安全性を高める制度の導入
7.人材育成の強化
人的資本経営を推進するためには、人材育成の強化も重要です。変化の激しい現代においては、従業員一人ひとりが自ら学び、成長し続けることが求められます。そのため、従業員のスキルアップやキャリアアップを支援する人材育成プログラムの充実が重要です。
具体的な取り組みとしては、以下が挙げられます。
- 社内研修の充実
- 外部研修への参加支援
- メンター制度の導入
これらの取り組みを実施することで、人的資本経営の課題を解決し、企業の持続的な成長を実現することが可能となります。
心理的安全性の高まりが人的資本経営に与える影響
近年、心理的安全性の高まりが、人的資本経営にさまざまな影響を及ぼしていると言われています。心理的安全性とは、自分の考えや意見を自由に発言できる、自分の失敗や間違いを恐れずに受け入れられる、といった心理的状態を指します。
人的資本経営の課題解決への貢献
心理的安全性の高まりは、人的資本経営の課題解決に貢献すると考えられます。
心理的安全性が高まることで、従業員は自分の考えや意見を自由に発言しやすくなります。そのため、人材データの収集・分析において、従業員の声をより多く反映できるようになり、より精度の高いデータの統合・分析が可能となります。また、人的資本情報の開示においても、従業員の理解や協力を得やすくなります。さらに、経営陣は従業員の意見をよりよく理解できるようになり、経営戦略との連動を図りやすくなります。
人的資本の価値向上への貢献
心理的安全性の高まりは、人的資本の価値向上にも貢献すると考えられます。心理的安全性が高まることで、従業員は安心して仕事に取り組むことができ、生産性や創造性が向上します。また、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まり、離職率の低下にもつながります。
これらの結果として、人的資本の価値が向上し、企業の競争力強化や持続的な成長に貢献します。
人的資本経営による日本経済へのインパクト
人的資本経営の心理的安全性の高まりは、日本経済にさまざまなインパクトを与えると考えられます。
生産性の向上
心理的安全性が高まると、従業員は安心して仕事に取り組むことができ、生産性が向上します。また、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まり、創造性やイノベーションの促進にもつながります。従業員が失敗を恐れずにチャレンジできるようになることで、新たなアイデアや技術の開発につながったり、従業員がチームワークを活かして連携できるようになることで、業務効率の向上が期待できます。
そのほかにも、従業員が自ら成長やキャリアアップを目指すようになることで、企業の競争力強化につながります。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- GDPの増加
- 失業率の低下
- 物価の安定
これらの結果として、日本経済全体の生産性が向上し、経済成長に貢献することが期待されます。
企業の競争力強化
生産性の向上や創造性・イノベーションの促進により、企業の競争力強化が期待されます。これは、日本経済の成長にもつながります。企業は、より優れた製品やサービスを提供できるようになり、市場シェアの拡大が期待でき、新たな市場への参入やM&Aを積極的に行うことができるようになります。
そのほかにも、労働コストの削減や生産性の向上によるコストメリットを享受できるようになり、収益性の向上が期待できます。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- 海外市場でのプレゼンスの向上
- 新しい産業の創出
これらの結果として、日本経済のグローバル競争力強化に貢献することが期待されます。
労働市場の活性化
心理的安全性が高まると、従業員はより良い働き方を実現できるようになります。これは、労働市場の活性化にもつながります。従業員は、自分の能力や経験を活かした働き方を選択できるようになり、ワークライフバランスの向上が期待でき
、よりやりがいのある仕事に就くことができるようになります。
そのほかにも、従業員は、新しいスキルや知識を身につけるための機会が増えます。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- 労働力の流動化の促進
- ワークライフバランスの向上
これらの結果として、労働市場の流動性の向上や、人材の質の向上が期待されます。
人材不足の解消
日本の労働人口は、今後も減少していくことが予想されています。そのため、企業は、限られた人材を最大限に活用することが重要です。日本では、少子高齢化に伴い、人材不足が深刻化しています。人的資本経営の心理的安全性の高まりは、人材不足の解消にも貢献すると考えられます。従業員の定着率の向上が期待でき
ることで、従業員のパフォーマンスの向上が期待でき、従業員の採用コストの削減が期待できます。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- 優秀な人材の確保
- 離職率の低下
これらの結果として、企業は、人材不足問題を乗り越え、持続的な成長を実現することができるようになります。
企業の不祥事問題の防止
近年、企業の不祥事問題が頻発しています。これらの不祥事問題は、企業のブランドイメージや株価の下落を招き、日本経済にも大きな影響を与えています。従業員が率直な意見や指摘をしやすくなり、従業員が組織の一員としての責任感を高めやすくなります。
そのほかにも、従業員が自らルールを守ろうとするようになります。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- 従業員による不正の抑止
- コンプライアンス意識の向上
これらの結果として、企業は、不祥事問題のリスクを低減し、健全な企業経営を実現することができるようになります。
このように、人的資本経営の心理的安全性の高まりは、日本経済や株式市場にもさまざまなインパクトを与えると考えられます。また、人材不足問題や企業の不祥事問題の解決にも貢献すると考えられます。
まとめ
人的資本経営は、企業の競争力強化と持続的な成長を実現するための重要な経営手法です。しかし、その推進にあたっては、さまざまな課題が存在しています。これらの課題を解決するためには、人事部門と事業部門の連携強化、人事制度の見直し、人材育成の強化、経営陣による理解とコミットメントなど、さまざまな取り組みが必要となります。なお、心理的安全性の高まりは、一朝一夕で実現できるものではありません。企業は、長期的な視点に立って、さまざまな取り組みを継続的に実施していくことが重要です。
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