人的資本経営とは?重要性と心理的安全性との相互作用を解説!

人的資本とは、企業が保有する人的資源の総称で、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するために不可欠な要素です。 

人的資本が高い企業は、生産性が高い、業績が良い、離職率が低い、企業価値が高いなどのメリットがあります。人的資本を高めることで、企業は競争力を強化し、持続的な成長を実現することができます。 

 この記事では、人的資本経営の概要や重要性に加えて、心理的安全性との関係、さらには心理的安全性がもたらす効果とメリットについても探っていきます。人的資本経営の基礎から具体的な実践方法まで、人材育成や組織の発展に関心のある方にとって有意義な記事となれば幸いです。 

 

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人的資本経営とは 

 人的資本経営とは、組織の最も貴重な資源である人材を戦略的に活用し、成果を最大化するためのアプローチです。 
組織の成功において、人材は最も重要な要素の一つであり、  人的資本経営は、組織が人材を戦略的に活用し、成果を最大化するためのアプローチです。 
人材の能力や知識、経験、モチベーションなど、組織における人的資源を最大限に活かすことを目指します。 

この経営手法は、単に人材を採用・配置するだけでなく、育成・開発、評価・報酬、キャリアプランニングなど、人材に関わるあらゆる側面を組織全体の戦略に統合することを重視しています。 

また、人的資本経営は、組織における人材の価値を最大化するための重要な手法です。特に最近では日本において一部の企業で人的資本開示が義務化されたことにより、その重要性が一層高まっています。 

人的資本開示とは、企業が人材に関する情報を公開し、組織内外のステークホルダーに対して透明性を提供することを意味します。 

人的資本経営の効果 

 

  人的資本開示は、組織において以下のような効果をもたらします。 

  • 従業員に対しては、自身のスキルや成果が公に評価されることでモチベーションやエンゲージメントが向上し、自己成長につながります。 
  • 外部の投資家や株主にとっては、人的資本開示は企業の成長戦略や人材戦略を評価する上で重要な情報源となります。
  • 採用活動においても、人的資本開示によって企業の魅力や人材育成の取り組みが明確になり、優秀な人材の獲得が期待できます。   

人的資本開示の義務化は、企業にとってもチャンスとなる一方で、情報の適切な管理や公正な評価の実施など、課題も存在します。 
適切な人的資本経営とは、組織が人材を戦略的に活用し、育成・開発に努めることを意味します。人的資本開示は、その一環として、組織の人材価値を明確にし、透明性を確保するための手段となります。  

人的資本経営の重要性 

人的資本経営の重要性は、組織の成果や競争力に直結しています。組織が優れた人材を確保し、育成・開発することで、生産性やイノベーション力を向上させることができます。人的資本経営は、従業員のエンゲージメントを高め、チームの協力やコラボレーションを促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させる効果があります。 


さらに、人的資本経営は、組織の離職率を低下させる効果も期待できます。
従業員が自身の成長やキャリアの展望を感じ、組織に長期間にわたって貢献することができる環境を整えることが重要です。  

一橋大学CFO教育研究センター長 人的資本経営コンソーシアム会長である伊藤 邦雄 氏は、 経営・組織改革への挑戦を支援するオウンドメディア「UNITE powered by Unipos」 の中で以下のように述べています。  

人的資本は管理の対象となる “ 人的資源 ” とは異なり、企業が持つ無形資産の中でもユニークな位置づけにある。それは、適切な環境を整備・提供することで価値が伸び縮みする点である。 

価値が伸び縮みするとはどういうことなのか。たとえば、無形資産の 1 つである知的財産は「誰がどう使うか」で価値が変わるが、人は「自ら能動的に価値を変えられる」存在である。自発的に自らの意思で自らの価値を高めようとする存在――それができる唯一の無形資産こそが人的資本である。 

引用: 【伊藤邦雄】ゼロからわかる人的資本経営の全貌 | UNITE powered by Unipos 
https://unite.unipos.co.jp/128/ 

 
 
また、世界各地で「人的資本」の開示を求める動きが急速に進んでおり、日本でも2023年3月期決算から、「有価証券報告書」を発行する約4,000社の大手企業を対象に人的資本の情報開示が義務化されました。 
開示情報が増えれば、世界の投資家による企業の選別が一段と加速する可能性があります。 

人的資本開示の成功事例については以下のブログをご覧ください。 

人的資本経営の成功事例!田中弦の「統合報告書を全部読んでわかった人的資本開示」ウェビナーレポート

 

人的資本が注目されている背景 

 

近年、人的資本に対する関心と重要性が高まっています。組織の成功において、従業員の能力や知識、経験、モチベーションなど、人的資本の存在は不可欠です。人的資本が注目されている背景についてこの章ではお話しします。 

人的資本を多角的に捉える動きが活発化 

近年、企業の経営環境は急速に変化しており、グローバル化やデジタル化の進展によって競争はますます激化しています。

このような環境変化に対応するためには、組織は従業員の能力や知識、経験、モチベーションを最大限に活用する必要があります。 そのうちの一つとして、人的資本を多角的に捉える動きが活発化しており、組織は従業員の育成やキャリア開発、エンゲージメントの向上など、人的資本の最大化に取り組んでいます。 

リクルート社人的資本経営の潮流と論点2022の5ページの図を参考に、Unipos社田中が加筆した図 https://media.unipos.me/think-human-capital-multifaceted-consideration-of-human-capital-management 

 

人的資本の情報開示 

 人的資本の情報開示とは、企業の人的資本に関する情報を、投資家、労働者、ステークホルダーなど、利害関係者に対して開示することです。人的資本は、企業の成長や持続的な競争力強化に欠かせない経営資源であり、その状況を透明化することは、企業価値向上やESG投資の拡大、企業の健全な発展促進につながります。  

開示項目のうち、記載が義務付けられているものは以下の5つです。 

  • 人材育成方針 
  • 社内環境整備方針 
  • 女性管理職比率 
  • 男性の育児休業取得率 
  • 男女間賃金格差  

上記必須項目の他にも、情報開示が求められる7分野があります。 

こちらは企業は必ずしも全て開示する義務はないですが、経営戦略に合った項目を選択して開示することとされています。 

  • 人材の多様性とインクルージョン 
  • 従業員の健康・安全 
  • 報酬・福利厚生 
  • 人材育成・能力開発 
  • 労働生産性 
  • 従業員のワークライフバランス 
  • 人的資本に関するリスクと対応策  

組織が持つ人材の価値を最大限に引き出すために、人的資本の情報開示は欠かせない要素です。 

さらに、株主総会の文脈においては、情報開示が重要な役割を果たします。株主総会では、組織の経営状況や成果、将来の展望に関する情報が株主に開示されますが、人的資本の情報も同様に開示されるべきです。 

人的資本の情報開示の重要性 

人的資本の情報開示には、以下のような重要性があります。

  1. 情報開示は透明性と信頼を醸成します。組織がメンバーと情報を共有することで、透明性が高まり、メンバーは組織の意思決定や方針に理解を深めることができます。これにより、組織内の信頼関係が築かれ、メンバーは組織に対してより積極的に関与することができます。
  2. 株主に対する透明性と信頼の構築です。株主は組織の成果に関心を持ち、将来の成長に期待しています。 
    人的資本の情報開示により、株主は組織の人材戦略や人材の成果について詳細な情報を得ることができます。これにより、株主との信頼関係が構築され、組織の価値向上に寄与します。 
  3. 人的資本の情報開示は、株主の投資判断の基礎となります。 
    人的資本は組織の競争力や将来の成長に大きな影響を与える要素です。株主は、人的資本の戦略や育成プログラム、組織文化などについての情報を得ることで、組織の将来性を評価することができます。 
  4. 人的資本の情報開示は、株主と組織の間での対話やコミュニケーションを促進します。株主は、人的資本に関する情報を通じて、組織の人材戦略や人材の成果についての質問や意見を発信することができます。これにより、組織と株主の間での対話が生まれ、双方がより良い結果を生み出すための改善策や戦略を共有することができます。 

情報開示は、組織の人的資本を最大限に活用するために欠かせない要素です。透明性、信頼、参加意欲、学習意欲、コミュニケーション、イノベーションなど、情報開示がもたらす様々な効果は、組織の持続的な成長と競争力を支える重要な要素となります。 

また、情報開示に関しては、企業規模や上場しているか否かで温度感が全く異なるようです。 
企業規模や機関投資家との対話という観点から見る人的資本開示の記事はこちら 

人的資本の開示は誰にとって重要か|田中弦のCEOBlog-vol.2

 公表する情報を選択する際には他社と比較できる数値はもちろん、「独自性のある指標」を戦略的に開示することが大切です。  

人的資本経営と心理的安全性の関係

 組織が人的資本経営を実践する際に重要な要素の一つが心理的安全性です。心理的安全性とは、メンバーが自由に意見や感情を表明し、失敗やリスクを恐れずに挑戦できる環境のことを指します。 

心理的安全性の役割と効果 

心理的安全性は、組織内のコミュニケーションや協力関係に大きな影響を与えます。心理的安全性が高い環境では、メンバーが自由にアイデアや意見を出し合い、チーム全体の知識や経験を活かすことができます。このセクションでは、心理的安全性が果たす役割と効果について探っていきます。

まず、心理的安全性が高まることで、メンバーは自信を持って意見を発言しやすくなります。意見交換やディスカッションが増えることで、異なる視点やアイデアが生まれ、より創造的な解決策が見つかる可能性が高まります。さらに、メンバーが自由に意見を述べることで、問題や課題に対する共有理解が深まり、より良い意思決定が行われることが期待されます。

心理的安全性の向上は、退職率の低下にも寄与します。メンバーが自由に発言し、意見を交換する環境では、個人が認められ、尊重されていると感じることができます。その結果、メンバーは組織に対する関与度や満足度が高まり、退職意向を抱くことが少なくなります。心理的安全性が低い環境では、メンバーが自身の意見や懸念を抑え込む傾向があり、不満やストレスが蓄積される可能性があります。これにより、離職率が上昇することが考えられます。

組織は、心理的安全性を高めるための取り組みを行うことが重要です。リーダーシップの重要性は言うまでもありません。リーダーは信頼と透明性を築き、メンバーが自由に発言できる環境を提供する役割を果たす必要があります。また、フィードバックの文化を育成し、メンバーが成長するためのサポートを行うことも重要です。さらに、チーム全体で心理的安全性を意識し、コミュニケーションや協力を促進する取り組みを行うことが求められます。 

これらの努力によって、心理的安全性が高まり、メンバーの発言意欲や参加度が向上し、退職率の低下につながることが期待されます。

 人的資本経営と心理的安全性の相互作用 

 人的資本経営と心理的安全性は相互に関連し、相乗効果を生み出します。人的資本経営が従業員のスキルや能力の向上に取り組む一方、心理的安全性が高い環境を提供することで従業員のエンゲージメントやパフォーマンスを引き出すことができます。逆に、人的資本経営が不十分な場合や心理的安全性が低い環境では、従業員の能力やモチベーションが十分に発揮されず、組織の成果にも影響を与える可能性があります。

組織が人的資本経営を成功させるためには、心理的安全性の向上にも取り組む必要があります。従業員が自由に意見を出し合い、リスクを恐れずに挑戦できる環境を整えることが重要です。そのためには、リーダーシップの重要性やコミュニケーションの改善、フィードバックの文化の確立など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

人的資本経営と心理的安全性の関係について、詳しくはこちら

心理的安全性と人的資本経営の関係について|田中弦のCEOBlog-vol.4

まとめ 

人的資本経営とは、組織の人材を最大限に活用する経営手法です。その重要な要素の一つが心理的安全性です。心理的安全性が高まることで、メンバーは自由に意見を出し合ったり、失敗を恐れずにチャレンジすることができます。このような環境が整うことで、創造性やイノベーションが促進され、学習意欲が高まり、チームのパフォーマンスが向上します。 

この記事では人的資本経営について簡潔にまとめました。人的資本経営についての詳細な情報について、以下資料もぜひご覧ください。 

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