
相対評価と絶対評価の違いを簡単にまとめると、以下のようになります。
相対評価とは、集団内での比較に基づいて評価する方法
絶対評価とは、特定の目標の達成度に基づいて評価する方法
【特徴・メリット・デメリット一覧】
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相対評価 |
絶対評価 |
特徴 |
集団内での比較に基づいて評価 |
特定の目標の達成度に基づいて評価 |
メリット |
・競争が活発になりモチベーションにつながる ・基準が作りやすく評価者が評価しやすい ・人件費を予算以内に抑えられる |
・透明性が高く評価される側が納得しやすい ・社員のモチベーションアップにつながる ・社員の成長につながる |
デメリット
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・評価される側が不公平感を感じやすい ・モチベーションの低下につながってしまうこともある ・足の引っ張り合いが起こることも考えられる |
・評価の基準作りに手間と時間がかかる ・評価者が評価するのが大変 ・人件費の予測が事前にできない ・景気などに評価が左右されることがある |
従来は相対評価が教育現場でも人事考課でも一般的でしたが、実は、教育現場においては、2002年のゆとり教育導入時にすでに相対評価から絶対評価への移行がされています。
さらに、会社の人事考課においても、相対評価から絶対評価へ切り替える流れが大きくなり、絶対評価を採用する会社が増えてきています。
では「絶対評価を採用すればうまくいくのか?」というと、そうではありません。
なぜなら、それぞれの評価制度には上記のようにメリットとデメリットの両方が存在するため、主流だからという理由だけで絶対評価を採用すると、デメリット部分が表面化して会社にダメージを与えてしまうことになりかねないからです。
評価制度に関しては、会社の価値観や評価の目的などを加味した上で自分の会社に合った評価制度を選択することが大切です。
そこで、本記事では、自分の会社にとって最適な評価制度を選ぶために必要な情報全てについて解説していきます。
具体的には下記4点について、詳しく解説していきます。
◎相対評価と絶対評価の違い
◎相対評価と絶対評価それぞれのメリットとデメリット
◎自分の会社に合った評価制度を決める方法
◎相対評価と絶対評価それぞれを採用している会社の具体的事例
本記事を読むことで、相対評価と絶対評価についての全てを理解でき、自分の会社にとって最適な評価制度を選べるようになりますよ。
1.一覧表で「相対評価」と「絶対評価」の違いを分かりやすく解説!
前述した通り、相対評価と絶対評価の違いについては、下記一覧表の通りです。
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相対評価 |
絶対評価 |
特徴 |
集団内での比較に基づいて評価 |
特定の目標の達成度に基づいて評価 |
メリット |
・競争が活発になりモチベーションにつながる ・基準が作りやすく評価者が評価しやすい ・人件費を予算以内に抑えられる |
・透明性が高く評価される側が納得しやすい ・社員のモチベーションアップにつながる ・社員の成長につながる |
デメリット
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・評価される側が不公平感を感じやすい ・モチベーションの低下につながってしまうこともある ・足の引っ張り合いが起こることも考えられる |
・評価の基準作りに手間と時間がかかる ・評価者が評価するのが大変 ・人件費の予測が事前にできない ・景気などに評価が左右されることがある |
ただ、上記の一覧表だけでは、相対評価と絶対評価について具体的にイメージしにくいという人もいるかもしれません。
そこで、ここからはそれぞれの評価制度について、さらに分かりやすく解説していきます。
1-1.相対評価とは?
まず、相対評価とは集団内での比較に基づいて評価する方法です。
経験年数や個人の特性が加味されることは基本的になく、集団の中で相対的に優劣をつけて評価が決定されるので、集団準拠評価と言われることもあります。
相対評価では、「S評価10%、A評価20%、B評価40%」のように基本的には評価の分布割合も決まっていて、集団内での相対的な順位と決められた分布割合に従って、評価を割り振られていきます。
学校教育においては従来、1から5までの決められた分布割合と集団内での位置付けによって評価が決定する『5段階評価』と呼ばれる相対評価が採用されてきました。
集団内の平均点が50になるように調整されて、自分の成績が決まる『偏差値』も相対評価の代表例です。
相対評価の大きな特徴としては、属する集団のレベルによって自分の評価が変わるというところです。
例えば、試験の点数が全く同じだったとしても、属する集団に自分より高い点数の人が多い場合には評価は低くなり、自分より点数の低い人が多ければ評価は高くなります。
人事考課の場でも同様で、優秀な人材が多く揃う集団に属していれば自分の評価は低くなり、そうでない集団に属していれば自分の評価は高くなる傾向があるということです。
2-2.絶対評価とは?
絶対評価とは、特定の目標の達成度によって評価する方法で、目標準拠評価と言われることもあります。
相対評価のように集団内の優劣や順位によって評価が左右されることはなく、評価される側が目標達成のみに集中できるのが大きな特徴です。
学校教育では、個人に合わせた指導を細やかに行うことが求められるようになった背景のもとで、2002年のゆとり教育導入時に相対評価から絶対評価への移行がなされました。
生徒が個々に設定した目標をどれくらい達成できたかといった基準などによって、評価がされるようになったのです。
さらに、人事考課においても、経験年数や個人の特性に基づいた目標を立て、目標達成度によって評価される方法である絶対評価を採用する会社が増えてきました。
絶対評価を採用することで、周囲との比較を気にすることなく目標に集中でき、社員のモチベーションアップや成長につなげることができるからです。
さらに、社員のモチベーションや成長をサポートすることは、業績アップや離職率低下のような会社全体への大きなメリットになり得るということからも、絶対評価を支持する会社が増えてきているのです。
これらの理由や時代の後押しによって、学校教育でも人事考課でも絶対評価が主流になりつつあります。
次章からは、相対評価と絶対評価についてより深く理解できるよう、それぞれのメリットとデメリットについて解説していきます。
2.相対評価と絶対評価のメリットとデメリット
人事考課において相対評価を採用するメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
2-1.相対評価のメリットとデメリット
人事考課において相対評価を採用するメリットとデメリットについて解説します。
相対評価は評価する側にメリットが多くあり、評価される側にデメリットが多く存在しています。
2-1-1.相対評価のメリット
人事考課において絶対評価への移行が進んでいますが、従来多くの会社で採用されてきた相対評価にもメリットはあります。
<相対評価のメリット>
・競争が活発になりモチベーションにつながる 組織内で比較され、組織内の順位によって評価が決まるので、競争意識が自然と生まれて社員のモチベーションにつながります。 ・基準が作りやすく評価者が評価しやすい 組織内で決められた一定の基準と分布割合に従って評価をつければいいので、評価者が評価しやすく、評価者によるバラツキも出にくいというメリットがあります。 ・人件費を予算以内に抑えられる あらかじめ評価の分布割合が決まっているので、給与やボーナスの予算といった人件費の予測がつきやすいです。 |
相対評価がうまく働けば、競争意識のもとで優秀な社員が大きな契約を取ってきたり、評価者の負担を減らして売上に直接関係する業務に集中させたりといった効果が期待できます。
そのため、相対評価を採用することで、会社全体の生産性の向上や売上アップにつながる可能性が高いです。
また、人件費の予測がつくために、会社の原資を予想以上に減らす心配がないというのも相対評価のメリットです。
2-1-2.相対評価のデメリット
人事考課において絶対評価に移行していく傾向があるのは、相対評価に下記のようなデメリットがあるからです。
<相対評価のデメリット>
・評価される側が不公平感を感じやすい 優秀な職員が集まった部署では自分の評価が低くなる傾向があるので、他部署の社員の評価などと比べた時に不公平感を感じやすくなります。 ・モチベーションの低下につながってしまうこともある 自分の成長ではなく周囲の優劣で評価が決まるので、何を目標に仕事を行えばいいか分からなくなり、モチベーションの低下につながる可能性も高いです。 ・足の引っ張り合いが起こることもある 周囲の評価が上がれば自分の評価は低くなるという環境に置かれることで、情報共有や他者をサポートする意欲がなくなり、最終的には足の引っ張り合いが起こる可能性すらあります。 |
相対評価は社員の不信感やモチベーションの低下をもたらしやすいために、会社としては離職率が高くなったり、売上の低下につながる恐れがあります。
会社全体の雰囲気が悪くなり、足の引っ張り合いが起こるようになれば、会社が立ち行かなくなるような最悪の事態をもたらす可能性すらあり、非常に大きなデメリットが潜んでいると言えるでしょう。
これら相対評価のデメリットの大きさから、近年では、絶対評価を導入する会社が増えてきています。
次項からは、絶対評価のメリットとデメリットについて解説していきます。
2-2.絶対評価のメリットとデメリット
人事考課において絶対評価を採用するメリットとデメリットについて解説します。
絶対評価は評価される側にメリットが多くあり、評価する側にデメリットが多く存在しています。
2-2-1.絶対評価のメリット
絶対評価のメリットは下記の通りで、特に評価される側のメリットが大きいです。
<絶対評価のメリット>
・透明性が高く評価される側が納得しやすい 目標が達成されなければ評価は下がり、達成されれば上がるという透明性の高い評価のされ方をするため、評価される側の納得感を得やすい評価方法と言えます。 ・社員のモチベーションアップにつながる 絶対評価においては、周囲の優劣を気にすることなく自分の目標を達成することのみに集中できるため、社員のモチベーションアップにつながりやすいです。 ・社員の成長につながる 目標達成に向けて「どうすれば目標を達成できるのか?」と自分で考える力を養い、業務の改善に落とし込むこともできるので、社員の成長につながります。 |
絶対評価がうまく働けば、周囲との比較によるギスギスした雰囲気がなくなるので、会社全体の雰囲気がよくなって働きやすい職場になり、離職率の低下につながります。
さらに、協力体制が作られることや社員の成長を促すことによって、会社全体の生産性アップや売上アップをもたらす可能性が高くなるといった大きなメリットがあります。
2-2-2.絶対評価のデメリット
絶対評価においては、下記のように評価する側のデメリットが大きいです。
<絶対評価のデメリット>
・評価の基準作りと評価に手間と時間がかかる 個人に合致した目標や評価の基準を作るのが難しく、また、評価者は一人一人を細やかに評価しなくてはならないので、評価の基準作りと評価に手間と時間がかかります。 ・人件費の予測が事前にできない 相対評価のように評価の分布割合をあらかじめ決めないため、給与やボーナスなどの人件費が予測しにくいです。 ・景気などに評価が左右されることがある 景気がいい時には高評価が多く、景気が悪い時には低評価が多いなど、外的要因に左右されて評価に偏りが出ることもあります。 |
絶対評価を採用することで、評価に時間がかかって本来の業務に割く時間が取られてしまい、残業が増えるといった、生産性の低下につながる恐れがあります。
特に、これまで相対評価を採用していた会社が絶対評価に切り替える時には、基準作りや評価方法に慣れておらず、会社に混乱をもたらす要因になるかもしれません。
また、絶対評価では、景気のいい時に全員の評価が最高評価になってしまうことも考えられるので、会社の原資に余裕がなくなってしまう心配もあります。
3.人事考課において透明性の高い『絶対評価』が主流になってきている
相対評価にも絶対評価にもそれぞれメリットとデメリットはありますが、人事考課においては絶対評価を採用する会社が増えてきています。
主な理由は下記の2点です。
・透明性が高く社員の納得感を得やすい ・目標に集中できるので社員のモチベーションや成長につながる |
人事考課で相対評価を用いる場合、自分の評価が周囲の優劣に左右されたり、評価者の裁量が働いたりすることがあります。
そのため「公平で正当な評価がされていない」と社員が評価に対する不信感を持ちやすく、評価制度自体が形骸化してしまう事態が起こりやすいと言えます。
一方で、絶対評価は、評価の基準が明確で透明性が高いために、評価制度への信頼や社員のモチベーションをもたらします。また、周囲との比較を気にすることなく目標に集中することで、社員の成長を促すこともできます。
社員のモチベーションや成長をサポートすることは、売上アップや離職率低下のような会社全体への大きなメリットにもつながります。
そのため、社員にとっても会社にとっても相対評価よりも絶対評価を採用するメリットの方が大きいとして、相対評価から絶対評価へ移行する傾向が強くなってきているのです。
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