
多様な働き方が求められつつある中で、在宅で勤務するテレワークが注目を集めています。
働き方改革の一貫でもあるテレワークについて、導入を進める企業が増えているのです。
「自社でもテレワークを導入したいけど、具体的な進め方がわからない」
「社員に在宅勤務をしてもらうには、どのような整備が必要なのか?」
テレワークを導入しようにも、企業の組織体制や業務の進め方によっては、難しいと感じるケースが多くあるでしょう。
テレワークの導入には企業側にも、社員側にも多くのメリットがあります。
今回は、テレワークの詳細と導入によるメリット・デメリットを解説。
導入へ向けた流れを7つのステップで紹介します。
1. テレワークとは
テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない、柔軟な働き方のことです。
その語源は、「tele(離れた所)」と「work(働く)」という2つの言葉を掛け合わせた造語となります。
テレワークでは、インターネットなどを活用し、自宅にいながら業務に対応することが可能です。
近年注目されている働き方改革の実現へ向けても、テレワークが持つ意味は非常に大きいといえます。
なお、テレワークの作業場所は自宅だけではありません。
本社とは別の場所にあるサテライトオフィスでの勤務や、コワーキングスペースで働くモバイル勤務などの形態があります。
総務省が行った「平成 30 年通信利用動向調査の結果」によると、平成30年の時点で、テレワークを導入している企業が全体の19.1%であることがわかります。今後、導入予定のある企業を含めると26.3%でした。
このように、まだ多くの企業ではテレワークの導入が進んでいない現状がわかります。
1−1. テレワークの実施によるメリット
テレワークの導入には、以下のようなメリットがあるとされています。
企業側、社員側の2つの側面から確認しましょう。
企業が得られるテレワーク実施によるメリット |
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社員が得られるテレワーク実施によるメリット |
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社員の働き方に多様性が生まれる、時間の効率的な活用による生産性の向上など、テレワークの導入には、企業・社員ともに多くのメリットがあることがわかります。
特に、育児や家族の介護などの問題は、少子高齢化が進むこれからにおいては、避けては通れない問題です。
企業として家庭の事情による人材の離職を回避するためにも、テレワークを中心とした働き方の多様性を重視することが大切です。
また、自然災害などで社員の通勤が困難な状況でも、各自が自宅で業務に取り組むことで、オフィスを閉鎖した状態でも事業を継続できるようになります。
1−2. テレワークの実施によるデメリット
テレワークの導入にはデメリットがまったくないわけではありません。
企業側のテレワーク実施によるデメリット |
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社員側のテレワーク実施によるデメリット |
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企業や社員にとってメリットの多いテレワークですが、複数のデメリットがあるのも事実です。
企業側は技術的、制度的な問題が主で、企業を挙げて取り組まねばならない課題が多くあります。
社員側は常に自宅で業務を行うため、次第にメリハリが失われしまうのではないかという懸念点があります。
上司や同僚との会話も電話やメール、チャットが主体となり、直接顔をあわせる機会が減るため、コミュニケーション面の不安もあります。
1−3. 多くの企業がテレワークを導入できていない理由
株式会社パーソル総合研究所が行った、2020年3月9日~15日に全国の正社員2万人規模の緊急調査、「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、正社員の13.2%(推計360万人)がテレワークを実施していることがわかりました。
全体の13.2%という割合は、まだまだ少ないといえそうです。
また、その内で初めてテレワークを経験した人の割合は半数近い47.8%でした。
テレワークを希望しているのに実施できていない割合は33.7%で、社員側が望んでも迅速に実施されるとは限らない現状がわかります。
企業側がテレワークを導入できていない理由は、以下の3つの理由が多くの割合を占めています。
・テレワーク制度が整備されていない:41.1%
これまで会社に出勤して業務を行うスタイルが馴染んでいる企業では、テレワーク導入へ向けた制度が整っていないケースが多くあります。
書類ベースの業務や、承認に印鑑が必要になる場合などが含まれます。
・テレワークを行える業務ではない:39.5%
接客を伴うサービス業や、現場での施工を行う業態の場合、どうしても出勤して業務に当たらなくてはなりません。
・テレワークのためのICT環境が整備されていない:17.5%
テレワークを行うためには、情報通信技術(ICT)の整備が欠かせません。
社員の使用するパソコンは会社の備品なのか、私物なのかによっても、セキュリティ対策の方針が変わってきます。
出典:株式会社パーソル総合研究所・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査
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2. テレワーク導入へ向けた7ステップ
次の3章からは、実際にテレワークを実施するにあたり、導入へ向けての流れを解説します。
本章では、導入へ向けた7つのステップを確認しておきましょう。
ステップ1:導入の目的を明確にする
ステップ2:テレワークの対象範囲を決める
ステップ3:企業内の現状を把握する
ステップ4:導入へ向けた計画の立案
ステップ5:環境や設備を整える
ステップ6:社員への説明会の実施
ステップ7:テレワークの実施とフィードバック
3. ステップ1:導入の目的を明確にする
テレワークを導入するにあたっては、最初に目的を明確にしておく必要があります。
テレワークの導入により、企業や社員がどんな恩恵を受けられるのかをはっきりとさせることで、実施後のビジョンが鮮明になるでしょう。
また、導入の前に全社員で意識の共有を行っておかなければ、実施の直前になってトラブルに発展する恐れがあります。
経営層の意向だけでは、全社員から不満なくテレワークの導入をめざすのは非常に難しいといえるのです。
特殊な業務形態や取引先とのやりとりなど、「オフィスに出勤しなければ仕事にならない」と考える社員がいるかもしれないからです。
また、管理職ほど、「テレワークでは部下がきちんと仕事をしないのではないか……」と疑心を抱き、部署単位での実施の妨げになるかもしれません。
そのため、テレワーク導入の理由と目的を全社員に説明するようにしましょう。
テレワーク導入を推進する背景や、社員が自宅やコワーキングスペースで作業する意義について、企業と社員の双方にとってメリットがあることをきちんと説明し、理解してもらうのです。
社員の健康維持や通勤時間の削減など、メリットとなる部分をわかりやすく説明し、理解が深まるように訴えかけていくのが効果的といえます。
ポイント1.テレワークの導入に難色を示す社員への対応 |
「業務内容がテレワーク向きではない」「自分の目がないところで部下が仕事を進めているか不安」といった意見が生まれる可能性がある場合。
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ポイント2.テレワークを利用できる社員とできない社員の不公平感を和らげる |
現場での業務やサービス業を行う社員と、すでにテレワークを導入している社員との間に不公平感が生まれる可能性がある場合。
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4. ステップ2:テレワークの対象範囲を決める
一般的な事務的業務の場合、テレワークへの移行は比較的容易といえます。
しかし、一度に部署の全社員を対象にするのは問題となる場合があります。
特殊な業務を担当する社員や、経験年数が浅くスキルが未熟な新入社員などに対しては、すぐにテレワークに切り替えることが適当とはいえません。
また、家庭の事情や仕事の進め方を踏まえた上で、テレワークを希望しない社員もいるでしょう。
彼らに対してテレワークを強制することは、不満を抱かれてしまい、業務上のトラブルにつながりかねません。
そのため、テレワークの導入にあたり、すぐに全社員を対象とするのは非常に難しいものがあります。
そこで、最初に導入すべき範囲を設定することが大切です。
4−1. テレワークの対象者を選ぶ
テレワークの対象となる社員の選定を行います。
年齢や性別を意識せず無作為に選ぶのではなく、明確なルールを決めておきましょう。
この場合は、テレワークの導入によるメリットを多く受けられる社員です。
ポイントとしては、以下の社員が対象になります。
- 育児や介護と両立している社員
- 怪我や持病などにより通勤が難しい社員
- 高齢の社員
上記に加えて、日頃の勤怠や勤務態度が真面目で、在宅業務でもきちんとセルフマネジメントができる社員を選ぶ必要があるでしょう。
合わせて、テレワークの対象に選ばれた社員が、実行の意思を持っているかも確認しておきましょう。
本人の意思が固まっていないまま実施した場合、高いパフォーマンスが発揮できない可能性があります。
4−2. テレワークの対象となる業務を選定する
テレワークの対象になる社員の選定は、働き方や勤務態度と合わせて、業務内容をベースに考えることができます。
テレワークとの相性がよい業務の担当社員を候補にします。
具体的な業務内容は、以下の通りです。
- 事務職(経理、総務、人事、営業事務など)
- サポート職(チャットなどを用いるオペレータなど)
- 営業職
- エンジニア職(SE、プログラマーなど)
- クリエイティブ職(デザイナー、ライターなど)
ポイントとなるのは、職種ではなく業務の単位で選定することです。
同じ部署内でも、テレワークの導入が向いている社員とそうでない社員が存在します。
日常業務をテレワークにどれだけ置き換えられるかを意識しながら、対象者の範囲を増やしていきましょう。
テレワークの対象者が決まったら、次は実施の頻度を決めます。
まずは試験的にテレワークの導入を行うことで、効果検証を行いながら対応する部署や職種を増やしていくのが効果的といえます。
4−3. テレワークを実施する頻度を決める
テレワーク実施の対象者を選定したら、実施の頻度を決定します。
いきなり毎日がテレワークになると、多くの社員が戸惑ってしまうからです。
そこで、試験的な導入を含めて、まずは週に1日といった具合で、少ない頻度で実施していきましょう。
企業側としては、テレワーク導入のための制度や規則の変更をすぐに行う必要がなく、社員からのフィードバックを受けながら、少しずつ形にできます。
社員側からすると、テレワークの導入初期では上司や同僚とのコミュニケーションが口頭で取れず、不便に感じることがあるでしょう。
1日の実施で生じた問題点を抽出することで、本格的な実施へ向けての対策と心構えができます。
試験的なテレワークの実施により課題点を抽出できれば、改善へ向けての取り組みを行いながら、対象社員を増やしていけるでしょう。
5. ステップ3:企業内の現状を把握する
テレワークの導入前に、自社の現状把握を行いましょう。
テレワークに対応可能な人材の確認と合わせ、社内の制度や規則がテレワークにも対応できるかを調べます。
多くの企業では、テレワークの実施に伴う社内のルールは明文化されていないはずです。
そのため、現状の制度を変えるべき部分がどれだけあるかを把握する必要があります。
テレワークの実施に伴う、見直しが必要となるの制度や仕組みは以下の通りです。
- 労働時間の管理制度
- 人事評価制度
- セキュリティに関するルール
- 労働組合の考え方
テレワークの実施中における、社員の労働時間をどのように考えるかは重要です。
また、人事評価制度を運営している場合、人柄重視から成果重視の視点への変更が必要です。
これらについては、7章にて詳しく説明します。
6. ステップ4:導入へ向けた計画の立案
テレワークの導入へ向けての具体的な企画の立案に進みます。
テレワークの推進においては、経営層からのトップダウン式で進めるのがよいでしょう。
テレワークの導入は、企業の設立からの歴史を通しても、大きな出来事です。
企業としての考え方や社内の働き方を大幅に変える必要性に迫られるのですから、それらを理解している経営層からのトップダウン式のマネジメントが効果的なのです。
経営層の導入意図を理解した管理職が働きかけ、一般の社員層にまで浸透させていきます。
この一連の流れをスムーズにするには、社内でプロジェクトチームを結成するのが理想的です。
チームの内訳として、以下の役職や職種の社員を選定しましょう。
テレワークの導入に関係のある、なるべく多くの部門から人材を集めて組織しましょう。
- 経営企画部門
- 人事部門、総務部門
- 情報システム部門、情報セキュリティ部門
- 導入対象の各部門の代表者
プロジェクトチーム内で入念に準備を進めてからでなければ、社員数の多い企業では混乱を招きかねません。
プロジェクトチームでは、テレワーク導入へ向けた社内ルールの作成に取り掛かります。
5章にて説明した、各種社内制度やセキュリティに関する、テレワーク対応のルール作りが急務です。
根本的な社内コミュニケーション不足の問題は、〇〇にあり?!組織の生産性を下げる要因を除く方法とは
7. ステップ5:環境や設備を整える
実際の導入へ向けて、環境や設備を整えていきます。
社内のプロジェクトチームを中心に、以下の6つの内容を決めていきましょう。
- 情報セキュリティ対策を万全にする
- 導入へ向けたルールの設定
- 人事評価制度の整備
- 勤怠管理の設定
- テレワーク用の設備を整える
- コミュニケーションの方法を決める
7−1. 情報セキュリティ対策を万全にする
テレワークを行う際には、持ち出し可能なノートパソコンなどを用いて行われることが多くなっています。
社内だけで業務が完結する場合とは異なり、パソコン内のデータや重要な書類が社外に持ち出されるリスクが伴うのです。
特に、ノートパソコンを利用する場合は、スパイウェアに感染したり、端末そのものを紛失するリスクがあることを理解しておきましょう。
特にセキュリティ面では、しっかりと整備されている社内とは異なり、個人の通信環境は脆弱な場合が多くあります。情報の漏洩などにつながらないよう、十分に注意して運用しなければならないのです。
そのため、情報漏洩を防ぐためには、「ルール」「人」「技術」の3つの要素のバランスが取れていることが大切です。
情報セキュリティにおける「ルール」とは |
情報セキュリティの扱いについては、社員個人の判断では限界があります。 |
情報セキュリティにおける「人」とは |
いかに適切なルールが定められていても、人である社員が厳守しなければ効果は発揮されません。 |
情報セキュリティにおける「技術」とは |
「ルール」と「人」でカバーできない部分は、「技術」で補完します。 |
7−2. 導入へ向けたルールの設定
テレワーク導入へ向けた、新たな社内ルールの設定を行います。
テレワークを導入した後も、労働基準法等の労働関係法令を守る必要があるからです。
従来の就業規則の変更が必要であれば、対応しましょう。
主に、始業と終業、給与、手当などのルールの見直しのほか、テレワークに対応した新たなルールづくりも視野に入ります。
テレワーク時のルールは就業規則本体に規定する方法と、個別に「テレワーク勤務規程」として定める場合があります。
テレワークに関連するルールを変更した場合は、上記のどちらの方法にも関係なく、所定の手続きを行って所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
7−3. 人事評価制度の整備
テレワークの導入は、働き方だけでなく社員の評価方法をも一変させます。
一人離れて作業するテレワークの場合、従来のように上司や同僚による働きぶりの評価ができなくなるからです。
そのため、テレワークを行う社員の人事評価における基準は、「仕事に対する向き合い方や勤務態度」から、「業務における成果」を重視したものにしたほうが、適切な評価が行えるようになります。
また、数値化できる営業職などと比べ、業務の成果を数値化しにくい研究職やクリエイティブ職の場合、同じ条件下での評価が難しいという側面があります。
そのため、評価者である上司と部下との間で評価方法に対し、十分な話し合いを持つことが重要です。
ただでさえ仕事中の姿が見えにくいテレワークなので、利用することが評価の面で不利にならないよう、注意しなければなりません。
7−4. 勤怠管理の設定
テレワークを実施する場合、オフィスで勤務するのと同様に勤怠管理を行います。
始業時と終業時のタイミングを確認するためにも欠かせません。
テレワーク中の勤怠管理については、メールや電話、勤怠管理システムを用いて行う場合が多いようです。
メールによる報告 |
多くの企業で導入されており、始業時と終業時の2回に分けて行います。 |
電話による報告 |
始業時と終業時に電話で報告します。 |
勤怠管理システムへの打刻 |
勤怠を管理できるツールです。 |
また、テレワーク中に席を立ったり業務を中断したりする際のルールも決めておきましょう。
育児や介護と平行して業務にあたっているスタッフへの配慮が必要です。
労働時間の管理の面で、しっかりとルール化しておきましょう。
7−5. テレワーク用の設備を整える
テレワークを行う際の設備を整えることが重要です。
ICT環境を十分に整備しておかないと、セキュリティ面の不安やスムーズに業務を進められないなどのトラブルに直結します。
テレワークにおけるICT環境の構築には、以下の4つのパターンがあります。
リモートデスクトップ方式 |
オフィス内で業務に使っていたパソコンのデスクトップ環境を、別のパソコンやタブレット端末を使って遠隔操作する方式です。 遠隔操作によりオフィスのパソコンを動かすため、自宅からの情報流出などのトラブルが起こりにくいメリットがあります。 |
仮想デスクトップ方式 |
オフィス内のサーバが提供する仮想デスクトップに対し、自宅にあるパソコンから遠隔でログインする方式です。 |
クラウド型アプリ方式 |
インターネット上からクラウド型のアプリを使い、場所や端末を選ばずに利用できる方式です。 導入には特別なシステムは必要なく、インターネット環境さえあればライセンス認証だけで利用できます。 |
会社のPCを持ち帰る方式 |
オフィスで利用しているパコソンを自宅に持ち帰り、作業を行う方式です。 ただし、情報漏洩のリスクがつきまとうため、セキュリティ面に注力しなければなりません。 また、コワーキングスペースやカフェで作業するために、自宅からパソコンを持ち出すケースがありますが、紛失や他人に画面内の情報を覗かれるなどのリスクがあります 小規模な企業がテレワークを実施する際にもっとも利用される方式ですが、セキュリティ面においては一番注意すべきといえます。 |
テレワークの実施には、業務の中心となるパソコンとインターネットの設定だけでなく、利用する社員の危機管理力も問われるのです。
7−6. コミュニケーションの方法を決める
テレワークは自宅にて個別で行うため、部署内でのコミュニケーションを従来通りに行うのがポイントです。
顔を合わせて直接相談できる環境にないため、いつも以上に密な連絡を心がける必要があります。
特に、文章だけでは言葉の意図まで伝わりにくい場合が多いため、不要な人間関係のトラブルを避けるためにも、対面と同等かそれ以上に丁寧なコミュニケーションを行いましょう。
社員同士の連絡には、チャットなどのコミュニケーションツールを用いるのが効果的です。
また、文章だけて伝わりにくい場合は電話やビデオ通話を駆使するとよいでしょう。
会議を行う場合はWEBカメラを用いて、お互いの表情や反応がわかるようにすることで、意思の疎通がスムーズになります。
8. ステップ6:社員への説明会の実施
テレワーク導入の準備が整ったら、実施する社員や部署のメンバーに対して説明会を行いましょう。
テレワーク成功の要である情報セキュリティ面に関しては、社員全員に高いレベルで理解してもらう必要があります。
テレワークの説明会では、以下のポイントを押さえながら説明するのが効果的です。
テレワーク導入の目的をしっかりと伝える |
関連する社員に対し、テレワークを導入するにいたった経緯と必要性をわかりやすく説明します。 そうすることで、テレワーク勤務者へのサポート体制の充実が期待できます。 |
テレワーク実施中の各種制度・仕組みについて理解してもらう |
テレワーク実施中はオフィスでの勤務とは多くの部分が異なります。 上司の許可を伴う申請などの仕組みについても、部署内の全社員で共有しておきましょう。 |
テレワークに必要な端末の操作方法を説明する |
テレワークを行う際は、パソコンによる遠隔操作など、これまでに経験したことのない試みが多くあります。 |
また、説明会の実施と合わせて、情報セキュリティに関する同意書へのサインを求めるなどの施策も必要です。
情報セキュリティ面で違反が起き、トラブルが発生した場合に備えて、罰則規定を儲けるのもよいでしょう。
社員の一人ひとりが情報セキュリティへ厳守の意識を持つことで、トラブルを未然に防ぎ、企業の信頼を守ることにつながるのです。
9. ステップ7:テレワークの実施とフィードバック
各種ルールの設定と社員への説明を済ませたら、いよいよテレワークの実施です。
まずは試験的に導入し、評価すべき点や課題点を明確にしておきましょう。
パソコンの遠隔操作や通常とは異なる労働環境など、社員ははじめての経験でとまどうことが多いかもしれません。
テレワークの実施においては、きちんと効果を検証し、フィードバックを行うことが大切です。
9−1. 実施後にフィードバックを行い改善をめざす
テレワークの内容を改善するためには、実施後のフィードバックが重要な意味を持ちます。
テレワークを導入するにいたった経緯を踏まえながら、得られた効果と明らかになった課題点を分析するのです。
テレワークの最適な形は企業ごとに異なるため、「量的評価」と「質的評価」の2つを用いて評価を行います。
量的評価の例 |
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項目 |
観点 |
顧客対応 |
顧客対応回数・時間、顧客訪問回数・時間 |
情報処理力 |
伝票等の処理件数、企画書・報告書の作成件数・時間 |
長時間労働 |
所定外労働時間数(減少) |
オフィスコスト |
オフィス面積、オフィス賃貸料、オフィス付随費用 |
移動コスト |
移動時間、移動交通費(通勤、出張等) |
ICT コスト |
PC、タブレット等情報機器コスト、ネットワークコスト、クラウド等各種サービス費、ICT 保守・運用コスト |
人材確保・育成コスト |
新規採用の応募者数・質、離職者数 |
参考:情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書図表 6-1 量的評価(例)
質的評価の例 |
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項目 |
観点 |
業務改革 |
知識・情報の共有、無駄な仕事の削減、ワークフロー |
パフォーマンス |
業務評価、顧客満足度の向上 |
コミュニケーション |
上司・同僚・部下とのコミュニケーションや会議の質 |
ワークの質 |
仕事のやりやすさ、モチベーション、会社に対するロイヤリティ、自律性 |
生活の質 |
家庭生活(育児・介護等)、個人生活(自己啓発等)、 社会生活(地域活動等)、健康の維持(睡眠時間等) |
全体評価 |
総合的な満足度、会社に対する満足度、仕事に対する満足度、ワーク・ライフ・バランスの実現 |
参考:情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書図表 6-2 質的評価(例)
テレワークの導入に際し、適切な評価とフィードバックを行うことで、適切な運用が可能になります。
より多くの社員に対象を広められるよう、しっかりと分析を行いましょう。
9−2. アンケートでテレワークの実情を把握する
テレワークの試験導入にあたって、参加した社員へのアンケートを実施します。
アンケートによって本人しか知り得ない、テレワーク中の実情の把握に努めましょう。
不満点や改善点だけでなく、効果的だった部分の情報もすくい上げることが大切です。
アンケートとヒアリングの併用で、より詳細な情報の入手が可能になります。
インタビューなどで得られた内容は、テレワーク推進のプロジェクトチーム内で協議し、改善していきましょう。
10. まとめ
働き方改革の推進や時代を取り巻く変化など、社会的にテレワーク導入の流れが加速しています。
企業にとっては交通費の負担減や社員の離職率低下、社員にとっては通勤時間の削減やプライベートの充実など、テレワークの実施は双方に多くのメリットが存在します。
導入に際しては、ご紹介した以下の7つのステップを踏んでいきましょう。
- ステップ1:導入の目的を明確にする
- ステップ2:テレワークの対象範囲を決める
- ステップ3:企業内の現状を把握する
- ステップ4:導入へ向けた計画の立案
- ステップ5:環境や設備を整える
- ステップ6:社員への説明会の実施
- ステップ7:テレワークの実施とフィードバック
パソコンによる遠隔操作や情報セキュリティの徹底など、企業規模によっては導入に向けての負担が大きいかもしれません。
しかし、徹底した安全性の確保ができて、はじめてテレワークを実現できるといっても過言ではないのです。
テレワークの導入にあたっては制度を利用する社員だけでなく、その周囲の社員にも理解を深めてもらいながら、実施をめざしていきましょう。