ジョブローテーションとは?意味、メリットデメリット、事例を解説

目次

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  1. ■ジョブローテーションで組織は変わるのか
  2. ■ジョブローテーションとは
  3. ■ジョブローテーションを導入する目的
    1. ①経営幹部候補人材の育成
    2.  ②社員の育成と適性配属
    3. ③社内の新陳代謝と属人化防止
  4. ■ジョブローテーションのメリット
    1.  1.会社にとってのメリット
    2. 2.社員にとってのメリット
  5. ■ジョブローテーションのデメリット
    1. 1.会社にとってのデメリット
    2. 2.社員にとってのデメリット
  6. ■ジョブローテーションと人事異動の違い
    1. ・ジョブローテーションの目的
    2. ・(一般の)人事異動の目的
  7. ■ジョブローテーションを導入する方法
    1. 1. ジョブローテーションの目的を明確にする
    2. 2.制度設計を行う
    3. 3.目的と仕組みを社員に伝える
    4. 4.現場の準備環境(人、仕組み)を整える
  8. ■ジョブローテーション導入時の注意点
  9. ■ジョブローテーションの事例
    1. ジョブローテーションの成功事例1:富士フイルムホールディングス株式会社 従業員規模は77,739名(2018年3月31日現在)
    2. ジョブローテーションの成功事例2:株式会社いせん(越後湯澤HATAGO井仙)(従業員数32名)
    3. ジョブローテーションの成功事例3:NTTドコモ 従業員規模8,433名(2021年3月31日現在)
  10. ■ジョブローテーションは無駄?時代遅れ?
  11. ■ジョブローテーションの意義
  12. ■ジョブローテーションの今後の動向
  13. ■まとめ

■ジョブローテーションで組織は変わるのか

ジョブローテーションは、日本企業の人材育成制度として、長く用いられてきました。

人材流動のスピードアップと即戦力が求められている現在、ジョブローテーションのデメリットが指摘されつつあります。

今回は、ジョブローテーションの意味、会社側と社員側から見たメリットとデメリット、事例をご紹介します。読者の組織にあった今後のジョブローテーションの在り方のヒントになれば幸いです。

■ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、「社員の能力開発のために、人事計画に基づいて行われる戦略的人事異動」のことです。

社員の専門分野や希望とは異なる分野も含め、さまざまな部署・職種・職務を経験してもらい、キャリアアップを図る育成計画のひとつです。

1つの部署・職種で働く期間は、半年~数年が多く、企業の方針や目的によって異なります。

業務を通じて教育を行うOJT(On the Job Training)という方法論は、高度成長期にアメリカから輸入され、企業内研修として日本で定着しました。

その後も時代状況に合わせて改良が加えられ、今日のジョブローテーションが形成されました。終身雇用を前提としていた日本ならではの人材育成システムだと言えるでしょう。

独立行政法人の労働政策研究・研修機構が2017年2月に発表した「企業における転勤の実態に関する調査 調査結果の概要」によると、調査対象となった日本企業の内、ジョブローテーションを導入している企業は53.1%と半数を超えています。

‐出典‐

ジョブローテーションとは――意味と目的、企業の成功事例、メリット・デメリットを解説 – 『日本の人事部』 (jinjibu.jp)

ジョブローテーション制度とは? メリットとデメリットを解説 (somu-lier.jp)

JILPT報告会資料 (mhlw.go.jp)

■ジョブローテーションを導入する目的

ジョブローテーションの目的は、次の3つです。

①経営幹部候補人材の育成

1つは、将来の経営幹部になる人材の育成です。複数の部門を経験させ、社内業務全体を把握できる人材を育てます。

ジョブローテーションで培った幅広い経験と視野、高い視点をもつ『企業内ジェネラリスト』として、経営の中枢となり将来の会社をリードしていきます。

 ②社員の育成と適性配属

新人の場合、ジョブローテーションで複数の部門を経験することにより、社内業務を通じた能力開発を行うことができます。

また同時に、社員の適性を見極め、配属に生かす狙いで導入される場合もあります。

異なる職種を経験させることで、本人のキャリアの方向性を実体験をもって自ら確認することができます。

既存人材(新人社員でない社員)においても、ジョブローテーションを経験することによって適性が発見できれば、その部署へ異動して活躍し続けることも可能です。

ただし、このようなケースはもしかすると稀であるかもしれませんが、本人のキャリアプランの形成や離職のリスク(優秀な社員であり会社にとって有効な人材)がある場合に用いられるものです。

③社内の新陳代謝と属人化防止

戦略的な人事異動は、社員同士の交流を盛んにし、組織の活性化を促します。人の異動があると、メンバー紹介をはじめ、業務の目的や背景、具体的手順などを説明する必要があります。

その際、他の部署のやり方とは違っていたりするなどの気づきや改善点が見つけられるケースがあります。説明資料も必要なため、業務プロセスの整理やノウハウの可視化が行われることで、その人しか業務内容を知らないこと(属人化、あるいはブラックボックスと言われます)を防止することができます。

ジョブローテーションで人と人、組織と組織がつながり、社内の問題点の発見や新しい商品開発に役立つケースなど、異動をきっかけに、業務のマンネリ化を防止し、社内の新陳代謝アップを図る狙いです。

‐出典‐

ジョブローテーションとは――意味と目的、企業の成功事例、メリット・デメリットを解説 – 『日本の人事部』 (jinjibu.jp)

■ジョブローテーションのメリット

ジョブローテーションは、企業にとって、または社員にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

それぞれの立場から見ていきましょう。

 1.会社にとってのメリット

・社員の適材配置に役立てる

幅広い職種を社員に体験させることで、上司や人事は社員の適性を把握しやすくなります。配属先を検討する際の判断材料にできるため、離職に伴う人材補充や、本人の希望と適正を総合的に捉えた人事判断に役立ちます。

・社内ネットワーク(人脈)の構築

ジョブローテーションは、社内ネットワークの構築に役立ちます。人と人がつながることにより、組織同士が連携できるようになり、一体感のある組織をつくることができます。

気心が知れた社員が随所にいることで、社内の風通しもよくなり、枠を超えた人材交流を可能とします。

・業務の効率化、標準化

人員の流動は、業務の属人化を防ぎます。業務を標準化することで「誰でも対応可能」な状態がつくられ、業務の効率化につながります。

業務の標準化を行うことにより、離職や介護・育児に伴う長期の欠員が出た場合に、柔軟な人員配置を行いやすくなるのです。

・モチベーションの維持、離職の防止

異動により、社員の気持ちをリフレッシュさせ、長期間同じ業務に就くことで生じるマンネリを解消することができます。新しい業務への好奇心と自身の成長を感じることができるため、モチベーション維持、離職防止に役立てる場合があります。

・組織文化の浸透、エンゲージメントの向上

組織改編、あるいはM&Aなどにより、違うバックグラウンドを持つ社員同士が同じ組織やチームになる場合があります。また、多くの店舗や支社を持つ企業において、企業文化を浸透させることは難しい課題です。

そういう状況の中、ジョブローテーションを通して社員同士のコミュニケーションを促すことによって、企業文化の醸成と社員のエンゲージメントの向上を図ることができます。

2.社員にとってのメリット

・実体験を伴った、適性判断

異なる職種の実体験から、自分自身の適性を把握できるようになります。自身の意向やキャリア形成の方向性を具体化するのに役立ちます。

・多角的視点、複数スキルの習得

複数の部門や業務を経験することで、企業理解が深まり、多角的な視点が身につきます。また、複数のスキルを活用できる応用力や専門性を高めることができるでしょう。

例えば、複数の部署を横断した大きなプロジェクトの場合、広く業務を理解している社員は、様々な立場で考えることができるため、部分最適に陥ることなく、チームをまとめやすくなります。

・モチベーションの維持、向上

数か月、数年の短いスパンで異動を繰り返すジョブローテーションは、多くの成長機会があります。それぞれの部署において、事業や業務に対する理解を深めつつ、常にフレッシュな環境に身をおくことにより、モチベーションの維持や向上に役立ちます。

結果、新しいアイデアやイノベーション創出のきっかけにできる場合もあります。また、1つの職場環境に縛られず、マンネリ化を防ぐことも期待できるでしょう。

‐出典‐

ジョブローテーションとは――意味と目的、企業の成功事例、メリット・デメリットを解説 – 『日本の人事部』 (jinjibu.jp)

ジョブローテーション制度とは? メリットとデメリットを解説 (somu-lier.jp)

ジョブローテーションの目的とは。メリット・デメリット、効果的な期間や導入方法 | d’s JOURNAL(dsj)- 採用で組織をデザインする | 採用テクニック (dodadsj.com)

■ジョブローテーションのデメリット

1.会社にとってのデメリット

・専門家(スペシャリスト)の育成に時間がかかる

専門家(スペシャリスト)を育てるには、その分野に特化して育てていく方が効率的です。

一方、短期間で異動を繰り返すジョブローテーションでは、広く業務を経験させることを目的としているため、ある専門性に特化したスペシャリストを目指す場合には回り道になります。

結果として、その専門性において競合他社に遅れをとる可能性があります。

・異動直後の社員のパフォーマンス低下

異動直後は新たな部署・職種でのスタートとなるため、社員のパフォーマンス低下が見られます。

業務内容が異なる新しい業務に慣れるまでに時間がかかり、周囲も指導に時間が取られるためです。もし管理職の立場で異動した場合には、マネジメント上の混乱を招く可能性もあります。

異動前の部署においても、ジョブローテーションによる引き抜きによって、組織の戦力低下や業務の停滞につながるになる可能性があります。引き継ぎなどの準備と異動のタイミングを適切にコントロールすることが必要です。

・異動コストがかかる

ジョブローテーションを行うたびに、コストがかかります。

現場では、業務を身に付けてもらうための受け入れ準備・説明、慣れるまでのサポートなどの人的・時間的コストが必要となるので、標準的な業務マニュアル作成や研修なども必要に応じて行わなければなりません。

異動に伴う各種管理業務や調整が必要であり、転勤を伴う異動の場合は転勤費用も掛かります。

・人事制度を整備する必要がある

ジョブローテーションを始めるにあたり、制度の仕組みを整備する必要があります。

例えば、職場ごとに給与体系が異なる場合はどのように設定するか、ジョブローテーションを行う期間と異動タイミングの判断基準などです。社員にとっては、給与やモチベーションに直結する内容であり、納得感のある制度設定が必要となります。

ジョブローテーション運用後も、定期的に配置展開を行うための計画づくりやその結果評価など、戦略的人事ならではの対応が必要です。誰を、どこに、どういう順番に配属するかを最適化することはジョブローテーションにとって非常に重要な要素となります。

また、既存の人事制度との整合性をとる必要も出てくるでしょう(成果主義であるが、ジョブローテーションの短期では成果を上げにくいジレンマなど)。

・優秀な人材の離職リスクの増加

ジョブローテーションを繰り返す中で、優秀な人材の離職リスクが増加する可能性があります。

専門性に特化して成長したい社員の場合に、ジョブローテーションによってその機会がなくなっているケースです。もう1つは、定期的な異動により、異動後の組織でイチから業務を覚えること(新人同様の扱いとなること)が自己の成長感と結びつかず、不安や不満となる場合です。

2.社員にとってのデメリット

・専門スキルが身につかず、キャリア形成できにくい

ジョブローテーションは、終身雇用を前提とした長期的視点で人材育成する制度です。それ故、専門的スキルを身に着けるまでに長い時間がかかるか、キャリアが中途半端になる可能性があります。

転職においても、自らの経験を武器としてアピールすることが難しく、市場価値を高めることができにくい状態になります。

・モチベーションの低下

希望しない部署への配属、職場環境の変化、人間関係のリセットにより、モチベーションが低下する可能性があります。

戦略的異動であり、異動の目的や期間、期待する役割などが不明確であると、仕事にやりがいを見いだすことができなくなります。

また、もし適性のある業務に就き、その部署で長く働きたいと思っていても、またしばらくして半ば強制的に異動しなければならず、不満に感じる場合があるでしょう。

業務特性上、長期的なプロジェクト(案件)に携わる場合は、成果をみることなく異動になることもあり、達成感を味わうことができない可能性もあります。同じように、担当案件が腰掛けのまま他の人に引き継ぐことで、すべての業務工程には関与できない場合があり、個人的成長感を感じられず、モチベーションの低下を招くケースも考えらえます。

‐出典‐

ジョブローテーションとは――意味と目的、企業の成功事例、メリット・デメリットを解説 – 『日本の人事部』 (jinjibu.jp)

ジョブローテーション制度とは? メリットとデメリットを解説 (somu-lier.jp)

ジョブローテーションの目的とは。メリット・デメリット、効果的な期間や導入方法 | d’s JOURNAL(dsj)- 採用で組織をデザインする | 採用テクニック (dodadsj.com)

ジョブローテーション制度とは?導入する目的とメリット6つを解説 | ITエンジニアの派遣なら夢テクノロジー (yume-tec.co.jp)

■ジョブローテーションと人事異動の違い

ジョブローテーションと(一般の)人事異動の違いは、目的です。 

・ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションの目的は、上記の通り「幹部候補の育成」、「適材適所の見極め」、「社内組織の活性化」など、一言でいうならば、長期的視点の目的でした。

・(一般の)人事異動の目的

まず、人事異動には大きく2種類があります。

■1種類目:役職や配置の転換

役職や配置の転換による人事異動の目的は、社員に役職を与えることで社員の所掌範囲を拡大(変更)、組織力の強化、欠員補充です。長期というよりは長くても2~3年で成果を上げることを期待した異動になります。

■2種類目:社内公募による異動

社内公募とは、社員に対してポストや職種などの条件を提示した上で希望者を募り、人事配置を決定する方法です。

希望者と面談などを行い、もっともそのポストに適している社員を選びます。こちらの異動は社員の意思が強く反映される異動になりますので、モチベーションの高い社員が会社や組織に必要なポストに配属になることで、会社として強化したい施策や、組織の目的に対して、即戦力となるような人材を補強する狙いがあります。

上記のように、ジョブローテーションと人事異動では、目的が異なっています。

また、ジョブローテーションや長期的視点での人事異動では長くても2~3年の短期、即戦力を期待した異動と言えるでしょう。

‐出展‐

ジョブローテーションの目的とは。メリット・デメリット、効果的な期間や導入方法 | d’s JOURNAL(dsj)- 採用で組織をデザインする | 採用テクニック (dodadsj.com)

ジョブローテーション制度とは?導入する目的とメリット6つを解説 | ITエンジニアの派遣なら夢テクノロジー (yume-tec.co.jp)

■ジョブローテーションを導入する方法

 具体的にジョブローテーションの社内に導入するためにはどのようにすればよいのでしょうか。

1. ジョブローテーションの目的を明確にする

ジョブローテーションにはメリットとデメリットがあります。それらを十分理解した上で、導入する場合はなぜ社内にジョブローテーションが必要なのか、目的を明確にすることが必要です。

会社だけの都合で導入しても長期的に効果を生み出し続けることは難しいでしょう。社員の立場に寄り添いながら、会社と社員が共に成長できるようなジョブローテーションの目的設定が重要です。

2.制度設計を行う

ジョブローテーションを行う場合は、制度設計が肝と言っても過言ではありません。

制度設計は、ジョブローテーションの範囲、期間、計画方法、給与体系など、具体的に設定を行う必要があります。その中で、社員が不公平感を抱いたりする場合が考えられますので、十分な検討が必要でしょう。

3.目的と仕組みを社員に伝える

ジョブローテーションは、社員に不安を与えてしまうというリスクを抱えています。説明が不十分のまま社員に異動を命じることや、気持ちの整理ができないまま次の仕事を課せば、モチベーションの低下につながることもあるでしょう。

社員としては、一定のセクションで仕事を覚え、ある程度の成果を達成した方が、充足感を得られるはずです。しかし、ジョブローテーションのように、短期間で複数の仕事を順に経験すると、自分の立ち位置に不安を感じてしまいます。

そのため、ジョブローテーション導入に際しては、仕組み(実施方法の詳細)や目的を十分に説明しておくことが大切です。

4.現場の準備環境(人、仕組み)を整える

ジョブローテーションを始めるにあたり、人事制度だけでなく現場の環境を整えておくことも必要です。

実際に異動する現場に受け入れ体制が整っていない場合は、ジョブローテーションの目的が達成されず、社員のモチベーションの低下を招き、離職という最悪の結果になりかねません。

異動後にどういう段取りで業務を覚えてもらうか、日々の教育は誰が担当するかなどの受け入れ準備を整えましょう。

‐出展‐

ジョブローテーションの目的とは。メリット・デメリット、効果的な期間や導入方法 | d’s JOURNAL(dsj)- 採用で組織をデザインする | 採用テクニック (dodadsj.com)

■ジョブローテーション導入時の注意点

ジョブローテーションを導入する際の注意点について考えるときに重要なことは、ジョブローテーションのメリットとデメリットをよく理解して進めることです。しかもそれが、会社目線だけでなく社員の目線でも考えられていることが大切です。

会社のために導入したジョブローテーションの仕組みが、優秀な社員の離職のきっかけになってしまったりすると、本来期待していたジョブローテーションのメリットすら享受できない結果を招くことになります。

一般にジョブローテーションに向いている企業に特徴には次のものがあります。

  • 複数の業務が一連の流れで繋がっている企業

  • 本支店間や部署間の連携が業績に大きく影響する企業

  • 業務遂行に幅広い知識が必要な企業

  • M&A後など、企業文化の浸透や醸成を図りたい企業

  • 従業員数が多い大企業

一方、ジョブローテーションに向いていない企業の特徴は下記があります。

  • 業務遂行に専門的な知識やスキル、ノウハウを必要とする企業

  • 知識やスキル、ノウハウの習得に長い時間を要する企業

  • 非定型業務の割合が多い企業

  • 長期プロジェクトが数多く発生する企業

  • 従業員数が少ない中小企業

ジョブローテーション制度を設計する際は、メリット、デメリットを正しく理解したうえで、社員の納得感を得られるよう目的を明確にすることが重要になります。

とくに、社員側のデメリットを軽視しないことが大切です。なぜこの期間で異動するのか、それによりどのようなキャリア形成ができるのか、社員に十分な説明をして理解を得るようにします。

‐出典‐

ジョブローテーションとは――意味と目的、企業の成功事例、メリット・デメリットを解説 – 『日本の人事部』 (jinjibu.jp)

ジョブローテーションの目的とは。メリット・デメリット、効果的な期間や導入方法 | d’s JOURNAL(dsj)- 採用で組織をデザインする | 採用テクニック (dodadsj.com)

■ジョブローテーションの事例

ジョブローテーションを導入し、成果をあげている事例を3つご紹介します。

ジョブローテーションの成功事例1:富士フイルムホールディングス株式会社 従業員規模は77,739名(2018年3月31日現在)

富士フイルムホールディングス株式会社は、カメラや医薬品などの開発、製造を行うメーカーです。

ほかに研究開発や営業、品質管理やマーケティングなどの様々な業務があります。ジョブローテーションの導入目的は、若年層の育成、組織活性化でした。

新入社員にはスペシャリストの養成を目的とした3年間の研修制度を準備。

期間中は「自発性」を磨くことを第一として、ビジネスマナーをはじめ各業務内容が求める知識やスキルの習得、特定分野の技術や知識を追求する姿勢など、従業員として必要なことを学んでいます。

ジョブローテーションによって得られた効果として、どの部署に配属されても、自分のやるべき業務に真摯に取り組む姿勢が身についており、業務の実践を通して培われた「対応力」が強化されたようです。

より難度の高い仕事を進めるためには「対応力・応用力」が求められますが、ジョブローテーション制度により、さまざまな仕事を経験することで、課題形成力・業務遂行力・関係構築力を向上していくことができたようです。

職場でのOJTと、教育研修プログラムやローテーションとの連動を強化することで、自己成長への取り組み/自立型人材の育成強化なども実現しています。

ジョブローテーションの成功企業事例とは?目的と効果を明確に捉える – 人事担当者のためのミツカリ公式ブログ (mitsucari.com)

ジョブローテーションの成功事例2:株式会社いせん(越後湯澤HATAGO井仙)(従業員数32名)

こちらの本業は旅館業ですが、飲食業・物販業・旅行業・製造業など複数の事業を展開していました。

慢性的な人手不足に悩んでおり、ジョブローテーションによる「多能工化」を積極的に推進しました(多能工とは、一人で複数の業務や作業を行うこと、及び複数の技能や技術を持った作業者という意味です)。

業務負担の見直し、事業の枠にとらわれず勤務体系を選べる仕組みを導入することによって、社員数も増え人手不足を改善しています。

ジョブローテーションとは――意味と目的、企業の成功事例、メリット・デメリットを解説 – 『日本の人事部』 (jinjibu.jp)

ジョブローテーションの成功事例3:NTTドコモ 従業員規模8,433名(2021年3月31日現在)

NTTドコモは、通信事業、スマートライフ事業をメインとする大企業です。

入社時から2~3年のジョブローテーションを実施しており、短い期間の中で、その部署業務のプロになるための工夫を行っています。ローテーションするごとに有識者は別の部署に行き、逆に全く未経験の社員が入ってきます。

CPP(Certified Procurement Professional)という購買・調達分野における専門的な知識を身につけていることを証明する資格(全日本能率連盟が認定する民間資格制度)を体系的に業務で身に付ける手段の1つとし、組織を上げて資格取得をOJTの一環で取り組んでいます。

ジョブローテーションの1つの課題といえる業務習得までにかかる時間を、資格取得という明確な目標設定をすることで、いち早く配属先のプロになる工夫をしています。

NTTドコモインタビューその3| ローテーションしても短期に調達プロにする方法とは? | CPP 購買・調達 資格公式サイト | 日本能率協会 (jma-cpp.jp)

■ジョブローテーションは無駄?時代遅れ?

昨今の日本では、ジョブローテーションの維持が難しくなり、制度を廃止する企業も出てきています。

この理由としては、終身雇用の廃止、転職による人材の流動性が高まりなど、ベースとなる企業の在り方と人材そのものがものすごいスピードで変わっていく世の中になったためです。

そうした状況の中、とりわけスキルや経験値が重要になる専門的な職種の場合、採用の段階からあらかじめ職務が限定されているジョブ型雇用を取り入れている企業も増えつつある状況です。

では、ジョブローテーションは今後なくなっていく制度なのでしょうか?

ジョブローテーションの意義と今後の動向について予想してみたいと思います。

■ジョブローテーションの意義

ジョブローテーションには、メリットとデメリットがあります。

変化の激しい現代のビジネスシーンにおけるジョブローテーションは、メリットの享受に時間がかかりすぎ、かつデメリットが目立つ印象を受けます。

これからのジョブローテーションは、『企業の目的に応じて独自の制度アレンジを加えながら育てていくもの』として、今後も価値ある制度として残っていくと考えられます。

ジョブローテーションのメリットの1つに、幹部候補になるための幅広い経験と知識が得られることを述べました。また、社内の人脈構築にも役立ちます。

将来的に会社をリードしていく人材には1つの専門性だけなく、広く俯瞰で物事を把握できるジェネラリスト的スキルと、関係者と良好な関係を構築しながら経営判断を遂行していく人材が不可欠であるためです。

例えば、テレビ番組の作成は、脚本家、カメラマン、司会者などの専門家だけで構成されるわけではありません。必ず全体を構成し、番組を目標(番組のゴール)に導くディレクターが存在します。

全体を指揮、監督するディレクターの存在は、まさに企業内ジェネラリストと同じ役割を担っており、1つの専門性だけは決してできない役割です。社内ジェネラリストという“専門”スキルを磨くもっとも強力なやり方が、ジョブローテーションと言えるのではないでしょうか。

■ジョブローテーションの今後の動向

ジョブローテーションは今後、企業内でそのあり方が見直され変化していくでしょう。

制度廃止を行う企業もあれば、メリットに挙げた効果を狙って少しずつ導入、推進していく企業です。後退と前進、いずれの場合も、ジョブローテーションの廃止理由や導入目的が重要です。

メリット・デメリットを理解しながら、企業の目的や組織文化にあったやり方で制度の是非を検討することが重要です。

ジョブローテーション制度の実態|廃止傾向にある?メリット・デメリット|転職Hacks (ten-navi.com)

■まとめ

いかがでしたでしょうか。以下簡単に、これまで解説してきたことをまとめます。

  • ジョブローテーションとは、「社員の能力開発のために、人事計画に基づいて行われる戦略的人事異動」のこと
  • 導入目的は、経営幹部人の育成、社員育成、適性配属、社内の新陳代謝と属人化防止
  • 会社のメリットは、社員の適材配置、社内ネットワーク構築、業務の効率化と標準化、モチベーションの維持、離職の防止、組織文化の浸透、エンゲージメントの向上
  • 社員のメリットは、自身の適正判断、多角的視点と複数スキルの習得、モチベーションの維持向上
  • 会社のデメリットは、スペシャリストの育成に時間がかかる、異動直後のパフォーマンス低下、異動コストがかかる、制度整備が必要、優秀人材の離職リスクの増加
  • 社員のデメリットは、専門スキルが身につかず、キャリア形成できにくい、モチベーションの低下
  • ジョブローテーションと一般的な異動の違いは、長期的視点と短期的視点の目的性の違い
  • ジョブローテーションの導入方法のポイントは、目的を明確にすること
  • 導入時の注意点は、メリットとデメリットを正しく理解した上で、会社視点と社員視点の両方の視点で考える必要がある点
  • 企業の特徴や指針に即してジョブローテーションを活用した会社が、制度活用に成功している
  • ジョブローテーションの意義として、企業の目的に応じて独自のアレンジで進化していくものと考えられる

今回は、ジョブローテーションの意味、会社側や社員側から見たメリットとデメリット、成功事例を中心にご紹介しました。

ジョブローテーションについて、読者の組織にあった形で採否や今後の進め方の検討材料として頂ければ幸いです。

もしジョブローテーションの導入をお考えの方がいれば、今の人事制度の仕組みを活用しながら、少しでもジョブローテーションの要素を取り入れてみてはいかがでしょうか。

例えば、全社でなく担当レベルでスモールスタートしてみる。期間を限定した上で、組織間人材交流を実施し、社員の感じ方をヒアリングすることや会社側で検討すべきことの洗い出しを行うなどです。

会社の重要な制度設定ですから、やるかやらないかは大きな判断になります。小さく試してみて、企業にあった形を模索することは決して無駄にはならないと考えます。

本記事が、少しでも皆さまのお役に立てますと幸いです。

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