
「リーダーシップには様々な種類がある」
そんな認知が広まってきたのはここ数年のことではないでしょうか。
「行動力、決断力、カリスマ性があり皆をぐいぐい引っ張っていく」そんな典型的なタイプのリーダーのみが、リーダーではないということです。
あなたは自分の組織で、適切なリーダーシップを発揮できていますか?
もしも答えが「NO」ならば、様々な種類のリーダーシップを学び、自分の組織に合ったものがわかれば、今よりさらに成果を出せる組織になれるのではないでしょうか。
本記事では、近年注目を集める新型のリーダーシップ4種類とリーダーシップの選び方、磨き方について解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
1.リーダーシップとは
リーダーシップを見直すにあたって、改めてリーダーシップの意味やリーダーとの違い、なぜリーダーシップが必要なのかを見ていきましょう。
1-1.リーダーシップの意味
広辞苑によりますと、リーダーシップは以下のように解説されています。
- 指導者としての地位または職責
- 指導者としての能力・資質
つまり、肩書としてのリーダーではなく、リーダーに本質として求められていることを表しているのがリーダーシップです。
例えば、「リーダーシップを発揮する」というのは「リーダーとしての能力を全面的に出す」とも言い換えることができます。
1-2.リーダーとリーダーシップの違い
リーダーとリーダーシップの違いは以下の通りです。
- リーダー…指導者という「肩書き」
- リーダーシップ…指導者としての職責や能力といった本質的な部分
リーダーになることは、仕事ができてある程度の人望があれば誰でもできます。
しかし「リーダーになったから必ずリーダーシップがある」というわけではなく、リーダーになってもリーダーシップを学び、磨き続けることが重要です。
なぜリーダーシップが必要なのか
管理職やマネージャーにリーダーシップが必要な理由は、メンバーの能力を最大限に発揮できるよう、組織を整えることが求められる仕事だからです。
管理職やマネージャーといっても「ただ管理をしていたらいい」わけではありません。
チームが間違った方向にいかないように計画や戦略を立て、メンバーの模範となることが常に求められます。
成果を出せるチームになるためには、リーダーであるあなたが模範となり、チームを正しい方向へ導くことが必要不可欠です。
リーダー必見!部下の意欲を引き出すために必要なコミュニケーションとは?|お役立ち資料公開中!
2.リーダーシップの種類
リーダーシップには、実はいくつかの種類があります。
そして時代の流れに合わせて「最新型のリーダーシップ」と言うべきものも登場しています。
この章では従来型のリーダーシップ2種類と、新たに認知・活用が進む新型のリーダーシップ4種類を紹介します。
2-1.従来型リーダーシップ2種類
■PM理論
1つ目が日本の社会心理学者、三隅二不二が提唱した「PM理論」です。
Pは目標達成能力、Mは集団維持能力をそれぞれ指し、能力の大小によって大文字小文字を組み合わせた4種類のリーダーシップタイプがあります。
- PM型…目標を明確に示し成果をあげるだけでなく、集団もまとめる力がある
- Pm型…成果をあげる力があるが、人望がない
- pM型…人望はあるが、成果をあげる力がない
- pm型…成果をあげる力も人望もない
pm型はもってのほかですが、Pm型やpM型の人は弱点を補い、PM型を目指していくことが大切だと説いています。
■ダニエル・ゴールマンの6種類のリーダーシップ
2つ目がアメリカの心理学者、ダニエル・ゴールマンが提唱した「6種類のリーダーシップ」です。
- ビジョン型…ブレない信念や価値観を軸に、チームをまとめていく
- コーチング型…メンバーの性格や特徴を活かして、成果をあげていく
- 調整型…意思決定プロセスにメンバーを参加させることで、チームをまとめる
- 仲良し型…メンバーと同じ目線で信頼関係を築くことで、チームをまとめる
- 実力型…リーダーの実力が高く、実力や実績でチームを引っ張っていく
- 指示命令型…強制的に指示命令することで成果をあげていく
このリーダーシップ分類の中で「指示命令型」は、メンバーが指示待ち人間になりやすいうえに不満を持ちやすく、離職率が高い傾向にあると言われています。
リーダーになると、無意識に指示命令型になってしまう人が多いため、意識して改善することが重要になります。
2-2.新型リーダーシップ4種類
次に、近年注目を集めている新型のリーダーシップ4種類について解説します。
①トランザクショナルリーダーシップ
1つ目は入山章栄の著書「世界標準の経営理論」にて提唱された「トランザクショナルリーダーシップ」です。
トランザクショナルリーダーシップは、心理的な取引や交換関係を重視し、部下との関係を大切にしています。
そして、トランザクショナルリーダーシップには、以下2つの特質があります。
- 状況に応じた報酬…成果をあげた部下に対し、正当な報酬を与えること
- 例外的な管理…部下が成果をあげている限り、部下に直接的な指示をしないこと。
部下に一定の権限を任せ、主体的に動いてほしいという上司におすすめの方法です。
また、部下との関係は信頼関係が前提となっていますので、信頼を損なわない行動を常に心がけなければなりません。
②トランスフォーメーションリーダーシップ
2つ目が同じく入山章栄が提唱した「トランスフォーメーションリーダーシップ」です。
トランスフォーメーションリーダーシップは、先ほどのトランザクショナルリーダーシップと比較されることが多いです。
トランザクショナルリーダーシップは「心理的な取引」を重視することに対し、トランスフォーメーションリーダーシップは「ビジョン」を重視します。
そして、トランスフォーメーションリーダーシップは、以下の3つの資質から構成されます。
- カリスマ…企業や組織のビジョンを明確に掲げたうえで部下に伝え、部下にビジョンに基づいて働く動機付けをする
- 知的刺激…部下の考え方を認め、意味や問題解決策を考えさせる
- 個人重視…部下一人ひとりに対し、個別のコーチングや教育を行う
簡単に言うと、部下とビジョンを共有し、組織や仕事の魅力を伝えることで、部下のモチベーションを高める方法です。
お気づきの方もいるかもしれませんが、トランザクショナルリーダーシップとトランスフォーメーションリーダーシップは、補完関係にあります。
いきなりは難しいかもしれませんが、両方のリーダーシップを組み合わせることで、より良くチームを導いていくことができます。
③サーヴァントリーダーシップ
3つ目がロバート・K・グリーンリーフが1970年に提唱した「サーヴァントリーダーシップ」です。
サーヴァントリーダーシップは、メンバーを奉仕・支援することを重視しています。
独裁的な管理職や起業家といった「支配型リーダーシップ」の対義語と考えてよいでしょう。
そんなサーヴァントリーダーシップの特徴は、以下の9個です。
- 傾聴…メンバーの意見に耳を傾け、メンバーの立場に立って理解する
- 癒し…メンバーの現状や身体への配慮を行う
- 気づき…リーダーが自分への気づきを意識する
- 説得…服従させるのではなく同意するように説得する
- 概念化…目標への志向を忘れず、ゴールをイメージする
- 先見力…過去の教訓や事例、現在の業務から将来を予測する
- 執事役…メンバーの能力や価値、可能性を信じる
- 成長…業務内外問わず、メンバーの能力や可能性、価値を信じる
- コミュニティ…働きやすく成長できる環境を作る
サーヴァントリーダーシップはメンバーを中心とした組織運営のため、信頼関係を重視し、部下の話に耳を傾けます。
働き方改革が進み、個人を尊重する風潮が強い、現代に合ったリーダーシップと言えるでしょう。
④オーセンティックリーダーシップ
4つ目がビル・ジョージが提案した「オーセンティックリーダーシップ」です。
オーセンティックリーダーシップは、自分の価値観や倫理観を重視する、透明性が高い方法です。
オーセンティックリーダーシップには、以下の5つの特性があります。
- 目的の理解…自分を尊重して信じており、果たすべき目的を十分に理解している
- 倫理観や価値観への忠実性…外部に影響されず、正しいと思える価値観に基づいて勇敢に行動できる
- 情熱的なリード…本音で語りかけ、全力で人をリードする
- リレーションシップの構築…活気があり支援し合えるコミュニティを作る
- 自己啓発…自らを律し、学び続ける姿勢を持つ
特にオーセンティックリーダーシップは、女性リーダーの育成に有効と言われています。
なぜかと言えば、オーセンティックリーダーシップの資質は以下の4つで、女性のほうが得意な傾向があるためです。
- 信頼、尊敬
- モチベーション
- 刺激
- コーチング
女性リーダーを育成したり、女性がリーダーのチームであったりするときは、オーセンティックリーダーシップが候補の1つと言えるでしょう。
3.自分の組織に合ったリーダーシップを選ぶコツ
いくつかリーダーシップを紹介してきましたが、いざ選ぶとなると「どれがよいのだろう……?」と悩んでしまうのではないでしょうか。
実は、最適なリーダーシップを選ぶためのコツがあります。
この章では、たくさんあるリーダーシップから自分に合うもの選ぶためのコツを紹介しますので、ぜひ自分の組織にあてはめて考えていみてください。
3-1.現状を把握する
まずは、自分のチームの現状を把握することが重要です。
特にリーダーシップの種類を選ぶ際に重要な基準となる
- ミッションや目標
- メンバーの特徴、強み
の2つについて考えておきましょう。
ミッションや目標が明確で、自分の背中を見てもらうことでチームを引っ張る場合はトランスフォーメーションリーダーシップの要素を取り入れやすいです。
一方で、ミッションや目標がそこまで明確でもないが、メンバーの主体性や成長を大切にして行きたいというリーダーにはサーヴァントリーダーシップに親和性があると言えます。
また、リーダー自身の資質や性格だけでなく、メンバーの特徴や強みを把握しておかなければ、メンバーが不満を持ってしまうかもしれません。
例えば、主体性や創造力が高いメンバーが多いチームにトランスフォーメーションリーダーシップを取り入れると、ビジョンに共感できず転職してしまうかもしれません。
また、目的を達成するためには手段を選ばないタイプのメンバーが多いチームでトランザクショナルリーダーシップを取り入れると、過度な利益重視から不祥事を起こしてしまう危険性もあります。
ミッションや目標、メンバーの特徴や強みを洗い出し、適切なリーダーシップを考えていきましょう。
3-2.将来どのようなチーム・組織を目指すか
実は、現状把握以上に「将来像を描くこと」が、リーダーシップを選ぶうえで重要です。
なぜならば、組織の将来像とリーダーシップが一致することで、目指す組織を実現していくことができるからです。
例えば、メンバーに主体的に動き、個人個人で成果を上げる組織を目指すなら「トランザクショナルリーダーシップ」が、女性のリーダーを後進として育成することを目指すチームには「オーセンティックリーダーシップ」を取り入れるといったように、その組織が目指す姿や、達成したい目標に合わせたリーダーシップを選択するのです。
組織の将来像、達成したい目標の例としては、例えばこんなものが挙げられます。
- メンバーが主体性を持って、個人で成果をあげるチームにしたい
- 明確なビジョンを持っていて、一緒に達成する仲間が欲しい
- 部下との信頼を築き、働きやすい組織を作りたい
- 自分の後進として、女性のリーダーを育てたい
あたなの組織は、将来どんな組織を目指し、また何を達成したいですか?
誰かにハッキリと話せるようになるまで、考え抜いてみることです。
現状と理想の両方から検討し、最適なリーダーシップを選びましょう。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では以下6種類のリーダーシップをご紹介しました。
- PM理論
- ダニエル・ゴールマンの6種類のリーダーシップ
- トランザクショナルリーダーシップ
- トランスフォーメーションリーダーシップ
- サーヴァントリーダーシップ
- オーセンティックリーダーシップ
また、自分の組織に合ったリーダーシップを考えるには「現状」のチームのミッション、メンバーの性質や強みを把握すると共に「チームが目指す将来像を描くこと」も重要でした。
今の自分のチームをより良くするためにも、ありたい姿を実現するためにも、リーダーシップへの理解、適切な選択は不可欠なのです。
変化の激しい時代だからこそ、リーダーシップスタイルも柔軟に使い分け、理想のチームを目指していきましょう。
本記事が、皆様の前向きな実践につながることを祈っています。