
1.傾聴とは?
傾聴とは、相手に寄り添い、相手の話の内容だけでなく、話し方や表情、姿勢、しぐさといった言葉以外の部分にも注意を払ったりすることにより、相手を深く理解するための聴く技術です。
もともとはカウンセリングやコーチングで使用されるコミュニケーション技法の一つでしたが、最近ではその効果からビジネス上でも必要なスキルとして、傾聴力と言われることもあります。
傾聴は、米国の心理学者でカウンセリングの大家であるカール・ロジャーズ(Carl Rogers)によって、「積極的傾聴(Active Listening)」として提唱されました。
ロジャーズは、自らがカウンセリングを行った多くの事例(クライエント)を分析し、カウンセリングが有効であった事例に共通していた聴く側に必要な要素を3つにまとめました。
その要素を含む聴き方が、傾聴になります。
3要素とは、「自己一致」、「共感的理解」、「無条件の肯定的関心」です。
■ロジャーズの3原則
1.自己一致 (congruence)
聴き手が、相手に対しても自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認する。分からないことをそのままにしておくことなく、自己と一致することを確認します。
2.共感的理解 (empathy, empathic understanding)
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。
3.無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)
相手の話を善悪や好き嫌いの評価を入れずに聴くことです。
相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴きます。そのことによって、話し手は安心して話ができるようになります。
これら3つの要素は相互に影響しています。はじめに、聴き手が相手に対しても自分に対しても真摯な態度(自己一致)であれば、話の分からない部分を確認しながら、真意まで確認することができます。
それによって、相手の立場に立ち、相手の気持ちに共感しながら理解することもできるようになります(共感的理解)。
共感ができた上で、なぜそのように考えたか関心を持ち、評価を入れることなく聴くことができれば、話し手は安心して話を続けることができ、深い理解につながります。
参考元リンク1
傾聴とは|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp)
https://kokoro.mhlw.go.jp/listen/listen001/
参考元リンク2
傾聴とは?採用試験時に必要な傾聴の技法9つやもたらされる効果を紹介! | ITエンジニアの派遣なら夢テクノロジー (yume-tec.co.jp)
https://www.yume-tec.co.jp/column/training/4320
2.傾聴の目的、メリット
傾聴の目的は、『相手を理解すること』です。
傾聴を実践すること(相手を理解すること)のメリットは、ビジネスシーンにおいても注目されています。相手を深く理解することによって、ビジネス上では以下のメリットがあります。
① 信頼関係が構築されやすい
話を聴いてもらうことにより、自分の思っていることが理解、共感されたとき、話し手は聴いてもらえたことと、共感してもらったことで安心感が生まれます。
その時、話し手の問題がすぐには解決されなくとも、話をしたことやそこでのコミュニケーションが良いものであった体験は、職場の同僚や上司、部下との間の信頼関係を築くことに役立ちます。
② 信頼関係があるからこそ、業務が円滑に進む
信頼関係が構築されていない状況においては、普段の業務指示や何気ないやり取りでも、不安や嫌な気持ちになったり、モチベーションが上がらないことが起こりえます。
ただ、信頼関係が構築されている場合は、お互いの真意は確認できている前提ですから、仕事上の良くない報告や、困っているという相談も遠慮することなく行うことができます。
報連相がスムーズであれば、チームワークや仕事そのものの生産性も高くでき、業務が円滑に進むことが期待できるでしょう。
③ 話し手が自発的に整理、解決できる
人はさまざまな意見や悩みを持っていますが、具体的に言葉として表現できるレベルの思いもあれば、まだ人に伝わる程度にはまとまっていない考えもあります。
それを自力で言葉にし、把握することは簡単ではありません。傾聴を行うことで、話し手が考えてはいたものの、きちんと整理できていなかった事柄が整理できる場合があります。
話をしているうちに自己解決して、『あ、なんだ!こんなことか。』と思った経験は誰しも一度はあるのではないでしょうか。
聴き手が何か特別なアドバイスを行わなくても、話し手自身が自分の頭、自分の言葉で整理していくので、その後の行動が違います。
人は誰かから指示されるよりも、自分の考えで判断した事のほうが、エネルギーが発揮されるものだからです。この気づきを傾聴によって生むことができれば、あなたの同僚や部下の悩みも話し手自ら解決し、前向きに仕事に取り組むことができるかもしれません。
④ 相手の状況や悩みがわかるからこそ尊重できる
傾聴を行った場合に、話し手の悩みの根源にたどり着く場合があります。
最近だと、ニュースに対する受け取り方、働き方の考え方などは人それぞれです。個々人で異なる思想をよく理解せず、『〇〇であるべき!』などの発言をした場面で、パワハラにあたる可能性があるなど思いもよらぬ状況に陥る可能性があります。
もし、普段から周りのメンバーとの傾聴を行っている場合には、その人の考え方や置かれている状況(自宅で介護をしている、子供が入院中など)を知るきっかけにもなり、そういう背景が知れることで、チーム内での助け合いや発言の1つを取ってみてもコミュニケーションの質が上がり、互いに尊重できる関係が築ける可能性が高まります。
参考元リンク1
傾聴とは?傾聴の効果や種類、具体的な実施方法を紹介 | あしたの人事オンライン (ashita-team.com)
https://www.ashita-team.com/jinji-online/business/9335
参考元リンク2
傾聴とは? 意味、ロジャーズの3原則、実践方法8選、ビジネスで効果を出すには? – カオナビ人事用語集 (kaonavi.jp)
https://www.kaonavi.jp/dictionary/keicho/
3.傾聴の種類、具体的な実践例
傾聴には3段階のレベルがあります。レベルによる違いと聴き手の態度、しぐさを説明していきます。Step1からStep3に向け、段階的にレベルが高くなります。
Step1:聴いていることを示す
傾聴の初期段階であるStep1は、聴いていることを示すレベルです。
聴き手の興味関心や意見を優先するのではなく、まずは話し手が考えている心の内を伝えやすいように、相手のために聴くことを意識します。
うなずく、相槌を打つ、視線をしっかり合わせる、姿勢を正すなど、興味を持って相手の話を聴いている姿勢を示します。そうすることで相手がリラックスして話しができる土台が作られていきます。
Step2:理解していることを示す
次に、ただ聴いているだけではなく、相手の言うことを理解していることを示します。
例えば、相手が言ったことを復唱する、要約する、言い換える、などして、内容を確認していきます。相手が感情を示しているなら、その感情に寄り添ったり共感を示したりすることも、「理解していることを示す」につながります。
話し手の言葉をオウム返しのように繰り返したり、別の言葉で言い換えたり、要約したりして理解を伝えます。
Step3:質問を通し、相手の思考を刺激する
最終はStep3です。ここが積極的傾聴の中でもっとも難易度が高いプロセスです。
「傾聴」とは、聴いているだけでは、話し手の気づき(次の行動)につながりにくい場合があります。気持ちが楽になる、スッキリした、などの効果はあるかもしれませんが、特にビジネスの場においては、相手に気づきがあり、次なる行動の有無が重要になります。
そのために、次の行動に繋げるための質問を投げかけながら、相手の思考プロセスを刺激していくことが大切になります。
聴き手は必要に応じて話し手の発言に言葉を添えたり質問を挟んだりすることで、話し手の思考を促すのです。
積極的傾聴は、聴き手側の真摯な姿勢に加えて、経験やテクニックも必要とされます。
参考元リンク1
積極的傾聴とは聴くだけではない!①積極的傾聴を実現する方法3ステップ | 信元 夏代のスピーチ術 (natsuyo-speech.media)
https://natsuyo-speech.media/speech-basic/communication-skill/activelistening1/